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第1章 高校編
赤い祠4
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翌日、合宿3日目も昨日と同様午前中は練習、午後は軽いミーティングを行った。
午後のミーティングで、メンバーは如月の発言にまた驚かされてしまった。
「今、バイトをしているのって烏星君と秋月君、それと遙加の3人だよね」
「そうだな、俺バイトはしてないぜ」
大平修平だけはバイトをしていなかった。お坊ちゃんなので。
「今ってスタジオ借りて練習しているでしょ。9月までには私の家の敷地内にスタジオが完成する予定なの。完成したらみんなにはそこで練習してもらおうと思うのだけれど、いいわよね。そうすればその分バイトを減らせないかと思って」
連日の爆弾発言に4人は只々驚くだけだった。
「逆に、いいのか? それ後からなんか請求されたりしないよな」
「いいに決まっているし何も請求しないわよ、失礼な。それでどうなの3人は」
「私は薫に相談してみるけど、辞めたくはないかな」
「俺は今年いっぱいでやめようと思ってる。その分勉強する時間に当てたいし」
「僕も達也と同じ感じかな」
「じゃあ、決まりね。9月からの練習はそのスタジオでするわよ、次のライブに向けて」
バイト組の3人は思った。
『金持ちの考えることはよく分からない』と。
大平修平はこう思った。
『くそっ、先を越されたか』と。
その後、2時間ほど練習をしてその日は終了した。と4人は思っていたのだが実は如月はメンバーには黙ってコッソリと動画の撮影と録音をしていた。如月曰く『将来の特典のために』だそうだ。どうやら既に彼女の中ではプロデビューした後のことまで頭の中で思い描かれているのだった。なんとも抜け目のないことだ。
そして翌日。最終日である4日目はゆっくり朝食を取った後、近くにある牧場に行くことになった。そこは小動物とふれあえてアーチェリーができるだけでなく、レストランではジンギスカンまで食べられるという場所だった。それに加えて新鮮な牛乳を使ったアイスクリームは絶品だと評判だ。
牧場までは高杉が案内してくれた。この前のSUVよりも一回り大きいワンボックスに荷物を積み込むと、5人を乗せて連れて行ってくれた。
仔牛とふれあい昼食にジンギスカンと忘れずにアイスクリームも食べて満足した5人は、高杉に駅まで送って貰った。途中あの赤い祠のある橋の付近を通ったとき、如月は下に流れる川を見ていた。流石に車の中にいるので刀を打ち合う音は聞こえないが少し黒い靄のようなものが見えた。隣に座っている遙加も何か感じるのか少し顔を歪めていた。やはり相当な怨念が川の近くにまだ渦巻いているようだ。
それからは特に変わった様子はなく10分弱で駅に到着した。お世話になった高杉に皆がお礼を言うと高杉は優しく微笑み5人を見送った。そして一行が帰ろうとした時だった。長身で長い黒髪の男性が前から歩いてきた。その姿を見た遙加が急にその人物の元へと走り出した。
「薫、ありがとう。本当に来てくれたんだ」
「私が遙加に嘘をつく訳がないだろう」
その様子を見て驚く男子を気にも留めず、如月はその人物に声をかけた。
「九条さんお久し振りです。この前の件ありがとうございました。」
「こんにちは。もう私の方は仕上がっているから後でデータを送るよ」
「もう出来たのですか? 流石プロは違いますね。データを頂けるのを楽しみにしています」
「いやいや、気にしないで仕事なんだから。後ろにいるのはバンドのメンバーかな?」
「はい、そうです」
「九条薫です。遙加がいつもお世話になっています」
「大平修平です。いえ、こちらこそお世話になってます」
「秋月航平です」
「…………烏星達也です。先日は申し訳ありませんでした」
「うん? 何かあったかな?」
九条はわざと惚けてみせた。
「薫、レストランのみんなは?」
「ああ、荷物も多いから別の車で先に帰ったよ。さあ遙加、帰ろうか」
「うん!」
遙は薫に返事をすると、みんなの方へと体を向けた。
「部長、今回も色々とありがとう、それじゃまたね。みんなもまたね」
「九条さん、ありがとうございました」
「悪いね、あの車には5人も乗せることはできないから遥加だけ連れて帰るよ」
そう言って2人は車に乗り込むとあっという間に高速道路のある方向へと走っていった。
「あれが九条薫、だよな。如月はあの人に何を頼んでたんだ? それとどうして彼女を迎えにきたんだよ」
「ああそれは、以前この近くの別荘を貸し切って知り合いのウエディングパーティーをした時にレストランごと出張したんだそうよ。その縁で仕事の依頼が来るようになったんだって。今日はその仕事の帰りらしいわ」
「わざわざ合宿に合わせたって訳じゃないんだろうけど、それでもタイミング良すぎだろう」
「まあ細かいことはいいじゃない、遙加が嬉しそうだったのだから。それと頼んでいたのはあなた達の曲よ。九条さんて有名な作曲家なのよ。聞いたことない?」
「そういえば聞いたことあるような…… ピアニストで作曲家の九条ってまさかあの人のことだったのか」
「そうよ、何を今更。てっきり大平君は知っているのだと思っていたのに。まあでも九条さんは遙加のための曲だって言ったらすぐに快諾してくれたわよ」
「如月、お前抜け目ないな……。まさかあの人まで使うとは……」
「任せて、使えるコネは使える時に使わないとね」
