魔法使いの悪友

shishamo346

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妖精の女王

弟の狂気

 今日も客人が来た。とうとう、最果ての貧民街の支配者ヤイハーンが来たよ。花束持ってきたけど、それ、俺宛じゃないよね!?
「どんどんと、人から離れていってるな。怪我をしているわけじゃないよな?」
 俺が手や足、首にまで布を巻きつけているので、怪我を心配をされる。
「ヤイハーンも、まともなこと言うんだな」
「俺はこれでも、それなりの常識を持っているぞ」
「女十人囲ってるけどな」
「別れた!! お義兄さん、妹さんの交際を許してください!!!」
「ダメに決まってるだろう。レーリエットは俺の良心だ。女十人を同時に囲うような奴は渡さん」
「お前なんか、種馬の依頼、平気で受けてるじゃないか!!」
「だからだ!! 俺は最低な生き方しか出来ないから、レーリエットには、まともな生き方をさせたいんだ。レーリエットは、それが出来る女だ」
 後ろ暗いことを一切、レーリエットにはさせないようにした。親父は、最低限の教育をレーリエットにも施したが、それだけだ。レーリエットは、平民にだってさせられる。俺はハガルに頼んででも、レーリエットをまともな道に歩ませたい、と考えていた。
 ヤイハーン、言い返せない。俺が言っていることもまともだし、間違っていない。むしろ、俺がいうから説得力だってある。
「それで、その花束は見舞い用か? それとも、レーリエットへの贈り物か?」
「見舞い用だ。この部屋にあれば、レーリエットも見るだろう」
「この部屋の出入り、レーリエットは許可されていないから、見ないな。有難く受け取っておく」
「そんなぁ!!」
 ヤイハーンの真心は、残念ながら、レーリエットには伝わることがない。
 ヤイハーンはカーラーンとカリンをぶしつけにじろじろと見る。
「これが、義体なんだってな? 話では聞いていたが、本当にあるんだな」
「伝説みたいになってるよな。俺も実際にあるとは思ってもいなかった。これを見た時は、興奮したな。こんな廃人になってなかったら、もっと色々と調べたんだけどな。残念だ」
「お前、本当に道具いじりが好きだな。俺なんか、使い方とかこれっぽっちもわからんよ。そういうのは、わかる奴に丸投げだ」
「気を付けるんだぞ。足元を掬われるぞ」
「その時はその時だ。帝国、特に貧民は弱肉強食だからな。負けたらそれまでだ」
 同じ貧民だから、ヤイハーンの言いたいことは理解できる。弱いのは罪だし、搾取されるのも、仕方がないのだ。
 俺の見た目はともかく、普通に話したり出来ることを確認して、ヤイハーンは席を立つ。
「お前のお陰で、道具も壊れなくなった。助かったよ」
「そのついでに、レーリエットのことは諦めるんだな」
「諦めない!!」
 どさくさで言ってやったが、無理かー。しつこい男に、レーリエットも狙われちゃったな。でも、近くにはナナキがいるから、力づくは出来ないだろうな。
 さっさとヤイハーンを部屋から追い出して、俺は一息つく。
「無理はするな。ほら」
 カーラーンが俺の手を握る。それだけで、頭に入ってくる情報が激減する。人と接するのは、なかなか大変だ。情報が増えるのだ。
「少しずつ、馴らしていくしかない。ハガルでも、三、四年はかかった」
「ハガルでそれだと、俺なんて、十年はかかるかもな。気の長い話だ」
「そんなの、あっという間だろう」
 妖精にとって、十年なんて、瞬きをしている途中みたいなものだ。時間の速度が、人と妖精は違う。寿命だって違う。ナナキなんて、万年生きてるっていうんだもんな。妖精にとって十年なんて、大した時間じゃない。
 来客があれば、カーラーンとカリンが知らせてくれる。俺は疲れたので、ベッドで横になる。
