魔法使いの悪友

shishamo346

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修理屋

種馬候補

 さすが、山の貧民街の支配者ナラータは体力がある。徹夜だってのに、まあまあ元気だ。ベッドで横になっている姿は可愛いな。
「さて、お人形遊びだ」
 さっさと服を着る俺を物言いたげに見上げるナラータ。
「人形遊びが好きなのか?」
「道具いじりが好きなんだよ。あのお人形さんは、これっぽっちも役に立たないけどな」
「ケリンは、使おうとしているぞ」
「ふーん、そうなんだ。別に、帝国と内戦仕掛けないのなら、好きに使えばいいけどね」
「アンタは、そういうこと考えないんだな」
「一度、復讐心でやった。その時、本当の恐怖を味わった。二度と、帝国には逆らわないと誓ったんだ。情けないと思うなら、この関係は終わりにして構わない」
「い、いや、続けよう」
「いーいーのーかーなー?」
 俺は昨日、見た、中央の貧民街の支配者ケリンの様子が気になる。本当に、このまま、最後までしてよいかどうか、判断が難しい。
 ナラータを見ていると、別にケリンに何か思いがあるわけではない。ただ、困った時には頼っている、という感じだ。だけど、ケリンは違うようだ。
 こうして接するのは、一週間くらいの日数だ。人間関係とか内面は、たった一週間でわけるわけではない。
 数年、仲良くしていた筆頭魔法使いハガルの内面すら、いまだに謎だってのにな。ハガルは俺のことを友達だって言ってくれてるけど、お互い、どこまで内面がわかっているのやら。
「今日も迎えに行こう」
「昨日と同じことして待っていればいいか?」
「ヘレンお嬢さんはやめろ。なんだあれ、嫌がらせか?」
 迎えに行けば、女子会してたけど、よりによって、ヘレンお嬢さんがいるとは。しかも、ナラータ、種馬話までしてたんだな。まあ、女子だから、仕方がないか。女を敵に回すと、後々、大変だからな。
「アンタのことを聞きたくて、話してたんだ。種馬にするんだから、どういう男か、知りたかった」
「どうせ、最低最悪な軟弱男、みたいに言われてたんだろうな」
 ここに来たばかりの頃の、ヘレンお嬢さんの中での俺の評価は、明らかにそうだった。木剣すらまともに素振りが出来ないほど、腕の力がなくて、男相手に身売りをしているような俺は、最低最悪だよな。
「褒めてたよ。悪く言われても、笑顔で受け流すほど懐が大きくて、女には優しくて、いざとなったら、頼りになる男だ、と」
「え、それ、誰のこと?」
「アンタだ、アンタ」
 俺を指さすナラータ。びっくりだ、そんな評価されているなんて、知らなかった。
「なんだ、強く否定しないんだな」
「他人がどう見ているかなんて、俺には関係ない。それよりも、どう生きていくかだ。俺はまだ、復讐が終わった後の人生をこれっぽっちも考えていなかった」
「ずっと、ここにいるんだろう?」
「内戦が勃発する前までは、そう考えてた。けど、今は違う。静かにひっそりと暮らすには、周りが煩くなりすぎた。いっそのこと、王国に移住しちゃうか」
 思ったよりも、いい考えだ。帝国にこだわらなければ、王国はいい場所だ。同じ信仰だし、帝国とは協力関係にある。
 何より、魔法使いという職業が存在しない。
 上手に、妖精憑きであることを隠し通せば、王国では、普通に生きていけるだろう。俺一人で移住というのは不可能だけどな。
「帝国を、出て、行くのか?」
 ナラータは真っ青な顔をして聞き返してくる。あ、これはまずいことを言った感じだ。
「可能性の話だ。すぐにここを離れることはない。まだ、やらなきゃいけないことがあるんだ」
「道具の管理とかの伝授が終われば、出ていくんだろう!?」
「それは、俺がいなくてもいいようにするためのことだ。やるべきことではない。俺がここにいるのは、神と妖精、聖域の導きだ。俺の役割は、ここにある」
 思い返せば、偶然にしては、出来過ぎなことばかりだ。帝国から解放されてすぐ、海の貧民街の支配者コクーン爺さんに出会った。このコクーン爺さんの身の上は、何か訳アリで、俺は気になって、海の貧民街で客人として居座ることとなった。それからすぐ、俺自身の妖精憑きとしての格が爆上がりしたのだ。
