魔法使いの悪友

shishamo346

文字の大きさ
2 / 152
海の貧民街

捨てられない過去

 早朝は、決まって、ヘレンお嬢さんに叩き起こされる。
 といっても、実は起きている。妖精憑きは、一か月寝なくても平気だ。睡眠だって、そんなに必要ない。昨夜は、まあまあ寝たほうだ。だけど、寝たふりだ。せっかくだから、美人な女に起こされたい。
「ほら、起きてください!」
 容赦なく殴ってくるけど。これも、美人だからいい。
「おはようございます、ヘレンお嬢さん。今日も綺麗ですね」
「今日もふざけないでください!! ほら、行きますよ」
「えー、本音なのにー」
 俺は思ったことをそのままいうのに、ヘレンお嬢さんは信じてくれない。ヘレンお嬢さん、貧民街にいては、かなり危険なほど綺麗な人だ。腕っぷしがあるから、と過信してはいけない。
 まあ、ヘレンお嬢さんは一人で貧民街を歩くことはない。一族に仕える者たちが常に側についている。今日も、俺の部屋の外では、ワシムが待ち構えていた。
 俺が簡単に着替えて出れば、ワシムが俺の腕を引っ張って、建物から連れ出す。
「今日も、素振り千回だ」
「はいっ」
 千回って、かなりの回数だが、仕方がない。まず、力がないから。
 手渡された木剣を振るも、これが、本当に、ダメなんだ。コクーン爺さんが振れば、いい音を出すのだが、俺は音どころではない。油断すると、木剣を手放してしまう。
 まずは、千回をこなすのが大切だ。俺は、そこから出発となった。
 俺は隅っこで、無心になって、木剣を振る。そんな俺には目もくれず、コクーン爺さんを慕って集まった騎士たちや兵士たちは、打ち合いをしたり、走り込みをしたり、と色々だ。その中には、ヘレンお嬢さんも混ざっている。女だからって、ヘレンお嬢さんが訓練を免除されるわけではない。ヘレンお嬢さんは、ただ一人の後継ぎだ。コクーン爺さんは容赦なく、ヘレンお嬢さんを鍛えた。お陰で、むちゃくちゃ強いよ、彼女。
 俺が千回、素振りを終わらせる頃には、訓練も終了である。
「随分と、はやく、終わらせられるようになったな」
 たかが素振りなのに、コクーン爺さんは褒めてくれる。
 褒められても、俺はもう、限界だ。立ってられなくて、その場に倒れる。
「お、おい!」
「休めば大丈夫だから。先に戻ってくれ」
 体力はないが、回復力は人外だ。妖精憑きは、すぐに体力が戻る。
 だけど、俺を放置出来ないのが、コクーン爺さんである。俺を持ち上げるのだ。
「やめてぇ!! 男としての沽券が!!!」
「男相手に身売りしておいて」
「言わないでぇ!!」
 身売りしているけど、やっぱり、男としての沽券というものは捨てたくない。だけど、抵抗する力すらないので、されるがままである。
「情けない」
 ヘレンお嬢さんに蔑むように言われて、俺はとどめを刺された。
 コクーン爺さんは笑う。
「人それぞれ、事情がある。そういうことはいうんじゃない」
「………はい、すみません」
「いやいや、いいって。実際、情けないんだから。ほら、コクーン爺さん、下ろしてくれていいよ。もう歩ける」
 俺は妖精憑きの力を使って、さっさと回復させる。コクーン爺さんは俺を信じて、下ろしてくれた。
 まだ、足がふらふらするけど、どうにか歩くことは出来る。俺は少し遅れて、建物に入った。
「あまり無理をするなよ」
「午後には客探しだから、そういう力は残してる」
「………」
 ワシムが心配してくれるが、俺はわざと余計なことをいう。ワシムはなんとも言えない顔をして黙り込んだ。
 側で聞いていた騎士たちや兵士たちは、俺を蔑むように見た。仕方がない、こいつらみたいに、堂々と胸を張れる特技なんてない。
