魔法使いの悪友

shishamo346

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伯爵の後悔

生徒会

 いつも、聞かれると、こう言うことにしている。

 資格すらない。

 そう言いながらも、随分と未練を残していた。何せ、あれほど、激しい女性に出会ったのは、一度きりだ。
 伯爵令嬢サツキと出会ったのは、貴族の学校だ。私は成績優秀であるため、問答無用で生徒会に入れられた。たまたま、同級生に皇族ルイがいて、そのせいもある。
 皇族は世間知らずだ。見ていると、騙されそうな危ない感じがするので、ついつい、手を出してしまった。
「皇族にイカサマをしてはいけない」
 明らかなので、私は注意した。
 相手は、上は公爵から下は私と同じ伯爵の子息である。私は成績優秀で生徒会入りしたといえども、伯爵家次男である。公爵家の跡取りとは、身分の上では勝てない。
 面子を見て、終わったな、なんて思ってしまうが、笑顔はそのままである。ほら、今年の生徒会長は、公爵家の子息だ。後で泣きつこう。
「へえ、イカサマって、どんな方法なんだ? 僕にはわからないけど」
 皇族様から笑顔で訊ねてくれる。貴族子息たちは、私をギロリと睨んでくる。
「簡単です。互いに札を教えあっているんですよ」
「そうなのか。それで、僕はずっと負けっぱなしなのか。それは、後が大変だな。僕は一応、皇族の儀式を通った立派な皇族だ。君たちに、妖精の復讐が行くかもしれないな」
『っ!?』
 笑顔でいう皇族様。悪気なんてない。ただ、思ったことをそのまま言っているだけだ。
 しかし、貴族側はそうではない。今更ながら、皇族には、神の使いである妖精が守りに付いていることに気づいて、真っ青になる。
 無知って恐ろしいな。私は貴族たちを見て、そんなことを思ってしまう。妖精は、扱い方を間違えると、大変なことになるのだ。
 私の生家は、後ろ暗い仕事もしている。その中には、野良の妖精憑きを隠し持つこともやっている。だから、私は妖精にも、妖精憑きにも、それなりに詳しい。
 それでも、魔法使いや皇族には及ばない。魔法使いは妖精憑きがなる職業だ。魔法使いこそ、妖精に詳しいだろう。それの次に詳しいといったら、皇族だ。皇族は、最強の妖精憑きを支配する側の存在だ。支配するためには、妖精憑きのことをそれなりに知っていなければならない。
 皇族が、妖精の復讐、なんて口にするのだから、それなりの立場なのだろう。皇族にだって、上は皇帝、下は本当に血筋だけという皇族といっぱいだ。皇族ルイは、皇帝に近い立場なのかもしれない。
 いかさまをしている貴族ども、しばらくは慌てふためくが、公爵子息が冷静となる。
「そ、そんな嘘、通りませんよ。だいたい、我々がイカサマをしているという証拠はないでしょう!!」
「下手くそすぎて、見ていて、恥ずかしい」
 私は正直に言ってやる。証拠以前に、本当に恥ずかしいやり取りだ。観戦者の中に、その札を教える係りがいるのだ。そいつの耳を引っ張って、その場に蹴り倒す。ついでに、そいつの服の袖をめくってやる。
 予想通り、そいつの腕は、変異していた。これには、貴族子息たちは真っ青になる。
「妖精は、イカサマは札を教えるこの男、という認識なんだろう」
「そ、そんな!? 言われた通りにやっただけなのに!!」
「知らん!!」
 妖精の復讐で泣く男。それを見捨てる公爵子息。
「次期公爵というが、見苦しいな。だから、生徒会役員に選ばれなかったわけだ」
「すでに公爵が一人、在籍しているからだ!!」
「一応、私からあんたのこと推薦したが、使えないからいらない、と生徒会長が言ってたよ」
「あいつは、我が家とは敵対しているから」
「仲間を切り捨てるような奴は、さっさと見限られる。ほら、きちんと皇族に謝るんだ」
 公爵子息なんぞ無視して、私は妖精の復讐にあった男を皇族の前に立たせた。男はすぐに地べたに這いつくばらい、額をすりつけて、謝罪した。途端、腕の変異は消えてなくなる。
「これに懲りたら、もう二度と、関わらないように。この事は、学校にも報告しておこう。皇帝にも報告がいくだろうな。妖精の復讐が発生したんだ。すぐに調査が行われるだろう」
 たかがイカサマが、とんでもない大問題となってきた。公爵子息は私につかみかかった。
「そんな報告、私からする。余計なことをするな!!」
「生徒会役員としては、やらないといけないんだ。だいたい、妖精の復讐が起きたことを簡単に済ませてはいけない。妖精の復讐が起きた、ということは、皇族の身に危険が及んだ、ということだ。これは、帝国の問題だ」
「なんだと!?」
 思い通りにならないと、暴力である。一発受けておくか、と構えていると、その間に、なんと皇族が割り込んできた。

