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凶星の申し子
狂気の始まり
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お袋が死んだと聞いても、しばらくは、特にこれということはなかった。怒りでおかしくなった親父が、使者を殺したり、貴族を殺したり、とちょっと大変なことになったくらいだ。
金に目がくらんでお袋を皇帝のハーレムに出したというのに、死んだと聞いて、怒り狂うくらいなら、そんなことしなければ良かったのに、なんて心の底で俺は思うが、黙っていた。それどころではない。お袋が死んだって、俺は下の妹と弟の面倒をみないといけないのだ。
弟は、まあまあ、育っていたから良かった。妹なんか、乳離れしたばっかりだってのに、いきなり、俺に押し付けてきやがった。これで、親父似のいかつい妹だったら、やる気もなかっただろう。妹は、物凄く可愛かった。
俺は損な立場だ。兄弟姉妹のちょうど真ん中だ。兄貴のライホーンは、もう、下っ端なんか連れて、貧民街を練り歩いている。それなりに仕事をしている。姉貴のリンネットは、始めての娘だったから、親父にでろんでろんに甘やかされて、我儘放題だ。そして、俺はというと、面倒事を押し付けられる立場だ。本当に、最悪だ。
だけど、お袋がいないから、誰かがやるしかない。幸い、親父は王都の貧民街の支配者だ。子育てに必要な知識も、必要な道具も、どうにか調達出来る。
何より、俺は妖精憑きだから、普通の人よりも、出来ることが多かった。
俺が妖精憑きだということを知っているのは、お袋だけだ。お袋は、元は貴族だっただけに、色々と物知りだ。俺が妖精憑きだとわかった時も、お袋は家族にも隠し通すように教えられた。大きくなれば、わかる。妖精憑きは色々と特殊だ。ちょっと困った時は、ちょっとだけ、妖精の力をかりることはある。
例えば、妹と弟の夜泣きをどうにかする時は、妖精の力で、寝つきを良くしてもらった。その程度だけどね。だって、出来ることを知らない。
だから、俺はそれどころではない。冷たい、と言われそうだけど、仕方がない。俺には、手のかかった弟と妹のほうが大事だった。
親父はおかしくはなったが、支配者としては立派だ。きちんと統治して、その腕っぷしを鍛えることを余念がなかった。
お袋がハーレムに行った頃と、生活はそう変わらない。俺はちょっと腕っぷしが強くなったりしたくらいだ。
そんなある日、綺麗な子どもを拾うこととなる。
別に、拾うつもりはなかった。貧民街では、弱いやつが強いやつに暴力でぼこぼこにされるのは日常だ。その日も、日常だな、なんて見ていたのだけど、俺の妖精が騒いだ。
何かあるんだろう、と行ってみれば、妹レーリエットとそう年頃がかわらない男の子一人が、ちょっと大きい子どもたちに袋叩きになっていた。
新入りだな。見たことがない。ああいう綺麗目は、色々な意味で無事では済まないのだ。この後、店に連れて行かれたりするんだろうな。
他人事なんだけど、妖精が騒ぐので、止めに入った。
「その子はどこの子だ?」
「うるせぇな!!」
容赦なく殴った。相手は俺にとっては、小さい子どもだ。集団で来られても、倒せる。
この集団で、一番、強い奴だったんだろう。俺の一撃で吹っ飛ぶと、子どもたちは逃げていった。
一方的に暴力を受けていた子どもは、なんと、素っ裸だ。周りを見ても、脱がされた服とか見当たらない。逃げた奴らが持っていったのかもしれない。
「お前、どこの誰だ?」
抱っこして聞いてみる。
触ったり見たりすれば、綺麗な男の子だ。軽いな。
男の子は首を傾げるくらいで、何も言わない。
「名無しか」
「そう、ナナシ!!」
あ、こいつ、名前知らないどころか、俺が言った言葉を名前と勘違いしちゃったよ。
「ナナキ、だ。ナナキにしよう」
「ナナキ?」
「そう、ナナキだ」
慌てて、言い直した。よくわからないが、そうしなければいけない、という妙な強制力を感じた。