 妖精憑きの力は、実は秘密にしている。コクーン爺さんだけは、俺が妖精憑きの力を使った現場に居合わせたので知っているが、あえて、黙っていてくれた。俺が頼んだわけではないのだが、コクーン爺さんとしては、黙っているべき案件と察してくれたのだ。
 野良の妖精憑きだと知られれば、どういう扱いをされるかわからない。王都の貧民街では、妖精憑きの力は復讐の道具とされただけだが、そういうことがなければ、いいように使われたはずだ。妖精憑きは、色々と使い道がある。
 結果、俺は色々と隠しているので、男娼をするしかなかった。腕っぷし、兄貴ぐらいあれば、ちょっとは役に立てたんだけどなー。
 食堂に行けば、それなりの食事にありつける。コクーン爺さんについて行ってる奴ら、全て、ここで食べられるという。
 俺は住まわせてもらっているので、遠慮したのだが、ワシムが部屋まで運んでくるので、今は普通に食べている。その代わり、俺の男娼としての売上をそのままコクーン爺さんに渡している。ありがたく食べさせてもらっているが、妖精憑きって、一か月食べなくても平気なんだよな。
 俺はかなり華奢なので、このガタイのいい集団の中には特攻しない。最後のほうに並んで行けば、俺の分がない時もある。それはそれで、仕方がないが、その時は、コクーン爺さんが俺に分けたりするので、後が恐怖だ。
 今日はわずかながらも残っていた。後で、客から恵んでもらうか。
「今日も男に股を開くのか」
 近くに座る兵士が話しかけてくる。
「いい値段を出してくれるからな。試してみるか? 王都の貧民街の支配者の気分にはなれるぞ」
「あの、帝国の罪人になった奴だろ?」
「そう、罪人に堕ちた奴だ。お陰で、俺は自由になった」
「………」
 嫌味を言ってきた奴らは、俺が上手に返してやると、気まずい、みたいに黙り込む。それはそうだ。親父が罪人で捕まったから、俺は自由になったんだ。そうでなかったら、今も親父の娼夫だ。俺の立場は、決して、嫌味を言っていいものではない。
 が、貧民たちは、平気で俺を子蹴落とすけどな。ここにいる兵士や騎士たちは、いい奴らだから、簡単に反省しちゃうんだよな。そんなの、気にしなくていいのにな。
 半人分をさっさと平らげて、俺は席を立った。食器を片づけるついでに、洗い場にいく。お世話になっているので、片付けを手伝うことにしている。
 料理や片付けは女の仕事だ。奥に行けば、なかなかたくましい感じの女たちが返ってきた食器とかを洗ったりしている。
「手伝うよ」
「そんな、いつもいいのに」
「朝は食べさせてもらってるからさ。お、水の出、悪くなってる?」
「仕方ない。貧民街は、妖精の恩恵が届きにくいからね」
「どれどれ」
 貧民街あるあるだ。貧民街は、帝国の恩恵が届かないので、水道が使えないことだってある。まあ、技術自体は大昔のものなので、一度、壊れりしたら、一昔に戻って、井戸生活なんだけどね。
 コクーン爺さんとかが、どうにか水道を使えるようにしたんだが、帝国の恩恵が微妙に届きにくいんだよね。俺は、水道の魔道具を見に行く。
 実は、俺がちょいちょい、補給していたりする。根本的に解決するには、この魔道具の場所を変えるしかないんだよな。だけど、そこまでやろうとすると、俺が妖精憑きだってバレちゃうから、黙っている。その内、コクーン爺さんに相談だな。
 今回も、俺はこっそり魔道具を動かす。俺が動かしても、せいぜい、一週間くらいだからな。
 洗い場に行けば、いつもの調子に、大喜びである。
「あんたが来てから、水の出がよくなったよ」
「日頃の行いが悪いんだけどな。きっと、コクーン爺さんの善行だよ、善行」