 公爵子息は、結果、皇族を殴り、妖精の復讐を受け、顔が変異した。

 これにより、問題が、大問題となった。カードゲームでイカサマをしていたことが表沙汰となり、公爵子息は皇族を殴ったことで妖精の復讐を受けてしまう、というとんでもない汚点を被ったことから、廃嫡となった。
 ちなみに、妖精は公爵子息を許さず、顔の変異はそのまま残った。こうなると、まともに生きていけないので、公爵子息は神殿に預けられることとなった。その後は、どうなったのか、私は知らない。




 それから、皇族ルイとは腐れ縁となる。同学年なので、生徒会でも、学生活動でも、組むことが多かった。先生方としても、あの事件から、皇族係りが決まったな、なんて生暖かい目で私を見てくる。ついでに、同級生もだ。
「すまないな」
 皇族ルイは、済まなさそうに謝ってくる。そういう顔をされてしまうと、もう仕方がない、と諦めるしかない。
 そうして、私は伯爵家次男でありながら、皇族のご学友、という輝かしい肩書を持つこととなった。
 この事で、やはり腹を立てたのは、私の兄だ。両親は悪くはないが、兄弟で競わせて、切磋琢磨させようとしたのだが、兄には逆効果だった。兄は残念ながら、凡人なんだ。
 そして、私は兄の才能を奪って生まれたのだろう。だから、兄には目の敵にされていた。
 基本、長男が跡取りである。私はというと、兄のスペアとなり、兄に子が出来たら、家臣となることは、両親から言い聞かされていた。それに不満を持つ家臣だっている。だけど、私は別に伯爵になりたいとは思わない。
 だけど、周囲はどんどんと、勝手に、加熱していくのだ。兄派と、弟派に分かれて、内部分裂を起こしていた。
 まだまだ未熟な学生ですから、と私は見ないふりをしていた。両親は頑張って宥めているし、兄が跡を継げば、そういう騒ぎも収まるだろう、そう思っていた。





 そうして、数年が過ぎて、私は生徒会副会長、皇族ルイは生徒会長となった。
「生徒会長は、マクルスがするほうがいいと思うんだが」
「皇族が学校にいる場合は、まあ、成績さえ良ければ、生徒会長ですよ」
「マクルスのほうが成績が上なのに?」
「私は家臣になるので、これでいいんですよ」
 むしろ、生徒会から抜け出したい。成人した兄からの圧が恐ろしいのだ。
 私も手を抜けばいいのだ。だけど、そこが不器用だった。成績は良いままで、生徒会の仕事も片手間にこなし、稼業も手伝い、と学校からも、父からも、良い評価を貰ってしまっていた。
 そして、兄はどんどんと私を恨むように見てくる。どこに行っても、私のことは優秀な弟、と褒め称えられるのだ。毎日、怖くて、家に帰りたくなくなる。
 私の内情は、ルイも知っている。だから、哀れみをこめて見てくる。
「いっそのこと、宮仕えになればいいではないか。僕が取り立ててやるぞ」
「兄一人に任せたら、家が潰れる」
 すでに、何度も失敗して、その後始末を私がしている。友達だという貴族や、家臣からの甘言に乗って、後は大惨事だ。兄に全てをまかせたら、領地も爵位も失うことになる。
「お前は優しいな。しかし、その優しさは、いつか、自らの首を絞めることとなるぞ」
 さすが皇族。身内といえども、切り捨てることを私に言ってくる。
「私は家を継ぎませんよ」
「領民と家臣のことを考えて行動するように。皇族では、愚君を立てることは、絶対に許されぬ」
 普段は温和で、人も殺さぬような優し気な感じのルイだが、皇族としての顔は、なかなか恐ろしい感じを見せる。
 それを垣間見て、私は、器ではないな、と思い知らされる。やはり、生徒会長はルイだな。私はどこまでいっても、家臣だ。
 そんな話をしながらも、ルイは新しい生徒会役員の選任をしていた。だいたいは、成績上位者から選ぶのだが、一応、それなりの爵位も必要だ。そこのバランスを考えて、ルイは新入生から数人、選任する。
「これはまた、悪い噂しかないご令嬢ではないですか」
 成績は素晴らしいが、社交界では、義妹をいじめ、わがまま放題と噂される伯爵令嬢サツキだ。世にいう悪役令嬢として、すでに同級生から嫌われていた。
 サツキは、なかなか難しい立場だ。社交界では悪評が高く、だが、あまり顔が知られていない。噂だけが一人歩きしているのだ。こういう場合、噂は嘘なのだろう。しかし、貴族は足の引っ張りあいなので、この噂を真実のように広められていた。表舞台に出てみれば、サツキは新入生代表となる高得点の成績を叩き出した。本来ならば、入学式の新入生代表はサツキがするべきだったのだが、打診したところ、お断りの返事が父親からされた。これは、前代未聞の話であったため、学校側も困惑したのだ。これには、皇族ルイが表に出ることとなったのだが、無礼にも、父親は断った。

