50 / 152
伯爵の後悔
復讐譚
皇帝が民衆の前に出る。その情報をアルロに渡した。どうせ、民衆に出る時に催される出し物を依頼されるの、人集めとかするから、アルロの力はどうしても必要だ。
どうするかな、と見ていると、アルロは珍しく迷っていた。
「やめてもいいんだぞ」
もう、アルロの中では、皇帝は悪くない、と納得している。
サツキをハーレムに送るために動いた貴族どもを陥れて、私とアルロは色々と聞き出したのだ。皆、サツキが生きてハーレムから出て来れないとわかっていてやったのだ。本当に悪いのは、アルロを騙して、サツキをハーレムに送った奴らだ。
もう、復讐は終わっている。復讐をやめて、喜ぶ者は多い。むしろ、復讐をやめたいのだ。
「ルキエルが、望んでいる」
「アルロ!! もう、ルキエルを手放せ。その執着が、ルキエルをどんどんと狂わせてるんだ。私にまかせれば、ルキエルをまともにしてやれる」
自信がある。ルキエルは私を恐れている。たった一度、怖い目にあわせたので、ルキエルは私に対する時は、随分と気を付けるようになっていた。
「まだ、関係が続いているんだろう」
「………」
否定出来ない。私もまた、ルキエルに魅了された側だ。寝室に入れてしまえば、手を出してしまう。ルキエルも、それを楽しんでいるので、もう、どうしようもない。
俺もアルロも、どうしようもないな。アルロなんか、側にいるから、毎日のようにルキエルに手を出しているのだろう。もう、ルキエルから離れられなくなっているのだ。
それは、アルロだけではない。サツキの二人目の子リンネットは、本当にどうしようもない性悪女だ。アルロの行為で気絶したルキエルを使って、金儲けをして、弱味を握って、言いなりにしているのだ。どうにかしないといけないのは、リンネットだ。
どんどんとルキエルによって狂わされる貧民街。その内、ルキエルを手に入れるために、内乱が起きるだろう。それをどうにか起こさせないのが、アルロと私だ。私たちの関係もそうだが、私はそこら辺の貴族のように扱えない存在だ。何度か襲われたが、片手間だ。
「もう、お前は手を引け」
「何からだ?」
「復讐からだ。この件は、お前を破滅させる。それは、サツキの望むことではない」
そっちか。てっきり、ルキエルから手を引け、と言われるかと思っていた。普通の親ならば、私とルキエルの関係は解消させたいだろう。
しかし、貧民はそうではないんだな。独り占めしたい、とか、そういうのもないんだ。相手はルキエルだからな。これがサツキだったら、私はアルロに殺されていたな。
「今更、何を言ってるんだ。もう、私とお前は一蓮托生だ。落ちる時も一緒だ」
「気持ち悪いことをいうな」
「お前とは違って、私は女好きだ。実際、男にはこれっぽっちも反応しなかった」
「ルキエルとは寝てるだろう!!」
「そこが謎だ。どうしてか、ルキエルだけは、閨事出来てしまうんだよな。今でも時々、試しているが、やはり、他の男相手では、鳥肌がたつ」
「妙な所で繊細だな。あんなの、作業だろう」
「………」
本当に、アルロの過去を知りたくなる。アルロは、男でも女でも、平然と抱くのだろう。そういう過去があるんだ。
「今回は、あの筆頭魔法使い様も表に出るそうだ。噂では大したことがない、と言われているが、どうかな。気に入らない魔法使いを処刑し、出来ない皇族を平民に落とし、とやりたい放題だ。皇帝ラインハルトも筆頭魔法使いの顔色を伺うという」
「ルキエルがいうには、大した妖精憑きではないと」
筆頭魔法使いハガルは、見習い魔法使いだった頃、市井に出ては女遊びをしていた。だから、筆頭魔法使いのことを軽く見る者は多い。
「相変わらず、世間知らずだな。筆頭魔法使いは最強の妖精憑きだ。情報は隠されているだけだ。見た目で判断してはならない」
だが、私は違う。一目見て、恐怖した。今は亡き賢者テラスは恐ろしい男だと感じたが、筆頭魔法使いハガルは化け物だ。面白半分に見習い魔法使いを見に行ったつもりが、とんでもない化け物に出会って、生きた心地がしなかった。
だから、皇族ルイに面談をする時は、筆頭魔法使いを避けている。
「まあいい。失敗して、捕まった時は、最後の仕上げだ」
「知らない奴だ、と言ってやる」
「出来るのか?」
「出来るから言ってるんだ。お前は知らないんだ。本当の俺は、どういう奴か」
だけど、アルロは最後まで、過去を私に教えてくれなかった。
屋敷の私室に戻れば、ベッドにルキエルがいた。ルキエルほどの妖精憑きなら、誰にも知られずに忍び込むのは簡単だろう。
「また、悪い子だ。お仕置きされたいのか?」
「いつまでも、俺は子ども扱いだな。オクトは立派に大人だってのに」
不貞腐れるルキエルに、軽く口づけする。ルキエルは、さらに深くしたくて、私の顔をつかみ、離さない。仕方がないので、舌を入れてやると、喜んで答えた。
離れると、ルキエルは恍惚な顔を見せる。
「あんたの口づけは、癖になるな」
「中毒になっているみたいだな」