「僕、ナナキ!!」
困ったことになった。男の子ナナキは、俺にべったりくっついて喜んだ。
仕方なく連れ帰ることとなった。捨ててもいいのだけど、妖精が妙に騒ぐので、それはいけないような気がした。
家は貧民街の外だ。貧民街に近いけど、そうではない場所だ。王都の端っこにあるのだけど、それなりに立派な一軒家だ。魔法具も備わっているので、平民なりの生活が出来る。
「お兄ちゃーん!!」
留守番させられていた妹レーリエットが飛びついてきた。ナナキを抱っこして、レーリエットが抱きついてきて、となると、俺は尻もちをつくしかない。
「お前、ルキエル兄にくっつくな!!」
そこに、弟ロイドまでやってくる。もう、帰って早々、大変だ。
「お前ら、重い」
「この子、誰?」
「ルキエル兄にくっつくな!!」
ロイドがナナキを俺から離そうと引っ張るが、離れない。
「お前が離れろ」
「ルキエル兄、聞いてよ。姉貴が、また、無茶苦茶なこというんだよ!!」
ロイド、留守番していて、また、姉貴に色々と無理難題言われたんだな。泣きついてくるロイド。
「後で叱っておくから、離れろ。重いって」
一番、離したいのは、家族でないナナキだ。だけど、ナナキが幸せそうに俺の胸に顔を寄せているので、これでいいか、なんて気持ちになる。
やっと、レーリエットも離れてくれて、俺はナナキを抱っこしたまま立つ。
「風呂、空いてる? あと、ロイドの昔の服は、ここか」
ちょっと大きいけど、これでいっか、となる。俺は拾ってきたばかりのナナキを風呂にいれ、服を着せ、レーリエットの部屋に放り込んだ。
「ナナキ、行くところがないなら、レーリエットの遊び相手をしてくれ。そうしたら、食べる所と寝る所は面倒みてやる」
「わかりました」
返事がものすごくハキハキしている。見た目はレーリエットとそう変わらないってのにな。実は、育ちがいいのかもしれない。
妙な拾い物だけど、捨てる気にはなれない。俺のことを見る目が、熱烈だ。
お袋を亡くして、色々とあった。親父はおかしくなっているので、何が起こるかわからない。俺みたいなガキが出来ることなんて、たかが知れている。
貧民なんだけど、お袋が元貴族だから、妙な良識があった。その良識のお陰で、俺は家族は大事、なんて思っていた。
ナナキは、その中で、不思議と、信頼出来る予感があった。
ナナキは、レーリエットと同じ部屋で就寝して、昼も夜も、レーリエットと上手に付き合った。気難しく、俺にしか懐かないレーリエットは、ナナキのことをものすごく気に入った。
だけど、俺が家に戻ると、レーリエットとナナキは、先を争うように抱きついてきた。これはこれで、大変だった。
兄貴も姉貴もいい年齢となったので、独り立ちかな、なんて俺は見ている頃も、親父は狂ったままだった。
俺はまだ独り立ち、という年頃ではないが、外に行けば、それなりだ。兄貴のライホーンが色々とやってくれてるので、俺に復讐される。そこは、上手に逃げたりするけど。もう、兄貴、ほどほどにしてよ!!
姉貴のリンネットはというと、その見た目が美人なので、男が貢いでくるの。だからか、弟のことを下僕のように使っていい、なんてよくわからないことを言ってくる。もちろん、俺は拒否する。だけど、弟ロイドは気の毒に、妹レーリエットと姉貴リンネットに挟まれて、いいように疲れているんだよな。
拾った子どもナナキは、いい感じに成長している。教えれば、すぐに覚えるし、体術と剣術も、それなりに身に着けた。なにより、気難しいレーリエットの相手を上手にするので、助かっていた。
レーリエットはというと、近くの異性であるナナキにでも、初恋みたいなものでも持つだろうな、なんて見ていたんだけど。
「お兄ちゃん、結婚してください!!」
俺が家に帰ると、挨拶みたいに、こんなこと言ってくるんだよ。誰に教わったんだ、それ?
そして、レーリエットの後ろで、ニコニコと笑っているナナキ。犯人はお前か!! 俺が教えている以上に、こいつ、物事知ってるよね。本当に、何者なんだよ!?