 そして、今回、人型の義体が俺の元にやってきた。この義体は一見すると、役立たずだ。ケリンは何か使えると見ているが、それは、妖精を貶める行いだろう。もう一体、人型の義体を俺に作らせようと、それっぽい道具まで持ってきたのだから、悪いこと考えてるんだろうな。組み立てないけどね。
「話しすぎた。俺はもう行く」
「待て!!」
 残念ながら、力ではナラータには勝てない。この女、そこら辺の男よりも力持ちだ。腕を掴まれたら、俺は逃げられない。
「暗い話はしたくないんだが」
「王国への移住は考えるな。万が一、その話が広がったら、お前の自由はなくなるぞ」
「今でも、自由がないけどな。王国の移住は、半分は冗談だ。たぶん、不可能だろうな。そんな予感がする」
 勘というものは、大事にしなければならない。この勘で、色々と助けられた。
 ナラータは、まだ、何か言いたそうだ。
「ここのことは、話していいぞ。別に、話されて困る内容ではないしな」
「王国への移住の話もか?」
「好きにしろ。どうあがいたって、妖精憑きをただの人が閉じ込めるのは不可能だ」
「アンタは、わかっていない。どうして、貧民街で、妖精憑きを隠し持っていられると思う? 妖精憑きを拘束出来る方法を持っているからだ。その方法を使えば、アンタだって」
「たぶん、無理なんだろう。わかる。格の高い妖精憑きは、人が扱える範疇ではない。だから、帝国は魔法使いとして使役する方法を隠し持っている。貧民街ごときが持っている手段では、俺は縛れないだろう。王都にいた頃、俺が大人しく親父の娼夫をしていたのは、復讐のためだ。復讐が終われば、俺を縛るものはないんだ」
 そう言ってやれば、ナラータは俺の腕を離してくれた。
「怖がらせてしまったな」
 真っ青になって震えるナラータ。ついつい、俺も本性を見せてしまったな。ちょっと大人しくしてよう。
 そして、俺が一人、寝泊りさせてもらっている海の貧民街の支配者が所有する建物のトコにいけば、大変なこととなっていた。
 建物のまえに、手勢を集めた中央の貧民街の支配者ケリンが俺を待ち構えていた。
「えーと、これ、何?」
「君と僕で勝負だ」
「俺、身体強化を禁止されてるんだけど」
「妖精憑きとしての力を使えばいい。こちらは、それなりの対抗策の道具を持ってきているし、同じように妖精憑きを使う」
 中央の貧民街が隠し持っている妖精憑き数人が連れて来られている。だけど、俺を見て、真っ青になってぷるぷる震えてるよ!! 大丈夫!?
 ケリンなりに、一晩、寝ないで考えたんだろうな。その答えが、こうなのかー。
「えーと、これ、ナラータが関係してる?」
「そうだ!! ナラータの種馬の依頼を止めさせる!!!」
「もう、一晩、やっちゃったけど、それはどうなの?」
「っ!?」
 怒りで顔を真っ赤にするケリン。そうなんだよ、もう遅いんだよ。最後までやってないけど、お互い、恥ずかしいことはしたんだ。
「万が一、その一回で妊娠したとしても、父親の役割は僕がする」
 大丈夫、妊娠しないから!! だって、最後までしてないもん!!!
 俺は声を大にして言いたいけど、黙っている。だって、面白いじゃん。こんな楽しいこと、なかなかないぞ。
「カーラーン、出番だ」
「まさか、私の力を使うのか!?」
「違う違う。あの義体に取り憑け」
「………」
「ついでに、検証だ。俺の代わりに、お前がケリンの相手をしろ」
「忘れていた、貴様は本当に最低最悪な男だってことを」
 舌打ちして、カーラーンは姿を消した。きっと、地下にある義体にとり憑いたんだろうな。いいヤツだな、本当に。
 カーラーンがいないので、俺自身は妖精憑きとしては無力に等しい。俺がぼけーとしていると、ケリンが命じたようで、妖精憑きたちが捨て身で攻撃してくる。
 だけど、俺は妖精憑きの格を使って、向かってくる妖精を盗って、一瞬で俺の持ち物にしてしまう。
「ば、化け物!?」
 妖精憑きでさえ恐れる俺に、中央の貧民街ではそれなりの実力を持つ男どもは尻込みしている。それでも、ケリンは剣を抜き放つ。
「これは、妖精殺しの剣だ。いくら君でも、この武器の前では無力だ!!」
「そこは、義体にまかせよう。カーラーン、出番だ!!」
 俺が叫べば、義体にとりついたカーラーンがケリンの背後を強襲する。ケリン、実力は本物だから、カーラーンの体当たりを上手に避ける。
「誰だ!?」
