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海の貧民街
用無し
襲撃の次の日は恐怖でしかない。いや、襲撃うけた日も恐怖だ。ちょっとやり過ぎたので、心臓がむちゃくちゃ痛かった。
襲撃うけた日、余裕なんてないだろうに、コクーン爺さん、ヘレンお嬢さん、ワシムが入れ替わり、部屋にやってきた。が、絶対にいれない。俺はカーラーンにお願いして、その日は誰もいれさせなかった。ついでに、返事もカーラーンにお願いした。カーラーン、すごいよな。優秀で万能だよな。
次の日は、心臓の痛みはなくなった。が、動けない。
少し落ち着いたのだろう。俺のトコに来る奴らが増えてきた。さすがに、誰も入れないわけにはいかないので、ドアを解放した。ドアを開けっ放しにしたので、声をかけられたり、中に入って俺の様子見をしたり、と一方的に心配された。
「情けないな」
「聞いたぞ、逃げすぎて、筋肉痛なんだってな」
「もっと鍛えろよ」
散々なことを言われた。
俺が妖精憑きであることは、コクーン爺さんだけでなく、ワシムも知ることとなった。昨日の真夜中に、今後、どうするか、俺は三人で話し合った。俺が妖精憑きであることは隠し通すことをお願いした。魔法で作った火柱は、知らぬ存ぜぬで貫くこととなった。黙っていれば、人は勝手に答えを作ってくれる。
そんな中、物凄く心配したヘレンお嬢さんは、食事まで持ってきてくれる。
「いや、食べられない」
今、食べたら、間違いなく、喉に詰まって窒息死だな。言わないけど。身体強化って、本当に後は死ぬような目にあうばかりだよ。
「でも、昨日から食べていないと聞いています。少しでも」
死んじゃう!! 俺は無言で口を閉じる。話すのも、大変なんだよ、実は。
ヘレンお嬢さんが物言いたげに見てくる。
たまたま、様子見に来たワシムが、ヘレンお嬢さんから食事を取り上げる。
「ルキエルにお客さんだ」
「体調が悪いのに」
「ルキエルと付き合ってる男だよ」
「………」
無言となるヘレンお嬢さん。蔑むように俺を見おろす。俺は笑うしかない。タリムが来たんだな。
やってきたタリムは、ベッドで横たわった動かない俺を見て、駆け寄ってくる。
「怪我をしたのか!?」
「俺がここで暮らしているって、誰に聞いた?」
俺がどこで暮らしているか、実は知る者は少ない。コクーン爺さんが、俺のことを外で漏らさないように、緘口令を出してくれた。ここの出入りは、妖精の力で隠している。
まあ、俺に不満を持つ奴は多いから、緘口令なんて無視して、漏らしてるだろうがな。
「店で情報を買ったんだ」
さすが、貧民街。俺の情報も金にされちゃう! そこは、仕方がない。あの店だって、俺がどこの誰かをはっきりしないと、場所を提供してもらえない。コクーン爺さんトコでお世話になっている、というから、元王都の貧民街の支配者の娼夫、という謳い文句だって使わせてもらえたのだ。
俺は動けないし、話すのも必要最低限だ。ただ、タリムに目を向けるしかない。
「ここに暮らしていると聞いて、肝が冷えた。昨日、ここは襲撃にあってたんだぞ」
「知ってる。俺も巻き込まれたからな」
「一緒に暮らそう」
俺の手を握って、懇願してくるタリム。
「考えとく」
「今すぐだ。必要なものは、また揃えてやる。行こう」
「動けない」
「俺が抱いて連れてってやる」
「男の沽券が」
「そんなもの、もういいだろう!! 俺が一生、お前を養う!!!」
「………」
男に言われてしまった。もう、俺の人生、色々な意味で終わったな。
見れば、聞いていたヘレンお嬢さんが、ものすごく冷たく俺を見下ろしていた。他にも、聞いている奴らがいるし、ワシムなんか、呆れているよ。コクーン爺さんのトコにも、すぐに届いちゃうな、この告白劇。
「お前、女好きだよな?」
「ルキエルは特別だ。そんな、男とか女とか、関係ない。なあ、頼む。一緒に暮らそう!! 側にいてくれ!!!」
俺は震える手でタリムの頭を撫でる。毎日、千回素振りしている筋肉よ、頑張れ!!
「俺は違う。言っただろう、そういうのはわからない。俺、壊れてんだ」
随分と長いこと、親父の娼夫だった。親父に閨事強要されている時は、あんなに辛くて、苦しくて、逃げたいばかりだった。なのに、親父から解放されたのに、同じものを見つけて、喜んでいる。
「お前は、身代わりだ。俺はやめておけ」
「それでいい!!」
「他に見つけたらどうする? もっといい身代わりがいたら、平気で浮気するぞ」
「その相手を殺す」
「なんだ、それ」
笑ってしまう。タリムも随分、狂ってきたな。俺に関わって、こいつもダメになったか。
「今日は帰れ。明日、いつも店で会おう」
「いやだ。連れて帰る」
「今、動かしたら、吐く」
嘘ではない。本当だ。吐くものないから、苦しいのは俺だけどな!! もう、身体強化、使いたくない!!
