最低最悪な魔法使い

shishamo346

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狂皇帝

私の皇帝

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 皇位簒奪が行われて数日で、早速、皇族の儀式となった。皆、戦々恐々となる。何せ、皇位簒奪者よりも皇族の血が濃いと、その場で処刑となるかもしれないのだ。
 だから、それぞれ、武器の帯剣が認められている。もしかしたら、身内が処刑されるかもしれないのだ。そこは、皇族同士の血で血を洗う争いまで認められている。実際、儀式中に殺し合いが起こった過去がある。

 美貌の筆頭魔法使いを我が手にしようとして。

 私はあえて、皇族の前では偽装を解いた。素顔を見せられた皇族一同は、最初、私が誰なのかわからなかった。しかし、私が着ている筆頭魔法使いの服により、驚愕する。
「ハガル、どうやって、儀式を行うのかな?」
 私の皇帝は、座ったまま、私を傍らに置き、うっとりと私の顔を見て聞く。すっかり、私の素顔がお気に召したようだ。私も、皇帝の顔も体も声も満足です。
「簡単です。段階的に命令をさせるのです。この場にいる皆さんは皇族なのは、すでに証明済みです。あ、お子様は違いますね。しかし、今回はお子様は除外です。お子様には、これから皇族教育をみっちり受けてから、儀式です。
 お子様を除く、立派な皇族の皆さまには、私にこう命じてください。靴を舐めろ、と」
 手っ取り早く、篩にかけることにした。まず、この命令を私に出来る者は、相当、血が濃い。
「なんだ、靴を舐めさせるのか? お前に靴を舐めさせられるのは、私だけではないのか?」
「アイオーン様の頃は、なんとアイオーン様を含めて三人いましたよ。私のラインハルト様は、もっと凄いことを私に命じれましたよ」
 不満を漏らす私の皇帝。そんなあなたと、夜は私と閨事をしているというのに。
 閨事を命じれたのは、ラインハルト様だけだ。実は、アイオーン様では閨事は不可能だ。実際、試してみたが、うんともすんとも衝動が動かなった。
 そうして、恐怖の儀式が始まった。
 なかなか、私に靴を舐めさせられる皇族は出てこない。当然だ。メリル様でさえ、出来なかったことだ。実は、私の皇帝は、私に靴を舐めさせることは出来ない。それでもやっているのは、ラインハルト様の姿と声のためだ。あれは、私の中に植え付けられた衝動を呼び覚ます。幼い頃から繰り返し行われた悪戯と愛情に、随分と絆されてしまったものだ。
 最後に、私の皇帝が私の前に立つ。
「さあ、私の靴を舐めなさい」
 その声に背中がゾクゾクとする。皇族の血よりも、その姿に、私は逆らえなかった。だから、私の皇帝の靴を舐める。
「私の皇帝は、あなたです」
 顔を上げると、私の皇帝は嬉しそうに笑った。それを見ているだけで、私は幸福となる。その姿を見れるだけで、嬉しい。
 私に靴を舐めさせられたのは、なんと五人もいた。これはなかなか、優秀な血筋だ。
 皇族の血筋を証明されてしまった五人は、戦々恐々となる。ついでに、その身内まで、剣に手をかける。
「今は、随分とよい血筋が揃いましたね。ですが、私の皇帝を越えることは不可能でしょう。なにせ、私の閨事をすでに、皇帝は行っています」
 ざわめいた。私が男なのは、皆、知っている。皇帝も男だ。同性同士が閨事をするなど、思ってもいなかったのだろう。
 しかし、男どもは、私の顔を見ると、頷いたりする。そうなんだ、この顔なら、男でもいけてしまうのだよ。ついでに、体術と剣術を封じられた私の体は、無駄な筋肉も脂肪もないので、触り心地が良いらしい。
「私の皇帝は決まった。もし、我こそは、というのなら、私の皇帝を殺すがいい。そうすれば、私は皇位簒奪者のものだ」
 私は試しに煽ってみた。大昔の美貌の筆頭魔法使いは、これで、随分と皇族同士を殺し合いさせたという。
 もちろん、私の皇帝は妖精殺しの剣を抜き放つ。まだ若いが、その腕前は、相当なものだ。あの情けない兄など足元にも及ばない力量をこの男が持っている。
 しばらく、睨み合いが続いたが、誰も、私の皇帝に剣を向けなかった。なんだ、詰まらないな。
「では、今日はこれまで。子どもたちは、しっかり皇族教育を受けなさい。将来を楽しみにしています」
 こうして、儀式は終了した。