 義体にカーラーンがとりつくと、なんと、義体はカーラーンの姿だ。しかも、服までそのまんまかー。カーラーンは俺の隣りに立つので、ついつい、俺はカーラーンの体をぺたぺたと触ってしまう。
「あるんだ、男の勲章」
「確かめるな!!」
「そうかー、かなりいいもの持ってるんだな。使えるか、今度、確かめてみよう」
「しない!!」
 俺がいつもの調子だから、カーラーン、激怒する。ほら、道具だから、ついつい、興奮しちゃったよ。
「ケリン、ほら、見てよ。義体に妖精つけたら、妖精の姿に変わったよ。すごいなー、どうなってるんだろうなー」
「こんな時に、冗談をいうな!?」
「えー、本当なのに。最高位妖精だぞ。野良の妖精でも、たぶん、一生に一度、お目にかかれば奇跡と言われる妖精だぞ」
「嘘をつくな!?」
 ケリンは、目の前でされていないので、信じられないのだ。ついでに、怒りで頭に血がのぼって、冷静さがないんだな。
 仕方なく、カーラーンには、一度、義体から離れてもらった。
 目の前で、カーラーンだったものが、ただの義体になって、倒れる。それを見たケリンは呆然となる。
「君は、僕が真剣に勝負を申し込んでいるというのに、実験をしていたのか!?」
 そして、違う意味で怒りを再燃させる。
「妖精憑きの力を使っていい、というから、使ったまでだ。これだって、立派な妖精憑きの力だ」
「バカにされているとしか思えない!?」
「そりゃするさ。一晩、悶々と考えて、後の祭りになって答えを出すんだからな。遅すぎるんだよ、お前」
 俺は蔑むようにケリンを見る。
「俺が一晩、ナラータを可愛がっている間、お前は何してた? 考えていただけか? もっとあっただろう。お前には手下がいたんだ。上手に俺とナラータを止めることだって出来た。それもしないで、悶々と考えてたんだ。俺に当たるのはお門違いだ。まずは、自分自身のだめっぷりを反省するために、どっかに頭ぶつけてこい!!」
 俺が珍しく正論を述べてやると、ケリンは妖精殺しの剣を落として、膝をついた。そして、地面に向かって、頭を打ち付けたのだ!?
「ちょっ、何やってんだ、お前!?」
 俺は慌ててケリンを止めに行く。俺が動くと、ケリンの配下たちも一緒になって、ケリンを止めた。
「反省のために、頭をぶつけてるんだ!!」
 どこかおかしくなったのか、額とか流血するほどぶつけたよ!! 俺はついつい、ケリンの怪我を魔法で治す。
「君になら、ナラータを任せられる」
「勝手に任せないで!? こう言ってはなんだが、俺はかなり面倒な男だ。裏切れば殺すし、禁句言っただけで殺すし、何事かあると女々しいし、浮気はするし、体目当てで男と付き合うし、ともなく面倒くさいんだ」
 言っていて、落ち込んできた。本当に、俺、最低で面倒くさい男だな。女々しいとこもいっぱいだ。
「そういうのが許せてしまうほど、君にはいいところがある。懐が広い。僕が手勢を連れて、仕掛けたというのに、これっぽっちも気にしていない」
「それなりに力のある妖精憑きにとって、この手勢程度は、片手間だからな。それで、この義体、お前はどういう使い方をするつもりだったんだ?」
「言わないといけないか?」
「妖精が随分と警戒してる。大昔、この義体は悪用されたんだ。同じようなことを起こすようなら、俺は義体を壊す」
「資料、読んだんだよね。僕も何度も読んだ」
「大変だっただろう」
 俺の手元に来る前の資料は、酷い状態だった。埃やら何やら、触るのも気持ち悪い感じだった。ついでに、文字だって、読めたり読めなかったりしたはずだ。欠けている所もあっただろう。それを何度も読んだのだから、執念と言っていい。
「これを使って、ナラータを守りたかった。これは、無敵の兵士だ。死なないし、壊れても、妖精憑きの力があれば、簡単に修復できる。だけど、肝心の妖精がわからなかった。だから、君を利用した」
「利用されちゃったか。まあ、楽しいからいいけどな。だけど、これには大きな欠点がある。妖精の格も、妖精憑きの格も、それなりに必要だ。それを手に入れるのは、不可能だ」
「君がいる」
「俺をあてにする時点で破綻している。大事な女だというなら、自力でやれ。それ以前に、ナラータは、これっぽっちも、そんなこと望んでないだろう。きちんと、ナラータと話せ」
「そんな、どうやって!?」
 こいつ、いざとなったら、黙って何もできない男だな。
 見た目がいいんだけどな。体格だってしっかりしているし。頭だっていいんだよ、こいつ。だけど、肝心なところで、俺と同じようにヘタレになっちゃうかー。