本当か嘘かなんて、タリムもわからない。この期におよんでいうので、嘘っぽい。だけど、タリムは引き下がった。
俺の説得がきいたからではない。コクーン爺さんが、物凄い殺気を放ったからだ。俺とタリムのやり取りを止めに、わざわざ来てくれたんだな。ついでに、野次馬も払ってくれた。もうちょっと早く来てくれれば、告白劇、未遂になったのにな。
「ちょっと、無理しすぎただけだ。明日には元通りだ」
「待ってる」
タリム、俺が動けないことをいいことに、口づけしてきやがった。人目があるとこでやるのはやめてくれぇええええー----!!!
タリムは、部屋から出る時、コクーン爺さんを一睨みする。そして、帰っていった。
「見世物は終わりじゃ。さっさと持ち場に戻れ!!」
コクーン爺さんのお陰で、関係者だけが残る。
「ヘレンも出て行きなさい」
「わたくしは、お祖父様の後継ぎですよ」
何か感じたのだろう。ヘレンお嬢さんは居残ろうとした。
「その内、話すこととなる。今日は、出ていきなさい」
「………」
コクーン爺さんは孫には優しいよな。力づくなんて出来ない。
何より、ヘレンお嬢さんは、俺が何者か知りたがっている。俺が身体強化で敵を切り裂いたトコ、見てるからな。そりゃ、知りたいだろう。
「俺は妖精憑きだ」
もう、部屋にいるのは、コクーン爺さんとワシム、ヘレンお嬢さんの三人だ。秘密の共有としては、ここが限界だろうな。これを越えると、破綻する。
「嘘!? 妖精憑きなら、ここにいるはずがないわ」
「俺は生まれも育ちも貧民だ。よくある、話だ。儀式を受けないで、野放しにされたんだ。妖精憑きだから、魔法も使える。昨日は、魔法で身体強化をして戦ったんだ。あれな、無理矢理、体を動かすから、反動で、次の日は動けなくなるんだよ」
話すのも辛っ!! でも、随分と休んだから、だいぶ、戻ってきた。
「今日一日は、食べられない。飲み込む力がないから、窒息死する。それ以前に、妖精憑きは、一か月飲まず食わずでも生きていられる。これから、コクーン爺さんと密談だ。まだ、後継ぎ止まりのヘレンお嬢さんは出て行ってくれ」
泣きそうな顔になるヘレンお嬢さん。こんな最低な生き方をしている俺が、ヘレンお嬢さんを未熟者扱いだ。悔しいだろうな。
ワシムが無言でヘレンお嬢さんを部屋から出してくれた。ヘレンお嬢さん、どうせ、外で聞き耳たてているだろうが、魔法使えば、防音、完璧なんだよな。
コクーン爺さんは、改めて、俺の側に椅子を持って座る。
「今回は、助かった」
「頼み事があるんだけど」
「金か? お前から渡された金は、そのまま残っているぞ」
「もう、使ってくれていい。俺の友達な、金持ちなんだ。俺が心配で、定期的に、金送ってくるんだよ」
ハガル、最高位妖精カーラーンを通して、金送ってくるんだよな。最初の一回だけだろう、と俺は大事に使っていたってのにな。俺、ハガルに養われちゃってるよ。もう、ダメ人間まっしぐらだ。
目を丸くするコクーン爺さん。
「どうして、身売りしてるの?」
「仕事してないと、怪しまれるから。実際、そういう奴らが、ここでも、まあまあ見かける」
身売りして、客をとっていれば、これは、という貧民を見つけてしまう。コクーン爺さんは、無茶苦茶、いい人だから、あの程度の怪しい貧民は気にしないだろうな、とそのまま放置したのだ。
「そういう奴らが、昨日の襲撃を起こした。昨日一回で終わらせるつもりだったんだろうな。あんたたちを足止めして、本命はヘレンお嬢さんだ。ヘレンお嬢さんを凌辱して、誘拐して、人質にして、支配権を要求する予定だったんだろうな」
コクーン爺さんだけでなく、ワシムまで殺気立つ。こわっ!
「それで、頼み事とは、何じゃ?」
「殺気、怖いから、やめてぇ!!」
「おっと、すまんすまん」
笑顔で、殺気をどうにか片づけてくれるコクーン爺さん。あんたはおさめてくれたけど、ワシムがそのままだよ。
「ちょっと、こっそりとやってみたいことがある」
俺の頼み事、そんなに大変なことではない。理由をいえば、コクーン爺さんは、俺の頼み事をかなえてくれた。
明日はタリムと約束したので、仕事に行かないといけない。また、店で、告白劇みたいなことされるんだろうなー。もう、恥ずかしい!!