「食事はどうする?」
「今日は食べたくない。なんか、お腹もすかなくなってきたな。このまま、人でなくなっちゃうのかな」
「妖精憑きの力が強くなりすぎて、余計なことをされているんだろう。ハガルも、もう食事をしなくなったな」
「そうか。なら、いっか」
 最強の妖精憑きハガルは、もう食事もしていないと聞いて、俺は安心する。そういうことなら、別にいいか。
 そうして、その日も、妖精憑きとしての力に振り回され、自堕落に過ごすこととなる。これ、本当は良くないんだけどな。
「少し、眠ったほうがいい。無理はするな」
「誰か来たら、起こしてくれ」
 俺はカーラーンの言葉に甘えて、眠った。常に目隠しをしている俺には、もう、昼も夜もない。眠くなったら、それが夜だ、なんて考えるようになった。
 だけど、俺の安眠なんて、客人が多い今はないようなものだ。ちょっとうつらうつらしていると、俺はすぐ、カーラーンによって起こされた。




 弟ロイドが、嫌がる兄ライホーンを連れて、部屋にやってくる。もう、ゆっくり寝されてくれよ。
「ルキエル兄、一緒に王都に帰ろう!! 聞いたぞ。軍神コクーンの孫娘の種馬にされたって」
「誰から聞いた?」
「レーリエットだ!!」
 どういう説明をされたのか、想像出来てしまう。レーリエット、遠慮なく、妄想も含めて、言ったんだな。
「山の貧民街の支配者にまで、種馬にされたって」
「そっちは中央の貧民街の支配者に丸投げした。最後までやってない」
「やらなかったのか!?」
「それ、どっちの意味で言ってる!? 残念なほう? 良かったほう?」
「ルキエル兄、拒まれたんだよね。可哀想に」
「煩い!!」
 あながち、間違っていない。俺の一物見て、さすがに山の貧民街の支配者ナラータは尻込みしたよ。だけど、聞く人によっては、情けない意味で俺が拒まれたように聞こえちゃうよ!!
 ほら、俺の見た目は綺麗系だし、男相手に身売りしているし、腕っぷしだって残念だし、もう、拒絶される要素一杯だよ。
「ロイド、言い過ぎだ。ルキエルだって、すごいところがあるだろう」
 ライホーンが、俺を擁護するみたいに、俺の下半身を見る。そうだよね、知っているよね!? もうやめてぇえー--!!!
 俺は両手で顔を覆うしかない。もう、兄弟を直視出来ないよ。兄弟で、俺の外身も中身もよくわかっているし、知っている。俺はお前らの外身、これっぽっちも知らないけどね。不公平だ!!
 不思議なことに、この羞恥みたいなことされている間は、あの煩わしい雑音も聞こえなくなる。兄弟との恥ずかしいやり取りに集中して、素通りしてんだろうね。
 お陰で、すぐに冷静になる。
「王都には行かない。何度もいうが、あそこには戻らない」
「王都に戻れば、もしかしたら、その見た目もどうにか出来るかもしれないじゃないか。魔法使いは、ルキエル兄の味方なんだろう!!」
「迂闊なことを口にするな!!」
 俺は魔法でロイドを部屋の端まで吹き飛ばした。
「帝国所有の魔法使いと関わりがある、なんて噂されたら、貧民街で生きていられないぞ!!」
「だって、あの魔法使いは、ルキエル兄の友達だって」
「だからといって、口にしていいことではない。いいか、兄貴もロイドも、帝国での囚人としての生活は忘れろ。身に着けたものは有難く使えばいいが、それだけだ」
「でも、だったら、ルキエル兄の、この体はどうすればいいんだ!? ここにいたって、いいように使われるだけなんだぞ!!」
「お前には関係ない話だ。お互い、いい大人だ。自己責任だ。俺がこうなったのも、自己責任だ。お前に責任とってもらわなくていい。俺の勝手だ」
「これまで、僕たちは、ルキエル兄に助けられてばかりだった。だから、今こそ、僕たちで責任をとるべきなんだ!!」
「俺は望んでない。さっさとお前らだけで王都に帰れ」