「後悔してる、あんたにちょっかい出したこと」
「無闇に人を誘惑するんじゃない。それで、今日は何しに来た? 道具は先日、持って帰っただろう」
相変わらず、ルキエルは道具目当てで私との関係を続けていた。道具がなければ、私なんて用なしだな。
だから、今日は手をだすつもりはない。お互い、利害関係のままのほうが、楽なんだ。本音では、ルキエルの特別でいたいが、我慢する。ルキエルに対しては、欲張りすぎてはいけない。
「もう、あんたは手を引け」
「………」
驚いた。まさか、アルロと同じことをルキエルに言われるとは、思ってもいなかった。
ルキエルは本当にサツキに似ている。見た目もそうだが、気性がそっくりだ。だから、質が悪い。
サツキの復讐は容赦ない。随分と耐えて耐えて、そして、時間をかけて、扱いを間違えた相手全てを陥れた。まさか、領民にまで復讐の対象とするとは。
ルキエルは、貧民街も、貴族も、皇族だって巻き込もうとしている。私だって、復讐の対象だ。道具を餌に可愛がったからな。
それなのに、ルキエルは私を復讐から引かせようとしている。
私はルキエルの隣りに座る。ルキエルは覚悟を決めたような顔をしている。これから抱かれると思っているのだろう。だから、私はルキエルには触れない。
「なんだ、私は足手まといか。これでも、騎士になれるくらいの実力はあるんだぞ」
「襲撃に加わるのか!?」
「サツキを殺した皇帝だぞ。加わるに決まっている」
「お袋のこと、好き、なんだ」
「いつも言っているだろう。そんな資格なんてない。これは、自己満足だ」
ルキエルは、サツキの身代わりにされている、と思いこんで、傷ついた顔をする。面白いな。私のことは、玩具だろう。
「気に入らないのか、私のことが」
「身代わりは、イヤだ」
「その顔では、仕方がない。本当に、よく似ている。父親が間違ってしまうのもわかる」
「帰る」
「きっかけは確かにサツキだ。だが、今はそうではない」
帰ろうと立つルキエルの手を握る。ちょっと抵抗すれば、ルキエルなら、私の手など振り払えるというのに、そのままだ。止めてほしかったんだろう。
「いつになったら、私はお前の特別になれるかな?」
「特別って、何が」
「知らずに使っていたのか」
時々、ルキエルは使うことがある。無意識に使っているのだろう。そう口にされると、私はついつい、ルキエルに期待してしまうのだ。
「サツキにとって、お前の父親は特別だ」
「そりゃ、夫婦だし」
「そういう、単純なものではない。あの二人はな、そういうものを超えた関係だ。ただの夫婦ではない。特別な夫婦なんだ。世の中には、男も女もいっぱいだ。代わりなんていっぱいいる。それでも、サツキにとって、あの男の代わりなんていない。あの男にとって、サツキの代わりなんていないんだ」
「俺は身代わりだけどな」
「狂ってまで、求めているんだ。いくらだって女はいるが、あの男の女はサツキだけだ。貧民出の騎士でありながら、サツキのために騎士を捨て、貧民に戻り、貧民街の支配者となって、サツキの復讐を手伝ったんだ」
「復讐って」
ルキエルは、意外にも、サツキの裏の所業を知らなかった。しまった、口を滑らしてしまった。サツキの裏の顔を貧民でも知られていない。サツキの生家の現状は、自業自得とされているのだ。
こういう時は、誤魔化す方法なんて一つしかない。私はルキエルをベッドに引き倒し、その上に圧し掛かり、深く口づけする。
すっかり、私の体液に酔うルキエル。もう、私の話など忘れてしまっているだろう。まだまだ若いな。
「悪い子だ。久しぶりに、お仕置きだ」
「や、やめて」
逃げようとしても、私はさらに体液を与える。拒否なんて出来ない。ルキエルは、私の体液に含まれる香に嵌ってしまっているのだ。喉を鳴らして、受け止めてしまう。
すっかり、外も内側も抵抗出来なくなったルキエルは、ベッドで脱力する。諦め、私のお仕置きを待っている。
「珍しいものを手に入れた。妖精封じの布だ」
私はルキエルの両腕と足首に、布を巻いてやる。
一見、ただの布なので、最初は安堵するルキエルだが、巻いた瞬間に、色々と封じ込められる感覚が襲ったのだろう。恐怖で真っ青になる。
「や、これ、こわい」
「大昔は、力のありすぎる妖精憑きをこれでどうにか抑え込んでいたそうだ。枷ではほら、見栄えが悪いからな。目隠しをしている筆頭魔法使いは、化け物と決まっているそうだ」
とても特殊な布だ。筆頭魔法使い自らが作るという。だから、そこら辺の妖精封じよりも、強い封じがされるのだろう。両手両足を綺麗に巻いてやると、ルキエルは恐怖に震える。
「大丈夫だ。ここでは、私が守ってやる」
全てを晒されたルキエルの姿に、私は感嘆となる。これを見てしまったら、もう、離れられない。全てを捧げ、尽くしたい。
私の目の色が変わったからだろう。お仕置きだ、と言われているので、ルキエルは何をされるのか、わからず、怯えて、小さくなる。少し触れるだけで、小刻みに震える。