そんなことを考えていると、ノックもなく、ドアが開けられる。
「コクーン爺さん?」
「俺だ」
「………タリム、とうとう、夜這いか」
タリムは音もなくドアをしめて、俺が休むベッドにやってくる。
「ルキエル、怪我は、ないのか?」
「ないない。動き過ぎただけだ。体力、本当にないんだよ」
俺は起き上がった。随分と体が回復した。
「ここから出よう」
「目的は、ヘレンお嬢さんの誘拐か? コクーン爺さんの暗殺は難しいからなー」
「ルキエルを誘拐しに来た」
「妖精憑きに、嘘はついていけない。すぐにバレる」
せっかく起き上がれるようになった、というのに、タリムは俺をベッドに押し倒し、圧し掛かってきた。
「一緒に来てくれ。ルキエルだけは、特別なんだ。俺と一緒に行けば、ルキエルだけは殺されない」
噛みつくように口づけし、俺の体を愛撫する。だいたい、そうされると、俺は簡単にタリムに堕ちる。閨事突入だな。
だけど、俺はタリムを魔法で吹き飛ばした。タリムは壁に叩きつけられ、床に落下する。
タリムは、何が起こったのか、これっぽっちも理解していない。
「言ったよな、妖精憑きだって。俺は妖精憑きだ」
「嘘だ!! 妖精憑きは、病気にならない」
「身体強化の魔法を使ったんだ。あれは、とんでもない反動がある。無理矢理、常人以上の力を使うんだ。体が悲鳴をあげる。だから、次の日は、回復のために、動けなくなる。が、裏技がある」
俺はベッドから出る。
「他の妖精憑きの力で回復してもらえれば、元通りだ」
俺にしか見えない最高位妖精カーラーンを見る。妖精憑きハガルはいないが、カーラーンに頼んでみたら、俺を回復してくれた。いい奴だな、本当に。
実は、コクーン爺さんの密談時には、カーラーンの力で回復してもらって、動けるようになっていた。
「夜這いなんて嘘だろう。だって、ここ、ヘレンお嬢さんの部屋だからな」
「っ!?」
「俺がいたから、間違えた、と思ったんだろう。合ってる。ただ、俺がこっちに移動したんだ。ヘレンお嬢さんは別の部屋に移動してもらった」
「いつ、俺が敵だと気づいた?」
「今。来なかったら、敵だと気づかなかった。疑ってたけどな」
「そういうのは、気づいていた、というんだ」
「確信じゃない。だって、俺とお前、本当に何も知らない。俺が何者か、お前は知ってるか?」
「王都の貧民街の元支配者に飼われてたんだろう?」
「正確には、王都の貧民街の元支配者の息子で、娼夫だ。あの親父、実の息子を娼夫扱いだ」
魔法で、タリムをベッドに叩き落とす。ついでに、タリムをベッドから起き上がれないように魔法でおさえこんでやる。
「いつもと逆だな」
俺はタリムの上に圧し掛かる。
「ルキエル、愛してるんだ!! 一緒に行こう!!!」
「タリム、何度もいうが、お前の体だけが目的だ。感情なんていらない」
俺はタリムのずぼんを脱がして、あの俺を喜ばせる剛直を握る。
「親父と同じものだ」
俺は夢中で、タリムの剛直を舐める。タリムはどうにか動こうとするが、無駄だ。妖精憑きに、ただの人は勝てない。
しばらくすれば、タリムは白濁を俺の口の中に吐き出した。いつもなら飲み込むが、今回はそのまま、タリムの剛直に吐き出す。
俺自身の準備なんて必要ない。俺は、タリムの上から、剛直を受け止める。
一気に受け入れてみれば、相変わらずの剛直だ。奥をさらに突き破ろうとするほどの長さだ。太さも申し分ない。
俺は緩やかにタリムの剛直を挿入させる。普段は、タリムにやってもらうことを俺がするのだ。動きたい、とタリムが顔を歪めるが、俺はそれを許さない。
「やっぱり、タリムにやってもらうほうが、いいな。これは、ちょっと、物足りない」
「だったらっ」
「でも、まあ、今日でお別れだからな。ゆっくりと味わおう」
動けないタリムの剛直を好き勝手する。時にははやく、時にはゆっくりと挿入させる。奥に到達すると、苦痛で苦しいけど、嬉しくて、気持ちよくなる。
「そう、ここっ」
自分で、いい所にあたる角度を見つける。そこからは、あっという間だ。俺は体力がない。滑るように、こするように、時にはそこを突かれるような角度で挿入させ、俺はおかしくなってくる。
「あっ、きもちぃ、や、ここ!!」
俺が悶えている姿を見てか、それとも、挿入が良かったのか、タリムの剛直はどんどんと硬く、太く、長くなってくる。あまりの質量に、俺は危険とか顧みず、タリムに口づけし、舌を絡め、と滅茶苦茶になる。
だけど、タリムは動けない。俺だけが一方的に喜び、楽しみ、蹂躙して、とうとう、果てた。
「あああああー------!!!!」
とてつもない絶頂に、俺は声をあげてしまう。それも、カーラーンがしっかりと防音してくれているので、外には漏れない。最高位妖精様様だな。