 皇族がいなくなったが、私の皇帝は動かなかった。
「どうかしましたか?」
「ハガルが気に入る者でもいたか?」
「あなたです」
「そうか」
 正直に答えれば、私の皇帝は私を抱きしめる。私がわざと煽ったから、不安になったのだろう。まだまだ若いな。
「私は今後、あなたのことをどう呼べばいいですか? このままですと、私の皇帝、としか呼べません」
「これまでの皇帝は、名で呼んでいたな」
「私の師である賢者テラスは、ラインハルト様のことは皇帝陛下と呼んでいました。私も、最初は皇帝陛下、もしくは、私の皇帝、と呼んでいました。命じられたので、ラインハルト様、と呼ぶようになりました。アイオーン様は、皇族の頃からのお付き合いでしたから、その延長ですね」
「………」
「出来れば、あなたのことをラインハルト様と呼びたい。皇帝となって、名を変える者もいます。名を変えますか?」
 私は縋るように私の皇帝を見た。この姿だ。どうしても、ラインハルト様と呼びたい。
「いや、私の皇帝、と呼んでほしい」
「私のラインハルト様になってくださらないのですか?」
「身代わりは、イヤだ」
「そうですか。大変、失礼なお願いをしました。では、名で呼びましょう」
「お前は覚えていないだろうが、閨事では、私のことをラインハルト様と呼んでいる。そこまで、私の姿形は似ているのか?」
「声も、体の匂いまで、本当に。閨事もです。ラインハルト様はハーレムを持つほどの女好きです。私の扱いも、女と同じです」
「閨事でも、皇帝と呼ぶように。身代わりはイヤだ」
「では、閨事はもう、やめましょう」
 せっかく、ラインハルト様とまるで同じ扱いをされて嬉しいが、私は諦めるしかない。
「そんな、悲しい顔をするな! すまない、身代わりでいい!!」
 私はそれほど、残念な顔をしていたのか。私の皇帝は力いっぱい、私を抱きしめてくる。その行為が嬉しくて、胸に顔を摺り寄せる。
「これだけで十分です。こうして、抱きしめてくださるだけで、それ以上はいりません。私の皇帝は、あなた一人です」

 今のところは。

 私は心の中でそう、付け加える。まだ、私の真の皇帝は生まれていない。皇族教育の最中だ。及第点の者がいるとは思えない。だったら、次の世代に期待するしかない。
 幸い、この皇帝は若い。アイオーン様も長く皇帝をしてくれたが、それでも、私の首輪になる皇帝は育たなかった。だったら、この皇帝にはせいぜい、長生きしてもらおう。





 久しぶりに筆頭魔法使いの屋敷に戻った。私の皇帝は、心の整理をしたいそうだ。改名はイヤだし、身代わりもイヤだし、だけど、私を手放せない。若いから、どうしても、激情で動いてしまうのだろう。
 その上、メリル様の滅茶苦茶な教育を受けたので、使えないときている。
 ちょっと、試しに皇帝の仕事を見せてみれば、若いこともあって、先に進めないでいる。
 私に任せれば、ラインハルト様ばりの立派な皇帝にしたててやったというのに。この男を私の目の前に出せば、きっと、私は夢中になっただろう。幼い頃から教育し、第二のラインハルト様に育て上げた。ついでに、名前も”ラインハルト”にしただろう。メリル様、ここまで似ているなら、幼いうちに改名してしまえばよかったのに。幼くても、私だったら、一目でわかった。たぶん、赤子の頃でも、私のラインハルト様ならわかる。自信がある。
 運命の悪戯か、メリル様とハイラント様の血筋に、残念な誤算だ。それでも、ラインハルト様と瓜二つの姿に、心は踊る。