ナナキは不思議な子どもだ。突然、俺が拾って連れ帰っても、親父は文句一つ言わなかった。このまま、ナナキを育てて、それなりの所に売るのかな、なんて見ていたけど、そういう気配がない。親父、どうにか皇帝ラインハルトに復讐したいから、それどころではないか。
お袋が亡くなって随分となったが、ある意味、平和だった。毎日、なんとなく同じことを繰り返していただけだ。
夜中に目が覚めた。レーリエットは眠っているのを見て、安心する。だけど、何故かナナキが起きていた。ナナキが俺に抱きついて離れない。
「ちょっと、水でも飲みに行ってくるから」
「行かないでください」
ぎゅっと抱きついてくるナナキ。何かあるんだな。妖精が騒がしい。
「俺が行かないといけない」
「行ってはダメだ!!」
半泣きでいうナナキ。何か感じるのだろう。ナナキは、不思議な子だ。なにか不安なことがあるのかもしれない。
だけど、妖精が騒いでいるのだ。何か、家の中で起こっている。
「ここで、レーリエットを守ってくれ。レーリエットは、この中で、一番、弱いんだ」
「だったら、一緒にいてください。一緒に、レーリエットを守りましょう!!」
「危なくなったら、レーリエットと逃げるんだぞ。逃げる場所はわかっているな?」
王都の貧民街の支配者だ。何かと危険がある。俺は、聞き分けないナナキを離して、部屋を出た。
家の奥に行けば、姉貴の悲鳴があがっていた。俺は慌てて行く。
親父が、嫌がる姉貴の上に圧し掛かっていた。
「何やってんだよ、親父!!」
「邪魔するな!!」
親父、腕っぷしは王都の貧民街では最強だ。俺なんか、ちょっと腕があたれば、吹っ飛んでしまう。
ちょっと、当たり所が悪くて、俺は意識を失ってしまった。
だけど、意識を失うのも、それほど長くではない。とんでもない痛みに、俺はすぐ、目を覚ました。
「痛い、痛い痛い痛い痛いぃー------!!!」
それしか言えない。だって、ものすごく痛いんだ。
あまりの痛みに目を覚ます。目の前に、親父の体がある。俺の上に親父が圧し掛かって、叫ぶ俺の声なんか無視して、何かやっている。
下半身に強制的に挿入された何かが、俺にとんでもない苦痛を与えてくれた。何より、怪我をしている感じもした。
「サツキ、すっかりきつくなったな」
息を荒げていう親父。意味がわからない。それよりも、親父をどうにかしたくて押したり叩いたりしても、これっぽっちも効果がない。
それどころか、親父に両手を拘束され、無理矢理、口づけをされる。舌を奥深くに挿入されて、俺は息も出来ない。
「そうか、忘れちまったか。お前は育ちがいいからな。最初から、また、躾直してやる」
「や、やだ、痛い、もう、痛いってばぁ」
泣くしかない。親父には勝てないんだ。だったら、泣いて、縋って、どうにか許してもらうしかないんだ。
だけど、親父は容赦がない。苦痛を与え、体をまさぐり、俺のことを”サツキ”と呼ぶ。親父は、俺を死んだお袋の身代わりにして、何かしている。
泣いたって、親父は喜ぶ。涙を舐めとる。その行為も気持ち悪い。
下半身に何か吐き出される。それがお腹を痛くする。
「や、苦しい、痛いよぉ」
「もう少しだ。我慢しろ」
いつまで? 先の見えない行為に、俺は痛みと苦しみに苛まれて、意識すら飛ばせなかった。
その日から、俺は男ではなくなった。
やっと解放されるも、酷いものだった。流血が酷くて、親父は俺を抱きしめて、手厚い治療を施した。俺を見ては”サツキ”と呼び、夫婦の寝室に俺を閉じ込め、甲斐甲斐しく世話をする。
俺は反抗はしない。ここで、反抗したって、意味がない。親父が離れて、隙が出来るのを待った。
「サツキ、まだ、初めてだったのか。俺のものは、きつかっただろう」
俺は返事もしない。親父は一方的に話しかけてくるだけだ。
親父、狂うほど、お袋のことを大事だというのなら、どうして、皇帝のハーレムなんかに送ったんだよ。身代わりとなってわかる。親父は、本当にお袋のことを大事にしていた。金に目がくらんだ、にしては、扱いが丁寧だ。
俺はお袋のことをそれほど覚えていない。日々、子育てに謀殺されていて、それがどっかにいっちゃったんだな。
親父はお袋を外に出さない。家の奥で大事に囲っていたのだ。それなのに、お袋を皇帝のハーレムに送ったのだ。矛盾がある。
今だって、俺はお袋の身代わりで、家の奥に閉じ込められ、ご機嫌まで伺われている。
「サツキ、ほら、好きだったろう」
どこかの高級な菓子だ。兄弟姉妹も食べたことがない。俺だって食べたことがない。お袋、こうやって、親父に大事にされてたんだな。
「レーリエットに食べさせてやりたい」
だけど、俺はそれを妹に食べさせてやりたかった。
「サツキのために買ってきたんだ。さあ、食べろ」
「皆で、一緒に食べよう。一人で食べるには、多すぎる」
「そうだな、わかった」
言い方を変えれば、親父は素直に聞き入れた。誰か一人を特別扱いするのはダメだが、家族みんなはいいんだ。
「まだ、痛いから、ここから動けない。皆にわけてきてほしい」
「わかったわかった。リンネット、これを分けてこい」
近くにいたんだ。親父に菓子を渡されて、リンネットは、さっさと下がった。あれは、独り占めするな。
結局、親父をここから離すことが出来なかった。ちっくしょー、親父、そんなにお袋に執着するなら、手放すなよ!!