タリムもそれなりに、俺の中で白濁を放ってくれたのに、これっぽっちも萎えない。若いから、元気だよな。親父なんか、薬使ってたよ。
「カーラーン、回復だ」
俺が命じれば、カーラーンは嫌そうな顔をしながらも、俺の体力を回復させてくれる。
「さて、どこまで出来るかな?」
俺は再び、タリムの上で腰を振る。タリムは驚く。いつもなら、ここで俺は力尽きていたからだ。
「やめろっ、ルキエル!!」
タリムが焦った声でいう。だけど、俺は聞いちゃいない。この最高の物をもっと味わいたい。
そうしていると、ドアが開いて、複数の男どもが入ってきた。俺とタリムの情事を見て、男どもは呆然となる。その隙に、俺は魔法でドアを堅く閉ざした。
お迎えだろう。タリムが上手にヘレンお嬢さんを拘束して、それを荷物として運ぶ奴らだ。ついでに、俺も連れて行こうとしたのか、人数が多い。
「あの独占欲の強い親父は、さすがに俺を輪姦させなかったな」
複数の男を相手したことはない。が、見覚えのある顔が多い。
それはそうだ。俺の客だ。一度は俺を話の種に買ってくれた。
「悪いな、俺はやっぱり、親父の剛直が一番いい」
俺は魔法で、侵入者たちを動けなくした。
タリムは絶望的な顔をする。仲間が呆気なく、動けなくなる。だけど、意識はそのままだ。
「タリム、もっと調整が出来るようになってたら、俺も裏切っただろうな。だけど、技術では、親父にはまだまだ及ばない」
「そんなっ」
あんなに体だけが目的だ、と言って、それを納得済みでの付き合いだったというのに、タリムは物凄く傷ついた。そして、ボロボロと泣き出す。ついでに、剛直が萎えさせてくれる。がっかりだ!!
傷心の俺は、しばらく、仕事をお休みして、部屋に引きこもっていた。
嘘です!! 早朝訓練の千回素振りをやりたくないので、さぼってるだけです!!!
俺はタリムたちの身柄をコクーン爺さんに売り払った。コクーン爺さんだけでなく、ワシムまで、俺のことを蔑むみたいに見てきたよ。え、せっかく敵勢力の主力を捕まえたってのに、それはないよね!!
「あんなに、熱烈にお前のことを欲してる相手を捨てるみたいに」
「体目当ての付き合いだから、仕方がない。もう、十分、満足した」
「言っておくが、情報を吐かせたら、殺すぞ?」
「どうぞどうぞ」
「殺すぞ!?」
「貧民街では、それが普通だ。情けなんて、持ったほうが負けだ」
生まれも育ちも貧民なので、元貴族のコクーン爺さんの感傷みたいなもの、俺はこれっぽっちも持たない。
「最後の最後で、使い物にならなくなったから、用無しだ」
俺に捨てられて、タリム、本当に使い物にならなくなった。何したって、タリムの剛直は萎えたままだったよ。
「最低だな!!」
「誉め言葉だ」
ワシムが心底そう思うみたいに言ってくれる。もっと言ってくれ。これっぽっちも気にしないから。
「今回は、たまたま、あの男が来たが、来なかったら、どうするつもりだ?」
「タリムは絶対に先陣で来る」
「そうとは限らないだろう」
俺がヘレンお嬢さんの部屋に移動した理由は、タリムが来るとわかっていたからだ。その話をした時、コクーン爺さんもワシムも半信半疑だった。
だけど、実際にタリムは来た。
「タリムと俺の関係は公となっている。万が一、知らない誰かに出くわしたとしても、俺の夜這い、と言い訳がたつからな」
「ヘレンとルキエルの部屋は、階だって違うだろう」
「一回しか来たことがないんだ。間違えた、と言えばいい。ついでに、魔法で簡単に侵入出来るようにしてやったけど」
余計な犠牲を出すわけにはいかないので、俺は魔法で人払いして、タリムの侵入を許したのだ。その後の侵入者も同じだ。
「あんなにお前のことを好きだという男を裏切るような真似を」
「俺はタリムの体が良かった。タリムは俺の関係を利用した。お互い、利用しあっていたんだ。お互い様だ」
「………」
呆れるコクーン爺さんとワシム。
「というわけで、行くとこ、またなくなっちゃったから、もう少し、ここでお世話になります」
「なくなったのは、ルキエル自身でやったんだがな」
「えー、コクーン爺さんの味方しただけなのにぃー。明日から、また素振り千回だ! 身体強化は苦しいから、もうやりたくないな」
「いらんじゃろ」
「俺の妖精、そんなに格高くないんだよね。物量で来たら、負ける。それに、妖精の力に頼った戦いは、妖精を失った時、大変だ。妖精に頼らない戦う手段は重要だ」
「そんな、戦う前提の生き方をしなくても」
「帝国は弱肉強食だ。力はあって困ることはない」
「………」
