霊媒体質 九条遙加の厄難 ー学生時代編ー

柿村 呼波

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第1章 高校編

ブルーローズ1

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 期末試験も無事終わり、部室がわりに使っている第2音楽準備室に集まっていたコンジャンクションのメンバーと軽音楽部部長であり自称プロデューサーの如月はバンドメンバーにある提案をしていた。他の部員たちには試験終了後の開放感から皆帰宅している。

「バンド名を変えた方がいいと思うのだけど、みんなはどう思う?」

唐突に告げられたその言葉に、皆一瞬唖然としていた。遙加以外はこう思っていた。
『このままでいいんじゃないか』
『いや、このままでいいだろう』
『いやいや、このままで問題ないよね』

それは、バンド名を変える必要性を感じていないことに他ならない。

3人がコンジャンクションと名付けたのにはきちんとした意味があった。
それは偶然ネットで見かけた占星術の占い用語を見て決めた。だからと言って決して3人が占いを信じているわけではない。
中でも気に入ったのがこのコンジャンクションの意味だった。
『2つもしくは複数の天体が接触して力が重なり合うこと』を用いて
『3人の演奏が重なり合い心地よいハーモニーを紡げるように』
という思いからつけられた名前だった。
だから3人はこのバンド名でいいと思っていたのだ。

そんな彼らの気持ちを気にも留めないプロデューサー如月は全く違うことを考えていた。彼女はボーカルである九条遙加のためのバンド名としてある名前を考えていた。
そして宣言されたのがこの名前だった。



如月はなぜこのバンド名にした方がいいのかを淡々と話しだした。
ブルーローズとはその名の通り青い薔薇のことを指していること。
以前青いバラは人工物としてしか作ることができないことから花言葉も『不可能・存在しない』だったこと。しかし、近年本当に青いバラが誕生したことにより花言葉が『夢が叶う・神の祝福』へと変わったことを。
それから遙加の歌声を神の祝福のようだと勝手に思っている如月はバンド名を『ブルーローズ』にしたいと提案したのだ。

その話を聞いて3人は思った。
『夢見る乙女でもなければ花言葉なんて言わない気もするけど、如月が夢見る乙女だとしたら……いや、考えるのはやめておこう、怖すぎる』と。

そこで待ったをかけたのは他でもない九条遙加だった。
何でも従兄妹がオーナーをしているレストランの名前が「ブルーローズ」だというのだ。

「部長、他に候補はないの?」

「ないわ。私が検討に検討を重ねてこれにしたのだから。他の名前にするつもりは1nmナノメートルもないわ」

「部長、そこ1ミリでよくない? それにそんなにこのバンド名じゃないと駄目なの?」

「そうよ、他には考えられないわ」

すると今まで黙って話を聞いていただけの男子達からこんな声が上がった。

「ブルーローズって響き的にどうかと思ったけど、面白いんじゃないかな」

「ああ、存在しなかったものが神の祝福まで得られるようになったんだろう。いいんじゃね」

「遙加だけじゃなくて俺たちにも合ってるからいいと思うよ。インストバンドでボーカルが居なかったバンドにボーカルを迎えられたんだからさ」

そもそも彼らのバンドがインストバンドだったのは、単にバンドに合うボーカリストが居なかっただけの理由からだった。なので彼ら的にもレベルの高いボーカリストが入ったことはバンドの幅が広がる喜ばしい出来事だったのだ。

遙加は3人の意見を信じられないとでも言いたげに彼らを見ていた。

「本当にいいの? みんな」

「「「いいぜ(よ)」」」
「いいに決まっているじゃない」

なぜか言い出しっぺの如月まで返事をしていた。

「でもその前に、従兄妹にその名前使っていいか聞いてくる。だってその名前は現在進行形でレストランの名前として使われているから」

「私も一緒に行くわ」

「いやー、私一人だけで大丈夫だと思うんだけど……」

「だめよ、遙加一人で行かせて『やっぱりだめだった』とか言われたくないもの」

「そうだな、部長が一緒に行った方が説得力あるだろうな。九条だけじゃ心配だしな」

「じゃあ、俺も一緒に……」

達也が行くと言おうとしたところで修平に言葉を遮られた。

「いや、お前はいい。如月に任せようぜ」

「いやでも俺一緒にいないと」

「だから大丈夫だって、なっ如月部長様」

「そっそうね、大丈夫よ」
『多分』とは言わないでおいた。それは如月が何を企んでいるらしい大平に、後でこっそり聞いてみることにしたからだった。



こうして、遙加と如月の二人はレストラン・ブルーローズのオーナーである九条薫に会いに行くことになった。


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