「お前がプロデューサーでよかったよ、本当に……」
会話を聞いていた烏星と秋月はまたしても大平の言葉に大きく大きく頷くのだった。
午後のミーティングで、メンバーは如月の発言にまた驚かされてしまった。
「今、バイトをしているのって烏星君と秋月君、それと遙加の3人だよね」
「そうだな、俺バイトはしてないぜ」
大平修平だけはバイトをしていなかった。お坊ちゃんなので。
「今ってスタジオ借りて練習しているでしょ。9月までには私の家の敷地内にスタジオが完成する予定なの。完成したらみんなにはそこで練習してもらおうと思うのだけれど、いいわよね。そうすればその分バイトを減らせないかと思って」
連日の爆弾発言に4人は只々驚くだけだった。
「逆に、いいのか? それ後からなんか請求されたりしないよな」
「いいに決まっているし何も請求しないわよ、失礼な。それでどうなの3人は」
「私は薫に相談してみるけど、辞めたくはないかな」
「俺は今年いっぱいでやめようと思ってる。その分勉強する時間に当てたいし」
「僕も達也と同じ感じかな」
「じゃあ、決まりね。9月からの練習はそのスタジオでするわよ、次のライブに向けて」
バイト組の3人は思った。
『金持ちの考えることはよく分からない』と。
大平修平はこう思った。
『くそっ、先を越されたか』と。
その後、2時間ほど練習をしてその日は終了した。と4人は思っていたのだが実は如月はメンバーには黙ってコッソリと動画の撮影と録音をしていた。如月曰く『将来の特典のために』だそうだ。どうやら既に彼女の中ではプロデビューした後のことまで頭の中で思い描かれているのだった。なんとも抜け目のないことだ。
そして翌日。最終日である4日目はゆっくり朝食を取った後、近くにある牧場に行くことになった。そこは小動物とふれあえてアーチェリーができるだけでなく、レストランではジンギスカンまで食べられるという場所だった。それに加えて新鮮な牛乳を使ったアイスクリームは絶品だと評判だ。
牧場までは高杉が案内してくれた。この前のSUVよりも一回り大きいワンボックスに荷物を積み込むと、5人を乗せて連れて行ってくれた。
仔牛とふれあい昼食にジンギスカンと忘れずにアイスクリームも食べて満足した5人は、高杉に駅まで送って貰った。途中あの赤い祠のある橋の付近を通ったとき、如月は下に流れる川を見ていた。流石に車の中にいるので刀を打ち合う音は聞こえないが少し黒い靄のようなものが見えた。隣に座っている遙加も何か感じるのか少し顔を歪めていた。やはり相当な怨念が川の近くにまだ渦巻いているようだ。
それからは特に変わった様子はなく10分弱で駅に到着した。お世話になった高杉に皆がお礼を言うと高杉は優しく微笑み5人を見送った。そして一行が帰ろうとした時だった。長身で長い黒髪の男性が前から歩いてきた。その姿を見た遙加が急にその人物の元へと走り出した。
「薫、ありがとう。本当に来てくれたんだ」
「私が遙加に嘘をつく訳がないだろう」
その様子を見て驚く男子を気にも留めず、如月はその人物に声をかけた。
「九条さんお久し振りです。この前の件ありがとうございました。」
「こんにちは。もう私の方は仕上がっているから後でデータを送るよ」
「もう出来たのですか? 流石プロは違いますね。データを頂けるのを楽しみにしています」
「いやいや、気にしないで仕事なんだから。後ろにいるのはバンドのメンバーかな?」
「はい、そうです」
「九条薫です。遙加がいつもお世話になっています」
「大平修平です。いえ、こちらこそお世話になってます」
「秋月航平です」
「…………烏星達也です。先日は申し訳ありませんでした」
「うん? 何かあったかな?」
九条はわざと惚けてみせた。
「薫、レストランのみんなは?」
「ああ、荷物も多いから別の車で先に帰ったよ。さあ遙加、帰ろうか」
「うん!」
遙は薫に返事をすると、みんなの方へと体を向けた。
「部長、今回も色々とありがとう、それじゃまたね。みんなもまたね」
「九条さん、ありがとうございました」
「悪いね、あの車には5人も乗せることはできないから遥加だけ連れて帰るよ」
そう言って2人は車に乗り込むとあっという間に高速道路のある方向へと走っていった。
「あれが九条薫、だよな。如月はあの人に何を頼んでたんだ? それとどうして彼女を迎えにきたんだよ」
「ああそれは、以前この近くの別荘を貸し切って知り合いのウエディングパーティーをした時にレストランごと出張したんだそうよ。その縁で仕事の依頼が来るようになったんだって。今日はその仕事の帰りらしいわ」
「わざわざ合宿に合わせたって訳じゃないんだろうけど、それでもタイミング良すぎだろう」
「まあ細かいことはいいじゃない、遙加が嬉しそうだったのだから。それと頼んでいたのはあなた達の曲よ。九条さんて有名な作曲家なのよ。聞いたことない?」
「そういえば聞いたことあるような…… ピアニストで作曲家の九条ってまさかあの人のことだったのか」
「そうよ、何を今更。てっきり大平君は知っているのだと思っていたのに。まあでも九条さんは遙加のための曲だって言ったらすぐに快諾してくれたわよ」
「如月、お前抜け目ないな……。まさかあの人まで使うとは……」
「任せて、使えるコネは使える時に使わないとね」
「お前がプロデューサーでよかったよ、本当に……」
会話を聞いていた烏星と秋月はまたしても大平の言葉に大きく大きく頷くのだった。
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