「男どものいうことなんて、気にするんじゃないよ」
「こういう片付けだって、女々しいなんていうんだよ」
 これは、あれだな、家庭持ちの兵士や騎士が、俺のこと、そんなふうに話してんだな。
「そういうこという男はわかってないな。女が家を守ってるから、男は外で大腕振ってられるってのにな」
「………なんで、あんたは男娼なんてやってんだよ。物凄くいい男なのにね」
 俺は普通のことを言ってやったんだけど、女たちは目をまん丸にして驚く。
「そう、友達が言ってたんだ。受け売り受け売り」
 ハガルだよ、ハガル。あいつ、普通にいうんだよね、こういうこと。なのに、身請けした女に逃げられるって、気の毒だよな。女心、むちゃくちゃ理解してるはずなんだけどな。
 ちょっと、ハガルに会いたくなった。王都には戻りたくないけど。
 ハガルとの連絡手段はない。何せ、俺は逃亡中だ。迂闊に手紙なんて書こうものなら、ハガルに迷惑がかかる。
 あれから、捕縛された兄弟がどうなったか気になるが、海の貧民街は遠いし、何より、話題は移り変わっている。もう、過去の人となってしまった、王都の貧民街の支配者家族のことなど、誰も気にならない。




 店に行けば、過去に俺を買った男たちに会うことになる。常連ほどではないが、俺に客がついていない時に、気を聞かせて、買ってくれることがある。
「お、来た来た。おーい」
 何故か呼ばれる。俺、そこまで仲良くないんだけどな。だけど、客商売なので、俺は笑顔で向かっていく。
「おや、今日は俺を買ってくれるのか?」
「客を連れて来てやったんだよ。ほら、こいつだよ」
 見た目がまあまあ男を連れてきた。ガタイもまあまあだが。
「客って、男好きなわけじゃないだろう」
 よく、女を買っているのを見たことがある男だ。
「こいつさ、ちょっとわけありで、女にお断りされてんだよ」
 ちょっと店を見回せば、確かに、身売りの女たちが顔を背ける。男を相手にするのが仕事の女たちに断られるって、どうなんだろう?
 改めて、男を見る。見た目は悪くない。そこそこだ。よく鍛えているし、背だってまあまあだ。なのに、娼婦にお断りされるって、どうなの?
「どうして、断れちゃうの。金払いが悪いとか?」
「しっかり払ってるんだ、けど、その、俺、普通じゃないんだ」
「わかった、酷い趣味なんだ。暴力は良くない」
「ち、違う!!」
「もっとすごい趣味とか? 汚れることも、嫌われるぞ」
「だから、趣味とかじゃない!! その、普通より、大きいんだよ、俺のは」
 最後のほうは、聞こえるか聞こえないか、という声でいう男。
 俺は男の下半身をじっと見てしまう。あれか、すごいの持ってるのか。ざっと店内を見回せば、身売りの女たちがうんうんと頷いてくれる。そうとう、すごいんだな。
「だからって、俺が受け入れられるとは限らないだろう。女でダメなら、俺もいけるとは限らないぞ。むしろ、女はだいたい受け入れられるように出来ているから、それで無理なら、俺でも無理だぞ」
「詳しいな」
「………」
 ハガルの教育に入ってたんだよ!! なんで、閨事まで教えられないといけないんだよ、俺は!!!
 男は絶望的な顔になる。顔はまあまあいんだけどな。
「そこは、男側が上手に調整するしかないな」
「夢中になると、そんなこと出来ないのが男だ」
「そうそう」
「そうなんだ。俺、女抱いたことがないから、わからないや」
『なんだとぉおおおー---!!!』
 むちゃくちゃ驚かれたよ。ハガルがいう通り、一回くらい、女抱いておけば良かったな。
「え、経験ないの!?」
「どうして!?」
「あんた、いい男じゃない!!」
 ついでに、身売りの女たちまで詰め寄ってくる。いや、言わないでぇ!!