 心は踊るが、やはり、メリル様とハイラント様の血筋は根絶やしにしてやる。

 私の皇帝アイオーンを殺し、私の愛しいスーリーンを人買いに売り払ったことは許せない。
 私は酔えないのに、赤ワインを飲む。赤ワインは帝国では忌み嫌われているが、私は大好物だ。血のように赤くて、罪の証が、良い。
 早速、私の皇帝に暗殺者が放たれた。もう、皇族同士の殺し合いが始まった。バカだな。私が筆頭魔法使いの屋敷にいたって、暗殺は失敗する。証言が面倒臭いので、さっさと消し炭にしてやる。ほら、どこそこの皇族が、なんて証言が出てきたら、皇族を一人、処刑しないといけなくなる。
 気の毒に、私の皇帝の寝室には、消し炭となった人がぽんと落ちることとなる。私の皇帝は呆然としているな。それもしばらくして、笑った。そうそう、私が守っているのだから、私の皇帝は暗殺では殺されない。毒殺だって、全て、私が防いでみせますから、安心して眠ってください。
 妖精を通して、私の皇帝の様子を見ながら、さばききれない皇帝の仕事に目を通す。これまではアイオーン様がこなしていたものだ。それを私がこなさなければならない。
 ふと、書類が濡れているのに気づいた。汗か?
「なんだ、私はアイオーン様のことが、好きだったか」
 泣いていた。随分と遅れて、私はアイオーン様の死を悼んだ。
 ものすごく、頭が痛くなった。力を使いすぎたわけではない。もう、子どもではないのだから、そういうことはない。
「しつこいな」
 また、違う暗殺者が来ている。私は結局、私の皇帝の元に行った。私の皇帝には長生きしてもらわなければ困る。