「そんなに怖いのなら、夜這いなんて、二度としてはいけない」
「だったら」
「もう出来ないように、お仕置きだ」
下半身に指を突っ込み、軽く刺激してやる。いつもは太いものを望むままに与えてやっているが、今日は与えてやらない。ルキエルは、私の一物が服の上からでもわかるほど、何も反応していないのに、愕然とする。この緩やかな刺激をずっと受けさせられるのだ。
「指、もっと増やして」
布だから、ルキエルは手足が使える。私の背中に腕を回して、角度をかえ、場所をかえ、と口づけをして、ご機嫌とりをしてくれる。それは、私の中ではすごい喜びだ。
だから、指一本で、ルキエルの弱いところを優しく撫でてやる。押して、優しく、ゆっくりと刺激してやると、ルキエルは足りないが、それを最大限、感じるように集中する。もっと強くしてほしい、と口づけして、私の体液を求めて、舌まで入れようとするが、それを私はやらせない。すぐに手で私はルキエルの顔を押してやる。
「お仕置きなんだから、あげない」
「そんなぁ」
「大人しく寝ていなさい」
ちょっと愛撫してやれば、ルキエルは喜ぶ。体液を与えてやらないが、私はルキエルの体に舌を這わせてやる。その刺激を受け、ルキエルは我慢した。下手に手や足を出せば、私がやめてしまうとわかっているからだ。過去に、何度か、そういうお仕置きをされて、ルキエルは学習していた。
「ここを舐めてやったことはないな」
私はルキエルの剛直を握る。
「ルキエルは、女を買っているくせに、何もしていないな」
「ど、どうして、それをっ」
ルキエルの剛直を握って擦ってやる。
「閨事を簡単に漏らす奴は信用しないように」
呆気なく、ルキエルは白濁を吐き出した。それでも、ルキエルの剛直は元気だ。
私がちょっと調べれば、ルキエルの閨事の現状なんて、すぐわかる。貧民街ではアルロの監視があるので、女に手を出すことはない。それ以前に、ルキエルはこれっぽっちも興味がない。平民地区では、一時期、女遊びをして、女まで買っていたが、手をつけていないことは、調べてわかっていた。
いまだに、ルキエルは女の経験がない。
「あの男も、これには手をつけていないだろう。お前はどこまでいっても、女だ」
気を失ったルキエルに手を出した男どもにも吐かせた。皆、ルキエルを女のように抱いていた。
「せっかくだ。私が初めてになってやろう」
「なにをっ」
「私もやきがまわったな」
アルロに色々と教えてもらった。アルロ、本当に詳しいな!! だから、前準備も随分としていた。
私はルキエルの上にまたがる。ルキエルは、信じられないものでも見るように私を見上げる。
「や、やめっ」
「私も初めてだ。優しくしてくれ」
なかなかすごい剛直だ。それなりに緩めていたとはいえ、ルキエルの剛直を受け入れるのは、簡単ではない。時間をかけて、ゆっくると、私は挿入させる。
ルキエルは、何を感じているのかわからない。ただ、大人しく、私の中を剛直を通して感じて、震える。
随分と時間をかけて、私はルキエルの剛直を受け止める。最奥のさらに奥にまで到達する。これは、さすがにきつい。
「いつも、こんな物を受け入れているのか」
「や、動かない、で」
「動かないと、私が気持ちよくならないだろう。角度が難しいな」
「ぐっ」
私はそんなに良くないのだが、ルキエルはいいらしい。私が動けば、ルキエルは呻く。そこは、男だな。女のように甘い声を出さない。だから、私には、良くないのだろう。雰囲気作りは大事だ。
そうして、ルキエルはあっけなく、私の中に白濁を吐き出した。初めてのことだから、ルキエルはわけがわからない顔をしている。
対する私は、これっぽっちも良くなかった。さっさと、ルキエルの剛直から離れた。
「私は男はダメだな。これっぽちも楽しくない」
「こ、ここまで、しておいてっ」
まさか、初めてまで男にとられるとは思ってもいなかったルキエルは悔しそうな顔をする。まあ、私も初めては女相手だったな。男として、気の毒なことをしてしまった。
「お仕置きだから、仕方がない。私の初めてはどうだった?」
「………」
ご機嫌斜めでそっぽ向くルキエル。中でいったんだ。悪くはなかっただろう。
「仕方がないな。ほら、私もやってやろう」
「もういらない。寝る」
枷とは違って、布だから、ルキエルは抵抗出来る。私の体を押した。
「全てが終わったら、女の抱き方を教えてやる。そういうのが上手な女がいる。口も堅いから、外にも漏らさない」
「お前には漏らすだろう」
「教えるんだ。上手に出来るようになっているか、私が採点してやろう」
「そんなことまで教えてもらわなくていい!! いらない!!!」
最後かもしれないのに、ルキエルは、抱きしめさせてもくれなかった。
帝国の悪女というと、伯爵令嬢サツキのことをいう。サツキは、皇族、貴族、騎士をその美貌で篭絡し、伯爵家に復讐したのだ。