 だけど、サツキは新入生代表の挨拶をした。

 皇族まで動かしたので、入学式当日、教師と皇族ルイが、サツキに直接、頼みに行ったのだ。
 サツキは義妹クラリッサと同い年だ。母親違いの姉妹だ。貴族ではよくある。サツキの母はすでに亡くなっていた。父親はクラリッサの母と再婚していた。入学式には、サツキの父、義母、クラリッサが仲良く三人並んで学校にやってきた。なのに、サツキはいなかった。
「サツキ嬢はどちらにいますか?」
「あの子は不真面目な子です。朝も満足に起きてこないので、置いてきました」
 皇族ルイの問に、父親はとんでもない答えを返した。それを聞いたルイは笑顔のまま、剣呑となる。
「満足に、娘一人を連れてこれないとは、随分な父親だな」
「何様のつもりだ!? 我が家のことには、口を出さないでいただきた!!」
「皇族だが」
「っ!?」
 真っ青になるサツキの父親。皇族相手に、とんでもない口をきいたものだ。
 無礼な態度に、離れて護衛をしていた騎士数人が、サツキの身内を囲んだ。
 伯爵家は、大変なこととなった。皇族に楯突いたのだ。このまま、ただでは済まない。
「遅いですわね、お父様、お義母様、クラリッサ」
 そこに、随分と綺麗な相貌の貴族令嬢が割って入ってきた。
「な、サツキ、どうしてここに!?」
 家族に置いていかれたはずのサツキがそこにいた。サツキは少し気だるげな顔をして、その場を見回す。
「あなた方を待っていると、遅れてしまいますから、先に来ただけです」
「どうやって!? 馬車は、家にあったぞ!!」
「歩いてです。馬車の行列を見てみなさい。馬車に乗って来ていたら、馬車酔いしてしまいますわ。それで、どうして、お父様たちは、騎士の皆さまに囲まれていますの?」
「お前が勝手な行動をするからだ!!」
 とんだ濡れ衣だ。父親は、全てをサツキのせいにする。それを見て、聞いていた教師も、皇族ルイも、護衛の騎士たちも、呆れてしまう。
 見ていても、状況なんてわからないサツキは、とりあえず、一番、位が高いとわかるルイに会釈する。
「わたくしの身内が、とんだ失礼をしました。どうやら、わたくしのせいのようです。どう、お詫びをすればいいでしょうか」
「いえ、サツキ嬢の責任ではありません」
「そうなのですか? お父様、わたくしのせいではないそうですよ。まさか、また、お友達に騙されたのですか? 借金はいくらですか? 契約書を見せてください。あなたは所詮、名ばかり伯爵なのですから、勝手なことをしてはいけませんよ」
「親に向かって、生意気なことをいうな!?」
「そうよ、お義姉さま、お父様に失礼なことを言わないでください!!」
「本当に、可愛げのない子ね」
 父親、義母、義妹から、サツキは責められる。サツキ、かなり口が悪い。
 しかし、気がかりな内容だ。まるで、サツキが伯爵の仕事をしているような口ぶりだ。
 サツキは悪く言われても、嫣然と微笑み、また、ルイに頭を下げる。
「わたくし、社交もしたことがない、世間知らずな女なのです。どこのどなたかわかりませんが、大変、失礼なことをしてしまったようです。申し訳ございませんでした」
「僕は生徒会長です」
「あら、皇族ルイ様ですか。お初にお目にかかります。お会いできて光栄です」
「こちらこそ、あなたような素晴らしい令嬢に出会えたことは、神と妖精、聖域に感謝します」
 社交界には出ないサツキは、かなり、頭の切れる令嬢であった。
 それから、ルイは落ち着いて、サツキの事と次第を説明する。それを聞いたサツキは。
「あら、お父様ったら、わたくしに相談もせず、お断りの返事をしたのですね」
「お前はやりたくないと」
「どうだったかしら。言ったのかしら」
「言ってましたよ!!」
「聞きました!!」
 またも、父親、義母、義妹がサツキを責める。複数でサツキが断るようなことを言った、と言われてしまったサツキは、嫣然と微笑むだけだ。