 結局、その日も、私は皇帝の腕の中で眠ることとなった。




 偽装して宰相に会うのは、久しぶりだった。宰相は連日の出来事で、すっかり、げっそりとやせ細っていた。
「私の皇帝の仕事は、私がこなしました。大変、遅れてしまって、すみません」
「ハガル!!」
 偽装した私の姿に、宰相は何故か大喜びである。そうか、こっちがいいんだな、この男は。
「私もそう若くない。あのような姿は衝撃が強いので、やめていただきたい」
「仕方がありません。あの時は、偽装できませんでしたから。さて、私の皇帝も新しくなったので、通例として、皇妃決めですね」
「軽いですね!? アイオーン様とは、随分と仲良くされていたではないですか!!」
「私のように力の強い妖精憑きは軽く百年生きますからね。人との別れは日常です。もう、私の身内は皆、亡くなっていますし」
 私の血の繋がらない家族である弟たちと妹たちは皆、土の下である。まあ、甥や姪がいるにはいるが、彼らは、皇帝アイオーン様が王国へと移住させてしまった。
 私は身内にはかなり甘い。弱点の数が多いため、アイオーン様は私に内緒で、甥たち姪たちを王国に送るしかなかった。万が一、一人でも人質にとられでもしたら、帝国が大変なことになる。
 私は帝国全てにいる大魔法使いの妖精を操ることが出来る。皇族でさえ息の音を止められる最悪な魔法使いを暴走させるわけにはいかないのだ。アイオーン様なりに、かなり悩んで、結局、甥たち姪たちを帝国から出すしかなかった。王国に行ってしまえば、手を出す者はいないし、私も諦めるしかないからだ。
 試しに、アイオーン様に、どこに甥たち姪たちを移住させたか聞いたが、教えてもらえなかった。最近、アイオーン様の日記が読めるようになったので、読んでみたが、書かれていなかった。
 私の目の前にいる宰相は、私の甥たち姪たちの居場所を知っている。だから、私はもの言いたげにじっと見てしまう。
「言いませんよ」
「これでもですか?」
「やめてください!?」
 偽装を解いてやれば、宰相は顔を真っ赤にして叫んだ。もう一押しだな。
「どうか、教えてください。一目、どうしても会いたいのです」
「うううーーーーー、ダメだ!! 私はこの事実を墓場に持っていく!!! 誰にも言わん!!!!」
「残念だ」
 私はすぐに偽装する。
「お金に困っていないか、心配で。あと、騙されてないか」
「そういうことは、あるがままです!! もう、どこまで過保護なんですか」
「病気なんだよ。くそ、心配だ。もう、帝国中の妖精使って、探すか」
「やめてえええええええーーーーーー!!!」
「だったら、素直に吐け」
「いやだーーーーーー!!!!」
「口が固いな。だから、宰相が出来るんだろうな。わかった、もういい。またの機会にする」
「言いませんからね」
 宰相が口を固く閉じるので、私は保留にするしかなかった。
「あなたの目から見て、私の皇帝はどうですか?」
 まずは、それぞれの評価である。私はまあ、若いよね、で終わる。実際、若いのだ。確か、十五歳くらいだと聞いた。まだ、皇族教育を終わるか終わらないかの年頃だ。学校行く皇族だっている。
「メリル様が隠し通していましたので、なんとも」
「え、宰相も知らない?」
「私はアイオーン様側ですからね。メリル様にとっては、敵ですよ」
「えー、そうなの。たく、あの処刑した教師ども、とんでもない置き土産をしてくれたな。皇族教育をここまで捻じ曲げてくれて」
「ハガルが気づくまで、ずっと続いていたと言いますからね。ラインハルト様の治世は長かったですから、気づくのが遅れたのでしょう」
 私の私情で、一人、教師を処刑した。その時に、皇族教育が随分と昔から捻じ曲げられていることがわかった。いくつかの貴族が、欲をかいたのだ。仕方がないので、処刑ではなく、妖精の罰という、とんでもない刑罰を下すこととなった。
 妖精の罰とは、呪いだ。関わった貴族を中心に、一族郎党が呪われる。生きたまま地獄を味わうこととなる。何せ、手にする物全て、腐るのだ。まず、食べられない。飲み水でさえ腐るのだ。しかも、一族がいると場が呪われてしまうので、定住が出来ない。結果、追い出される。一族郎党、妖精の罰で滅ぶのだ。
 これは、別に、悪い事をしていなければ、呪いは発動しない。しかし、私が妖精の罰をかけた貴族全て、一族郎党、滅んだ。これの恐ろしいところは、まるで悪いことをしていない者であっても、一族である以上、呪われるのだ。気の毒に、善良だという者たちも苦しんで死んだ。
 わざわざ、目に見える処罰にしたのは、見せしめだ。こうすることで、皇族に手を出した罪の深さを知らしめるのだ。そして、神の使いである妖精を使役出来る魔法使いの権威を見せつけることにもなる。ついでに、魔法使いを支配する皇帝の権威も爆上がりだ。
「メリル様はもう手遅れでしたが、それ以降はどうにかなっていますね。さてさて、使える皇族はどれだけいるでしょうね。皇妃は誰にしますか?」
 私は皇族の人相書きを机に並べる。
「皇帝はあなたの顔に随分と魅了されていますよね」
「私も、私の皇帝の姿形に魅了されています。両想いですね」
「では、下手に綺麗どころはやめましょう。こちらはどうですか?」
「能力的にはまあ、問題はないな。皇族の血の濃さもいいだろう。あとは、子作りだな」
「アイオーン様の時みたいに、暗殺やら毒殺やらなければ良いですけどね。そうだ、皇帝陛下の弟君はどうしますか? まだ若いですよね」
「いくつですか?」
