魔法使いの悪友

shishamo346

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伯爵の養子

教育

 寄宿学校にいれられると、予想通り、僕は男爵の養子セコンと同室となった。出会った頃は、品定めするような生意気な男だったな。今も、そうだが。
 セコンも染まってきたんだな。僕と同じだ。最初は、恐怖によって、目の前の光景を見ているしかないのだ。それも、すぐに普通になってくる。そういう光景だな、みたいに受け入れていくのだ。そして、感覚が麻痺してくるのだ。麻痺した感覚が、普通になる。
「オクト様、頭、良かったんですね」
「義父上も、新入生代表になるほどの成績だったと聞いている。が、当時は皇族がいたから、代表挨拶は皇族だったそうだ」
 さすがに、寄宿学校に皇族がいれられることはない。だから、成績優秀な僕が新入生代表挨拶である。
 セコンの失礼な評価を受け流しつつ、入学式も終わらせ、それから数日すれば、それなりの歓待も受ける。
「たかが伯爵の養子のくせに、生意気だな」
 上は侯爵、下は子爵の集団に囲まれる。身分的には、僕は弱いな。セコンは巻き込まれたらたまったものじゃない、と遠巻きである。こら、側近、主を助けろ。
 手を出したら負けな状態の中、僕への来客である。
「オクト、皇族の使いだ」
 寮長が真っ青になっていう。それには、侯爵以下が真っ青になって、僕を見る。それはそうだ。まさか、皇族と繋がりがあるなんて、誰も思ってもいなかったのだろう。
 本来ならば、それなりの場で皇族の使いと会うべきなのだが、相手はお急ぎのようで、この最悪な場にやってきた。
 僕は慌てて跪く。使いなんて、とんでもないぞ!!
 何が起こったのかわからない若い貴族子息ども。皇族の使いだって、本来は、立っていていい相手ではないってのに、礼儀知らずだな!!
「オクト、久しぶりだね」
「皇族ルイ様、わざわざご足労いただき、感謝します!!」
 使いではない。皇族だよ!! それをわざわざ叫んで暴露してやると、大変だ。やっぱり礼儀がなっていないから、すぐに跪くなんて出来ない。逃げ出すアホまで出てきた。
 そして、僕を囲んでいた貴族子息どもは、呆然と立ち尽くす。バカ、顔を上げること自体、無礼だってのに。
「お忍びで来たんだ。オクト、そんな態度をしないでくれ。いつもの通り、部屋で話そうではないか」
「ありがとうございます」
 心の底では舌打ちするが、表面上ではお礼をいうしかない。ここで、皇族との繋がりが表沙汰にされたのだ。今後は、面倒臭くなるな。
 皇族ルイは、立ち尽くしたままの学生を見回す。
「皇族相手に、無礼にも立ったままか。座らせろ」
 皇族ルイの後ろに控えた魔法使いが、強制的に貴族子息たちを地面に叩き伏せる。その行為に、気の毒に、粗相した奴もいる。もう、明日からは、威張ってられないな、この侯爵子息は。
 寮長の案内で、面談室に連れて行かれる。中に入るのは、僕と皇族ルイだけだ。魔法使いは入ろうとするも、ルイによって、外に待機させられる。
「もう、せっかく面白くなる所なのに、邪魔しないでください!!」
 僕は容赦なくルイを責める。せっかく、侯爵子息がやらかしてくれるので、学校で大問題に発展させようとしたのだ。その出鼻をくじかれたので、僕としては不燃焼だ。
「また、マクルスの課題か。マクルスも、そんなことまでさせなくてもいいのに。ほら、薬。どうせ、飲んでいないだろうから、持ってきた」
「………」
 最高級と言われる妖精の薬が入った瓶が目の前に置かれる。僕は、それをなんともいえない顔で見下ろす。
 皇族ルイは、伯爵家の所業を知っている数少ない皇族だ。というか、伯爵マクルスと知り合って、知ったようなものだ。ルイは、マクルスが寿命を削るような伝統をこなしていると知り、定期的に妖精の薬を飲ませているのだ。それは、僕にも及んでいる。