俺しか見えないけど、最高位妖精カーラーンまで、俺のことを呆れたように見てきた。生まれも育ちも貧民は、図太くないと、大変なんだよ。
襲撃うけた日、余裕なんてないだろうに、コクーン爺さん、ヘレンお嬢さん、ワシムが入れ替わり、部屋にやってきた。が、絶対にいれない。俺はカーラーンにお願いして、その日は誰もいれさせなかった。ついでに、返事もカーラーンにお願いした。カーラーン、すごいよな。優秀で万能だよな。
次の日は、心臓の痛みはなくなった。が、動けない。
少し落ち着いたのだろう。俺のトコに来る奴らが増えてきた。さすがに、誰も入れないわけにはいかないので、ドアを解放した。ドアを開けっ放しにしたので、声をかけられたり、中に入って俺の様子見をしたり、と一方的に心配された。
「情けないな」
「聞いたぞ、逃げすぎて、筋肉痛なんだってな」
「もっと鍛えろよ」
散々なことを言われた。
俺が妖精憑きであることは、コクーン爺さんだけでなく、ワシムも知ることとなった。昨日の真夜中に、今後、どうするか、俺は三人で話し合った。俺が妖精憑きであることは隠し通すことをお願いした。魔法で作った火柱は、知らぬ存ぜぬで貫くこととなった。黙っていれば、人は勝手に答えを作ってくれる。
そんな中、物凄く心配したヘレンお嬢さんは、食事まで持ってきてくれる。
「いや、食べられない」
今、食べたら、間違いなく、喉に詰まって窒息死だな。言わないけど。身体強化って、本当に後は死ぬような目にあうばかりだよ。
「でも、昨日から食べていないと聞いています。少しでも」
死んじゃう!! 俺は無言で口を閉じる。話すのも、大変なんだよ、実は。
ヘレンお嬢さんが物言いたげに見てくる。
たまたま、様子見に来たワシムが、ヘレンお嬢さんから食事を取り上げる。
「ルキエルにお客さんだ」
「体調が悪いのに」
「ルキエルと付き合ってる男だよ」
「………」
無言となるヘレンお嬢さん。蔑むように俺を見おろす。俺は笑うしかない。タリムが来たんだな。
やってきたタリムは、ベッドで横たわった動かない俺を見て、駆け寄ってくる。
「怪我をしたのか!?」
「俺がここで暮らしているって、誰に聞いた?」
俺がどこで暮らしているか、実は知る者は少ない。コクーン爺さんが、俺のことを外で漏らさないように、緘口令を出してくれた。ここの出入りは、妖精の力で隠している。
まあ、俺に不満を持つ奴は多いから、緘口令なんて無視して、漏らしてるだろうがな。
「店で情報を買ったんだ」
さすが、貧民街。俺の情報も金にされちゃう! そこは、仕方がない。あの店だって、俺がどこの誰かをはっきりしないと、場所を提供してもらえない。コクーン爺さんトコでお世話になっている、というから、元王都の貧民街の支配者の娼夫、という謳い文句だって使わせてもらえたのだ。
俺は動けないし、話すのも必要最低限だ。ただ、タリムに目を向けるしかない。
「ここに暮らしていると聞いて、肝が冷えた。昨日、ここは襲撃にあってたんだぞ」
「知ってる。俺も巻き込まれたからな」
「一緒に暮らそう」
俺の手を握って、懇願してくるタリム。
「考えとく」
「今すぐだ。必要なものは、また揃えてやる。行こう」
「動けない」
「俺が抱いて連れてってやる」
「男の沽券が」
「そんなもの、もういいだろう!! 俺が一生、お前を養う!!!」
「………」
男に言われてしまった。もう、俺の人生、色々な意味で終わったな。
見れば、聞いていたヘレンお嬢さんが、ものすごく冷たく俺を見下ろしていた。他にも、聞いている奴らがいるし、ワシムなんか、呆れているよ。コクーン爺さんのトコにも、すぐに届いちゃうな、この告白劇。
「お前、女好きだよな?」
「ルキエルは特別だ。そんな、男とか女とか、関係ない。なあ、頼む。一緒に暮らそう!! 側にいてくれ!!!」
俺は震える手でタリムの頭を撫でる。毎日、千回素振りしている筋肉よ、頑張れ!!
「俺は違う。言っただろう、そういうのはわからない。俺、壊れてんだ」
随分と長いこと、親父の娼夫だった。親父に閨事強要されている時は、あんなに辛くて、苦しくて、逃げたいばかりだった。なのに、親父から解放されたのに、同じものを見つけて、喜んでいる。
「お前は、身代わりだ。俺はやめておけ」
「それでいい!!」
「他に見つけたらどうする? もっといい身代わりがいたら、平気で浮気するぞ」
「その相手を殺す」
「なんだ、それ」
笑ってしまう。タリムも随分、狂ってきたな。俺に関わって、こいつもダメになったか。
「今日は帰れ。明日、いつも店で会おう」
「いやだ。連れて帰る」
「今、動かしたら、吐く」
嘘ではない。本当だ。吐くものないから、苦しいのは俺だけどな!! もう、身体強化、使いたくない!!
