最低最悪な魔法使い

shishamo346

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皇帝の遊び友達

譲れないこと

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 翌日、皇帝や皇族が過ごす豪邸に行けば、賢者テラスが待ち構えていた。立っているテラスの前には、皇族オーレシアが正座させられていた。
「テラス様、来たんだ」
「ハガルの報告を聞いたからな。まさか、オーレシアがハガルを娼夫にしようとしているとは」
 怒りで顔を歪めるテラス。それを見て、皇族も皇帝も大魔法使いアラリーラ様まで、恐怖を抱く。テラス、契約紋で皇族に絶対服従なんだけど、皇族を殴れるという、とんでもない人なんだ。皇族は皆、テラスに殴られる、という洗礼を一度は受ける。
 オーレシアはテラスに殴られたくないので、慌てて、言い訳する。
「い、いけないことだとは、し、知らなかったんだ」
「魔法使いを何だと思っているのですか。魔法使いは、妖精憑きの中でも、選ばれた存在ですよ。誰もが魔法使いになれるわけでありません。まず、見習い魔法使いに選ばれるのだって、簡単なことではありませんよ。血筋ではなく、実力です。それをあなたは、そこら辺の娼婦と同じ扱いをハガルにするとは」
「み、見習い期間が、十年以上と長いから、魔法使いになれる近道になればと」
「皇族の娼夫になったからって、魔法使いになれるわけではありません。そんな事、私が許さない。任命権は、私にあります」
「す、すみません、でした」
「よりによって、大魔法使いの側仕えを娼夫にしようなどと、とんでもない無礼なことを。オーレシアの評価を見直さなければなりませんね」
「て、テラス、しかし、十年以上も見習い魔法使いというのは、おかしいではないか。ハガルは、本当に、実力があるのか?」
「こちらの都合を、何故、たかが一皇族のオーレシアに言わなければならないのですか。皇帝であれば、全て、話しますよ」
「そ、そんなつもりで、言ったわけではない!! ただ、ハガルが気の毒で」
「ハガルがそう言ったのですか?」
「言ってません」
 すかさず、私から否定した。他人の、しかも皇族の口から、私の気持ちを代返なんかされたくない。
 私は賢者テラスと皇族オーレシアの間に立って、テラスと向き合った。
「オーレシア様は、俺の腕っぷしを心配したのでしょう」
「ああ、それで。では、ハガル、オーレシアと腕試しをしなさい」
「えー、皇族相手はちょっと」
「私が許そう」
 皇帝ラインハルト様が口を挟んできた。
 一体、どうなっているのかわからない皇族オーレシアは、呆然と私を見上げた。そんなオーレシアに私は手を差し伸べた。
「オーレシア様、どうぞ、好きにしてください」
 普段では出さない笑顔を私はオーレシアに向けた。オーレシアは、平凡に偽装されながらも笑う私に見惚れた。本気になれば、この偽装した姿でも、男も女も手玉にとれるくらいのものを持っている。散々、皇帝ラインハルト様に可愛がられたのだ。その身から出る色香だけで、人を惑わせる。
 オーレシアが私の手をつかんだ瞬間、私はオーレシアの手を不自然に引っ張った。
 オーレシアだって、それなりに鍛えている。反射で私を引っ張り返そうとしたが、私は軽く体を跳ねさせ、オーレシアの手を掴んだまま、オーレシアの反対側に降り立った。
 そして、オーレシアは腕を不自然に捻ることとなった。その痛みに、私の手を簡単に離した。私もまた、呆気なく、オーレシアの手を離して、再び、オーレシアと対峙した。
「な、何を」
「オーレシア様、力はなくても、俺には技術がある。本気になれば、あなたを投げ飛ばすことだって出来る」
「今のは、油断しただけだ!!」
 オーレシアはすぐに、私につかみかかろうと、向かってきた。それを私は避けつつ、オーレシアの足を軽く払った。勢いが付きすぎたオーレシアは転びそうになるも、うまく受け身をとった。だけど、そこで動かないオーレシアの側に立った私は、隠し持っていた短剣をオーレシアの首につきつけた。
「っ!?」