「こういう特別扱いは、周りに示しがつきません」
「そうではない。君たちはもう、皇族にとっても必要悪だ。こんな寿命を削らなくてもいい方法をとるべきだ」
「賢者テラスには、何と説明しているのですか」
 こう、ぽんぽんと妖精の薬を持ち出されるのだ。そこには、現在、最強の魔法使いと言われる賢者テラスの許可があるはずだ。ついでに、皇帝ラインハルトも関わっているだろう。皇族ルイは、皇族の暗部だ。ラインハルトにも報告済みだろう。
「そこは、最強の魔法使いの考えることだ。僕ら凡人ではわからない、何か企みがあるんだろう」
 どこか、引っかかる言い方だ。僕は皇族ルイの言葉の端々に隠された何かを勘づく。だけど、それ以上は深く聞かない。知らない、ということは、時には大事なんだ。
 僕は大人しく、皇族ルイの目の前で妖精の薬を一飲みする。相変わらず美味しいな。
「義父上は、この味が苦手だ、と言ってましたね」
「甘味が嫌いなんだって。だから、飲みたがらない」
 この妖精の薬の欠点だ。相手の状態によって、甘さが変わる。僕は甘いのは好きだけど、義父マクルスは甘いのが大嫌いだ。だから、飲みたがらない。
「なんで、寄宿学校にいれちゃうかな。ちょうど、皇族で、君と同じ年頃の子がいるから、通いの貴族の学校に入学させたのに」
「世間の荒波に揉まれて来い、と言われました」
「あんな後ろ暗いこといっぱいさせて? 妖精憑きの調教も終わったんだって」
「側近がまだ終わってませんね」
 側近セコンは、高位貴族に囲まれた僕を見捨ててくれた。後で、折檻だな。
「昔はあんなに可愛かったのに、今では第二のマクルスだな」
「誉め言葉です」
 義父マクルスに似ている、というのは、嬉しいな。僕は満面笑みだ。
「最近、王都のほうが騒がしいって、聞いてる?」
「そういう情報は、入ってきませんね。義父上、何かしているのですか?」
「王都の貧民街の支配者が、お気に入りの情婦に逃げられたという噂だよ。マクルスとはそれなりの仲だから、もうそろそろ、頼まれるんじゃないかな。妖精憑きを使えば、人探しなんて、すぐだよ」
「情婦、ですか? まさか」
 この頃には、僕は王都の貧民街の支配者の正体を知っていた。そして、その奥底にある情念も見た。
 王都の貧民街の支配者は、元は帝国の騎士だった。悲劇の令嬢のための騎士を捨てたのだ。そして、悲劇の令嬢の死を偽装して、令嬢を手に入れた。表向きは死んだとされた悲劇の令嬢は、実は生きていた。なんと、子が五人もいるという。王都の貧民街の支配者は、令嬢を溺愛し、外にも出さなかったという。
 それも、貴族の甘言に乗ったため、支配者は令嬢を手放してしました。そして、令嬢は皇帝ラインハルトが秘密裡に作られたハーレムに閉じ込められた。それから三年で、ハーレムは解体、中にいた女たちは皇帝ラインハルトの手によって殺された。
 その事実に、王都の貧民街の支配者は怒り狂い、甘言を弄した貴族を殺し、帝国の死者を殺し、今だに、復讐しようと、自らの体を鍛え、なんと、貧民でありながら軍隊や暗部まで作り上げたのだ。
 その実力に、義父マクルスは恐怖した。たかが元騎士、たかが貧民、と思っていた男は、とんでもない力を隠し持っていた。
 悲劇の令嬢を死した後も溺愛する支配者に情婦なんているはずがない。だが、悲劇の令嬢が亡くなって随分経つ。何か、あったのかもしれない。
 皇族ルイは、どこまで、この王都の貧民街の支配者のことを知っているのか、僕は判断できない。だから、迂闊なことは言えなかった。ちょっと、お茶を濁すていどだ。
「さぞや、綺麗なんでしょうね」
「サツキ嬢よりも綺麗な女を僕は知らないな」
「………」
 知っていて、わざと僕を試したな。こわっ!