最初、伯爵令嬢サツキは、不幸な令嬢と呼ばれていた。母を亡くした後、父、義母、義妹から虐待を受け、使用人たちからも冷たい仕打ちをされ、身内からも見放され、領民からも石を投げられたという。母を亡くした後、サツキは屋敷に閉じ込められ、当主の仕事をやらされ、外にも出してもらえない監禁状態だった。それをいいことに、父、義母、義妹は社交に出ては、サツキの悪評を広め、サツキは悪女と呼ばれるようになった。
サツキは貴族となるため、貴族の学校に通う時も、悪女として、敬遠されていた。しかし、サツキは成績優秀者として新入生代表となり、生徒会役員として手腕をふるい、その実力は素晴らしいものだった。ただ、少し、口が悪かったと言われている。
サツキは伯爵家での扱いを隠し通していた。それを見破ったのは、騎士だ。心ある騎士は、サツキを支えたが、それを人々は浮気と罵った。サツキの婚約者は、噂の浮気を罵り、婚約破棄し、義妹と婚約した。そして、サツキは伯爵家を追い出された。
その後、サツキの義妹が伯爵家の跡継ぎとして発表されたが、すぐに異議申し立てが起こった。
伯爵家は、元はサツキの母が受け継いでいた。サツキの父は、血縁でない婿であった。伯爵家の正当な跡取りは、サツキなのだ。義妹は跡継ぎではなかった。それをサツキの血縁は、お家乗っ取りと帝国に訴えたのだ。途端、サツキの父、義母、義妹はお家乗っ取りの犯罪者となった。
しばらくして、取り調べられ、義母がサツキの母を毒殺したことが発覚した。証拠も証人も出て、義母は処刑された。サツキの父と義妹は、お家乗っ取りをしたことで、伯爵家から追放された。
そこから、次は伯爵家の当主を決めることとなった。まずは、正式な跡継ぎであるサツキの捜索である。しかし、サツキは死体となって発見された。
帝国の調査により、サツキは伯爵家を追い出されてすぐ殺されたことが発表された。そのことから、サツキの父、義妹が容疑者として、また、牢屋に入れられることとなった。結局、証拠は見つからず、サツキを殺した犯人もわからないことから、そのまま解放された。
サツキの父の実家は、サツキの父と義妹を暖かく迎え入れていた。殺人の容疑も晴れたことから、義妹は父の実家の跡取りと婚約が発表された。サツキを追い出したことは酷いことであるが、サツキの父と母は政略結婚だ。愛のない結婚を強いられたのだ。愛する女の娘である義妹のためにしたことだ、と世間では見られていた。
ところが、しばらくして、サツキの父、義母、義妹がサツキに虐待をしていることが発覚した。伯爵家の使用人たちが証言したのだ。その虐待の酷さに、世間は見方を変えた。サツキの父と義妹は、父の実家を追い出された。婚約も白紙となった。こうして、サツキの父と義妹のその後は不明となった。
一方、伯爵家は大変なこととなった。跡継ぎが決まらず、血縁で内戦を起こしたのだ。領地は大変となり、最後、分割統治となった。
サツキの死により、伯爵家はおかしくなった。全ては、サツキの父、義母、義妹のせいだ、と世間では言われた。
それから数十年が経った頃、皇族と貴族が、サツキの孫を連れて来た。
十年に一度、帝国中の貴族が集まる舞踏会の場でのことだった。皇族は、サツキが学校に通っていた頃、生徒会長をしていた皇族ルイだ。貴族は、副会長だった伯爵マクルスの養子であった。
その場にて、伯爵令嬢サツキの復讐譚が語られた。
サツキは、サツキのために騎士を捨て、貧民となった男の妻となり、貧民、貴族、皇族を使って、伯爵家に復讐したのだ。
サツキは、ただ手紙を送り、指示しただけだ。伯爵家を追い出されてすぐ、血族たちに「あなたこそは、次の伯爵になるべき人です」と手紙を送り、煽った。
貧民を使って、噂を広げ、サツキを蔑んだ者たちの退路を塞いだ。
貴族を使って、情報を広げ、帝国全土に新聞を通して、伯爵家の醜聞をまき散らした。
皇族を使って、死を偽装し、領地を内乱に陥れ、領民を巻き込んだ。
こうして、伯爵令嬢サツキは、伯爵家に復讐を果たした。
あまりの話に、まだ、分割統治をしている血縁たちは納得しない。証拠はどこだ、と叫んだ。
そこで口を出したのは、筆頭魔法使いハガルである。ハガルは、サツキの息子を一人、知っているという。サツキの息子ルキエルは、妖精憑きであった。本来であれば、魔法使いとなるべきだが、秘密裡の使命を受けて、隠された魔法使いとなっていた。
皇族と貴族が連れてきた子を見ていう。ルキエルによく似ている、と。
証拠は、と叫ぶ血縁たちに、ハガルはいう。
「お前たちの統治下では、領地は酷いこととなっている。サツキが統治している頃は、あれほど肥沃であった領地だったというのに、分割統治となってからは、すっかり、貧しくなってしまった。これは、神と妖精と聖域が、お前たちを認めていないということだ。サツキの孫に数年、まかせてみなさい。神と妖精、聖域が全て、答えを出してくれるだろう」
こうして、皇族と貴族に連れられてきたサツキの孫が当主となった。
神と妖精、聖域が認めたのだろう。その年から、伯爵領は実りを取り戻し、それからずっと、豊かな領地となった。