 俺がどれだけ突き放しても、ロイドは縋ってくる。このしつこさが、俺には面倒臭く感じる。
 俺が黙り込んで、見るからに不機嫌になると、ライホーンが、間に入ってくれる。
「もうやめろ。ルキエルは望んでいないんだ。もう、ルキエルの好きなようにさせてやれ。これまで、ルキエルは親父にも、俺たち家族にも、王都の貧民街にも縛られてたんだ」
「いいじゃないか!! 血の繋がった家族なんだぞ!!!」
「いい加減、ルキエル離れをしろ」
「レーリエットだって、してないじゃないか!?」
「レーリエットはいいんだ。レーリエットは、ルキエルが望む通りに生きてるんだ。レーリエットは、ルキエルの良心だ。必要なんだ」
「俺は? 俺だって、ルキエル兄の弟じゃないか!? 女じゃないからか? そんなの、不公平だ!!」
「女だって、リンネットは見捨てられたぞ。もうやめてやれ。お前のそれが、ルキエルの重荷だ」
「っ!?」
 傷ついた顔をするロイド。これを見ていると、溜息しか出ない。
「頭痛が」
「一度、友達だという魔法使いに診てもらおう」
「頭痛の元は、お前だ、ロイド!! もう、面会も拒否する。寝る!!」
 ちょっと寝かかった所に来たのだ。俺は寝たい。実際に、ベッドにもぐりこんだ。いいベッドだから、むちゃくちゃ寝心地がいい。寝心地よくて、親父との閨事、思い出しちゃうけどな。俺も、ある意味、病気だな。
「もう帰れ。私から見ても、お前の執着はおかしい。距離をとるべきだ」
 最高位妖精カーラーンが俺の味方をしてくれる。カーラーン、義体に憑いた妖精だと、知る人は知っている。兄ライホーンも、弟ロイドも知っている。相手が神の使いである妖精なので、さすがにロイドも逆らわなかった。
「ルキエル兄、また、会ってほしい」
「………」
「会いたい」
「………」
「う、うう」
 とうとう、泣きだすロイド。そんなロイドの背中を押して、ラオホーンは部屋を出て行った。
「貴様の弟、少し、執着が強すぎるな。異常だ。さすが、家族だな。貴様の妹もそうだし、血筋だな」
「煩い!!」
「誉め言葉と言わないのか?」
「俺自身だけなら、そういう。やっと追い返したというのに、お見舞いと言ってやってきて。コクーン爺さんも余計なことをしてくれたな」
「家族というのだから、仕方がないだろう。ハガルでも、同じことをするぞ」
「ハガルもコクーン爺さんも、育ちが良すぎるんだよ。貧民相手に、そんなことをしてはいけない。後々、大変なことになるぞ」
「冷たいな」
「貧民の親は子を平気で売るんだぞ。泥棒だってするし、詐欺は普通だ。口を開けば、嘘ばっかりだ。俺は善人ではないが、悪人でもない。ただ、妖精憑きは、見ている世界が違うから、あるがままに生きていく傾向がある。だけど、普通の人はそうではない。気を付けないといけない」
 どんなに言っても、最高位妖精カーラーンは理解出来ないだろう。カーラーンの常識は主である妖精憑きハガルを元にしている。
 俺はカーラーンに護衛されているはずなんだが、物凄く心配でならない。




 時間的には真夜中なんだろう。目隠しを通して見ると、真昼のようだけどな。そんな遅くに、誰かが部屋に入ってきた。
 この部屋、誰だって出入り自由なんだよね。一応、制限をかけている、といっても、人為的なものだ。魔法とか使っていない。だから、守らない奴は部屋に普通に入ってこれる。
 ただ、俺がいる部屋には、義体に憑いた最高位妖精カーラーンと、高位妖精カリンが護衛としてついている。人であれば、食事やら睡眠やら必要だが、妖精には必要ない。四六時中、俺の側にいるので、不届きな事をする者は出てこなかったのだ。
 だけど、俺が覚醒したことで、人の出入りが激しくなった。海の貧民街の住人でない者たちが、今、大勢、やってきている。不審者の出入りはさせないが、客人はそうではない。だから、真夜中の来客は、あってもおかしくないのだ。