簡単に、体が回復するわけではない。下半身は痛いし、親父は何事かあると口づけして、愛撫して、と気持ち悪いし、どうなってるんだよ、これ。
ない胸をまさぐられたって、育たないんだよ。だけど、親父は執拗にしてくる。舐めて、愛撫して、強く吸って、と気持ち悪い。
「あ、やぁ」
なのに、変な声が出る。そういうことを毎日、執拗にされると、何か感じるようになる。気持ち悪いものだったのが、何か感じるようになる。身もだえすると、親父は気持ちの悪い笑みを浮かべて喜び、さらにするのだ。
「悪かった。久しぶりだったから、痛かったよな。次は、ゆっくりと、痛くないようにしてやるからな」
「あ、ああ、そこ、やぁ」
執拗に舐め、愛撫して、としてくる。
ちょっと視線を動かせば、真っ青になって覗き見ている兄ライホーンと目があう。俺の上に親父が圧し掛かり、俺は女のように声をあげている。そこから、目を離せないライホーン。
笑ってやるしかない。俺が出来ることなんて、それしかないんだ。幸い、痛い目にはあっていない。ちょっと気持ち悪いことをされて、それが、なんか、変な感じになってきただけだ。
親父の行為を受けながら、頭の片隅では、妹レーリエットのことが気になった。いつも添い寝しないと寝られないレーリエット。きちんと、寝てるだろうか?
外が騒がしかった。何が起こっているのだろうか、と体を起こす。珍しく、親父がいない。俺は部屋を出る。もう、下半身の痛みはなくなっていた。ただ、いつも、親父にされる行為に、体が気だるくなっているだけだ。
家の外に出れば、親父が兄ライホーンを殴っていた。
「………な、何やってんだ!?」
俺は親父を止める。
「サツキ、なんでここに居るんだ!? まさか、逃げるつもりか!!」
「そ、そんなつもりはっ、い、痛い!!」
腕を力いっぱい掴まれた。俺は知らなかったが、随分と長く軟禁されていた。体力が随分と落ちていた。引っ張られると、転びそうになる。それを親父は慌てて抱きとめ、抱き上げる。
「す、すまない。腕がこんなに赤くなってしまって」
「だ、大丈夫、だから、その」
「あのガキのことは気にするな。わけのわからないことを言ってきたから、体で言い聞かせてやっただけだ」
「そう、なんだ」
「もう、やめろ、親父!!」
せっかく俺が宥めてやってるってのに、ライホーンが口も、手も挟んでくる。
「やめろ。こいつは、ルキエルだ!!」
「ルキエルは、今、レーリエットのトコにいただろう!!」
「あれは、ナナキだ!!」
「そんな奴は知らん!!」
そうかー。ナナキのこと、俺と思い込んでいるのか。
俺が振り返れば、俺に駆け寄ろうとするレーリエットを止めるナナキと目があう。ナナキは、親父のことを憎しみをこめて睨んでいたが、俺と目があうと、苦痛に顔を歪めた。
親父は俺を手放さない。俺を抱き上げ、止めようとするライホーンなんて、片腕で殴り飛ばしてしまう。
「心配するな。もう二度と、ここから出さない」
親父は俺をぎゅっと抱きしめていう。
だったら、お袋を皇帝のハーレムに出すなよ!! 俺は心底、そう思ったが、口には出さず、ただ、睨んだ。
金に目がくらんでお袋を皇帝のハーレムに出したというのに、死んだと聞いて、怒り狂うくらいなら、そんなことしなければ良かったのに、なんて心の底で俺は思うが、黙っていた。それどころではない。お袋が死んだって、俺は下の妹と弟の面倒をみないといけないのだ。
弟は、まあまあ、育っていたから良かった。妹なんか、乳離れしたばっかりだってのに、いきなり、俺に押し付けてきやがった。これで、親父似のいかつい妹だったら、やる気もなかっただろう。妹は、物凄く可愛かった。
