霊媒体質 九条遙加の厄難 ー学生時代編ー

柿村 呼波

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第2章 大学編

島のシャーマン2

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 束の間のドライブを楽しんだ3人はディメンションのテーブルを囲み紅茶を飲んでいた。
九条薫と田中聖修は九条が旅行で奄美大島に行ったときに知り合った。

田中の実家はシャーマンの家系。神や霊との交流を通してその地を災害や災厄から守っている。一族の中でも彼は神や霊と繋がる力が最も強い。歴代でも一二を争う程に。

そんな彼は九条と会った瞬間に九条薫がを纏っていることに驚いた。それは薫の纏う力がこれまでに見たことのないくらいに崇高だったからだった。惹きつけられるように薫に吸い寄せられた田中はすぐに連絡先を交換した。
 
 田中は現在、東京と奄美大島の両方を拠点にして仕事をしている。東京に出てくる気になったのは九条薫の存在があるからに他ならない。何故なら九条薫には神の力そのものが宿っているからだった。しかしそれを知っているのはシャーマン一族の中でも感性の鋭い田中聖修だけだった。

遙加はまだそのことを知らない。他に知っているのは天ヶ瀬くらいだ。

 紅茶で一息ついたところで九条が話を切り出した。

「田中君、遙加にして欲しい事ってこの前話していた自動書記のことかな」

「はい、そうなんです。九条さんは何でもお見通しですね。その前に1つだけ確認させてもらってもいいですか?」

「もちろん構わないよ。君は信じるに値するシャーマンだからね」

「ありがとうございます」

遙加のことを話しているはずなのに本人への確認は一切無い。そんな遙の心の中は『??????』となっていた。

「場所はここで大丈夫?」

「はい、むしろこちらの方が何かに左右されずに正確な判断ができると思います」

そこでやっと遙加は声を出した。

「あのー、お二人はさっきから一体何を話しているのでしょうか。私にも分かるように説明してください」

遙加の言葉を聞いて2人は顔を見合わせた。

「ごめん遙加。彼に会えたのが嬉しくて、つい先走ってしまったよ。説明は彼にしてもらうから」

遙加はゆっくりと頷いた。

「遙加さん申し訳ありませんでした。私も久し振りに九条さんに会えたので嬉しい気持ちを抑えられなくて……。お恥ずかしい限りです」

田中は照れたように頭を掻いて九条の方を見た。そしてまた直ぐに遙加へと向き直った。

「今日お願いしたいことは2つです。
1つ目は何もせずただ椅子に座って目を閉じていただければ大丈夫です。
2つ目はこちらの紙をテーブルに置きますのでこの鉛筆を持って書く体勢を取って下さい。
注意点は1つだけ。何も考えず無心になって下さい。ではまず1つ目から始めますので一度立って下さい」

遙加は素直に立ち上がった。
すると田中は遙加の座っていた椅子をテーブルから少し離れたところへ移動した。

「では遙加さん、こちらへ座って目を閉じて下さい」

遙加が座るのを確認した田中は1m程の距離を空けて彼女の前に立って手をかざした。暫くするとかざした手を下ろし、遙加に声をかけた。

「では目を開けて下さい。何か感じたことがあったら教えて下さい」

遙加は目をパチクリと瞬かせてから田中の質問に答えた。

「目を瞑って少ししてからドーナツ型の丸い光の輪が頭の上から足元まで降りて行きました。黄金色の綺麗な光でした。温かくて優しい感じがした気がします。こんな感じでいいですか?」

「充分です。ありがとうございます。遙加さんはそれが何だか分かりますか?」

「うーん……悪い物では無いと思うんですが、それ以上はわかりません」

「九条さん、彼女に今起きたことを話しても大丈夫ですか?」

「全く問題ないよ」

2人が薫を見ると優しく微笑んでいた。田中はこんなに優しく微笑む九条薫を初めて見た。やはり九条にとって遙加はとても大切な存在のようだ。

「まず、光の輪はあなたを守る存在があなたに見せたものです」

「私を守るものですか?」

「はい、そうです。温かくて優しい感じがしても、懐かしい感じはしなかったでしょう?」

「どうして分かるんですか。以前私の守護霊は何代か前の母方のおばあさんだと聞いたんですが、その感じとはちょっと違うような感じがしました」

「さすが遙加さんですね。実は貴方を守る存在はたった今、交代したんですよ。これまでは貴方が仰るように母方のお婆様が守っておられました。しかしもうお婆様では守りきれなくなったので安全なこの場所で交代しました。雅観音菩薩みやびかんのんぼさつ様に」

「雅観音菩薩?」

「そうです。今、後ろに居られる方がそう仰っています」

以前は一生涯守護霊は変わらないと信じられていた。しかし最近では20~30年周期で守護霊が変わるとも言われている。

「それは珍しいこともあるんだね。普通はそれくらい高位になると本人に名前を教えないことの方が多いのに。ふーん、そうか……」

九条は何やらとても満足そうに口元を弛めた。

「九条さんもそう思われますか。でも遙加さんに名を告げてくれと仰いましたのでそれに従っただけです。それから遙加さん、霊感に関してあまり自分を過小評価しないようにとの事です」

「ほら遙加、もう少し自覚を持って行動するようにって雅観音菩薩様が言ってるよ」

「薫、それはちょっと曲解なんじゃないのかな……」

「いえ、そんなことはありません。雅観音菩薩様も、遙加さんは今の2つの言葉をきちんと受け止めるようにと仰っています」

「はい……努力します……」

少し拗ね気味の遙加の様子を全く気にする様子のない2人。何故か息の合う2人は田中の2つ目のお願いを始める準備に移った。


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