「本気になれば、オーレシア様の首根っこを斬ることは可能です」
「そこまで」
 動けなくなったオーレシアの首を私が傷つける前に、賢者テラスが間に入って止めた。
 私はすぐ、持前の空気も全て、偽装する。そうすることで、皇族の友達三人は、安堵する。
「ハガル、やっぱり強いよな」
「昔、俺たちのこと助けてくれたよな」
「あの時は、本当に助かった」
「俺が助けなくっても、皇族なんだから、妖精が復讐したけど」
「俺たちのこと、皇族だって、知らなかったくせに」
 笑う皇族三人。知ってて助けたんだけどなー。表向きは、ただの見習い魔法使いだが、実際は筆頭魔法使いだ。皇族が質の悪い店で脅されているのだから、助けに行くしかない。でないと、大変なことになるから。
 皇族オーレシアは、物言いたげに私を見上げた。さすがに、私はオーレシアに手を差し出したりしない。
 空気を読んで、皇帝ラインハルト様がオーレシアの手をとって立たせた。
「いくら鍛えていないといえども、相手は妖精憑きだ。ただの人とは、才能が違う。見習い魔法使いに選ばれるほどの才能持ちを甘く見てはいけない」
「………そうだな。すまなかった、ハガル」
「皇族は簡単に謝ってはいけない。俺は、オーレシア様よりも立場は低い」
「そ、そうだが」
「つまり、その程度だということだ」
 私は誰にともなく、そう呟き、オーレシアから距離をとった。オーレシアは何か言おうとさらに口を開くがら、私の前に賢者テラスが立ったので、それ以上、私に対して、何も言えなくなった。
「オーレシア、もう一度、勉強をし直すように」
「わ、わかった。私の勉強不足だな」
「………確かに、考え直さないといけないですね」
 賢者テラスは、皇族オーレシアの評価を改めて、見直す、と決めてくれた。そのことは、私と、皇帝ラインハルト様がわかるだけで、皇族三人も、皇族オーレシアも、首を傾げた。







 筆頭魔法使いの屋敷にある私室で、私は座っているラインハルト様に向かい合うように乗って、激しく腰を動かしていた。ラインハルト様の一物を深く、私の蕾に受け入れ、喜んでいた。
「ん、そこぉ」
「ここか?」
「い、いけません、今日は、私がぁ!!」
 私が動いて、ラインハルト様を喜ばせる、そう宣言したというのに、我慢出来ないラインハルト様は私の腰をつかんで、動かした。そのせいで、私が気持ち良い、という場所をラインハルト様の一物の先が強く突くこととなる。
 あっという間に、私は絶頂し、ラインハルト様に私の白濁をかけることとなった。一度の絶頂はかなり、体力を使う。だが、ラインハルト様はまだまだ絶頂していないから、絶頂の余韻で動けなくなった私の腰をラインハルト様が動かした。私は声をあげて、ラインハルト様にしがみつき、ゆっくりと、じっくりと味わうような挿入に、体を震わせた。
「ハガル様、来ました」
 ドアの向こうで、使用人が声をかけてきた。呼んだ客人が来たのだ。
 まさか、客を呼んでいるとは知らないラインハルト様は、動きを止めた。だけど、私はラインハルト様にべったりとくっついて離れない。
「どうぞ、入ってください」
「っ!?」
 人を招き入れるなんて、思ってもいなかったラインハルト様は驚いた。しかし、呼ばれた客は、私室で私とラインハルト様が情事に耽っているなんて知らないから、普通に入ってきた。
 ドアを開けて、普通に入ってきた客は、私とラインハルト様の姿を見て、固まった。そんな客の背中を使用人が押して、ドアをきっちりと閉じた。
「な、何を」
「オーレシアが、どうして!!」
 呼ばれた客オーレシアと、何も知らないで私に手をつけた皇帝ラインハルト様は同時に叫んだ。
「私が呼びました。一応、こんな姿を見せるつもりなんてありませんでしたよ」
 ラインハルト様が私に手を出したのだ。私は、こんなつもりで、ラインハルト様を呼んだわけではない。私はいつものラインハルト様の力づくで負けただけだ。
 オーレシアは、私の偽装されていない素顔を見て、笑った。
「やはり、ラインハルトが手をつけた子どもは、ハガルだったのか」
「し、知っていたのか!?」