俺は損な立場だ。兄弟姉妹のちょうど真ん中だ。兄貴のライホーンは、もう、下っ端なんか連れて、貧民街を練り歩いている。それなりに仕事をしている。姉貴のリンネットは、始めての娘だったから、親父にでろんでろんに甘やかされて、我儘放題だ。そして、俺はというと、面倒事を押し付けられる立場だ。本当に、最悪だ。
だけど、お袋がいないから、誰かがやるしかない。幸い、親父は王都の貧民街の支配者だ。子育てに必要な知識も、必要な道具も、どうにか調達出来る。
何より、俺は妖精憑きだから、普通の人よりも、出来ることが多かった。
俺が妖精憑きだということを知っているのは、お袋だけだ。お袋は、元は貴族だっただけに、色々と物知りだ。俺が妖精憑きだとわかった時も、お袋は家族にも隠し通すように教えられた。大きくなれば、わかる。妖精憑きは色々と特殊だ。ちょっと困った時は、ちょっとだけ、妖精の力をかりることはある。
例えば、妹と弟の夜泣きをどうにかする時は、妖精の力で、寝つきを良くしてもらった。その程度だけどね。だって、出来ることを知らない。
だから、俺はそれどころではない。冷たい、と言われそうだけど、仕方がない。俺には、手のかかった弟と妹のほうが大事だった。
親父はおかしくはなったが、支配者としては立派だ。きちんと統治して、その腕っぷしを鍛えることを余念がなかった。
お袋がハーレムに行った頃と、生活はそう変わらない。俺はちょっと腕っぷしが強くなったりしたくらいだ。
そんなある日、綺麗な子どもを拾うこととなる。
別に、拾うつもりはなかった。貧民街では、弱いやつが強いやつに暴力でぼこぼこにされるのは日常だ。その日も、日常だな、なんて見ていたのだけど、俺の妖精が騒いだ。
何かあるんだろう、と行ってみれば、妹レーリエットとそう年頃がかわらない男の子一人が、ちょっと大きい子どもたちに袋叩きになっていた。
新入りだな。見たことがない。ああいう綺麗目は、色々な意味で無事では済まないのだ。この後、店に連れて行かれたりするんだろうな。
他人事なんだけど、妖精が騒ぐので、止めに入った。
「その子はどこの子だ?」
「うるせぇな!!」
容赦なく殴った。相手は俺にとっては、小さい子どもだ。集団で来られても、倒せる。
この集団で、一番、強い奴だったんだろう。俺の一撃で吹っ飛ぶと、子どもたちは逃げていった。
一方的に暴力を受けていた子どもは、なんと、素っ裸だ。周りを見ても、脱がされた服とか見当たらない。逃げた奴らが持っていったのかもしれない。
「お前、どこの誰だ?」
抱っこして聞いてみる。
触ったり見たりすれば、綺麗な男の子だ。軽いな。
男の子は首を傾げるくらいで、何も言わない。
「名無しか」
「そう、ナナシ!!」
あ、こいつ、名前知らないどころか、俺が言った言葉を名前と勘違いしちゃったよ。
「ナナキ、だ。ナナキにしよう」
「ナナキ?」
「そう、ナナキだ」
慌てて、言い直した。よくわからないが、そうしなければいけない、という妙な強制力を感じた。
「僕、ナナキ!!」
困ったことになった。男の子ナナキは、俺にべったりくっついて喜んだ。
仕方なく連れ帰ることとなった。捨ててもいいのだけど、妖精が妙に騒ぐので、それはいけないような気がした。
家は貧民街の外だ。貧民街に近いけど、そうではない場所だ。王都の端っこにあるのだけど、それなりに立派な一軒家だ。魔法具も備わっているので、平民なりの生活が出来る。
「お兄ちゃーん!!」