本当か嘘かなんて、タリムもわからない。この期におよんでいうので、嘘っぽい。だけど、タリムは引き下がった。
俺の説得がきいたからではない。コクーン爺さんが、物凄い殺気を放ったからだ。俺とタリムのやり取りを止めに、わざわざ来てくれたんだな。ついでに、野次馬も払ってくれた。もうちょっと早く来てくれれば、告白劇、未遂になったのにな。
「ちょっと、無理しすぎただけだ。明日には元通りだ」
「待ってる」
タリム、俺が動けないことをいいことに、口づけしてきやがった。人目があるとこでやるのはやめてくれぇええええー----!!!
タリムは、部屋から出る時、コクーン爺さんを一睨みする。そして、帰っていった。
「見世物は終わりじゃ。さっさと持ち場に戻れ!!」
コクーン爺さんのお陰で、関係者だけが残る。
「ヘレンも出て行きなさい」
「わたくしは、お祖父様の後継ぎですよ」
何か感じたのだろう。ヘレンお嬢さんは居残ろうとした。
「その内、話すこととなる。今日は、出ていきなさい」
「………」
コクーン爺さんは孫には優しいよな。力づくなんて出来ない。
何より、ヘレンお嬢さんは、俺が何者か知りたがっている。俺が身体強化で敵を切り裂いたトコ、見てるからな。そりゃ、知りたいだろう。
「俺は妖精憑きだ」
もう、部屋にいるのは、コクーン爺さんとワシム、ヘレンお嬢さんの三人だ。秘密の共有としては、ここが限界だろうな。これを越えると、破綻する。
「嘘!? 妖精憑きなら、ここにいるはずがないわ」
「俺は生まれも育ちも貧民だ。よくある、話だ。儀式を受けないで、野放しにされたんだ。妖精憑きだから、魔法も使える。昨日は、魔法で身体強化をして戦ったんだ。あれな、無理矢理、体を動かすから、反動で、次の日は動けなくなるんだよ」
話すのも辛っ!! でも、随分と休んだから、だいぶ、戻ってきた。
「今日一日は、食べられない。飲み込む力がないから、窒息死する。それ以前に、妖精憑きは、一か月飲まず食わずでも生きていられる。これから、コクーン爺さんと密談だ。まだ、後継ぎ止まりのヘレンお嬢さんは出て行ってくれ」
泣きそうな顔になるヘレンお嬢さん。こんな最低な生き方をしている俺が、ヘレンお嬢さんを未熟者扱いだ。悔しいだろうな。
ワシムが無言でヘレンお嬢さんを部屋から出してくれた。ヘレンお嬢さん、どうせ、外で聞き耳たてているだろうが、魔法使えば、防音、完璧なんだよな。
コクーン爺さんは、改めて、俺の側に椅子を持って座る。
「今回は、助かった」
「頼み事があるんだけど」
「金か? お前から渡された金は、そのまま残っているぞ」
「もう、使ってくれていい。俺の友達な、金持ちなんだ。俺が心配で、定期的に、金送ってくるんだよ」
ハガル、最高位妖精カーラーンを通して、金送ってくるんだよな。最初の一回だけだろう、と俺は大事に使っていたってのにな。俺、ハガルに養われちゃってるよ。もう、ダメ人間まっしぐらだ。
目を丸くするコクーン爺さん。
「どうして、身売りしてるの?」
「仕事してないと、怪しまれるから。実際、そういう奴らが、ここでも、まあまあ見かける」
身売りして、客をとっていれば、これは、という貧民を見つけてしまう。コクーン爺さんは、無茶苦茶、いい人だから、あの程度の怪しい貧民は気にしないだろうな、とそのまま放置したのだ。
「そういう奴らが、昨日の襲撃を起こした。昨日一回で終わらせるつもりだったんだろうな。あんたたちを足止めして、本命はヘレンお嬢さんだ。ヘレンお嬢さんを凌辱して、誘拐して、人質にして、支配権を要求する予定だったんだろうな」
コクーン爺さんだけでなく、ワシムまで殺気立つ。こわっ!
「それで、頼み事とは、何じゃ?」
「殺気、怖いから、やめてぇ!!」
「おっと、すまんすまん」
笑顔で、殺気をどうにか片づけてくれるコクーン爺さん。あんたはおさめてくれたけど、ワシムがそのままだよ。
「ちょっと、こっそりとやってみたいことがある」
俺の頼み事、そんなに大変なことではない。理由をいえば、コクーン爺さんは、俺の頼み事をかなえてくれた。
明日はタリムと約束したので、仕事に行かないといけない。また、店で、告白劇みたいなことされるんだろうなー。もう、恥ずかしい!!