「そうかもしれませんわね。申し訳ございません、ルイ様。わたくし、本当に社交に疎い女ですので、大変、失礼なことをしてしまいました。新入生代表としては、相応しくありませんので、次席の方にお願いしたほうが良いと思います。成績が良くても、人間性が良いわけではありませんから」
「確かにそうだな」
「全くその通りです」
「本当に」
 名誉あることだというのに、サツキは父親、義母、義妹の言いなりのように意見を変える。
 ここにきて、伯爵家でのサツキの立場がよくわかった。
 サツキは一見、ちょっと口が悪い令嬢だ。しかし、決して、悪女というわけではない。家族から蔑ろにされているが、それを楽しんでいる、おかしな令嬢である。
 普通の令嬢であれば、家族から悪く言われ、悪い扱いをされれば、卑屈な女に成り下がるものだ。しかし、サツキはそれを遊びのように家族を操っていた。
 皇族ルイや護衛の騎士、教師までいるのだ。どうしても、目立ってしまう。多くの貴族たちは、サツキの器量を見て、人を見る目があれば、サツキのすごさに気づくだろう。
 ルイの側で見ていた私だって、サツキの気性の激しさと豪胆さに目を奪われた。この女は、そこらの男では扱えない。
 だから、ルイはサツキを新入生代表の場に立たせようと、説得した。
「こういうのは、成績順と決まっている。通例だ」
「でも、やれと言われて、簡単に出来るものではありませんわ。ほら、挨拶用の原稿は、それなりの時間をかけて考えるものでしょう?」
「数年分の挨拶文の原稿を持ってきた。優秀な成績をとるような者なら、これで出来るだろう」
 無理矢理、サツキに過去の原稿を渡す。サツキは面倒臭そうに原稿をペラペラとめくって、ルイに返した。
「ありきたりな文章ばかりですね」
 たった数秒で読んだという事実に、誰もが驚いた。サツキは、とんでもない才女だ。
「また、いい加減なことをいうな!?」
「痛いっ!?」
 しかし、父親は信じない。サツキの頭を乱暴につかみ、後ろに下がらせた。
「サツキよりも、クラリッサのほうが優秀です。見てください。クラリッサが考えた挨拶文です!!」
 そして、父親は義妹クラリッサを売り込むために、前に出た。
「おい、誰か、皇族の許可なく話に割り込んだ無礼者がいる。牢に入れろ」
 とうとう、ルイの怒りが頂点に達した。
 学校では、ルイは皇族の権力を行使することはなかった。そこまで酷いことが起こらなかったからだ。
 しかし、サツキの父親の行動に、ルイは我慢ならなかった。ルイの命令に、騎士たちはサツキの父親を捕縛する。
 入学式前で、前代未聞なことが起こった。教師たちは真っ青になる。まさか、皇族の怒りを買うようなことをする貴族が出てくるなど、誰も想像すらしていなかった。
「まあまあ、クラリッサも、ありきたりな文章ですわね」
 大変な場だというのに、サツキは父親が持ってきた挨拶文を見て、嘲笑う。それを聞いて、クラリッサは顔を真っ赤にして叫んだ。
「それは、お義姉様が考えたものではないですか!?」
「嘘でも、自分で一生懸命考えました、というものですよ」
 呆気なく暴露する義妹に、サツキはあきれ果てた。そして、挨拶文の原稿を皇族ルイに渡す。
「よくわかりませんが、わたくしが考えたものがあったようです。これで良いようでしたら、そのまま使いましょう」
「………ああ、これで十分だ」
「ですが、新入生代表の身内が、牢に入っているというのは、なんとも体裁の悪い話ですわね。やはり、新入生代表は次席の方に」
「今回は、特別に、許してやろう。次はない」
 ルイは仕方なく、サツキの父親を許すことにした。
 こうして、サツキは新入生代表の挨拶を無事、終えた。

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