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第1章 高校編
気遣う電話
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受験勉強一色だった3年生も気付けばもうすぐ受験シーズンに突入していた。
遙加は自室での勉強に区切りをつけてから最近日課にしていることがある。それは夜中に誰も居ないリビングで母の作ってくれた夜食を取ることだった。遙加の母は去年まで受けていたCADの仕事を、今年は娘の受験を理由に少しセーブしていた。おかげで痩せの大食いである遙加は美味しい夜食にありつけているのだ。
日頃天然系の遙加だが勉強している時は人が変わったような集中力を発揮する。それはある意味振り切っている。例えば学校での場合はこうだ。遙加が勉強している机の前に立った誰かから至近距離で声をかけられても全く聞こえていないのだ。決して無視している訳ではないので相手が何度か声をかけてジーッと見ていると気付いたりする。そんな感じで集中するために多大なエネルギーを消費するので異常にお腹が空くのである。
そんな遙加の尋常ではない集中力は体力を消耗する。なので母の美味しい夜食を食べた後は眠気に抗えずにフカフカのソファーではなく床暖房が心地良い床の上で寝てしまう。よく考えなくても体に言い訳はないのだが若さでなんとかなっている。
そんなことを続けていたある日のこと。妙な事があった。
その日もそのままリビングで寝てしまっていた遙加だったが何かの音に起こされた。
まだ半分寝ぼけた状態で耳を澄ませるとどこからか音が聞こえた。空耳では無かったようだ。
「ジー、ジー、ジー、…………」
電話の方から音がこえたので遙加は近くに寄ってみた。すると誰もいないはずなのにまるで自動発信でもしているようにダイヤル音がしていたのだ。しかもスピーカーになっている。
なぜジー、ジー、なのかというと電話機はプッシュボタン式なのだが、ダイヤル回線で契約していたので発信音はレトロ感漂う感じになるのだ。光電話が主流の今ではかなりレアな契約だ。それよりも時代と共に固定電話の必要性はかなり薄れてきた。
だが九条家では台風や災害などで停電してもアナログ電話なら使えるから変えたくない、という父の強いこだわりが反映されている。
電話に近づいた遙加は電話機のディスプレイが光っているのに何も表示がないことを疑問に思った。その時部屋の時計を確認すると午前4時になるところだった。
遙加は少し薄気味悪くなってもう一度電話機を見るとダイヤル音はしなくなった。そしてディスプレイの光も消えてしまった。
その後は眠気に勝てなくてとにかく早くベッドに行きたい遙加は、夜食の後片付けもせずリビングの電気を消して急いで寝室へと向かった。
それから2週間後。またしても夜食を取った後眠気に勝てなかった遙加はまたポカポカと温かい床の上で寝てしまった。今日は枕がわりのクッションと近くにあった携帯用のフリースケットを掛けて寝ていた。
しばらくの間気持ちよく寝ていた遙加はまたあの音に起こされた。
「ジー、ジー、ジー、…………」
やはり電話機からその音がしていた。この前と同じように近づくと音は止まってしまった。時計を確認すると時間はやはり午前4時。
遙加の頭の中に急にこんな考えが浮かんだ。
『もしかしたら、床暖房が効いているからって床の上で寝ると疲れが取れないから起こしてくれたんじゃないかな。電話機が気を使って!』
楽天的な遙加は気遣いのある電話に感謝して自分の寝室へと向かった。
その後、2度あることは3度あるというからまた起きるのかと思っていた遙だったが、それ以降電話機が気を使ってくれることはなかった。それを残念に思うところが普通の人の感覚と少しずれている証拠だろう。
それでも遙加は相変わらずポカポカの床の上で寝るのをやめられなかった。その後電話が教えてくれなくなったのは仏の顔も3度までというように逆に電話機にまで呆れられてしまって教えてくれなくなったのかもしれない。
しかしそれは、その電話機しか知らないことである。
と言う事にしておく。
遙加は自室での勉強に区切りをつけてから最近日課にしていることがある。それは夜中に誰も居ないリビングで母の作ってくれた夜食を取ることだった。遙加の母は去年まで受けていたCADの仕事を、今年は娘の受験を理由に少しセーブしていた。おかげで痩せの大食いである遙加は美味しい夜食にありつけているのだ。
日頃天然系の遙加だが勉強している時は人が変わったような集中力を発揮する。それはある意味振り切っている。例えば学校での場合はこうだ。遙加が勉強している机の前に立った誰かから至近距離で声をかけられても全く聞こえていないのだ。決して無視している訳ではないので相手が何度か声をかけてジーッと見ていると気付いたりする。そんな感じで集中するために多大なエネルギーを消費するので異常にお腹が空くのである。
そんな遙加の尋常ではない集中力は体力を消耗する。なので母の美味しい夜食を食べた後は眠気に抗えずにフカフカのソファーではなく床暖房が心地良い床の上で寝てしまう。よく考えなくても体に言い訳はないのだが若さでなんとかなっている。
そんなことを続けていたある日のこと。妙な事があった。
その日もそのままリビングで寝てしまっていた遙加だったが何かの音に起こされた。
まだ半分寝ぼけた状態で耳を澄ませるとどこからか音が聞こえた。空耳では無かったようだ。
「ジー、ジー、ジー、…………」
電話の方から音がこえたので遙加は近くに寄ってみた。すると誰もいないはずなのにまるで自動発信でもしているようにダイヤル音がしていたのだ。しかもスピーカーになっている。
なぜジー、ジー、なのかというと電話機はプッシュボタン式なのだが、ダイヤル回線で契約していたので発信音はレトロ感漂う感じになるのだ。光電話が主流の今ではかなりレアな契約だ。それよりも時代と共に固定電話の必要性はかなり薄れてきた。
だが九条家では台風や災害などで停電してもアナログ電話なら使えるから変えたくない、という父の強いこだわりが反映されている。
電話に近づいた遙加は電話機のディスプレイが光っているのに何も表示がないことを疑問に思った。その時部屋の時計を確認すると午前4時になるところだった。
遙加は少し薄気味悪くなってもう一度電話機を見るとダイヤル音はしなくなった。そしてディスプレイの光も消えてしまった。
その後は眠気に勝てなくてとにかく早くベッドに行きたい遙加は、夜食の後片付けもせずリビングの電気を消して急いで寝室へと向かった。
それから2週間後。またしても夜食を取った後眠気に勝てなかった遙加はまたポカポカと温かい床の上で寝てしまった。今日は枕がわりのクッションと近くにあった携帯用のフリースケットを掛けて寝ていた。
しばらくの間気持ちよく寝ていた遙加はまたあの音に起こされた。
「ジー、ジー、ジー、…………」
やはり電話機からその音がしていた。この前と同じように近づくと音は止まってしまった。時計を確認すると時間はやはり午前4時。
遙加の頭の中に急にこんな考えが浮かんだ。
『もしかしたら、床暖房が効いているからって床の上で寝ると疲れが取れないから起こしてくれたんじゃないかな。電話機が気を使って!』
楽天的な遙加は気遣いのある電話に感謝して自分の寝室へと向かった。
その後、2度あることは3度あるというからまた起きるのかと思っていた遙だったが、それ以降電話機が気を使ってくれることはなかった。それを残念に思うところが普通の人の感覚と少しずれている証拠だろう。
それでも遙加は相変わらずポカポカの床の上で寝るのをやめられなかった。その後電話が教えてくれなくなったのは仏の顔も3度までというように逆に電話機にまで呆れられてしまって教えてくれなくなったのかもしれない。
しかしそれは、その電話機しか知らないことである。
と言う事にしておく。
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