 さらに驚くラインハルト様。驚きすぎて、ラインハルト様の一物はすっかり、縮んでしまった。私はラインハルト様の一物を私の蕾から抜いて、だけど、ラインハルト様の膝に座ったまま、ラインハルト様の胸に私の顔をぴったりとくっつける。
「ラインハルト様は、過信しすぎです。人払いをしたって、全ての者が、ラインハルト様の命令に従うわけではありません。オーレシアは、ラインハルト様の命令に従わず、こっそりと、私を抱き上げるラインハルト様を見たんですよ」
 皇族オーレシアは、幼い私を抱き上げる皇帝ラインハルト様を見たことがあるのだ。
 私がまだまだ未熟で幼い頃、魔法の使いすぎで、頭痛を訴えた。そんな私を休ませるため、皇帝ラインハルト様と一晩過ごしていた。月に一、二回のことだ。その時、ラインハルト様は、決まって、大浴場に私を連れて行った。
 当時、私という存在は隠されていた。表向きでは、まだ、次代の筆頭魔法使いは誕生していないこととなっていたのだ。だから、私と皇帝ラインハルト様との逢瀬を見られるわけにはいかない。ラインハルト様は、私を広い浴場で可愛がるために、人払いをしたのだ。
 だいたいの皇族も、使用人も従った。皇帝ラインハルト様は、それ以前に、よく、気に入った女を連れ込んできては、広い浴場を使うために人払いをしていたのだ。子どもの教育に悪い、と皇族たちも従った。
 しかし、皇族オーレシアは、皇帝ラインハルト様の手がついた誰かを見たくて、こっそりと覗き見ていたのである。
「しかし、ハガルは普段、その姿を偽装していただろう」
「私ほど幼い頃から見習い魔法使いをしている子どもは珍しい。きっと、予想したのでしょう。ラインハルト様が手をつけた子どもは、ただの子どもではない、と」
「その通りだ。そして、その当時、あれくらいの子どもを見かけたのは、見習い魔法使いくらいだ。ハガルは、よく、大魔法使いの側仕えとして目についた。顔立ちは違うが、背格好がよく似ていた」
「たった一度のことなのに、よく、見ていますね」
「たった一度しか見れないとは、思ってもいなかった」
「当然です。二度目を許すほど、私は甘くない」
 私はオーレシアが命令に従わず、盗み見ていることに気づいて、その後からは、魔法により、人払いをしたのだ。城の奥深くといえども、私はそれが出来る。何より、まだ、筆頭魔法使いの儀式を受ける前だから、私には皇族に対する制約がなかった。
 オーレシアは、私とラインハルト様のあられもない姿を見て、生唾を飲み込んだ。
「筆頭魔法使いとして表に立ったから、やっと、私にも、その姿を見せてくれたのか」
「あなたをラインハルト様に殺してもらうために、私とラインハルト様の深い仲を見せたのですよ」
「私を殺す? どうして!?」
 理由がわからない皇族オーレシア。皇帝ラインハルト様を見てみれば、こちらも、呆れたように溜息をついている。
「まだ、娼夫扱いをされたことに怒っているのか」
「違います」
 ラインハルト様の思い違いを私は否定する。私のことをオーレシアが口説いたから、怒っているわけではない。
「ラインハルト様は、テラスと話し合いましたか?」
「ああ、話した。テラスからは、オーレシアを次の皇帝にするのはダメだと言われた。その理由を聞いても、テラスは、皇帝としての才能がない、と一点張りだ」
「そうです、皇帝としての才能がありません。オーレシアは、天才に見えます。しかし、実際は、努力の秀才です」
「だからといって、殺す必要はないだろう」
「テラスは、どう言ってましたか?」
「………」
 テラスも、私と同じ意見だったのだろう。テラスはもう、天に召されてしまったので、それを確かめることは不可能だが、ラインハルト様の沈黙が、肯定しているようなものだ。
 私はまだ、体の衝動に震える。ラインハルト様に抱きしめられているだけで、私の体は喜びで震える。ラインハルト様の胸に顔を埋めると、幸福を感じる。
 全身でラインハルト様を感じて喜ぶ私を呆然と見て、立ち尽くすオーレシア。そして、私と目があうと、オーレシアは我に返った。
「あ、あの時はすまなかった。まさか、隠された筆頭魔法使いとは知らず、私の欲望に、無礼なことをした」
「私に嘘は通じませんよ」
「嘘は」
