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第1章 高校編
赤い祠3
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翌日、漏れなく全員寝不足で眠い目を擦りながら食堂に集まると如月から話があった。
「結局昨日は何もできなかったから、まず午前中はスタジオで練習。午後は私の素敵な提案を発表するのでよろしくね」
「自分で素敵って……流石部長様。全く何様なんだか」
すかさず大平のツッコミが入る。
「お嬢様だろう」
律儀な烏星は朝から疲れた顔で答えた。
「スタジオって言うけど大きな音出して大丈夫なの? きっと爆音になると思うけど屋敷の人に迷惑にならないかな」
秋月航平が心配そうに聞いてきた。
「大丈夫よ、レコーティングスタジオ並みの完全防音室だから心配しないで」
「この屋敷にはどれだけの装備があるんだよ。ここって別荘だろ。しかし如月家はいつも別荘で何してるんだ?」
「別に如月の親族のために作った訳じゃないわ。今回の私達の合宿のために作ったの。当然でしょ」
『『『『うゎー……部長の先走り怖い、今度はなに企んでるんだよ』』』』
と他4人の意見は一致していた。
すると大平が皆を代表したように質問した。
「わざわざそこまでする必要はないんじゃないかと思うのだが?」
「そのことに関しても、練習終わってランチしてから話すから楽しみにしていて」
「楽しみって、楽しいのは如月だけだろうが……」
一体全体如月が何をしようとしているのか、この時点でそれを理解していた者は1人もいなかった。
スタジオ練習は如月が隣の控室で見ている事を除けば、とても快適な環境で演奏できた。昼食を取った後に5人はまたスタジオへ向かった。秘密の話をするにはこの場所が一番適しているからだと如月は言う。中に入るとそれぞれが自由にいつものポジションに着くと漸く如月の話が始まった。
「突然だけれど、みんなはプロになる気はあるかしら、勿論このメンバーで」
その言葉に一同目を見開いた。するとまず大平が答えた。
「それはなれるものなら成りたいさ」
それに烏星と秋月も続いた。
「俺もそれは一緒だな」
「成りたいけど、どうしてそんなこと言うのさ、部長」
「どうしてだと思う。ところで遙加はどうなの」
「うーん、正直今までそんなこと考えたこともなかった」
「じゃあ、考えてみてよ」
するとほんの一瞬考えた様子の遙加が答えた。本当に考えたのだろうかこの娘は。
「そうだなぁ……歌うのは楽しいけど、それを仕事にして良いのかなって」
「どうしてそう思うの」
『この娘、自分の才能分かってないのかしら』如月は言葉こそ出さなかったが表情には出ていたのだろう。他の3人も同意したように小さく頷いていた。もちろん遙加だけが気付いてない。
「だってもし仮に1曲売れたとしても後が続くのかどうか分からないでしょ」
「それはやり方次第でいかようにもなるわ。だから私がプロデュースするのよ」
「それって決定事項なのか、如月」
大平が言うと男子2名も大きく頷いた。
「あなた達、プロになることより私がプロデュースすることの方が気になるわけ」
「まあ、俺達だったら多分プロになってもそこそこいい線までいけると思ってる。音楽的にもルックス的にも問題無いしな」
「また随分と自信だけはある様ね」
「まあね。それでだ。如月がプロデュースするって言うけどこれからどうして行くつもりなんだ。それを話すために今回わざわざここで合宿してるんだろ」
「大平は話が早いわね。そう、あなた達を流行り物や一過性の流れ星のように一瞬で終わらせないためにもそれぞれ音楽や他のことを大学で学んで欲しいの。まず遙加は音大の声楽科に入ってもらうから勉強も手を抜かないでね。できれば作詞や作曲もできるといいわね。曲が無理なら詩だけでも書いた方がいいわ。大平君と秋月君、烏星君の3人は作曲とアレンジができるようにして欲しいの。曲はその人の個性が出るから3人のそれぞれいいところを伸ばして欲しいのよ。それから経済学や経営学なんかを学ぶのも面白いかもね。今って他科を学べるシステムがあるから利用する手は無いわよね。どうかしら」