 悲劇の令嬢サツキは、皇族ルイにとっても、思い入れのある令嬢だ。何せ、サツキが生きている間、ルイはサツキにいいように使われていたという。ただ、手紙で指示されただけだというが、サツキの死の偽装まで手伝ったのだ。皇族でなければ、偽装された死体をサツキと断言されることはない。魔法使いの手にかかれば、その死体が偽物だとすぐにバレてしまうのだ。
「僕が教育した妖精憑きも、大人しく活躍してくれるといいですね」
 もう、そういうしかない。大人しくしてろよ。殺処分、簡単にされちゃうからな。
 皇族ルイは、僕の目の前に二本目の妖精の薬を置く。
「魔法使いから、どこまで飲めるか、確認するように頼まれている。ぐぐっといこう」
「飲ませていただきます!!」
 酒の席でもないのに、僕は悪ふざけしながら、一気に飲み干した。




 寄宿学校といえども、生徒会やら、寮長やら、委員会やら、ともかく役職がいっぱいだ。皇族の覚え目出たいので、僕は容赦なく生徒会に放り込まれた。ついでに、僕の側近セコンも道連れだ。こいつ、試験を手抜きしやがって。
「面倒臭いなー」
「大人しく、僕と組むんだな」
 セコンは男爵の養子である。生徒会役員としては、身分が足りない。そこを皇族のお気に入りである僕がつくことで、ちょうどいい感じになる。
 皇族ルイは、相変わらず、お忍びで僕の元にやってきては、妖精の薬を湯水のごとく飲ませる。もう、いっぱいいっぱいだよ。最強の魔法使いは、一体、何を企んでいるのやら。
 そうやって過ごしていると、人脈もそれなりに構築される。だいたい、寄宿学校に入れられちゃうような貴族子息である。それなりの爵位がありながら、生家から出されるのだ。問題の一つや二つある。
 朝から就寝まで、厳しい教育を施される。それを守れないと、容赦ないのだ。生家の身分を持ち出されれば、さらに上の教師や職員が出てくる。
 そんな中で、僕は残念なことに、問題一つ起こさないので、教師陣からは詰まらない、みたいに見られていた。
「もっと手ごたえのある問題児だと思っていたんだが」
「教師がそんなこと言ってはいけませんよ」
 生徒会で教師への提出する書類を持っていくと、そんな酷いことを言われる。僕、根はいい子なんだけどな。
「皇族様のお気に入りでも、随分とされただろう」
「皆さん、きちんと身分とか、そういうの、理解されていますよ」
 笑顔で上手に誤魔化してやる。そこは、言わないようにしよう。言わなければ、嘘ついたことにはならない。
 教師は教師で、僕が一筋縄ではいかないので、苦笑する。
「さすが、皇族のお気に入りだな。人の扱いは馴れているか。ご苦労さん。もうすぐ、長期休暇だな」
「やっとです。義父上に会いたい」
 色々と報告があがってきている。今回の長期休暇は、大変なことになるだろう。
 伯爵家は今、大変なことになっていた。なんと、義父マクルスが男に走ったのだ。過去の所業では、女好きとされていた。だから、誰もマクルスが男に走るなど、思ってもいなかったのだ。
 だが、仕方がない、という意見もあった。その男は、なんと、悲劇の令嬢サツキの子だという。男だけど、似ているらしい。
 マクルスは悲劇の令嬢サツキへの想いを否定している。その理由は、後手に回ったからだ。気づいた時には、悲劇の令嬢サツキは生家を追い出されていた。捜索に乗り出した時には、サツキは騎士を捨てた男に囲われていた。サツキを見つけた時には、すでに子が二人もいた。サツキの復讐を止めた時には、貴族の計略により、サツキは皇帝のハーレムに閉じ込められていた。そして、知らない内にサツキは殺され、それを知ったサツキの夫は復讐をしている。全て、後手に回っていた。その事実に、マクルスは後悔ばかりしていた。
 だから、後悔の塊であるサツキの息子に手を出してしまっても仕方がない、という意見も出ていた。
 だけど、それを報告として知った僕の心は穏やかではない。寄宿学校に入れられている間に、僕と義父マクルスの絆が薄まったのだろう。そこに割り込んできた男だ。ただ、見て見ぬふりをしているわけにはいかない。