「まあ、確かに、オーレシアの欲望ですね。しかし、その欲望の方向は歪んでいます。あなたが本当に欲しいのは、ラインハルト様です」
「は、ははははははは!! 何を言ってるんだ!!! 私とラインハルト様は、遊び友達だ」
「色々と調べました」
「調べたって、何を」
「オーレシアの女性遍歴ですよ。女遊びと言ったって、あなたが表だって手をつけたのは、娼婦だけですね。皇族の娼館通いは、記録が残ります」
 皇族の血筋を守るために、きちんとした娼館に通うように教えられる。女遊びをするな、とは言わない。ただ、むやみやたらと種をばら撒かれても困るので、きちんと避妊をしている娼館を指定するのだ。
 だから、記録が残る。誰が、どこの娼館を使ったのか、と。
 皇族オーレシアは、娼館通いが多い。相手は女であったり、男であったり、と節操がなかった。
「ラインハルト様が娼館通いをやめると、オーレシアもぴたりと娼館通いがなくなりました」
「私もいい歳だからな。落ち着いたんだ」
「目当ての娼婦がいなくなったからでしょう。だって、あなたは、ラインハルト様が手をつけながら生かした娼婦全て殺したから」
 ラインハルト様は驚いて、皇族オーレシアを見た。オーレシアは、暗い笑みを浮かべる。
「ラインハルト様は手をつけた女全てを殺しているわけではない。金で買った女だけは、生かしていました。ところが、世間では、ラインハルト様は手をつけた女全てを殺したことになっている。噂が誇張して広がることは普通です。娼婦まで殺した、なんて広がっても、ラインハルト様は気にしない。ですが、世間は、それが本当だと思っている。実際、ラインハルト様が手をつけた娼婦が死んでいるからです。死んだのだから、ラインハルト様が殺した、と世間は思います」
 半分は権威付けで触れまわられる、皇帝ラインハルト様の悪行。しかし、手をつけた女を殺すことは、閨事での秘密を外に漏らさせないために必要なことだ。皇帝の弱味になるかもしれない。その徹底ぶりに、帝国民は皇帝ラインハルト様に対して、畏敬を抱いた。
 ラインハルト様は、初めて、自らの悪行の噂が、オーレシアによって歪められたものだと知った。
「何故、娼婦を殺した? あれは、殺す必要のない女たちだ」
「ラインハルトの手がついたからだ。だから、手をつけて、殺した」
「オーレシアが買った娼婦は全て、ラインハルトが手をつけた娼婦です」
「私は、男の娼夫は買っていない」
「身代わりですよ」
 オーレシアは、ラインハルト様によく似た娼夫に相手をさせたのだ。
 私の体を抱きしめるラインハルト様の腕が震えた。これまで、オーレシアに対して抱いていた信頼がガラガラと崩れたのだ。
「娼婦だけではありません。ラインハルト様が殺した、手をつけた女たちにも、オーレシアは手をつけました」
「なっ!?」
「ラインハルト様の子だと言っている皇族のほとんどは、オーレシアの子ですよ」
「オーレシア、貴様ぁ」
「私だって、ラインハルトに手をつけられたかった!! ただ、それだけだ」
 こんな場だ。オーレシアは隠すのをやめた。ラインハルト様に縋って手を伸ばすも、ラインハルト様はその手を払った。
 私を抱き上げ、立ち上がるラインハルト様。その顔は怒りで歪んだ。
「私に手をつけられたかっただと?」
「そうだ!! ラインハルトのことを愛しているんだ!!!」
「私はお前のこと、ただの遊びの友としか見ていない!!!」
「知っている。それで満足するつもりだった。ラインハルトが手をつけるのは女だ。だから、同じ女を抱いて、満足するつもりだった。なのに、ラインハルトは、綺麗な男の子どもを可愛がった!!!」
 たった一度だが、オーレシアは、私がラインハルト様に悪戯されている所を見たのだ。
「これまでの女とは違う。大事に大事に隠し、育てている。だから、悔しくて、つい、ハガルを側に置こうとしたんだ」
「そんなことをするから、私に疑われたのですよ。それまでは、オーレシアのことなど、何とも思っていませんでした」
 オーレシアが妙な欲を出したから、私の怒りを買ったのだ。
 私は、オーレシアが私を娼夫にしようと大魔法使いアラリーラ様の前で口説いた時から、オーレシアのことを調べた。