「そうだな、音楽で食ってくために学ぶのは面白そうだな。曲が作れれば実入りもいいしな」
「そうでしょ。ネットを使ってファンを増やすのも今流行りでいいけど、自分を磨けば今よりもっといいものを作れると思うの、あなた達ならね。そして私はマネージメント力をつけると共に、法律も学ぼうと思っているの。会社を作った後、悪い大人に騙されないようにね」
「今、会社を作るって言ったか」
「言ったわよ、あなた達をプロデュースしてマネジメントするための会社をね。お金のことなら気にしないで。このために投資で貯めたお金があるから。その分あなた達にトップアーティストになって貰って、ガンガン稼いでもらうから。期待しているわよ!」
「じゃ、その期待に応えられるようにまずできることから始めますか。航平と達也はどうする?」
「面白そうだからやってみる価値はあるよね」
「そうだな、可能性は可能性のまま終わらせちゃつまんないよな。それに遙加ともバンド仲間として一緒にいられるし」
やはりまだまだ傷心中の達也であった。
「烏星くん、仲間は遙加だけじゃないからね。私達5人が仲間なんだよ。私は演奏はしないけど、その分マネージメントは任せておいて。遙加をライブハウスの歌姫なんかじゃ終わらせないからね。もっと多くの人に遙加の歌を聞いて欲しいのよ。今は瞬時に世界中の人に聞いてもらえる時代になったのだから」
「俺たちの演奏も如月にそれくらい言わせるくらい上手くなってやるよ、な」
そう言って大平は烏星と秋月の方を見た。
「そうだな」
「そうだね」
遙加はうんと言った覚えはないのだが、どうにも今更断れない流れになってしまった。しかし変なところでポジティブな遙加はせっかくだから流れに乗ることにしたようだ。
「そうだね。みんな、これからもよろしく」
こうして、4人+1人はプロを目指してまず有名音大に入るため受験勉強を始めることになった。高2の今から始めれば難関大学の受験に間に合うだろうことを見越した如月京香に、まんまと乗せられて。
「結局昨日は何もできなかったから、まず午前中はスタジオで練習。午後は私の素敵な提案を発表するのでよろしくね」
「自分で素敵って……流石部長様。全く何様なんだか」
すかさず大平のツッコミが入る。
「お嬢様だろう」
律儀な烏星は朝から疲れた顔で答えた。
「スタジオって言うけど大きな音出して大丈夫なの? きっと爆音になると思うけど屋敷の人に迷惑にならないかな」
秋月航平が心配そうに聞いてきた。
「大丈夫よ、レコーティングスタジオ並みの完全防音室だから心配しないで」
「この屋敷にはどれだけの装備があるんだよ。ここって別荘だろ。しかし如月家はいつも別荘で何してるんだ?」
「別に如月の親族のために作った訳じゃないわ。今回の私達の合宿のために作ったの。当然でしょ」
『『『『うゎー……部長の先走り怖い、今度はなに企んでるんだよ』』』』
と他4人の意見は一致していた。
すると大平が皆を代表したように質問した。
「わざわざそこまでする必要はないんじゃないかと思うのだが?」
「そのことに関しても、練習終わってランチしてから話すから楽しみにしていて」
「楽しみって、楽しいのは如月だけだろうが……」
一体全体如月が何をしようとしているのか、この時点でそれを理解していた者は1人もいなかった。
スタジオ練習は如月が隣の控室で見ている事を除けば、とても快適な環境で演奏できた。昼食を取った後に5人はまたスタジオへ向かった。秘密の話をするにはこの場所が一番適しているからだと如月は言う。中に入るとそれぞれが自由にいつものポジションに着くと漸く如月の話が始まった。
「突然だけれど、みんなはプロになる気はあるかしら、勿論このメンバーで」
その言葉に一同目を見開いた。するとまず大平が答えた。
「それはなれるものなら成りたいさ」
それに烏星と秋月も続いた。
「俺もそれは一緒だな」
「成りたいけど、どうしてそんなこと言うのさ、部長」