 俺は隙だらけのケリンを押し倒し、その上に圧し掛かる。
「な、何をっ!?」
「筋肉はいい感じだが、さて、肝心の下半身はどうかな?」
「やめてぇええええ!!!」
 俺がやること、ケリンの手勢は止めない。唖然としているのだ。まさか、こんな公衆の面前で、俺がケリンの体をまさぐるなんて、思ってもいなかったのだろう。
「いいもの持ってるな。お前が金さえ払えば、俺との一夜、ナナキも許してくれる。金なしでの閨事は浮気だが、金さえ払われれば、ただの身売りだ」
「ちょ、お前、正気か!?」
「心臓が止まったから、と随分と男に抱かれていない。もうそろそろ、俺も我慢の限界だ。いきなりナナキ相手はきついからな。まずは、貴様で体の調子を整えよう」
「やめてぇえええー---!!」
 さすがにケリン、全力で抵抗してきた。貧民街の支配者のくせに、面白いな。怪我させられるので、俺はさっさとケリンから離れる。
「何やってんだ、テメェ!!」
 そして、途中から俺とケリンのやり取りを見ていた山の貧民街の支配者ナラータに、おもいっきり頭を殴られた。
「いってぇなー。ちょっとした冗談だ、冗談」
「ケリン、大丈夫か!? もう、本当に最低最悪な男だな!!」
「褒めの言葉だ。昨夜は、あんなに可愛かったというのになぁ。今夜も楽しみだ」
「っ!?」
 途端、顔を真っ赤にするナラータ。反応、可愛いじゃないか。一夜でちょっと肌触れあっただけだが、随分と女の顔が出来るようになった。
 それを間近で見てしまったケリンは、ナラータを抱きしめる。
「な、なに?」
「僕が種馬になる!! いや、種馬は僕だけにしてくれ!!!」
「………」
 遠まわしな愛の告白に、ナラータは顔だけでなく、全身を真っ赤にする。そして、縋るように俺のほうを見てくる。
「さて、俺はお人形遊びの続きをしよう」
「ちょ、ちょっと待って」
「ルキエル、望みは何だ!?」
 助けを求めるナラータをがっしりと抱きしめて離さないケリンは、俺に聞いてくる。
「ケリンとの一夜」
「それはイヤだ!!」
「えー、じゃあさ、持ってきた義体とか、道具とか、ちょうだい」
「それはっ」
「ナラータ、今夜も可愛がってやるぞ」
「わかった!!」
「そんなぁ!?」
 ナラータは悲鳴をあげる。
「仕方がない。ケリンが道具くれるっていうし。俺も男だ。ここまでされちゃ、種馬の役目は譲らないとな。良かったな、ナラータ。ケリンだったら、丁度いい大きさだぞ」
 ナラータ、ぶしつけながら、ケリンの下半身をじっと見下ろす。さすがに触るのは出来ないか。
「じゃ、じゃあ、仕方がないな」
 やっぱり、俺の一物は、ナラータでも、受け止める自信がなかったんだな。天秤にかけて、ナラータはケリンを選んだ。




 ケリンはお人形遊びから撤退した。仕方がない、生身のほうがいいに決まっている。今夜は、ナラータとケリンの初夜だ。いい店も紹介したから、後はケリンの頑張り次第だ。
 義体の実験は一応続けることとなったが、俺一人だ。もともと、妖精憑きのみが発動出来る仕様だ。ただの人には、どうすることも出来ないので、締め出した。ついでに、各地から集めた妖精憑きたちは、それなりに教えることは教えたので、さっさと帰ってもらった。
「カーラーン、この美人の名前、あるの?」
 カーラーンが支配する高位妖精を義体に憑けさせてみれば、物凄い美女となった。見ている者たち全てが魅了されちゃうよ。俺はハガルで見慣れちゃったから、大丈夫だけどね。
「我々には名なんて必要ない。意思疎通で会話が終わるからな」
「そうなんだ。カーラーンの連れて来た妖精だから、カリンちゃんと呼ぼう」
「勝手に名付けるな!?」
「えー、名前ないと、不便じゃん」
「お前が使役することはないんだから、必要ない!!」
「カリンちゃん、よろしくね」
「は、はあ」
 もう、強引に俺が話を進めちゃう。
 結局、カーラーンは俺のお願いを聞き入れ、義体の実験に付き合ってくれることとなった。なんと、高位妖精の女性型まで出してくれたよ。本当に、いい奴だな。
「義体の能力は、妖精憑きからの経験を受け取ることが重要となってる、と。まずは、俺を基準とした能力をいれちゃおう!!」
「断る!! 断固拒否だ!!!」
「強制だ。お前に能力与えられる妖精憑き、俺しかいないんだから。こう見えても、体力はないが、体術と剣術はすごいんだぞ」