 俺は、人が近づいてくるのを見て、体を起こした。
「しつこいぞ、ロイド」
 俺に拒絶された、というのに、弟ロイドがこっそりとやってきたのだ。
 だけど、おかしい。目が据わっている。ついでに、血なまぐさい。よく見れば、返り血のようなものが、服やら手やらについている。
 俺は部屋を見回す。俺の護衛とついているはずのカーラーンとカリンを探した。が、どこにもいない。部屋から出たのか? おかしい、とよくよく見れば、義体が二体、床に落ちている。
 俺は咄嗟に枕の下に手を突っ込むが、肝心の武器がないことに、今更気づいた。この部屋での俺の護身のための武器を準備してもらっていなかった。
 ロイドは俺がベッドから出ない隙をついて、上に圧し掛かって、噛みつくように口づけをする。
「やめっ」
 抵抗するが、執拗に舌までいれてくる。その感触に、俺は抵抗をやめた。
「僕が一番、親父に似てるんだってな」
 耳元で囁かれる声に、俺はゾクゾクとさせられる。抵抗する力も抜ける。その隙に、ロイドは俺を愛撫する。首筋から舐め、胸に舌を這わせ、強く吸って、情痕をつける行為に、俺はのけぞった。
「あ、やぁ、だめ」
 毎日のように、親父にされていたことだ。その痕跡をなぞるようにされると、俺はどんどんと意識が過去に巻き戻っていく。
 妖精封じの布が邪魔になる。もっと触れてほしくて、俺は両腕、両足、首に巻きつけられた妖精封じの布を魔法で切り裂く。
 そうすると、とんでもない情報が入ってくるはずだった。目隠しだけでは、耐えられないはずだ。ところが、ロイドの愛撫を受けると、情報がどうでもいいものとして、頭が勝手に処理していく。ロイドの行為だけに集中していく。
 なるほど、ハガルは、皇帝ラインハルトから、こういう行為を受けて、強大な力の負荷に耐えたわけか。それでは、ハガルもラインハルトに嵌るわけだ。
 頭の片隅で、そんなことを考え、納得しながら、俺はロイドの行為を受け入れる。仕方がない。親父と同じことをされている。体はそれを待っていたかのように、喜んでいる。
 ロイドが思い出したように、頬や瞼、唇と口づけしてくる。その一つ一つを喜んで受け入れる。
「愛してる」
 その声で言われると、俺は喜んでしまう。
「私も、愛しています」
 そう返してしまう。もう、他は見えない。ロイドの中に、親父を見てしまう。そして、気づく。ロイドは確かに、親父の若い頃に瓜二つだ。だから、俺から口づけをせがむ。
「もっと、愛してください」
 そうねだれば、ロイドは嬉しそうに笑う。お互い、血の繋がった兄弟だというのに、俺は女になっている。
 ロイドはどんどんと下に移動していく。そして、俺の一物には触れず、その根本に舌を這わせる。後ろの蕾に指をいれ、執拗に舐められ、俺は喜ぶ。
「や、そこ、気持ちいぃ」
 舐められ、指でいい所を突かれると、あっけなく、俺は絶頂する。白いものを吐き出すと、それをロイドは自身の剛直に塗りつける。それを見た俺は生唾を飲み込んだ。ついつい、手を伸ばしてしまう。
「大人しくしろ」
「は、はい」
 俺の手をつかんで、ロイドは止める。俺は大人しく、剛直を待った。
 ロイドは俺の足を持ち上げ、剛直を突きつける。随分と焦らされて、俺は呼吸が荒くなる。先が触れているというのに、挿入されない。
「は、はやくっ」
「わかってる」
 ロイドは俺に深く口づけして、一気に、その剛直を奥まで挿入した。
 奥までごつんと突かれた瞬間、俺は呼吸が止まるほどの絶頂をする。散々、焦らされて、やっと得られた衝撃に、全身が喜んだ。
「ああ、ああああっ」
 ただ、それだけしか言えない。全身が震えて、もう、女のようにがくがくと揺れて、喜んでいる。そんな俺を見て、うっそりと笑うロイド。その顔が、親父に重なって、俺は喜ぶ。