「どう、アタシと一回、やってみない? お金とらないから」
「そんな、私も私も!!」
「アタシだって目をつけてたんだよ!!」
 違う争いが起こる。ハガルがいう通り、一度くらい、女抱いておけばよかった。
「男に抱かれてばかりだからな。きっと、下手だよ。男としての自信が底辺になるから、やめておく」
「教えてあげるよ」
「手とり足としと」
「いっそのこと、全員が相手にしてあげるよ!!」
「そんな体力がないなー。俺、鍛えるの禁止されてたから、女よりちょっと力がある程度なんだよな」
 今ならハガルの気持ちがよくわかる。力がないって、女々しくなっちゃうな。
 俺が消極的なので、女たちは諦めて、撤退していく。よくよく考えてみれば、いい機会だったな。
 そうして、ちょっとした騒ぎが収まってから、改めて、身売りの女にお断りされる男と向き合う。
「で、試してみる?」
「………男は抱いたことがないんだが」
「俺はかなり慣れてるから、女を抱くのと変わらないよ。女抱いたことがある男がいうには、具合がいいらしい?」
「いいぞ」
「良かった」
「たまにはいいと思った」
「客がついてない時は、声をかけてくれ」
 ここにいる男ども、全員、俺を最低は一回は買ってるな。一日一人だが、随分と長いこといるから、それなりの数になったな。
「俺、閨事で彼女にも振られたんだ」
「調整、出来るようになったほうがいいぞ」
「………」
「俺は高いよ。女よりも高いけど、それで良ければ、買ってくれ」
「お願いします」
 俺からお願いするものなんだけどな、これ。




 身ぎれいな男だった。普段は、お互い、名乗りあうことはないのだが、この男は何故か、名乗ってきた。
「俺はタリム」
「俺はルキエル。満足いかなくても、金は返らないからな」
「わかった」
 一応、言っておかないといけないことだ。俺を買った時点で、どうなっても金は戻らないこととなっているが、時々、苦情が出ることがある。俺はないけど、他の身売りの女で、そういう苦情が出たことがある。
 後で聞いたが、タリムは苦情をいうことはないという。ちょっと、他の男よりも、すごいものを持っている、と身売りの女たちが口をそろえていうのだ。
 すごいもの、と言われると、親父のことを思い出す。他の男たちに抱かれて気づく。親父、すごい剛直持ちだったな。あれをお袋が受け入れてたというのだから、タリムはそれ以上なのかもしれないな。
 相手の趣向にあわせる。服を脱がせるのが好きなら、脱がせてもらう。さっさと素っ裸、と言われれば素っ裸だ。
 タリムは、何も言わずに、さっさと服を脱ぎだす。俺はどうすればいいんだろうか? 何も指示されないので、黙って、タリムが服を脱ぐのを見ていた。
 そして、見てしまう。
 俺はつい、生唾を飲み込む。タリムの下半身から目が離せなくなる。
「ルキエル?」
「触っていいか?」
「お前、奉仕はしないって、話だよな。確か、そういう仕込みはされていないって」
「そうだけど、お前のは、舐めたい」
 親父と同じ剛直が目の前にある。衝動が突き動かされる。
 タリムをベッドに座らせて、俺は剛直をつかむ。太さといい、堅さといい、親父の剛直と同じかもしれない。
 親父は奉仕されるのを嫌った。お袋を喜ばせることを好んだのだろう。だから、俺を喜ばせるほうに重きをおいていた。
 だけど、俺はタリムの剛直を口にくわえた。太くて、長いから、先を舐めるのがせいぜいだ。だけど、俺は夢中になって、先を舐める。
 刺激が欲しくて、タリムは俺の頭をつかんだ。深くいれたいんだろうな。俺は仕方がないので、タリムの剛直を喉奥まで突っ込んだ。
「すごいっ」
 嬉しそうに笑って、俺の頭をつかむタリム。なるほど、タリム、閨事には我慢がきかないんだな。俺は喉奥が苦しくなるほど、無理矢理、突っ込まれた。
 苦しいほど、俺の口の中を出し入れされた。そうして、タリムは一度、俺の中に白濁を放った。とんでもないまずいものだな、これ。
 身売りの知識としては、飲み込むしかない。俺は白濁を飲み込んで、やっと、口を解放された。
「げほっ、まずっ」
 苦しんでいる俺をタリムはベッドに押し付けるように倒した。お前、閨事に関しては、本当に我慢がきかない奴だな!!