どうするかな、と見ていると、アルロは珍しく迷っていた。
「やめてもいいんだぞ」
もう、アルロの中では、皇帝は悪くない、と納得している。
サツキをハーレムに送るために動いた貴族どもを陥れて、私とアルロは色々と聞き出したのだ。皆、サツキが生きてハーレムから出て来れないとわかっていてやったのだ。本当に悪いのは、アルロを騙して、サツキをハーレムに送った奴らだ。
もう、復讐は終わっている。復讐をやめて、喜ぶ者は多い。むしろ、復讐をやめたいのだ。
「ルキエルが、望んでいる」
「アルロ!! もう、ルキエルを手放せ。その執着が、ルキエルをどんどんと狂わせてるんだ。私にまかせれば、ルキエルをまともにしてやれる」
自信がある。ルキエルは私を恐れている。たった一度、怖い目にあわせたので、ルキエルは私に対する時は、随分と気を付けるようになっていた。
「まだ、関係が続いているんだろう」
「………」
否定出来ない。私もまた、ルキエルに魅了された側だ。寝室に入れてしまえば、手を出してしまう。ルキエルも、それを楽しんでいるので、もう、どうしようもない。
俺もアルロも、どうしようもないな。アルロなんか、側にいるから、毎日のようにルキエルに手を出しているのだろう。もう、ルキエルから離れられなくなっているのだ。
それは、アルロだけではない。サツキの二人目の子リンネットは、本当にどうしようもない性悪女だ。アルロの行為で気絶したルキエルを使って、金儲けをして、弱味を握って、言いなりにしているのだ。どうにかしないといけないのは、リンネットだ。
どんどんとルキエルによって狂わされる貧民街。その内、ルキエルを手に入れるために、内乱が起きるだろう。それをどうにか起こさせないのが、アルロと私だ。私たちの関係もそうだが、私はそこら辺の貴族のように扱えない存在だ。何度か襲われたが、片手間だ。
「もう、お前は手を引け」
「何からだ?」
「復讐からだ。この件は、お前を破滅させる。それは、サツキの望むことではない」
そっちか。てっきり、ルキエルから手を引け、と言われるかと思っていた。普通の親ならば、私とルキエルの関係は解消させたいだろう。
しかし、貧民はそうではないんだな。独り占めしたい、とか、そういうのもないんだ。相手はルキエルだからな。これがサツキだったら、私はアルロに殺されていたな。
「今更、何を言ってるんだ。もう、私とお前は一蓮托生だ。落ちる時も一緒だ」
「気持ち悪いことをいうな」
「お前とは違って、私は女好きだ。実際、男にはこれっぽっちも反応しなかった」
「ルキエルとは寝てるだろう!!」
「そこが謎だ。どうしてか、ルキエルだけは、閨事出来てしまうんだよな。今でも時々、試しているが、やはり、他の男相手では、鳥肌がたつ」
「妙な所で繊細だな。あんなの、作業だろう」
「………」
本当に、アルロの過去を知りたくなる。アルロは、男でも女でも、平然と抱くのだろう。そういう過去があるんだ。
「今回は、あの筆頭魔法使い様も表に出るそうだ。噂では大したことがない、と言われているが、どうかな。気に入らない魔法使いを処刑し、出来ない皇族を平民に落とし、とやりたい放題だ。皇帝ラインハルトも筆頭魔法使いの顔色を伺うという」
「ルキエルがいうには、大した妖精憑きではないと」
筆頭魔法使いハガルは、見習い魔法使いだった頃、市井に出ては女遊びをしていた。だから、筆頭魔法使いのことを軽く見る者は多い。
「相変わらず、世間知らずだな。筆頭魔法使いは最強の妖精憑きだ。情報は隠されているだけだ。見た目で判断してはならない」
だが、私は違う。一目見て、恐怖した。今は亡き賢者テラスは恐ろしい男だと感じたが、筆頭魔法使いハガルは化け物だ。面白半分に見習い魔法使いを見に行ったつもりが、とんでもない化け物に出会って、生きた心地がしなかった。
だから、皇族ルイに面談をする時は、筆頭魔法使いを避けている。
「まあいい。失敗して、捕まった時は、最後の仕上げだ」
「知らない奴だ、と言ってやる」
「出来るのか?」
「出来るから言ってるんだ。お前は知らないんだ。本当の俺は、どういう奴か」
だけど、アルロは最後まで、過去を私に教えてくれなかった。
屋敷の私室に戻れば、ベッドにルキエルがいた。ルキエルほどの妖精憑きなら、誰にも知られずに忍び込むのは簡単だろう。
「また、悪い子だ。お仕置きされたいのか?」
「いつまでも、俺は子ども扱いだな。オクトは立派に大人だってのに」
不貞腐れるルキエルに、軽く口づけする。ルキエルは、さらに深くしたくて、私の顔をつかみ、離さない。仕方がないので、舌を入れてやると、喜んで答えた。
離れると、ルキエルは恍惚な顔を見せる。
「あんたの口づけは、癖になるな」
「中毒になっているみたいだな」
「後悔してる、あんたにちょっかい出したこと」
「無闇に人を誘惑するんじゃない。それで、今日は何しに来た? 道具は先日、持って帰っただろう」