留守番させられていた妹レーリエットが飛びついてきた。ナナキを抱っこして、レーリエットが抱きついてきて、となると、俺は尻もちをつくしかない。
「お前、ルキエル兄にくっつくな!!」
そこに、弟ロイドまでやってくる。もう、帰って早々、大変だ。
「お前ら、重い」
「この子、誰?」
「ルキエル兄にくっつくな!!」
ロイドがナナキを俺から離そうと引っ張るが、離れない。
「お前が離れろ」
「ルキエル兄、聞いてよ。姉貴が、また、無茶苦茶なこというんだよ!!」
ロイド、留守番していて、また、姉貴に色々と無理難題言われたんだな。泣きついてくるロイド。
「後で叱っておくから、離れろ。重いって」
一番、離したいのは、家族でないナナキだ。だけど、ナナキが幸せそうに俺の胸に顔を寄せているので、これでいいか、なんて気持ちになる。
やっと、レーリエットも離れてくれて、俺はナナキを抱っこしたまま立つ。
「風呂、空いてる? あと、ロイドの昔の服は、ここか」
ちょっと大きいけど、これでいっか、となる。俺は拾ってきたばかりのナナキを風呂にいれ、服を着せ、レーリエットの部屋に放り込んだ。
「ナナキ、行くところがないなら、レーリエットの遊び相手をしてくれ。そうしたら、食べる所と寝る所は面倒みてやる」
「わかりました」
返事がものすごくハキハキしている。見た目はレーリエットとそう変わらないってのにな。実は、育ちがいいのかもしれない。
妙な拾い物だけど、捨てる気にはなれない。俺のことを見る目が、熱烈だ。
お袋を亡くして、色々とあった。親父はおかしくなっているので、何が起こるかわからない。俺みたいなガキが出来ることなんて、たかが知れている。
貧民なんだけど、お袋が元貴族だから、妙な良識があった。その良識のお陰で、俺は家族は大事、なんて思っていた。
ナナキは、その中で、不思議と、信頼出来る予感があった。
ナナキは、レーリエットと同じ部屋で就寝して、昼も夜も、レーリエットと上手に付き合った。気難しく、俺にしか懐かないレーリエットは、ナナキのことをものすごく気に入った。
だけど、俺が家に戻ると、レーリエットとナナキは、先を争うように抱きついてきた。これはこれで、大変だった。
兄貴も姉貴もいい年齢となったので、独り立ちかな、なんて俺は見ている頃も、親父は狂ったままだった。
俺はまだ独り立ち、という年頃ではないが、外に行けば、それなりだ。兄貴のライホーンが色々とやってくれてるので、俺に復讐される。そこは、上手に逃げたりするけど。もう、兄貴、ほどほどにしてよ!!
姉貴のリンネットはというと、その見た目が美人なので、男が貢いでくるの。だからか、弟のことを下僕のように使っていい、なんてよくわからないことを言ってくる。もちろん、俺は拒否する。だけど、弟ロイドは気の毒に、妹レーリエットと姉貴リンネットに挟まれて、いいように疲れているんだよな。
拾った子どもナナキは、いい感じに成長している。教えれば、すぐに覚えるし、体術と剣術も、それなりに身に着けた。なにより、気難しいレーリエットの相手を上手にするので、助かっていた。
レーリエットはというと、近くの異性であるナナキにでも、初恋みたいなものでも持つだろうな、なんて見ていたんだけど。
「お兄ちゃん、結婚してください!!」
俺が家に帰ると、挨拶みたいに、こんなこと言ってくるんだよ。誰に教わったんだ、それ?
そして、レーリエットの後ろで、ニコニコと笑っているナナキ。犯人はお前か!! 俺が教えている以上に、こいつ、物事知ってるよね。本当に、何者なんだよ!?