「愛してます」
「僕も、愛してる、ルキエル」
 瞬間、俺は一気に現実に引き戻された。ロイドの胸板に触れる。ロイドは嬉しそうに笑っているが、俺はもう不機嫌だ。瞬間、ロイドは俺の魔法で部屋の壁に吹き飛ばされた。
 俺は適当な布で体を覆い、床に無様に落ちて倒れるロイドの元へと行く。
 ロイドは、何が起こったのか、全く、わかっていない。いきなり、吹き飛ばされて、痛い目にあって、気づけば、俺が冷たく見下ろしているのだ。
「ど、どう、して」
「もっと、親父になりきれ。親父は俺のこと”ルキエル”とは呼ばない。”サツキ”だ。興ざめだ」
「そんなっ」
「親父は”僕”なんて言わない。”俺”だ。まあ、そこは妥協してやったが、俺の呼び方は妥協出来ない」
「あ、愛してるんだ」
「俺はな、愛してるとか、好きだとか、吐き気がするほど、嫌いなんだよ!!」
 魔法で、また、ロイドを吹き飛ばした。物凄く高く遠くに吹き飛ばされたロイドは、激痛に、起き上がれない。骨がいくつか、折れたかもな。もう、どうでもいいけど。
 怒りとかで頭に血がのぼると、あのとんでもない情報も、上手に処理出来てしまう。俺は妖精を使って、遠くまで見渡してみれば、兄ライホーンがものすごい流血状態で、虫の息だ。仕方がないので、俺はライホーンの傷を治した。血までは戻してやれないから、貧血で動けないだろうな。
「実の兄を殺そうとしておいて、何が家族だ」
「だ、だって、兄貴が、諦めろって」
 吐き捨てて言ってやれば、ロイドは正直に白状する。まだ、誰も、ロイドがライホーンを殺そうとした、なんて知らないのにな。ロイドは勝手にバレたと思い込み、ライホーンを殺そうとしたことを認めてしまう。
 俺は苦痛で悶絶するロイドの側に行き、その頭を踏みつける。
「お前の意思でやったのなら、救いようがないが、操られていたのなら、まあ、許してやる」
 俺は唯一残った妖精封じの目隠しを外して、ロイドを見る。
 ロイドには何か憑いているわけではない。しかし、ロイド自身には、見えない糸が、あちこちについていた。その糸の先は、建物の外へと続いている。
「あのクソババア、俺の弟まで操りやがって。神の使いのくせに、最低なことするな」
 ロイドは妖精の女王に操られていた。残念ながら、俺の力では、この見えない糸を切ってやることが出来ない。
 妖精の女王は本気を出している。俺が眠っている間に、義体から最高位妖精カーラーンと高位妖精カリンを引きはがし、この部屋に入れないようにしたのだろう。俺自身は、まだ、力の暴走をどうにか出来ないため、その事に気づかなかった。
「ルキエル兄、愛してるんだ」
「黙れ」
 しつこく言ってくるので、俺はロイドの意識を魔法で刈り取る。お前はしばらく寝ていろ。
 妖精封じは目隠しだけにして、俺は服を着て、再び、情報を集める。
 建物全体に、あの眠りの魔法が施されていた。意識を飛ばせば、海の貧民街全体に、眠りの魔法がされている。起きている者といえば、元妖精ナナキくらいだ。俺がちょっと妖精を使って呼べば、ナナキは喜んで、部屋にやってくる。
「また、浮気をしたな。よりにもよって、弟を相手にするとは」
「途中までは良かったんだけどな、親父と閨事しているみたいで。俺のことを”ルキエル”なんて呼ぶから、冷めた」
「最低だな」
「誉め言葉だ」
 ナナキに貶されて、俺は笑って喜ぶ。そんな俺をナナキは抱きしめる。
「本当に、性悪だな。いつになったら、僕だけのルキエルになってくれるんだ?」
「あのクソババアをどうにかしてからだ。ロイドについた、あの糸をどうにかしろ」
「喜んで」
 ナナキは、俺に深く口づけしつつ、ロイドにからまった糸を燃やした。

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