相変わらず、ルキエルは道具目当てで私との関係を続けていた。道具がなければ、私なんて用なしだな。
だから、今日は手をだすつもりはない。お互い、利害関係のままのほうが、楽なんだ。本音では、ルキエルの特別でいたいが、我慢する。ルキエルに対しては、欲張りすぎてはいけない。
「もう、あんたは手を引け」
「………」
驚いた。まさか、アルロと同じことをルキエルに言われるとは、思ってもいなかった。
ルキエルは本当にサツキに似ている。見た目もそうだが、気性がそっくりだ。だから、質が悪い。
サツキの復讐は容赦ない。随分と耐えて耐えて、そして、時間をかけて、扱いを間違えた相手全てを陥れた。まさか、領民にまで復讐の対象とするとは。
ルキエルは、貧民街も、貴族も、皇族だって巻き込もうとしている。私だって、復讐の対象だ。道具を餌に可愛がったからな。
それなのに、ルキエルは私を復讐から引かせようとしている。
私はルキエルの隣りに座る。ルキエルは覚悟を決めたような顔をしている。これから抱かれると思っているのだろう。だから、私はルキエルには触れない。
「なんだ、私は足手まといか。これでも、騎士になれるくらいの実力はあるんだぞ」
「襲撃に加わるのか!?」
「サツキを殺した皇帝だぞ。加わるに決まっている」
「お袋のこと、好き、なんだ」
「いつも言っているだろう。そんな資格なんてない。これは、自己満足だ」
ルキエルは、サツキの身代わりにされている、と思いこんで、傷ついた顔をする。面白いな。私のことは、玩具だろう。
「気に入らないのか、私のことが」
「身代わりは、イヤだ」
「その顔では、仕方がない。本当に、よく似ている。父親が間違ってしまうのもわかる」
「帰る」
「きっかけは確かにサツキだ。だが、今はそうではない」
帰ろうと立つルキエルの手を握る。ちょっと抵抗すれば、ルキエルなら、私の手など振り払えるというのに、そのままだ。止めてほしかったんだろう。
「いつになったら、私はお前の特別になれるかな?」
「特別って、何が」
「知らずに使っていたのか」
時々、ルキエルは使うことがある。無意識に使っているのだろう。そう口にされると、私はついつい、ルキエルに期待してしまうのだ。
「サツキにとって、お前の父親は特別だ」
「そりゃ、夫婦だし」
「そういう、単純なものではない。あの二人はな、そういうものを超えた関係だ。ただの夫婦ではない。特別な夫婦なんだ。世の中には、男も女もいっぱいだ。代わりなんていっぱいいる。それでも、サツキにとって、あの男の代わりなんていない。あの男にとって、サツキの代わりなんていないんだ」
「俺は身代わりだけどな」
「狂ってまで、求めているんだ。いくらだって女はいるが、あの男の女はサツキだけだ。貧民出の騎士でありながら、サツキのために騎士を捨て、貧民に戻り、貧民街の支配者となって、サツキの復讐を手伝ったんだ」
「復讐って」
ルキエルは、意外にも、サツキの裏の所業を知らなかった。しまった、口を滑らしてしまった。サツキの裏の顔を貧民でも知られていない。サツキの生家の現状は、自業自得とされているのだ。
こういう時は、誤魔化す方法なんて一つしかない。私はルキエルをベッドに引き倒し、その上に圧し掛かり、深く口づけする。
すっかり、私の体液に酔うルキエル。もう、私の話など忘れてしまっているだろう。まだまだ若いな。
「悪い子だ。久しぶりに、お仕置きだ」
「や、やめて」
逃げようとしても、私はさらに体液を与える。拒否なんて出来ない。ルキエルは、私の体液に含まれる香に嵌ってしまっているのだ。喉を鳴らして、受け止めてしまう。
すっかり、外も内側も抵抗出来なくなったルキエルは、ベッドで脱力する。諦め、私のお仕置きを待っている。
「珍しいものを手に入れた。妖精封じの布だ」
私はルキエルの両腕と足首に、布を巻いてやる。
一見、ただの布なので、最初は安堵するルキエルだが、巻いた瞬間に、色々と封じ込められる感覚が襲ったのだろう。恐怖で真っ青になる。
「や、これ、こわい」
「大昔は、力のありすぎる妖精憑きをこれでどうにか抑え込んでいたそうだ。枷ではほら、見栄えが悪いからな。目隠しをしている筆頭魔法使いは、化け物と決まっているそうだ」
とても特殊な布だ。筆頭魔法使い自らが作るという。だから、そこら辺の妖精封じよりも、強い封じがされるのだろう。両手両足を綺麗に巻いてやると、ルキエルは恐怖に震える。
「大丈夫だ。ここでは、私が守ってやる」
全てを晒されたルキエルの姿に、私は感嘆となる。これを見てしまったら、もう、離れられない。全てを捧げ、尽くしたい。
私の目の色が変わったからだろう。お仕置きだ、と言われているので、ルキエルは何をされるのか、わからず、怯えて、小さくなる。少し触れるだけで、小刻みに震える。
「そんなに怖いのなら、夜這いなんて、二度としてはいけない」
「だったら」
「もう出来ないように、お仕置きだ」