 前戯なんてない。我慢がきかないタリムは、剛直を俺の後ろの蕾に突っ込んだ。
 女は濡れるが、男は濡れない。だから、何か塗らないと痛いだけだ。いくら俺が慣れていて、ゆるいといえども、痛いものは痛い。
「いっ!?」
 最奥にタリムの剛直が到達する。その感触は、身に覚えがある。過去、毎日のように受け入れていた。それを思い出すと、体全てが大喜びだ。
「あ、ああ、や、そんな、奥っ、だめぇ」
 容赦なく奥をついてくる。最初は確かに痛い。だけど、どんどんとそれが良いとなってくる。そうして、最奥で一度、タリムの白濁が放たれる。それのお陰で、挿入が楽になる。
 それは、タリムも同じだ。かなりえぐいことをしてくれる。抜けないようにギリギリまで抜いて、ずんと最奥に挿入する。それをものすごい速されされた。親父と同じことをされ、俺は乱れた。
「や、口、寂しい」
 ねだるように舌を出せば、気づいたタリムが口づけしてくる。俺はタリムの頭に腕をまわして、離れないようにして、舌を絡める。
 挿入はゆるくならない。それどころか激しくなってきた。若さがあるので、力いっぱい、最奥をついてきた。親父よりもえぐいな、これ。
「タリム、そこ、もっと、奥!!」
「そうか、もっと奥がいいのか!!」
「そう、奥!!」
 過去、そこばかり突かれていた。それを久しぶりにされて、嬉しくて、俺から求めてしまう。それを嬉しそうに喜んでタリムが与えてくれる。
 そこからは、もう、されるがままだ。理性が焼ききれた。座位にされても、俺が動くのではない。下からついてきた。苦しいくらい奥を突かれて、俺はおかしくなる。
「や、もう、むりぃ」
 女よりは力があるが、男よりは力がない。タリムは鍛えている。タリムの全力をぶつけられて、俺は意識を保てなかった。
 ベッドにうつ伏せで倒れると、タリムは一方的に俺を蹂躙する。俺はただ、受け入れるだけだ。痛いも気持ちよく、苦しいも気持ちよく、そうして、俺は意識を飛ばした。




 いつもの時間に目を覚ます。戻らないといけない。俺は妖精憑きの力ですぐに体の汚れを払って、ついでに回復させる。ベッドには、タリムがのんきに寝ている。まあ、一晩、そこで寝ていても、料金は同じだからな。
 俺はタリムを放置して、さっさと店を出る。外は真夜中すぎだ。そういう時間帯に帰るのは、久しぶりだ。走っていく。真夜中の貧民街はかなり危険だ。だけど、妖精憑きの俺には、大したことがない。人を避けて、すぐに、支配者の建物に到着する。いつものように、建物全体に、眠りの魔法がかけられている。
 ただ、威圧がすごい。とんでもないことが起きている予感がした。俺は音などおかまいないしに、コクーン爺さんの部屋に飛び込んだ。
 しかし、いつもの野良の妖精どもはいない。一体、何が来ているのか、と目を凝らすと、見えた!!
 俺は全身から物凄い汗が流れる。相手が悪すぎる。あれは、俺ではどうすることも出来ない妖精だ!?
 いつも見る野良の妖精は、猫や犬程度の大きさだ。
 目の前にいる妖精は、人の大きさをしていた。しかも、人を魅了するほどの美しさだ。きっと、美しさとか大きさが、妖精の力の大きさをあらわしているのだろう。
 あまりの力に、俺は動けなくなる。妖精は、眠りの魔法が効いていない妖精憑きである俺を見て、嫣然と微笑む。
『よくも、邪魔を』
 流暢に話す妖精。そうか、これまで俺がコクーン爺さんの寿命を盗る野良の妖精を邪魔したから、さらに上の妖精が来たわけか。ちくしょー、もっと上がいるなんて、知らなかったよ!?
 俺は殺されるのか。近づいてくる妖精を見て、そう思った。
 どうせ、ハガルの気まぐれがなければ、俺は処刑されてた。ちょっと長く生きただけだな。親父の復讐が失敗となってから、常に死を覚悟していた。だから、今殺されても、それは仕方がない、と諦めていた。
 ところが、俺の前に、突然、妖精が一体、姿を見せた。しかも、男型だ。
「ハガルめ、とんでもないハズレくじじゃないか。本当に、あいつは賭け事だけはしてはいけない」
 そう言って、俺を殺そうと向かってきた妖精の首を鷲掴みした。
『くっ、小僧、こんなこと、して』
「高位妖精程度が、生意気な。私は最高位の中の最高位の妖精だ」
『なっ、まさか、貴様はっ!?』
「未来の支配妖精の候補だ、下っ端。この男を守るように、妖精憑きに命じられている。手を出すのなら、最高位妖精といえども、容赦しない」
『小僧の、くせ、にっ』
「お前なんか、ババアだろう。何歳だ? 千歳か、二千歳か? クソババア」
『っ!?』
「逃がしてやるから、最高位妖精に伝えろ。この男に手を出すのなら、私が相手だ」
 男型の妖精が手を離すと、俺を殺そうとした妖精は、すっと消えていった。

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