そんなことを考えていると、ノックもなく、ドアが開けられる。
「コクーン爺さん?」
「俺だ」
「………タリム、とうとう、夜這いか」
タリムは音もなくドアをしめて、俺が休むベッドにやってくる。
「ルキエル、怪我は、ないのか?」
「ないない。動き過ぎただけだ。体力、本当にないんだよ」
俺は起き上がった。随分と体が回復した。
「ここから出よう」
「目的は、ヘレンお嬢さんの誘拐か? コクーン爺さんの暗殺は難しいからなー」
「ルキエルを誘拐しに来た」
「妖精憑きに、嘘はついていけない。すぐにバレる」
せっかく起き上がれるようになった、というのに、タリムは俺をベッドに押し倒し、圧し掛かってきた。
「一緒に来てくれ。ルキエルだけは、特別なんだ。俺と一緒に行けば、ルキエルだけは殺されない」
噛みつくように口づけし、俺の体を愛撫する。だいたい、そうされると、俺は簡単にタリムに堕ちる。閨事突入だな。
だけど、俺はタリムを魔法で吹き飛ばした。タリムは壁に叩きつけられ、床に落下する。
タリムは、何が起こったのか、これっぽっちも理解していない。
「言ったよな、妖精憑きだって。俺は妖精憑きだ」
「嘘だ!! 妖精憑きは、病気にならない」
「身体強化の魔法を使ったんだ。あれは、とんでもない反動がある。無理矢理、常人以上の力を使うんだ。体が悲鳴をあげる。だから、次の日は、回復のために、動けなくなる。が、裏技がある」
俺はベッドから出る。
「他の妖精憑きの力で回復してもらえれば、元通りだ」
俺にしか見えない最高位妖精カーラーンを見る。妖精憑きハガルはいないが、カーラーンに頼んでみたら、俺を回復してくれた。いい奴だな、本当に。
実は、コクーン爺さんの密談時には、カーラーンの力で回復してもらって、動けるようになっていた。
「夜這いなんて嘘だろう。だって、ここ、ヘレンお嬢さんの部屋だからな」
「っ!?」
「俺がいたから、間違えた、と思ったんだろう。合ってる。ただ、俺がこっちに移動したんだ。ヘレンお嬢さんは別の部屋に移動してもらった」
「いつ、俺が敵だと気づいた?」
「今。来なかったら、敵だと気づかなかった。疑ってたけどな」
「そういうのは、気づいていた、というんだ」
「確信じゃない。だって、俺とお前、本当に何も知らない。俺が何者か、お前は知ってるか?」
「王都の貧民街の元支配者に飼われてたんだろう?」
「正確には、王都の貧民街の元支配者の息子で、娼夫だ。あの親父、実の息子を娼夫扱いだ」
魔法で、タリムをベッドに叩き落とす。ついでに、タリムをベッドから起き上がれないように魔法でおさえこんでやる。
「いつもと逆だな」
俺はタリムの上に圧し掛かる。
「ルキエル、愛してるんだ!! 一緒に行こう!!!」
「タリム、何度もいうが、お前の体だけが目的だ。感情なんていらない」
俺はタリムのずぼんを脱がして、あの俺を喜ばせる剛直を握る。
「親父と同じものだ」
俺は夢中で、タリムの剛直を舐める。タリムはどうにか動こうとするが、無駄だ。妖精憑きに、ただの人は勝てない。
しばらくすれば、タリムは白濁を俺の口の中に吐き出した。いつもなら飲み込むが、今回はそのまま、タリムの剛直に吐き出す。
俺自身の準備なんて必要ない。俺は、タリムの上から、剛直を受け止める。
一気に受け入れてみれば、相変わらずの剛直だ。奥をさらに突き破ろうとするほどの長さだ。太さも申し分ない。
俺は緩やかにタリムの剛直を挿入させる。普段は、タリムにやってもらうことを俺がするのだ。動きたい、とタリムが顔を歪めるが、俺はそれを許さない。
「やっぱり、タリムにやってもらうほうが、いいな。これは、ちょっと、物足りない」
「だったらっ」
「でも、まあ、今日でお別れだからな。ゆっくりと味わおう」
動けないタリムの剛直を好き勝手する。時にははやく、時にはゆっくりと挿入させる。奥に到達すると、苦痛で苦しいけど、嬉しくて、気持ちよくなる。
「そう、ここっ」
自分で、いい所にあたる角度を見つける。そこからは、あっという間だ。俺は体力がない。滑るように、こするように、時にはそこを突かれるような角度で挿入させ、俺はおかしくなってくる。
「あっ、きもちぃ、や、ここ!!」
俺が悶えている姿を見てか、それとも、挿入が良かったのか、タリムの剛直はどんどんと硬く、太く、長くなってくる。あまりの質量に、俺は危険とか顧みず、タリムに口づけし、舌を絡め、と滅茶苦茶になる。
だけど、タリムは動けない。俺だけが一方的に喜び、楽しみ、蹂躙して、とうとう、果てた。
「あああああー------!!!!」
とてつもない絶頂に、俺は声をあげてしまう。それも、カーラーンがしっかりと防音してくれているので、外には漏れない。最高位妖精様様だな。
