霊媒体質 九条遙加の厄難 ー学生時代編ー

柿村 呼波

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第2章 大学編

かわいいお客様?

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 遙加が薫の家に住むようになって少し経ったある日、彼女は少し変わったお客さんに遭遇した。

階段の最上段から振りむきざまに階下を見下ろす白くて小さなトカゲのようなその姿。それはつぶらな目をしたこの家のヤモリだった。

ヤモリからすれば遙加の方がこの家の新参者でありお客様なのだが、小さなトカゲだと思っている遙加は勝手にお客さんだと思って近寄った。

 薫の家はレストラン・ブルーローズのあるビルの最上階。他の住民が使うフロアと違うのはメゾネットになっている所だ。

何故かブルーローズの従業員達は皆このビルに住んでいる。このマンションの作りは1フロアに1軒。従業員達は贅沢にも1人ワンフロアを与えられている。そしてこの贅沢な作りのマンションにはブルーローズの関係者しか住んでいない。

薫の部屋はメゾネットの下の階がゲストルームも兼ねているため寝室などのプライベート空間は上階にある。薫曰く、オーナー特権というものらしい。

 そんな構造上の関係で家に帰ってきた遙加は自分の部屋に向かう途中トカゲと少しの間見つめ合ってから、何を思ったのか逃げないそれに近づいた。するとそのトカゲは近付いて来た遙加をジィーっと見つめたかと思うとプイッとどこかに行ってしまった。

トカゲの素早い動きについて行けなかった遙加は追いかける事もままならず姿を見失ってしまった。
とても可愛らしい顔をしたトカゲだったので遙加はもっと仲良くなりたいと思ったくらいだったのに。

しかしどうしてトカゲがこんなビルの上階にいるのかと不思議に思った遙加は夕食の時に薫に聞いてみる事にした。本当はヤモリなのだが。


 その日の夕食もブルーローズからの豪華な賄いを運んできた薫と遙加は一緒に食事をしていた。
いつものように薫にその日にあったことの報告をする時に一緒にトカゲのことも聞いてみた。

「薫、今日階段の上に白いかわいいトカゲがいたんだけど、薫も見た事ある?」

「遙加……それはヤモリと言って家の守り神と言われるものだよ。トカゲじゃないから人間を見ても逃げなかっただろう?」

「うん、なんとなくこっちを見てる感じがしたよ」

「遙加に自分の存在を知らせに来たんじゃないかな、きっと」

「また会えるかな?」

「うーん、それはどうかな。神様は気まぐれだからね」

会話をしながら薫は思った。
ヤモリまで遙加のことが気になるんだな、と。


 もう1つ、遙加がこの家に来てから、あることが以前よりも頻繁に起こるようになった。

デジタル時計がアラームやタイマーがセットした時間以外に勝手に鳴ることが増えた。そう、増えたのだ。

何の前触れもなく急に時計がパッと光ったかと思うと「ピッ」と音を発するのだ。
その時計は元々薫の家にあったものではなく、遙加が持ち込んだものだった。

以前実家で1度だけ「ピッ」となったことがあったがその時は何かの誤作動だと思って特に気にしていなかった。

しかし、この家にきてからそんなことが頻繁に起こるようになった。いつもはあまり深く考えないはずの遙加でも流石に異常を感じ取り薫に聞いてみた。

薫には「大丈夫だよ、暑さにでもやられたんじゃないか」というだけでスルーされてしまった。

 薫を当てに出来ないと思った遙加はその時のことを思い出してみた。

「そういえば、スマホで時間を確認するからその時計をあまり見てなかったような……。それぐらいしか思い浮かばないな……」

ブツブツと独り言を呟く遙加に反応したのはやはりその時計だった。
遙加の声を聞いて、そうだ! とでも言わんばかりにピカッと光ると「ピッ」と音を出した。


霊媒体質者は電化製品を壊したり影響を与えたりすることがある。その本人から何らかの電波が出ているのだろう。電気機器が気の利いた人間のように気を使っているように見えることがあるのだ。

あてにされない時計の時間が進んでしまうように、気にして欲しい時計は時間が遅れることがある。

そしてこの時計は遙加に気にして欲しくて自己主張をしたのだ。そしてこれは電子機器関連で、遙加の周りで起こる不思議な出来事の始まりに過ぎなかった。





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