 オーレシアをラインハルト様に殺してもらうために。
 オーレシアは賢者テラスが認めた皇族だ。次の皇帝候補の一人だ。ラインハルト様はオーレシアに妙な信頼を持っている。そんなオーレシアをラインハルト様の手で処刑するのは、簡単なことではない。
 だから、私は調べ、裏どりもした。
 そして出てきたのは、ラインハルト様へのオーレシアの妄執だ。その事実を知って、私は怒りしかなかった。
「ラインハルト様、オーレシアを殺してください。オーレシアは、私がやるべき事を横取りしました」
「横取りって、私はオーレシアとは、ただ、酒を交わした程度だ」
「ラインハルト様が手をつけた娼婦たちを殺しました。あれは、私がやるべきことです」
「………は?」
「ラインハルト様は、私が地下牢に閉じ込めた女たち全てを殺しました。だったら、私はラインハルト様が手をつけた女全てを殺すべきです。なのに、ラインハルト様が手をつけた娼婦を調べてみれば、全て、死んでいました。しかも、オーレシアがその娼婦に手をつけた後に、全てです!! 私が殺したかったというのに、よくも!!!」
「仕返しか?」
「ラインハルト様は私のものです!! あなたの手垢がついた女がいるなんて、我慢ならない」
「そうか」
 私もオーレシアとそう変わらない。
「ラインハルト様は約束しました。皇帝の儀式は、ラインハルト様の代でなくすと。ですが、オーレシアが皇帝となれば、私は閨事を強制される。そんなこと、我慢ならない。私は、そこらの、ラインハルト様が手あたり次第につけた女とは違う」
「そうだ、ハガルは特別だ。私が死んだとしても、お前は私のものだ」
「そうです、私の皇帝も、皇族も、ラインハルト様だけです」
 感情が昂った私は、ラインハルト様に深く口づけする。皇族オーレシアが見ているのなんて、気にしない。オーレシアは、私とラインハルト様のやり取りを嫉妬をこめて見ている。
「ハガル、ラインハルトから離れろ!!」
「天罰を食らっても、離れない」
 オーレシアの命令に痛い目にあっても、私はラインハルト様にしがみ付いた。ラインハルト様は力強く私を抱きしめた。
「ハガル、全て許そう」
「嬉しい、ラインハルト様」
 命令違反も、ラインハルト様の許しで、あっという間に解除される。痛みはすっと消えた。
 いつまでも、ラインハルト様の行動の邪魔をしているわけにはいかない。私は、ラインハルト様の腕から下ろしてもらうと、私室に隠された剣を持ち出した。
「オーレシアのこと、私が殺したいですが、契約紋に縛られていますから、出来ません。せめて、私が鍛えた剣で、ラインハルト様に殺してもらいます」
「ふん、簡単にいくと思うな!!」
 皇族オーレシアは、向かってこない。さっさと逃げようと、ドアに手をかけた。
「な、開かない!!」
「筆頭魔法使いの屋敷の支配は私にあります。皇帝といえども、私の許可がなければ、自由に動けない」
「そうなのか?」
「ラインハルト様には、全てにおいて、許可を出しています」
 ラインハルト様は、筆頭魔法使いの屋敷でも、好き勝手出来るようにしている。
 しかし、皇族オーレシアは、部屋を出ることすら許さない。
「簡単に、筆頭魔法使いの屋敷に来るなんて、愚かですね。ラインハルト様の遊び友達と言っても、肝心なことは、ラインハルト様から教えてももらっていないのですね」
「わ、私は、絶対に、ハガルに手をつけない。誓う! だから」
「テラスですら、次の皇帝に、と選んだんです。その意味、わかりますよね?」
「わ、わからない」
 皇帝ラインハルト様が剣を掴むのをただ見ている皇族オーレシア。オーレシアだって、武器を持っている。しかし、ラインハルト様とオーレシアでは、くぐってきた修羅場が違う。ラインハルト様は戦争を経験しているが、オーレシアはそうではない。
 何より、ラインハルト様は今も、戦争に出られるほど鍛えている。
「まさか、私のハガルに手をつけようとはな。他のことは許してやれるが、ハガルのことだけは、許さん」
 ラインハルト様は、やっと、オーレシアを見限ってくれた。
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