タリムもそれなりに、俺の中で白濁を放ってくれたのに、これっぽっちも萎えない。若いから、元気だよな。親父なんか、薬使ってたよ。
「カーラーン、回復だ」
俺が命じれば、カーラーンは嫌そうな顔をしながらも、俺の体力を回復させてくれる。
「さて、どこまで出来るかな?」
俺は再び、タリムの上で腰を振る。タリムは驚く。いつもなら、ここで俺は力尽きていたからだ。
「やめろっ、ルキエル!!」
タリムが焦った声でいう。だけど、俺は聞いちゃいない。この最高の物をもっと味わいたい。
そうしていると、ドアが開いて、複数の男どもが入ってきた。俺とタリムの情事を見て、男どもは呆然となる。その隙に、俺は魔法でドアを堅く閉ざした。
お迎えだろう。タリムが上手にヘレンお嬢さんを拘束して、それを荷物として運ぶ奴らだ。ついでに、俺も連れて行こうとしたのか、人数が多い。
「あの独占欲の強い親父は、さすがに俺を輪姦させなかったな」
複数の男を相手したことはない。が、見覚えのある顔が多い。
それはそうだ。俺の客だ。一度は俺を話の種に買ってくれた。
「悪いな、俺はやっぱり、親父の剛直が一番いい」
俺は魔法で、侵入者たちを動けなくした。
タリムは絶望的な顔をする。仲間が呆気なく、動けなくなる。だけど、意識はそのままだ。
「タリム、もっと調整が出来るようになってたら、俺も裏切っただろうな。だけど、技術では、親父にはまだまだ及ばない」
「そんなっ」
あんなに体だけが目的だ、と言って、それを納得済みでの付き合いだったというのに、タリムは物凄く傷ついた。そして、ボロボロと泣き出す。ついでに、剛直が萎えさせてくれる。がっかりだ!!
傷心の俺は、しばらく、仕事をお休みして、部屋に引きこもっていた。
嘘です!! 早朝訓練の千回素振りをやりたくないので、さぼってるだけです!!!
俺はタリムたちの身柄をコクーン爺さんに売り払った。コクーン爺さんだけでなく、ワシムまで、俺のことを蔑むみたいに見てきたよ。え、せっかく敵勢力の主力を捕まえたってのに、それはないよね!!
「あんなに、熱烈にお前のことを欲してる相手を捨てるみたいに」
「体目当ての付き合いだから、仕方がない。もう、十分、満足した」
「言っておくが、情報を吐かせたら、殺すぞ?」
「どうぞどうぞ」
「殺すぞ!?」
「貧民街では、それが普通だ。情けなんて、持ったほうが負けだ」
生まれも育ちも貧民なので、元貴族のコクーン爺さんの感傷みたいなもの、俺はこれっぽっちも持たない。
「最後の最後で、使い物にならなくなったから、用無しだ」
俺に捨てられて、タリム、本当に使い物にならなくなった。何したって、タリムの剛直は萎えたままだったよ。
「最低だな!!」
「誉め言葉だ」
ワシムが心底そう思うみたいに言ってくれる。もっと言ってくれ。これっぽっちも気にしないから。
「今回は、たまたま、あの男が来たが、来なかったら、どうするつもりだ?」
「タリムは絶対に先陣で来る」
「そうとは限らないだろう」
俺がヘレンお嬢さんの部屋に移動した理由は、タリムが来るとわかっていたからだ。その話をした時、コクーン爺さんもワシムも半信半疑だった。
だけど、実際にタリムは来た。
「タリムと俺の関係は公となっている。万が一、知らない誰かに出くわしたとしても、俺の夜這い、と言い訳がたつからな」
「ヘレンとルキエルの部屋は、階だって違うだろう」
「一回しか来たことがないんだ。間違えた、と言えばいい。ついでに、魔法で簡単に侵入出来るようにしてやったけど」
余計な犠牲を出すわけにはいかないので、俺は魔法で人払いして、タリムの侵入を許したのだ。その後の侵入者も同じだ。
「あんなにお前のことを好きだという男を裏切るような真似を」
「俺はタリムの体が良かった。タリムは俺の関係を利用した。お互い、利用しあっていたんだ。お互い様だ」
「………」
呆れるコクーン爺さんとワシム。
「というわけで、行くとこ、またなくなっちゃったから、もう少し、ここでお世話になります」
「なくなったのは、ルキエル自身でやったんだがな」
「えー、コクーン爺さんの味方しただけなのにぃー。明日から、また素振り千回だ! 身体強化は苦しいから、もうやりたくないな」
「いらんじゃろ」
「俺の妖精、そんなに格高くないんだよね。物量で来たら、負ける。それに、妖精の力に頼った戦いは、妖精を失った時、大変だ。妖精に頼らない戦う手段は重要だ」
「そんな、戦う前提の生き方をしなくても」
「帝国は弱肉強食だ。力はあって困ることはない」
「………」
俺しか見えないけど、最高位妖精カーラーンまで、俺のことを呆れたように見てきた。生まれも育ちも貧民は、図太くないと、大変なんだよ。
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