 だから、一日一日を長く感じた。はやく、長期休暇になって、伯爵家に帰りたかった。




 僕は寄宿学校でも優秀だ。学問だけでなく、体術も剣術も優秀な成績をおさめていた。だから、こんな細い女みたいな男なんて、簡単に痛い目にあわせられる、と思っていた。
 ところが、手を出した瞬間、僕は床に倒れ、拘束されていたのだ。力はそんなにないだろう。だけど、その拘束は絶妙だった。そこに、義父マクルスが入ってきた。
 マクルスに恥ずかしい姿を見られた。僕は羞恥しかない。だから、この、悲劇の令嬢サツキの息子ルキエルに敵愾心しかなかった。
「ここまであなたが負かされるのは、初めて見ました」
 側近セコンが、感嘆とする。それほど、僕はルキエルに負かされまくりなのだ。
 義父マクルスが、試しに、ということで、ルキエルと僕で同じ教育を受けさせた。机の上での勉強は、ルキエルはさっさと完了させてしまった。体術と剣術は体力がないだけで、僕はあっという間に負かされた。
 過去、負けてばかりだったことを思い出す。だから、僕は珍しく、卑屈になってしまった。そのため、義父マクルスに当たってしまったのだ。本当に恥ずかしい。
「まだまだ、手がかかるな」
 だけど、その行動に、マクルスは喜んだ。
 そして、僕はルキエルの秘密を知ることとなる。
「ルキエルは妖精憑きだ。ただ、私ですら、手に負えない力を持っている」
「義父上ですらって、それほど強いのですか!?」
「世間知らずだから、今のところ、私の手のひらで踊らせているが、油断すると、私も危ない。力ある妖精憑きは魔性だ。人の心をその見た目と気性で惑わす。オクトはどうだ?」
「え、僕ですか? 特に、何もありませんよ。僕とルキエルは、ちょっと仲が良い友達程度です」
 いくら見た目あれでも、男だ。あらゆる所で負かされているのだ。ルキエルに間違いを犯すことは絶対にない。
 見るからに、僕がルキエルに対して、何の衝動も持たないとわかると、逆に、マクルスは心配そうに見てくる。
「オクト、女は抱けるか?」
「………やったことがないので、何とも」
「あ、忘れてた」
 まさか、閨事まで教育に入るのか!? 学校では一通り、本を使って学ぶのだが、それだけである。実演なんてするはずがない。
 貴族だから、万が一の時に恥をかかないように、と娼館に行くことはあるだろう。もう、そういう年頃である。
 少し考え込んでいる義父マクルス。とても悩んでいる感じだ。
「こういう後ろ暗いことを生業としているから、女相手だけでいいわけではないんだ。わかるな?」
「わかりません!!」
 ここはもう、すらっとぼけてやる。わかるなんて言ったら、もう、終わりだよ。
 僕は冗談じゃない、と思いっきりマクルスから顔を背ける。ルキエルと関わるようになってから、僕の中に眠っていた蟠りとか、色々なものが昇華された。本当に不思議な男だ。妖精憑きだから、というだけでは説明がつかない存在である。
「まずは女からにしようか」
 結局、口の堅い、義父マクルスの息がかかった娼婦を相手に、色々と教えられることとなるのだ。それは、別に僕だけではない。ついでに、女嫌いの側近セコンまで道連れにしてやった。
「お前の女嫌いも直せ!!」
「女はいやだー---!!!!」
 セコン、そこまで女を嫌う必要なんてないのにな。あまりの抵抗に、義父マクルスもびっくりだ。ついでに、養子先である男爵も驚いている。
「学校ではどうなのですか? 男をむさぼっていることはありませんよね!?」
 男爵、そっちのほうを心配するんだ。
「僕と同室ですよ。そんなこと、あるわけないでしょう。寄宿学校はなかなか厳しいです。別室で一夜を明かそうものなら、後が大変ですよ。同室である僕にも罰則です」
「しかし、そういうのを潜り抜けて、そういうことをしていないか、心配で」
「もしかして、ご自宅では、そうなのですか?」
「………」
 無言だが、肯定しているようなものだ。ついつい、義父マクルスを見てしまう。とんでもないのを側近にしてくれたな!?