下半身に指を突っ込み、軽く刺激してやる。いつもは太いものを望むままに与えてやっているが、今日は与えてやらない。ルキエルは、私の一物が服の上からでもわかるほど、何も反応していないのに、愕然とする。この緩やかな刺激をずっと受けさせられるのだ。
「指、もっと増やして」
布だから、ルキエルは手足が使える。私の背中に腕を回して、角度をかえ、場所をかえ、と口づけをして、ご機嫌とりをしてくれる。それは、私の中ではすごい喜びだ。
だから、指一本で、ルキエルの弱いところを優しく撫でてやる。押して、優しく、ゆっくりと刺激してやると、ルキエルは足りないが、それを最大限、感じるように集中する。もっと強くしてほしい、と口づけして、私の体液を求めて、舌まで入れようとするが、それを私はやらせない。すぐに手で私はルキエルの顔を押してやる。
「お仕置きなんだから、あげない」
「そんなぁ」
「大人しく寝ていなさい」
ちょっと愛撫してやれば、ルキエルは喜ぶ。体液を与えてやらないが、私はルキエルの体に舌を這わせてやる。その刺激を受け、ルキエルは我慢した。下手に手や足を出せば、私がやめてしまうとわかっているからだ。過去に、何度か、そういうお仕置きをされて、ルキエルは学習していた。
「ここを舐めてやったことはないな」
私はルキエルの剛直を握る。
「ルキエルは、女を買っているくせに、何もしていないな」
「ど、どうして、それをっ」
ルキエルの剛直を握って擦ってやる。
「閨事を簡単に漏らす奴は信用しないように」
呆気なく、ルキエルは白濁を吐き出した。それでも、ルキエルの剛直は元気だ。
私がちょっと調べれば、ルキエルの閨事の現状なんて、すぐわかる。貧民街ではアルロの監視があるので、女に手を出すことはない。それ以前に、ルキエルはこれっぽっちも興味がない。平民地区では、一時期、女遊びをして、女まで買っていたが、手をつけていないことは、調べてわかっていた。
いまだに、ルキエルは女の経験がない。
「あの男も、これには手をつけていないだろう。お前はどこまでいっても、女だ」
気を失ったルキエルに手を出した男どもにも吐かせた。皆、ルキエルを女のように抱いていた。
「せっかくだ。私が初めてになってやろう」
「なにをっ」
「私もやきがまわったな」
アルロに色々と教えてもらった。アルロ、本当に詳しいな!! だから、前準備も随分としていた。
私はルキエルの上にまたがる。ルキエルは、信じられないものでも見るように私を見上げる。
「や、やめっ」
「私も初めてだ。優しくしてくれ」
なかなかすごい剛直だ。それなりに緩めていたとはいえ、ルキエルの剛直を受け入れるのは、簡単ではない。時間をかけて、ゆっくると、私は挿入させる。
ルキエルは、何を感じているのかわからない。ただ、大人しく、私の中を剛直を通して感じて、震える。
随分と時間をかけて、私はルキエルの剛直を受け止める。最奥のさらに奥にまで到達する。これは、さすがにきつい。
「いつも、こんな物を受け入れているのか」
「や、動かない、で」
「動かないと、私が気持ちよくならないだろう。角度が難しいな」
「ぐっ」
私はそんなに良くないのだが、ルキエルはいいらしい。私が動けば、ルキエルは呻く。そこは、男だな。女のように甘い声を出さない。だから、私には、良くないのだろう。雰囲気作りは大事だ。
そうして、ルキエルはあっけなく、私の中に白濁を吐き出した。初めてのことだから、ルキエルはわけがわからない顔をしている。
対する私は、これっぽっちも良くなかった。さっさと、ルキエルの剛直から離れた。
「私は男はダメだな。これっぽちも楽しくない」
「こ、ここまで、しておいてっ」
まさか、初めてまで男にとられるとは思ってもいなかったルキエルは悔しそうな顔をする。まあ、私も初めては女相手だったな。男として、気の毒なことをしてしまった。
「お仕置きだから、仕方がない。私の初めてはどうだった?」
「………」
ご機嫌斜めでそっぽ向くルキエル。中でいったんだ。悪くはなかっただろう。
「仕方がないな。ほら、私もやってやろう」
「もういらない。寝る」
枷とは違って、布だから、ルキエルは抵抗出来る。私の体を押した。
「全てが終わったら、女の抱き方を教えてやる。そういうのが上手な女がいる。口も堅いから、外にも漏らさない」
「お前には漏らすだろう」
「教えるんだ。上手に出来るようになっているか、私が採点してやろう」
「そんなことまで教えてもらわなくていい!! いらない!!!」
最後かもしれないのに、ルキエルは、抱きしめさせてもくれなかった。
帝国の悪女というと、伯爵令嬢サツキのことをいう。サツキは、皇族、貴族、騎士をその美貌で篭絡し、伯爵家に復讐したのだ。
最初、伯爵令嬢サツキは、不幸な令嬢と呼ばれていた。母を亡くした後、父、義母、義妹から虐待を受け、使用人たちからも冷たい仕打ちをされ、身内からも見放され、領民からも石を投げられたという。母を亡くした後、サツキは屋敷に閉じ込められ、当主の仕事をやらされ、外にも出してもらえない監禁状態だった。それをいいことに、父、義母、義妹は社交に出ては、サツキの悪評を広め、サツキは悪女と呼ばれるようになった。
