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ピーマンの逆襲?

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月曜日、今日は学校がある。
しっかり弁当も作った。リーシュに渡すとニコニコしながら受け取った。中身を教えようとしたら開ける時の楽しみを消さないでほしいとストップさせられた。

このお屋敷は学校からちょっと離れている。小高い丘の上に城や寺のようにそびえ立っている。大きな庭や中庭があり、森ほどではないが、周りには木々が多く、小動物程度なら生息している。自然豊かな環境だが、駅が遠く交通の便は良くない。ロジーに聞くと、リーシュと同じ車で学校まで送っていくと言われたが、そうなると登下校を毎回リーシュと同じにしなければならないのは不便だ。登校はいいとしても下校に関してはそれでは困る。お互い部活に入っていないとはいえ、俺とリーシュは学年だって違う。委員会の仕事も偶にある。悩んでいるとロジーから提案があり、俺はカードを渡された。電車などの交通費を支払う時に使えと、学校の最寄り駅から近くまで電車で来て、屋敷までは使用人がよく使うレンタルの自転車が近くにあり、これを運営もしているらしく、毎回使っても問題ないらしい。ちょっと遠いけど、早めに出ればその自転車で学校まで通う事も可能だ。なるほどな。それなら帰り道にスーパーや商店街に寄る事も可能だと俺は喜んだ。ロジーは最初それらを使うのを嫌がったが、ロジーにも一度食べさせてみると眼鏡が光った。美味しいって反応だ。ロジーは顔よりも眼鏡に感情が出るみたいだ。


「それではいってらっしゃいませ」
リーシュのところで働くようになって初めての登校だ。校門の前で車から降りる。リーシュの後に俺が降りると周囲のヤツがざわつくのがわかった。俺は気にしないで歩く。
ふと、リーシュの機嫌がいい事に気づく。どうした?と声をかける
「これからはずっとシャズさんと一緒に登校できるんだって思うと嬉しいんです」
なんて言った。俺は恥ずかしくなったのを隠す為にからかう。
「明日からは自転車で通う」
「おっ、シャズ!?おまっ
「ええっ!?そんなぁ!また1人にしないで下さい!寂しいです!」
「お前ウサギだもんなぁ。マジで一匹にしたら死にそう・・・」
「匹ってなんですか!それにウサギは寂しくて死んだりしません!」
「あ、やっぱりウサギの自覚あんの?やっぱりそのカチューシャのリボンは耳だったか~うんうん」
「シャズさんヒドイです!」
「ハイハイ俺はヒドイんだよ。今日の夕飯はピーマンづくしにしようっと」
「ひ、ヒドイです!私が苦手なの知ってて!」
「好き嫌いはよくないよな~。アレルギー持ってるワケでもないんだし」
「ピーマンのアレルギーなんて聞いた事ありません!」
「お前が聞いた事ないだけで苦しんでる人はいるかもしれないだろ?それはアレルギーの人に対して失礼だろ。謝れよ」
「ご、ごめんなさい」
「いや、俺は食い物のアレルギー。ピーマンもないけど?」
「し、シャズさんが謝れって言うから!」
「俺に謝られても困るし」
「シャズさんに謝ってるワケじゃありません!」
「ハイハイ。ん?よぉビトリーよっす!」
俺はリーシュの向こうに立ち尽くしてるビトリーを見つけて声をかけた。
「おはようございます」
リーシュはお辞儀した。こういう時は育ちの良さが出る。律儀だと関心する。
「よ、よぉ。はよ・・」
「どうした?ボーっとして」
「ど、どうしたはコッチのセリフだろ。お前なんで彼女と一緒にいるんだよ!」
「あーっ実はなぁ」
キーンコーンカーンコーン
予鈴のチャイムが鳴る。話している時間は無さそうだ。
「予鈴だ。後でな」
「お昼一緒に食べたいです!」
「じゃあ中庭に来い」
「はい!」
リーシュは嬉しそうに笑った。


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