「そう言って、閨事まで、いれるつもりだろう!!」
「えー、そんなことしないよ。さすがに俺も、良識がある。ただ、興味はあるな」
 じっと俺はカーラーンの下半身を見る。出来るか、気になるんだよね。
「やめんか!!」
 義体なので、カーラーン、容赦なく俺を頭を叩いてくる。さすが優秀な妖精だから、加減もしっかり出来ているよ。痛いけど。
「知識はハガルからしっかり貰っている感じだけど、体術と剣術までは、受け取れてないだろう。何せ、実態がないんだから。そこだけ、俺の経験で補填しよう。あとは、どこまで受け取れるか、だな。妖精の格の高さが関係ありそうな気がする。勘だけど」
 貰うこととなった資料には、どうも、不透明なところがある。ナナキがいうには、この義体は、人によって悪用されたという。
 悪用、という話を聞いて、想像してみると、いくつかある。
 今でこそ、帝国は戦争がなくなったが、それまでは敵国との戦争に明け暮れていたのだ。戦争はどうしても死人が出る。それを防ぐために、義体に妖精を憑けて、契約紋で縛って、叩かせていたかもしれない。これの欠点は、義体に使われる素材だ。どこかの聖域を潰して、材料としているのだ。材料をどれほど必要とするかわからないが、量産が出来るわけではない。しかも、義体を作るには、それなりの妖精憑きの格が必要だろう。そこのところで、破綻している。
 人殺しで使えないとなると、次に考えるのは、悦楽である。この見た目である。閨事の相手にするだろう。義体だから、妊娠の心配がない。契約紋でしっかりと縛ってしまえば、絶対服従だ。永遠に老いることもないので、観賞用として完璧だ。寿命だってないのだから、永遠に愛でられる。欠点らしい欠点はないかに見える。しかし、この見た目は、人を狂わせる。間違いなく、この義体によって、帝国は滅びるだろう。
 ナナキは万年は生きている元妖精だという。ナナキが蔑むような見方をするのだから、この義体は、良くない存在なんだろう。
「ま、使えるものは使おう」
「やめろ!?」
 カーラーンがどんなに抵抗したって、俺は無視して、俺の能力をカーラーンとカリンに与える。
 そばらくして、カーラーンは大人しくなった。
「お前も、いつも、こう、まともに生きていればいいんだがな」
「おっかしいな、俺、いつも真面目にしてるんだけどな。ほら、終了。互いでやりあってみて」
 どこまで能力を受け取れているのか確認するために、カーラーンとカリンで軽く手合わせさせてみた。
 女性型と男性型なので、体格差がある。力もそうなのだろう。カーラーンの攻撃をカリンは上手に躱したり、払ったりしている。カリンの戦い方は、普段の俺のだな。
 カーラーンの戦い方は、俺が身体強化している時のだ。体重を乗せて、ぶつかるようにカリンを攻撃していく。
 そんな軽い手合わせを眺めていると、様子見に来たコクーン爺さんとワシムが地下にやってきた。
「また、すごいものじゃな」
「どこから連れてきたんだ、こんな手練れ」
 あ、この人たち、見た目なんてこれっぽっちも見てないな。手合わせしている二人の技だけを見ている。
「あの男、出来るな」
「あの女性も、なかなかの技持ちですね。ルキエルを見ているみたいです」
「あの男も、身体強化したルキエルみたいじゃの」
 じっと俺を見てくる二人。よく見てるね!! ちょっと見ただけで、俺が由来だとバレちゃったよ。
「あれは、義体だよ。妖精憑けると、ああなる。能力は、妖精憑きの経験? をこう、妖精を通して教え込むんだよ。義体に入った妖精は、経験を情報として受け取るんだ。そして、ああなった」
「わからんが、ルキエルみたいじゃな」
「見るだけで身に着けるみたいなものか」
「そ、そうだね」
 俺はおもいっきり顔を背ける。ごめん、努力なしで身に着けてしまって!!
「それで、これをどうするんじゃ?」
「実験実験」
 俺は笑ってそういうだけだ。
 何か思惑でもあるのかな、みたいにコクーン爺さんが疑うように見てくるが、笑顔で返してやる。このクソ爺、いつになったら、俺との約束守ってくれるんだ? 
 いまだに、俺は、コクーン爺さんの一族が抱えている秘密を教えてもらっていなかった。

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