 そういう話を聞く義父マクルスは複雑だ。きっと、ルキエルのことを考えているのだろう。
 僕はルキエルのことは、それほど詳しくない。妖精憑きで、貧民街の支配者の息子で、ついでに、支配者の娼夫。
 知識では知っていた。貧民では、親子でそういうことになるのは、珍しくない。幼くても、大人の性の対象とされることもよくある話だ。
 貴族だって、あるけどな。
 男爵の養子セコンがまさにそうだ。立派な貴族の血筋だってのに、被害者である。そのせいで、女嫌いの男好きになってしまったのだ。どういう目にあったのか、知らないけど。
 僕の周囲だけで、二例もあるんだ。世の中にはいっぱいあるのだろう。だからといって、見る目が変わるわけではない。
 ルキエルは、まあ、友達? みたいなものだ。貧民と貴族だから、立場とか距離感をとらなきゃいけない。だけど、それより上になることはない。間違っても、僕はルキエルに篭絡はされない。
 側近セコンは、問題児だ。相変わらず、僕のいう事なんてきかない。僕の側にいるだけだ。平気で僕を見捨てるしな。
 セコン、もう暴れるやらなにやら、大変なことになっている。本当に、女は恐怖なんだな。
 義父マクルスは僕をもの言いたげに見てくる。はいはい、僕の出番ですね。
 僕はさっさとセコンと娼婦がいる部屋に入る。セコン、別に女だからといって、暴力をふるうわけではない。裸の女を目の前にして、部屋の隅で震えているのだ。娼婦のほうは、近づくと、何をされるかわからないので、困っている。
 仕方なく、僕はセコンの元にいく。セコン、男だったら、気に入らないご主人様である僕でもいいんだな。助かった、という顔をする。
「残念だな。僕は第二の伯爵なんだよ」
 そう言ってやると、顔を引きつらせるセコン。だけど、逃げる先には大嫌いな女がいる。動けないんだ。
 僕はセコンを無理矢理ベッドに運んだ。それなりの体格と重さを持つセコンでも、僕には大したものではない。ルキエルを相手にしていると、人の動きをどう封じるか、とか、力もなく人を投げ飛ばす、とか、そういう小器用な技が身についた。
 起きて逃げようとするも、僕がセコンの両肩を押してベッドに倒して、動けなくする。
「ほら、やることやってしまおう」
「やだ、いやだ!!」
「お互い、男側だから、これっぽっちも間違いは起きないはずなんだがな」
 僕が圧し掛かってやれば、セコンは何か感じるのか、一物が反応する。悪いが、セコン相手に、閨事なんてしないし、出来ない。俺自身はこれっぽっちも衝動が起きないのだ。
 娼婦は僕の意図を汲んでくれた。僕の後ろに座り、セコンの一物を自らの下半身に挿入した。途端、セコンは驚愕する。
「やだ、抜いて!!」
「その割には、下は喜んでいるな」
 見なくても触れてやれば、セコンの一物は、しっかりと太いままだ。ついでに、娼婦の中に僕が指を突っ込んでやれば、その衝撃に、娼婦も喜んだ。
 後ろでは娼婦は喜び、前では、セコンは恐ろしいものでも見るように僕を見上げているのに、その目は情欲に染まっている。
 この中で、僕だけが、まるで何も感じていない。
 もう、セコンの両肩は自由になっている。僕の片方の手は娼婦の下半身をいじりつつ、セコンの一物の根本をつかんでいじってやっているのだ。二つの刺激に、セコンは呻くような声をあげたりしている。
 あまりの刺激からか、興奮したのか、娼婦が僕を後ろから抱きしめ、胸をまさぐってくる。それでも、僕はこれっぽっちも感じない。娼婦が僕の首を舐めたりして、口づけをねだるように顎をつかむので、仕方なく、軽く答えてやる。
 それでも、僕だけ、何も感じていない。惰性でやっているだけだ。
 それを見上げていたセコンは体を起こして、僕の下半身に触れる。
「やめておいたほうがいい」
「僕だけなんて、ずるい」
 男同士で閨事をするような奴だ。馴れているのだろう。だけど、相手が悪い。僕は、伯爵マクルスの教育を受けているのだ。
 娼婦に何度も白濁を吐き出しながらも、セコンはどうにか僕を道連れにしようとする。だけど、僕はこれっぽっちも反応しない。セコンは僕にまで口づけし、ついでに、娼婦の口づけまで受け入れだした。
 僕を間において、セコンは僕への敵愾心から、何か塗り替えられたのだろう。とうとう、僕を押しのけ、娼婦を押し倒し、その上に圧し掛かって、腰を激しく動かしだした。

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