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第3章 ウィルトシャー
かわいい訪問者1
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鳥居は明日九条のところに可愛いお客さんが来ることをロバートに話してから、明日のレストランのデザートに木苺のムースとザッハトルテを作りそれを九条のお客さんにも出していいか聞いてみた。すると木苺のムースはいつものサイズで、ザッハトルテは少し小さめにして両方メニューに取り入れてもらうことになった。
「ロバートさんありがとうございます」
「明日が楽しみだね。あっ、でも九条さんのお客様には少し大きめに作って出してあげてね」
「分かりましたー」
「料理だけじゃなくて、スィーツのファンも増やさなくちゃね」
どうやらロバートまでもが九条に似てきてしまったようである。
翌日、いつもより少し早めに厨房に入った鳥居は午後2時には既にその日の分のデザートを作り終えていた。紅茶はダージリンが良いかななどと考えていると誰かが厨房に入ってきた。
顔を上げるとそこにいたのは何故か九条だった。
「鳥居君、もうデザートはできたのかい」
「はい、出来上がりましたよー」
「来客は3時だからその前にディメンションの控室にそれを運んでくれないかな。20分前になったら持ってきてくれると助かるんだけど」
「お客様が来てからじゃなくていいんですかー」
「うん、その前に丸テーブルに準備しておこうと思ってね。お願いできるかい」
「分かりましたー」
「あと、できれば4人分お願いしたいんだけど数は大丈夫かな」
「それは問題ありません。大丈夫でーす」
「流石だね、ありがとう。じゃあよろしくね」
それだけ話して九条は厨房を出て行ってしまった。
『確か蒼井君は、九条さんの弱みを握りたいんじゃなかったかな?』昨日の蒼井の言葉を思い出してみたが、九条さんの方が先に動いてしまったようだ。蒼井とは違い九条に対して感謝の気持ちしかない鳥居は九条の言うことを聞くことにした。無惨にもあっさりと蒼井は寝返られてしまった。
午後2時35分。
そろそろスィーツと茶葉を用意してディメンションに行こうとしていた時に蒼井が厨房にやって来た。
「あれ? どうして鳥居君もう運ぼうとしてるの? まだ早いんだけど」
「さっき九条さんが来て20分前には持って来て欲しいって言われたよー」
「えー、何でバレてるんだろう」
「せっかく来てくれたんだから蒼井君はこのポットを持ってくれると助かるな。向こうでお湯沸かさなくて済むから」
「うーん、何か釈然としないけど……」
「俺、もう行くから蒼井君も一緒にきてねー」
「まったく、どっちがお願いしたのかわからなくなってるじゃないか……」
ぶつぶつ言いながらも蒼井は鳥居の後をついて厨房を出た。
ディメンションとは隣り合わせているためすぐに控室の前に到着した。すると待っていたかのように九条が控室の扉を開いてくれた。
「鳥居君ありがとう、取り敢えず中に入って。あれっ、蒼井君も手伝ってくれたんだありがとう助かるよ」
「助かるよ、じゃないですよ九条さん」
「まあ、話は後にして準備をしてしまおう」
「そうですね。俺、テーブルを整えてきますねー」
鳥居はスィーツを一旦控室に置いて店の中へと入っていった。その姿を見た蒼井は何やら様子がおかしいことに気がついた。
「蒼井君、スィーツセットは来客前に準備してもらうことにしたから、わざわざ客人に顔を見せなくて大丈夫だからね」
「……そうですか、残念です」
「何が残念なのか分からないが、そんなに気になるならいつものように控え室で話を聞いていても構わないよ」
「本当ですか。ではそうさせて頂きます。やっぱりダメとかは無しですよ」
「大丈夫だよ。その代わり面倒臭いことになるから絶対に店には入ってこないように、いいね。もし入ってきたら当分ピアノ弾かせてあげないからね」
「分かりました。必ず守ります」
『ピアノ弾かせてくれないなんてずるいよな、まったく九条さんは』
そして準備も整った頃、店の入り口が開いた。
「ロバートさんありがとうございます」
「明日が楽しみだね。あっ、でも九条さんのお客様には少し大きめに作って出してあげてね」
「分かりましたー」
「料理だけじゃなくて、スィーツのファンも増やさなくちゃね」
どうやらロバートまでもが九条に似てきてしまったようである。
翌日、いつもより少し早めに厨房に入った鳥居は午後2時には既にその日の分のデザートを作り終えていた。紅茶はダージリンが良いかななどと考えていると誰かが厨房に入ってきた。
顔を上げるとそこにいたのは何故か九条だった。
「鳥居君、もうデザートはできたのかい」
「はい、出来上がりましたよー」
「来客は3時だからその前にディメンションの控室にそれを運んでくれないかな。20分前になったら持ってきてくれると助かるんだけど」
「お客様が来てからじゃなくていいんですかー」
「うん、その前に丸テーブルに準備しておこうと思ってね。お願いできるかい」
「分かりましたー」
「あと、できれば4人分お願いしたいんだけど数は大丈夫かな」
「それは問題ありません。大丈夫でーす」
「流石だね、ありがとう。じゃあよろしくね」
それだけ話して九条は厨房を出て行ってしまった。
『確か蒼井君は、九条さんの弱みを握りたいんじゃなかったかな?』昨日の蒼井の言葉を思い出してみたが、九条さんの方が先に動いてしまったようだ。蒼井とは違い九条に対して感謝の気持ちしかない鳥居は九条の言うことを聞くことにした。無惨にもあっさりと蒼井は寝返られてしまった。
午後2時35分。
そろそろスィーツと茶葉を用意してディメンションに行こうとしていた時に蒼井が厨房にやって来た。
「あれ? どうして鳥居君もう運ぼうとしてるの? まだ早いんだけど」
「さっき九条さんが来て20分前には持って来て欲しいって言われたよー」
「えー、何でバレてるんだろう」
「せっかく来てくれたんだから蒼井君はこのポットを持ってくれると助かるな。向こうでお湯沸かさなくて済むから」
「うーん、何か釈然としないけど……」
「俺、もう行くから蒼井君も一緒にきてねー」
「まったく、どっちがお願いしたのかわからなくなってるじゃないか……」
ぶつぶつ言いながらも蒼井は鳥居の後をついて厨房を出た。
ディメンションとは隣り合わせているためすぐに控室の前に到着した。すると待っていたかのように九条が控室の扉を開いてくれた。
「鳥居君ありがとう、取り敢えず中に入って。あれっ、蒼井君も手伝ってくれたんだありがとう助かるよ」
「助かるよ、じゃないですよ九条さん」
「まあ、話は後にして準備をしてしまおう」
「そうですね。俺、テーブルを整えてきますねー」
鳥居はスィーツを一旦控室に置いて店の中へと入っていった。その姿を見た蒼井は何やら様子がおかしいことに気がついた。
「蒼井君、スィーツセットは来客前に準備してもらうことにしたから、わざわざ客人に顔を見せなくて大丈夫だからね」
「……そうですか、残念です」
「何が残念なのか分からないが、そんなに気になるならいつものように控え室で話を聞いていても構わないよ」
「本当ですか。ではそうさせて頂きます。やっぱりダメとかは無しですよ」
「大丈夫だよ。その代わり面倒臭いことになるから絶対に店には入ってこないように、いいね。もし入ってきたら当分ピアノ弾かせてあげないからね」
「分かりました。必ず守ります」
『ピアノ弾かせてくれないなんてずるいよな、まったく九条さんは』
そして準備も整った頃、店の入り口が開いた。
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