霊媒体質 九条遙加の厄難 ー学生時代編ー

柿村 呼波

文字の大きさ
41 / 55
第2章 大学編

ささやかなパーティー

しおりを挟む
 5月のよく晴れた休日。レストラン・ブルーローズの入り口には『本日貸切』の札のかかっていた。

 ギリギリ開始時間に間に合った男は慌てていたせいで少し乱暴に入り口のドアを開いてしまった。すると店内の視線全てが彼に集中した。

彼方かなたこっちこっち、早く席に着いて。もう始まるわよ」

母が小声で手招きした。同じテーブルに座っている父は何やらニヤニヤしている。

「今日は、間に合ってよかったな、彼方」

「はいはい、間に合ったからいいだろ。それより今日の主役は?」

「これから入場するところよ。だから間に合ったって言ってるでしょ」

店に入った途端、店内の全ての視線を集めたこの人物。それは遙加の兄、九条彼方くじょうかなただった。


 
「これより新郎新婦の入場です。皆様盛大な拍手でお迎えください」

ピアノの演奏も始まり司会台からの声を聞き、皆心からの拍手を送った。
するとバーカウンターの奥から本日の主役が歩いてきた。シルバーのフロックスーツを着た新郎の薫にエスコートされる新婦遙加は幸せオーラに満ち溢れていた。

 背の高い薫に少しでも近づきたい遙加が選んだのはスレンダーラインの大人っぽい白いドレスだった。12cmヒールを履いた今日の遙加は見た目だけは大人の女性に見える。

今日のパーティーは遙加と薫の家族とブルーローズのメンバーや薫の友人だけが集められた極々ささやかなパーティーだった。

遙加が18歳という若さで薫と結婚したのには、とある理由があった。

薫の父と遙加の父は九条家の分家筋である。しかし陰陽道を代々継承しているのは本家のみであるため分家といっても昔ほど本家と関わりはない、はずだった。

 九条家で代々陰陽道を継ぐのは本家だけとされていた。しかし分家にとって不穏な話が降って沸いてしまった。それは先々代の当主が妙な遺言を残したことが発端だった。

「今後九条家の中で必ず強い霊能力を持った子供が生まれる。もし本家以外に生まれたのなら養子縁組してでも本家の子として迎えるように。その力を決して九条家以外に渡してなならない」

そんな事を言い残してあの世へと旅立ったのだというのだ。
しかし、そんな遺言めいた言葉をその時の当主は守るつもりは全くなかった。
だがそれは本家全員の前での出来事だったため、それを無視する事はできなかった。

分家には通達という形で遺言の内容は知らされたが、現当主の言葉として次のように書いてあった。

『もしそのような子供が生まれたとしても私の代で本家に迎え入れることは無い。今後もその方針を取らせるつもりである」

そう当主の直筆でサインまでしてあった。
それを見た分家の者たちは皆胸を撫でおろしたという。

 しかし少し前に、遙加の父は兄から妙な話を聞いた。

「どうやら次の当主は先々代の遺言を実行しようとしているようだから気をつけるように」

そんな話が兄の元に舞い込んできたというのだ。俄には信じがたいが方々手を尽くして調べた結果どうやら次期当主は本気らしいということが分かったのだった。

 遙の父は息子の彼方と娘の遙加にそこまで強い力があるとは思っていなかった。
しかし兄と一緒に来た薫の言葉で考え方を改めたのだった。

「遙加は霊媒体質なだけでなく霊能力を秘めている」

薫のこの言葉には続きがあった。

「遙加と同じくらいの潜在能力が彼方にもある」

その場に彼方はいなかったはずなのに薫はそんな事を言ったのだった。

2人は同い年で小さい頃から仲が良いのでお互い親には隠していることまでよく分かりあっていたのだ。

父は彼方と遙加を守るためそのことは本家はもちろん、兄以外の親族には秘匿している。
父たちは遙加だけではなく薫のことも本家から守るために早くから許嫁とした。

 そんな訳で法的にも本家が手を出せぬように遙加が成人する18歳になったら薫と結婚させることにしたのである。初めは九条本家のしがらみから守るための結婚だったが今となってはそんなことは関係ないようだった。それは遙加にとって好きな人と幸せになるための結婚に他ならないからから。もちろん薫にとっても。

 そしてそんな遙加を霊的に守っていたのは両親ではなく、実は兄の彼方だったことを知っているのは薫だけなのだった。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

処理中です...