「どうしてだと思う。ところで遙加はどうなの」
「うーん、正直今までそんなこと考えたこともなかった」
「じゃあ、考えてみてよ」
するとほんの一瞬考えた様子の遙加が答えた。本当に考えたのだろうかこの娘は。
「そうだなぁ……歌うのは楽しいけど、それを仕事にして良いのかなって」
「どうしてそう思うの」
『この娘、自分の才能分かってないのかしら』如月は言葉こそ出さなかったが表情には出ていたのだろう。他の3人も同意したように小さく頷いていた。もちろん遙加だけが気付いてない。
「だってもし仮に1曲売れたとしても後が続くのかどうか分からないでしょ」
「それはやり方次第でいかようにもなるわ。だから私がプロデュースするのよ」
「それって決定事項なのか、如月」
大平が言うと男子2名も大きく頷いた。
「あなた達、プロになることより私がプロデュースすることの方が気になるわけ」
「まあ、俺達だったら多分プロになってもそこそこいい線までいけると思ってる。音楽的にもルックス的にも問題無いしな」
「また随分と自信だけはある様ね」
「まあね。それでだ。如月がプロデュースするって言うけどこれからどうして行くつもりなんだ。それを話すために今回わざわざここで合宿してるんだろ」
「大平は話が早いわね。そう、あなた達を流行り物や一過性の流れ星のように一瞬で終わらせないためにもそれぞれ音楽や他のことを大学で学んで欲しいの。まず遙加は音大の声楽科に入ってもらうから勉強も手を抜かないでね。できれば作詞や作曲もできるといいわね。曲が無理なら詩だけでも書いた方がいいわ。大平君と秋月君、烏星君の3人は作曲とアレンジができるようにして欲しいの。曲はその人の個性が出るから3人のそれぞれいいところを伸ばして欲しいのよ。それから経済学や経営学なんかを学ぶのも面白いかもね。今って他科を学べるシステムがあるから利用する手は無いわよね。どうかしら」
「そうだな、音楽で食ってくために学ぶのは面白そうだな。曲が作れれば実入りもいいしな」
「そうでしょ。ネットを使ってファンを増やすのも今流行りでいいけど、自分を磨けば今よりもっといいものを作れると思うの、あなた達ならね。そして私はマネージメント力をつけると共に、法律も学ぼうと思っているの。会社を作った後、悪い大人に騙されないようにね」
「今、会社を作るって言ったか」
「言ったわよ、あなた達をプロデュースしてマネジメントするための会社をね。お金のことなら気にしないで。このために投資で貯めたお金があるから。その分あなた達にトップアーティストになって貰って、ガンガン稼いでもらうから。期待しているわよ!」
「じゃ、その期待に応えられるようにまずできることから始めますか。航平と達也はどうする?」
「面白そうだからやってみる価値はあるよね」
「そうだな、可能性は可能性のまま終わらせちゃつまんないよな。それに遙加ともバンド仲間として一緒にいられるし」
やはりまだまだ傷心中の達也であった。
「烏星くん、仲間は遙加だけじゃないからね。私達5人が仲間なんだよ。私は演奏はしないけど、その分マネージメントは任せておいて。遙加をライブハウスの歌姫なんかじゃ終わらせないからね。もっと多くの人に遙加の歌を聞いて欲しいのよ。今は瞬時に世界中の人に聞いてもらえる時代になったのだから」
「俺たちの演奏も如月にそれくらい言わせるくらい上手くなってやるよ、な」
そう言って大平は烏星と秋月の方を見た。
「そうだな」
「そうだね」
遙加はうんと言った覚えはないのだが、どうにも今更断れない流れになってしまった。しかし変なところでポジティブな遙加はせっかくだから流れに乗ることにしたようだ。
「そうだね。みんな、これからもよろしく」
こうして、4人+1人はプロを目指してまず有名音大に入るため受験勉強を始めることになった。高2の今から始めれば難関大学の受験に間に合うだろうことを見越した如月京香に、まんまと乗せられて。
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