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第1章 高校編
無自覚
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時間は少し遡り、ラストデイズなどと一緒にブルーローズがクリスマスライブに出演していた12月24日。
速水玲那はお気に入りのバンドであるラストデイズが出演すると聞いて急遽クリスマスライブに行くことにした。前売りチケットはほぼ完売したらしく、当日券が少しだけあるということを聞き急いで会場へと向かったのだ。
その日、速水玲那はクリスマスだというのに朝早くからモデルの仕事をしていた。とにかく早く終わらせてライブに間に合わなければいけないと、そのことしか考えていなかった。悲しいかなこの業界の仕事はクリスマスもお正月も関係ないのだが、先輩モデルの代役というのが彼女のプライドを傷つけていた。本来なら自分を売り込むまたとないチャンスなのに、それを活かせないどころか休憩中にその不満が顔に出てしまっていた。そんな小さなところがモデルとしての意識の低さを物語っていた。人はいつどこで見られているか分からないのだ。これではいくら事務所が売り込もうとしても難しいだろう。
それにモデルというのは洋服ならその洋服をいかに良く見せるかが仕事であって、自分を見せるのはその副産物のようなものだ。確かに速水玲那は綺麗だが、芸能界と呼ばれる世界にはそのレベルの美しさを持つ者などごまんといる。皆、埋もれないようにするために必死の努力をしているのを彼女は知ろうとはしない。いや、傲慢な彼女は自分には必要ないと思っているのかもしれない。
撮影中は笑顔を保てたお陰で仕事は予定通りに終わることができた。クリスマスということもあり、皆大切な人と過ごすために撮影現場はすぐに撤収された。誰にも引き止められることなく速水玲那はその場を離れた。
撮影はスタジオで行われていたので速水玲那は外に出て初めて雪が舞っていることを知った。積もるほどではなくチラチラと舞っているだけだがクリスマス気分にはもってこいのシチュエーション。だからと言って1人でいる人間には全く関係ないどころか底冷えした寒さが身に染みるだけだった。大学は推薦入学で既に決まっているので卒業までは気楽に過ごせる。しかし世の中はクリスマスイブで浮かれているというのに恋人と呼べるような存在はいない。バンドのボーカルをしていた頃なら恋人はいなくても周りにはチヤホヤしてくれる男達もいたし、バンド仲間も男だったので少しくらいの我儘だったら全く問題はなかった、と彼女は思っていた。
速水玲那は我儘を言っても問題なかったと思っているが、周りの認識は違った。バンドのリーダーはメンバーにこう話していた。
「今はとにかく俺たちの存在を知ってもらうために玲那にいなくなられたら困るからもう少しだけ玲那の我儘に付き合ってくれ、悪い」
こんなことを言われているとは知らない速水玲那は我儘放題だった。練習中に喉が渇いた時に飲み物がないから買って来て今すぐ! ということなどは日常茶飯事だった。落ち着いて練習できないメンバー達の不満は爆発寸前まで溜まっていた。
丁度その頃、一緒にライブに出ていた他校のボーカルが歌姫と呼ばれるようになった。それからどういう訳かバンドメンバーが速水玲那の我儘を聞かなくなるどころか、目指す音楽が違うなどと言って口論が絶えなくなってきたのだ。そして気の強い速水玲那は売り言葉に買い言葉でバンドを辞めることになったのだった。
それからというもの、今までチヤホヤしていた者達は水を引いたように姿を見せなくなった。元から仲の良い友人などいなかった彼女は自然と1人で行動することが増えてしまった。
彼女はその原因が歌姫と呼ばれる遙加にあると勝手に思い込んだ。遙加さえ出てこなければ今でもバンドのボーカルとして自分こそが歌姫だったのにと思うようになって行った。
その後、速水玲那はスカウトされてモデルの仕事を始めてもライブハウスの高揚感が忘れられず密かにまたボーカルに戻れないかと考えていた。彼女は自分の容姿に過剰な自信を持っていたのでいつかまた必ず辞めたバンドから『ボーカルに戻ってこないか』と声がかかると思い込んでいた。彼女はボーカルがルックスよりも歌で人を惹きつけるカリスマ性が必要だということを分かっていなかったのだ。
月日ばかりが流れても、いつまで経っても速水玲那にはバンド復帰の声はかからない。彼女はそれもこれも全部九条遙加のせいだと逆恨みするようになっていった。歪んだ速水玲那の心はそのうち思い通りにならないことは何もかも遙加のせいにするようになっていった。
そして12月24日、仕事が終わった速水玲那がクリスマスライブ会場に入場し少しすると、ブルーローズがステージに上がっているのが目に入った。マイクの前に立つ九条遙加に気付いた速水玲那は憎しみを込めて遙加を睨みつけた。
速水玲那はブルーローズの演奏中に周りに知り合いがいないかと探してみたが客席は暗くて見つける事はできなかった。そのことにイラついた速水玲那はそのことすら遙加のせいだと思い込みさらに憎しみを募らせていったのだ。その負のエネルギーは凄まじくとうとう生き霊をも生み出してしまうほどであった。