サツキは貴族となるため、貴族の学校に通う時も、悪女として、敬遠されていた。しかし、サツキは成績優秀者として新入生代表となり、生徒会役員として手腕をふるい、その実力は素晴らしいものだった。ただ、少し、口が悪かったと言われている。
サツキは伯爵家での扱いを隠し通していた。それを見破ったのは、騎士だ。心ある騎士は、サツキを支えたが、それを人々は浮気と罵った。サツキの婚約者は、噂の浮気を罵り、婚約破棄し、義妹と婚約した。そして、サツキは伯爵家を追い出された。
その後、サツキの義妹が伯爵家の跡継ぎとして発表されたが、すぐに異議申し立てが起こった。
伯爵家は、元はサツキの母が受け継いでいた。サツキの父は、血縁でない婿であった。伯爵家の正当な跡取りは、サツキなのだ。義妹は跡継ぎではなかった。それをサツキの血縁は、お家乗っ取りと帝国に訴えたのだ。途端、サツキの父、義母、義妹はお家乗っ取りの犯罪者となった。
しばらくして、取り調べられ、義母がサツキの母を毒殺したことが発覚した。証拠も証人も出て、義母は処刑された。サツキの父と義妹は、お家乗っ取りをしたことで、伯爵家から追放された。
そこから、次は伯爵家の当主を決めることとなった。まずは、正式な跡継ぎであるサツキの捜索である。しかし、サツキは死体となって発見された。
帝国の調査により、サツキは伯爵家を追い出されてすぐ殺されたことが発表された。そのことから、サツキの父、義妹が容疑者として、また、牢屋に入れられることとなった。結局、証拠は見つからず、サツキを殺した犯人もわからないことから、そのまま解放された。
サツキの父の実家は、サツキの父と義妹を暖かく迎え入れていた。殺人の容疑も晴れたことから、義妹は父の実家の跡取りと婚約が発表された。サツキを追い出したことは酷いことであるが、サツキの父と母は政略結婚だ。愛のない結婚を強いられたのだ。愛する女の娘である義妹のためにしたことだ、と世間では見られていた。
ところが、しばらくして、サツキの父、義母、義妹がサツキに虐待をしていることが発覚した。伯爵家の使用人たちが証言したのだ。その虐待の酷さに、世間は見方を変えた。サツキの父と義妹は、父の実家を追い出された。婚約も白紙となった。こうして、サツキの父と義妹のその後は不明となった。
一方、伯爵家は大変なこととなった。跡継ぎが決まらず、血縁で内戦を起こしたのだ。領地は大変となり、最後、分割統治となった。
サツキの死により、伯爵家はおかしくなった。全ては、サツキの父、義母、義妹のせいだ、と世間では言われた。
それから数十年が経った頃、皇族と貴族が、サツキの孫を連れて来た。
十年に一度、帝国中の貴族が集まる舞踏会の場でのことだった。皇族は、サツキが学校に通っていた頃、生徒会長をしていた皇族ルイだ。貴族は、副会長だった伯爵マクルスの養子であった。
その場にて、伯爵令嬢サツキの復讐譚が語られた。
サツキは、サツキのために騎士を捨て、貧民となった男の妻となり、貧民、貴族、皇族を使って、伯爵家に復讐したのだ。
サツキは、ただ手紙を送り、指示しただけだ。伯爵家を追い出されてすぐ、血族たちに「あなたこそは、次の伯爵になるべき人です」と手紙を送り、煽った。
貧民を使って、噂を広げ、サツキを蔑んだ者たちの退路を塞いだ。
貴族を使って、情報を広げ、帝国全土に新聞を通して、伯爵家の醜聞をまき散らした。
皇族を使って、死を偽装し、領地を内乱に陥れ、領民を巻き込んだ。
こうして、伯爵令嬢サツキは、伯爵家に復讐を果たした。
あまりの話に、まだ、分割統治をしている血縁たちは納得しない。証拠はどこだ、と叫んだ。
そこで口を出したのは、筆頭魔法使いハガルである。ハガルは、サツキの息子を一人、知っているという。サツキの息子ルキエルは、妖精憑きであった。本来であれば、魔法使いとなるべきだが、秘密裡の使命を受けて、隠された魔法使いとなっていた。
皇族と貴族が連れてきた子を見ていう。ルキエルによく似ている、と。
証拠は、と叫ぶ血縁たちに、ハガルはいう。
「お前たちの統治下では、領地は酷いこととなっている。サツキが統治している頃は、あれほど肥沃であった領地だったというのに、分割統治となってからは、すっかり、貧しくなってしまった。これは、神と妖精と聖域が、お前たちを認めていないということだ。サツキの孫に数年、まかせてみなさい。神と妖精、聖域が全て、答えを出してくれるだろう」
こうして、皇族と貴族に連れられてきたサツキの孫が当主となった。
神と妖精、聖域が認めたのだろう。その年から、伯爵領は実りを取り戻し、それからずっと、豊かな領地となった。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。