ナナキは不思議な子どもだ。突然、俺が拾って連れ帰っても、親父は文句一つ言わなかった。このまま、ナナキを育てて、それなりの所に売るのかな、なんて見ていたけど、そういう気配がない。親父、どうにか皇帝ラインハルトに復讐したいから、それどころではないか。
お袋が亡くなって随分となったが、ある意味、平和だった。毎日、なんとなく同じことを繰り返していただけだ。
夜中に目が覚めた。レーリエットは眠っているのを見て、安心する。だけど、何故かナナキが起きていた。ナナキが俺に抱きついて離れない。
「ちょっと、水でも飲みに行ってくるから」
「行かないでください」
ぎゅっと抱きついてくるナナキ。何かあるんだな。妖精が騒がしい。
「俺が行かないといけない」
「行ってはダメだ!!」
半泣きでいうナナキ。何か感じるのだろう。ナナキは、不思議な子だ。なにか不安なことがあるのかもしれない。
だけど、妖精が騒いでいるのだ。何か、家の中で起こっている。
「ここで、レーリエットを守ってくれ。レーリエットは、この中で、一番、弱いんだ」
「だったら、一緒にいてください。一緒に、レーリエットを守りましょう!!」
「危なくなったら、レーリエットと逃げるんだぞ。逃げる場所はわかっているな?」
王都の貧民街の支配者だ。何かと危険がある。俺は、聞き分けないナナキを離して、部屋を出た。
家の奥に行けば、姉貴の悲鳴があがっていた。俺は慌てて行く。
親父が、嫌がる姉貴の上に圧し掛かっていた。
「何やってんだよ、親父!!」
「邪魔するな!!」
親父、腕っぷしは王都の貧民街では最強だ。俺なんか、ちょっと腕があたれば、吹っ飛んでしまう。
ちょっと、当たり所が悪くて、俺は意識を失ってしまった。
だけど、意識を失うのも、それほど長くではない。とんでもない痛みに、俺はすぐ、目を覚ました。
「痛い、痛い痛い痛い痛いぃー------!!!」
それしか言えない。だって、ものすごく痛いんだ。
あまりの痛みに目を覚ます。目の前に、親父の体がある。俺の上に親父が圧し掛かって、叫ぶ俺の声なんか無視して、何かやっている。
下半身に強制的に挿入された何かが、俺にとんでもない苦痛を与えてくれた。何より、怪我をしている感じもした。
「サツキ、すっかりきつくなったな」
息を荒げていう親父。意味がわからない。それよりも、親父をどうにかしたくて押したり叩いたりしても、これっぽっちも効果がない。
それどころか、親父に両手を拘束され、無理矢理、口づけをされる。舌を奥深くに挿入されて、俺は息も出来ない。
「そうか、忘れちまったか。お前は育ちがいいからな。最初から、また、躾直してやる」
「や、やだ、痛い、もう、痛いってばぁ」
泣くしかない。親父には勝てないんだ。だったら、泣いて、縋って、どうにか許してもらうしかないんだ。
だけど、親父は容赦がない。苦痛を与え、体をまさぐり、俺のことを”サツキ”と呼ぶ。親父は、俺を死んだお袋の身代わりにして、何かしている。
泣いたって、親父は喜ぶ。涙を舐めとる。その行為も気持ち悪い。
下半身に何か吐き出される。それがお腹を痛くする。
「や、苦しい、痛いよぉ」
「もう少しだ。我慢しろ」
いつまで? 先の見えない行為に、俺は痛みと苦しみに苛まれて、意識すら飛ばせなかった。
その日から、俺は男ではなくなった。
やっと解放されるも、酷いものだった。流血が酷くて、親父は俺を抱きしめて、手厚い治療を施した。俺を見ては”サツキ”と呼び、夫婦の寝室に俺を閉じ込め、甲斐甲斐しく世話をする。
俺は反抗はしない。ここで、反抗したって、意味がない。親父が離れて、隙が出来るのを待った。
「サツキ、まだ、初めてだったのか。俺のものは、きつかっただろう」
俺は返事もしない。親父は一方的に話しかけてくるだけだ。
親父、狂うほど、お袋のことを大事だというのなら、どうして、皇帝のハーレムなんかに送ったんだよ。身代わりとなってわかる。親父は、本当にお袋のことを大事にしていた。金に目がくらんだ、にしては、扱いが丁寧だ。
俺はお袋のことをそれほど覚えていない。日々、子育てに謀殺されていて、それがどっかにいっちゃったんだな。
親父はお袋を外に出さない。家の奥で大事に囲っていたのだ。それなのに、お袋を皇帝のハーレムに送ったのだ。矛盾がある。
今だって、俺はお袋の身代わりで、家の奥に閉じ込められ、ご機嫌まで伺われている。
「サツキ、ほら、好きだったろう」
どこかの高級な菓子だ。兄弟姉妹も食べたことがない。俺だって食べたことがない。お袋、こうやって、親父に大事にされてたんだな。
「レーリエットに食べさせてやりたい」
だけど、俺はそれを妹に食べさせてやりたかった。
「サツキのために買ってきたんだ。さあ、食べろ」
「皆で、一緒に食べよう。一人で食べるには、多すぎる」
「そうだな、わかった」
言い方を変えれば、親父は素直に聞き入れた。誰か一人を特別扱いするのはダメだが、家族みんなはいいんだ。
「まだ、痛いから、ここから動けない。皆にわけてきてほしい」
「わかったわかった。リンネット、これを分けてこい」
近くにいたんだ。親父に菓子を渡されて、リンネットは、さっさと下がった。あれは、独り占めするな。
結局、親父をここから離すことが出来なかった。ちっくしょー、親父、そんなにお袋に執着するなら、手放すなよ!!