速水玲那はお気に入りのバンドであるラストデイズが出演すると聞いて急遽クリスマスライブに行くことにした。前売りチケットはほぼ完売したらしく、当日券が少しだけあるということを聞き急いで会場へと向かったのだ。
その日、速水玲那はクリスマスだというのに朝早くからモデルの仕事をしていた。とにかく早く終わらせてライブに間に合わなければいけないと、そのことしか考えていなかった。悲しいかなこの業界の仕事はクリスマスもお正月も関係ないのだが、先輩モデルの代役というのが彼女のプライドを傷つけていた。本来なら自分を売り込むまたとないチャンスなのに、それを活かせないどころか休憩中にその不満が顔に出てしまっていた。そんな小さなところがモデルとしての意識の低さを物語っていた。人はいつどこで見られているか分からないのだ。これではいくら事務所が売り込もうとしても難しいだろう。
それにモデルというのは洋服ならその洋服をいかに良く見せるかが仕事であって、自分を見せるのはその副産物のようなものだ。確かに速水玲那は綺麗だが、芸能界と呼ばれる世界にはそのレベルの美しさを持つ者などごまんといる。皆、埋もれないようにするために必死の努力をしているのを彼女は知ろうとはしない。いや、傲慢な彼女は自分には必要ないと思っているのかもしれない。
撮影中は笑顔を保てたお陰で仕事は予定通りに終わることができた。クリスマスということもあり、皆大切な人と過ごすために撮影現場はすぐに撤収された。誰にも引き止められることなく速水玲那はその場を離れた。
撮影はスタジオで行われていたので速水玲那は外に出て初めて雪が舞っていることを知った。積もるほどではなくチラチラと舞っているだけだがクリスマス気分にはもってこいのシチュエーション。だからと言って1人でいる人間には全く関係ないどころか底冷えした寒さが身に染みるだけだった。大学は推薦入学で既に決まっているので卒業までは気楽に過ごせる。しかし世の中はクリスマスイブで浮かれているというのに恋人と呼べるような存在はいない。バンドのボーカルをしていた頃なら恋人はいなくても周りにはチヤホヤしてくれる男達もいたし、バンド仲間も男だったので少しくらいの我儘だったら全く問題はなかった、と彼女は思っていた。
速水玲那は我儘を言っても問題なかったと思っているが、周りの認識は違った。バンドのリーダーはメンバーにこう話していた。
「今はとにかく俺たちの存在を知ってもらうために玲那にいなくなられたら困るからもう少しだけ玲那の我儘に付き合ってくれ、悪い」
こんなことを言われているとは知らない速水玲那は我儘放題だった。練習中に喉が渇いた時に飲み物がないから買って来て今すぐ! ということなどは日常茶飯事だった。落ち着いて練習できないメンバー達の不満は爆発寸前まで溜まっていた。
丁度その頃、一緒にライブに出ていた他校のボーカルが歌姫と呼ばれるようになった。それからどういう訳かバンドメンバーが速水玲那の我儘を聞かなくなるどころか、目指す音楽が違うなどと言って口論が絶えなくなってきたのだ。そして気の強い速水玲那は売り言葉に買い言葉でバンドを辞めることになったのだった。
それからというもの、今までチヤホヤしていた者達は水を引いたように姿を見せなくなった。元から仲の良い友人などいなかった彼女は自然と1人で行動することが増えてしまった。
彼女はその原因が歌姫と呼ばれる遙加にあると勝手に思い込んだ。遙加さえ出てこなければ今でもバンドのボーカルとして自分こそが歌姫だったのにと思うようになって行った。
その後、速水玲那はスカウトされてモデルの仕事を始めてもライブハウスの高揚感が忘れられず密かにまたボーカルに戻れないかと考えていた。彼女は自分の容姿に過剰な自信を持っていたのでいつかまた必ず辞めたバンドから『ボーカルに戻ってこないか』と声がかかると思い込んでいた。彼女はボーカルがルックスよりも歌で人を惹きつけるカリスマ性が必要だということを分かっていなかったのだ。
月日ばかりが流れても、いつまで経っても速水玲那にはバンド復帰の声はかからない。彼女はそれもこれも全部九条遙加のせいだと逆恨みするようになっていった。歪んだ速水玲那の心はそのうち思い通りにならないことは何もかも遙加のせいにするようになっていった。
そして12月24日、仕事が終わった速水玲那がクリスマスライブ会場に入場し少しすると、ブルーローズがステージに上がっているのが目に入った。マイクの前に立つ九条遙加に気付いた速水玲那は憎しみを込めて遙加を睨みつけた。
速水玲那はブルーローズの演奏中に周りに知り合いがいないかと探してみたが客席は暗くて見つける事はできなかった。そのことにイラついた速水玲那はそのことすら遙加のせいだと思い込みさらに憎しみを募らせていったのだ。その負のエネルギーは凄まじくとうとう生き霊をも生み出してしまうほどであった。
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