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つづき
しおりを挟む「外暑いからなぁ」
だるそうに呟く葵は、夏の間あまり外に出たがらない。
本当にコンクリートの熱で火傷してしまうのではないかと、何だか心配にもなる。
「そう言うことだから、つまらなくてもお留守番お願いね。その代わりって訳じゃないけど、昨日の夜にプリン作っといたから、食べる?」
お皿の上のものを丁度よく食べ終わっていた葵の顔が、にんまりとした。
冷蔵庫の奥に隠したプリンを取り出して、葵の笑い声を聞きながら甘いプリンを食べる。
毎日こうして食事をして、他愛もない話をする。
#__・__#大概、私がべらべらと話して葵がけらけらと笑う。
以前、彼はこう言っていた。
「綾女ちゃんの話は面白いよ。色んな話をしてくれるから。」
葵は無口な訳ではないが、あまり自分の話はしない。
したくないのか、しないだけなのかは良く分からないけれど、私の話は楽しそうに聞いていてくれた。
本当は、葵の事をあまり知らない。
目の前で美味しそうにプリンを食べているこの男の事を、私は良く知らない。
歳は私と同じくらいに見えるし、よく鼻歌を口ずさみ、笑うとステンドグラスのように周りに虹が出来る。
そんな事しか知らなかった。
けれどそれだけ知っていれば、充分な気もする。
「今日も、ありがとう。ごちそうさまでした」
その一言で、私は笑顔になる。
葵は短い中に、沢山の思いを詰めて答えてくれる。
私に伝えてくれる言葉には、いつも優しさと温かさがあった。
こうやって心を満たしてくれる言葉には、ちゃんと意味があるのだと、良く考える。
程よく外が夜になったころで、近くの公園へと出かけた。
葵の栗色の髪が、器用に夏の風と絡まっているのが見える。
葵はこんな静かな風の中で、鼻歌を奏でるのがとても似合っていた。
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