簡単に、体が回復するわけではない。下半身は痛いし、親父は何事かあると口づけして、愛撫して、と気持ち悪いし、どうなってるんだよ、これ。
ない胸をまさぐられたって、育たないんだよ。だけど、親父は執拗にしてくる。舐めて、愛撫して、強く吸って、と気持ち悪い。
「あ、やぁ」
なのに、変な声が出る。そういうことを毎日、執拗にされると、何か感じるようになる。気持ち悪いものだったのが、何か感じるようになる。身もだえすると、親父は気持ちの悪い笑みを浮かべて喜び、さらにするのだ。
「悪かった。久しぶりだったから、痛かったよな。次は、ゆっくりと、痛くないようにしてやるからな」
「あ、ああ、そこ、やぁ」
執拗に舐め、愛撫して、としてくる。
ちょっと視線を動かせば、真っ青になって覗き見ている兄ライホーンと目があう。俺の上に親父が圧し掛かり、俺は女のように声をあげている。そこから、目を離せないライホーン。
笑ってやるしかない。俺が出来ることなんて、それしかないんだ。幸い、痛い目にはあっていない。ちょっと気持ち悪いことをされて、それが、なんか、変な感じになってきただけだ。
親父の行為を受けながら、頭の片隅では、妹レーリエットのことが気になった。いつも添い寝しないと寝られないレーリエット。きちんと、寝てるだろうか?
外が騒がしかった。何が起こっているのだろうか、と体を起こす。珍しく、親父がいない。俺は部屋を出る。もう、下半身の痛みはなくなっていた。ただ、いつも、親父にされる行為に、体が気だるくなっているだけだ。
家の外に出れば、親父が兄ライホーンを殴っていた。
「………な、何やってんだ!?」
俺は親父を止める。
「サツキ、なんでここに居るんだ!? まさか、逃げるつもりか!!」
「そ、そんなつもりはっ、い、痛い!!」
腕を力いっぱい掴まれた。俺は知らなかったが、随分と長く軟禁されていた。体力が随分と落ちていた。引っ張られると、転びそうになる。それを親父は慌てて抱きとめ、抱き上げる。
「す、すまない。腕がこんなに赤くなってしまって」
「だ、大丈夫、だから、その」
「あのガキのことは気にするな。わけのわからないことを言ってきたから、体で言い聞かせてやっただけだ」
「そう、なんだ」
「もう、やめろ、親父!!」
せっかく俺が宥めてやってるってのに、ライホーンが口も、手も挟んでくる。
「やめろ。こいつは、ルキエルだ!!」
「ルキエルは、今、レーリエットのトコにいただろう!!」
「あれは、ナナキだ!!」
「そんな奴は知らん!!」
そうかー。ナナキのこと、俺と思い込んでいるのか。
俺が振り返れば、俺に駆け寄ろうとするレーリエットを止めるナナキと目があう。ナナキは、親父のことを憎しみをこめて睨んでいたが、俺と目があうと、苦痛に顔を歪めた。
親父は俺を手放さない。俺を抱き上げ、止めようとするライホーンなんて、片腕で殴り飛ばしてしまう。
「心配するな。もう二度と、ここから出さない」
親父は俺をぎゅっと抱きしめていう。
だったら、お袋を皇帝のハーレムに出すなよ!! 俺は心底、そう思ったが、口には出さず、ただ、睨んだ。
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