「確か、九歳と聞きました」
「………皇族教育を最初からやり直させましょう。あと、私の皇帝の父親はどうしていますか?」
「皇帝陛下の命令で、牢に入れられています」
「さすが、私の皇帝は、私の顔色をよく伺ってくれますね。嬉しいです」
 私が殺したかった、と言ったことを覚えていてくれたのだろう。
「血の流出がないか、調査してください。どうも、メリル様はハイラント様を愛するあまり、子にも孫にも、女遊びを推奨していたようです」
 メリル様、あんなにハイラント様の浮気とかを許せなかったというのに、子や孫にハイラント様と同じようなことをさせている。本当に愚かな女だ。皇族としては、あってはならないことだというのにな。
「ハイラント様の時にはなかったのですか? アイオーン様もないと言っていましたが」
「きちんとした娼館を使っていました。避妊の薬を常に飲んでいたから、そういうことが起きませんでした。間違って起こってしまった場合は、堕胎する。でないと、子どもの問題で、娼館自体が皇帝によって潰される。商売で、そのようなことを起こすような店のオーナーは即処刑だ。だから、店の女が問題を起こしたら、オーナー自らが処分してくれます」
「そこは、わきまえてくださったわけですね」
「メリル様は、そこのところをきちんと教育されているかどうか、わからない。皇族教育で、男側には、一応、そういう話はされている。女側は、そういうことを知らないからな。さて、私の皇帝に過去の女を聞き取りですね」
「ハガル、嫉妬の顔をしていますよ」
「当然です。私の皇帝ですから。女の手垢がついているのなら、まずは、そこの所からですね。知っていますか? ラインハルト様がハーレムを解体する時、ハーレムの女たちは全て、ラインハルト様自らが殺したんです。ハーレムから生きて出られた女は一人もいません。嬉しいですね」
「あなたの愛情は、本当に、怖いですね」
「それくらいのことをしてくれたからこそ、私は今もラインハルト様を愛しています」
 幼い頃からの刷り込みではあるが、やはり、私はラインハルト様が全てだ。
 皇妃候補は宰相に丸投げして、私は私の皇帝の元に行く。私の皇帝は、少しでも皇帝らしくなろうと、執務室で仕事をしていた。そういう姿勢が可愛らしい。
 私はノックして、中に入れば、私の皇帝と、なんと、皇族の女がいた。なかなかの綺麗な容貌だ。
「お邪魔のようですね」
「ハガル!! お前は出ていってくれ。後はハガルに聞く」
「筆頭魔法使いは、他にお仕事がありますよ。わたくしが手伝ってあげます」
「いらん!! ハガル、仕事を教えてくれ」
「命令ですか?」
「ああ、命令だ」
「それでは、仕方がありませんね」
 私はわざわざ偽装を解いて、私の皇帝の傍らに立つ。
 皇族の女は、偽装を解いた私を見て、真っ青になる。見た目で私に勝てる者はそうそういないというのに。何か目的があるのだろう。
「あの、ハガル、お願いがあるの」
 皇族の女が、こんな時だというのに、話しかけてくる。
「私の皇帝が先です。そうですね、私の執務室で待っていてもらっていいですか? 妖精に伝達しましたから、部屋にいる魔法使いが相手をしてくれます」
「わかったわ。それでは、失礼します」
 そう言って、やっと、皇族の女は出ていった。
 私の皇帝は、二人っきりになった途端、私を抱きしめる。
「あの女が、勝手に入って来たんだ!! 私は呼んでもいない!!!」
「どうでしょうか。あなたは私の皇帝になる前は、女遊びをしていたでしょう。ここで、洗いざらい話してください」
「お祖母様に無理矢理だ!! 私は女の扱いを学ぶために、連れて行かれただけだ。まさか、特定の女がいると疑っているのか!?」
「私だって、昔は後ろ暗い女を地下牢にたくさん飼っていました。ですが、全て、ラインハルト様が殺してしまいました。ついでに、ラインハルト様は、私と出会ってからハーレムを解体し、ハーレムにいた女は全てラインハルト様が殺しました。私とラインハルト様は、そういう間柄です」
「………」
 想像以上の間柄に、私の皇帝は絶句した。たぶん、私のラインハルト様への執着の深さを知ったのだろう。あまりの深さに、私の皇帝は、どう思ったのやら。
 人の気持ちは表面上は簡単に操れる。実際、元暗部の女どもも、四肢を引き千切って生け捕りにした暗殺者も、私の前では素直に裏切ってくれた。
 私の皇帝は私の前で跪き、私の手を握る。
「わかった。私がこれまで抱いた女は、全て、私が殺そう。そう人数もいないから、すぐだ」
「どこの誰か、教えてください。私が殺してあげます」
「いや、私が」
「私がそうしたいのです。私は、私のものとなった女に手垢をつけた男どもは全て、私が殺しました。あなたは私の皇帝です。私がその女どもを殺します」
「………わかった」
 若い皇帝は、店の場所から、女の名前まで、丁寧に教えてくれた。確かに、少ないな。まだ、十五と若いからだろう。
 店はたったの一軒だ。そこをメリル様はよく使用する店としたのだろう。実際に人を使って調べてみれば、なんとも言えない店ではあった。残念ながら、皇族相手に軽く詐欺のようなことをしていたので、店は取り潰しとなり、オーナーは処刑となった。
 私の皇帝のお手付きとなった女たちだが、軽く詐欺のようなことをする店なので、無事ではない。薬漬けとなっていたので、短い人生を私の手で終わらせてやることとなった。
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