74 / 152
伯爵の養子
無理なものは無理
僕があまりにも、淡泊だからだろう。義父マクルスは心配した。娼婦相手に、きちんと言われた通りに閨事してるんだけどな。
次は男相手である。それはちょっと、と避けたいのだが、側近セコンがそうさせてくれない。
「女嫌いの僕に、女相手の閨事を強要したんですから、あなたも男相手の閨事をしてください」
とんでもない顔で言ってくる側近。お前、本当に僕のいうことをきかない側近だな。もう、こいつは側近でなくしたいよ。
セコン、僕のいう事なんかきかないけど、優秀なんだ。伯爵から見ると、僕の人徳が足りない、ということなんだろう。こんなに優しくしてあげてるというのに、何がいけないんだか。
そして、マクルスがこういう時に頼るのが、王都の貧民街の支配者アルロである。実は、アルロには会うのは、この時が初めてだった。こういう初めてはいやだなー。
僕が貧民街に来たからか、どこからか話を聞きつけてきたルキエルがやってきた。
「ここに来るのは珍しいじゃん。あの貴族の教育か?」
「そうだろうね」
男と閨事するために来た、なんて、ルキエルに向かっては言えない。
ふと、側にいるセコンを見る。そういえば、セコン、ここまで近くルキエルに接することはないな。
見てみれば、セコン、すっかりルキエルの外面に一目惚れである。呆然とルキエルに魅入っている。女嫌いの男好きだから、そうなっちゃうか。ルキエルなんて、まさしく理想の男だからな。
ルキエルは見た目は口に出すと怒るが、女寄りである。が、中身はれっきとした男だ。あの恐ろしい義父マクルスすら篭絡する何かを持っているルキエルを前にして、セコンが一目惚れするのは、仕方のない話である。
「ルキエル、その貴族は誰だ?」
ルキエルと談笑なんかしていると、貧民に声をかけられる。普通に話していると勘違いしてしまうが、ルキエル、貧民なんだよな。
「あの貴族の養子オクトだよ。こっちは、俺の兄貴ライホーン。こっちは、弟のロイドだ」
「よろしく」
支配者の息子だ。将来的には、僕も関わることになるので、しっかりと顔を覚えておこう。
そこに、これまた綺麗で可愛い女の子がルキエルに抱きついてくる。
「こら、お客さんの前だぞ」
「知らない!」
ルキエルに似た感じの子だ。妹だな、と一目でわかる。
「この子は、妹のレーリエット。俺の良心だ」
特別なんだろう。ルキエルの見る目が違う。兄弟に対しては、少し離した感じがある。それなのに、妹レーリエットには、愛情すら抱いている。
「確か、ルキエルには姉が一人いるよな」
それなりに付き合っているのだ。ルキエルの家族構成はわかる。お泊りなんかしていたのだ。自然とお互いの身の上も話すというものだ。お互い、隠していることもあるけど。さすがに、ルキエルは実の父親に娼夫扱いされているとか、義父マクルスに娼夫扱いされているとか、そういう話はしなかったな。僕もあえて、知らないふりをしたけど。
「リンネット、邪魔だ!!」
アルロが物凄く怖い声で叫んだ。そちらのほうを見てみれば、女が義父マクルスの腕にしがみついていた。が、マクルスはこれっぽっちも相手にしていない。アルロは仕方がないので、力づくで女を引きはがして、僕らがいるほうに押しやった。
「あれが、俺の姉リンネットだ」
「へえ、そうなんだ」
僕はついつい、凝視してしまった。ちょっとまだ遠いから、よく見ようとしたのだ。遠くからでも、リンネットは美人だとわかる。ただ、美人の種類がレーリエットとは違う。
レーリエットは清楚華憐な美人だ。持つ空気も可愛く感じるのだ。男は、みんな、こういう女の子に弱いんだな。
リンネットは目を見張る美人だ。気の強い、見方によっては毒々しさもある。性格が顔に出ている、とルキエルは言っていた。実際、そうなんんだろう。怒りに顔を歪ませ、兄弟妹が仲良くしているのを見て、さらに顔を歪ませている。
「美人だな」
「性格が悪いんだ」
「お前の姉だろう。そういうことは言うんじゃない」
「あ、うん、ごめん」
「悪い」
ルキエルに謝られ、僕の態度が悪いことに気づいた。
「オクトは、いい奴だな。けど、気をつけろよ。リンネットは本当に、手がつけられないから」
「どうせ、僕は圏外だ」
リンネットの目には、僕は映っていない。だいたい、僕はルキエルと仲良く話しているのだ。リンネットは、僕に何かしようなんて、これっぽっちも考えない。むしろ、僕は敵なんだろう。そういうふうに見られている。
完全に望み薄い、と一目見てわかる。それ以前に、僕はこれから男相手に閨事だ。
ふと、側近セコンを見れば、リンネットのことを蔑むように見ている。あれだ、過去、女嫌いになった元に似てるんだろうな。
僕やセコンのような過去の持ち主は、決まった感じの女にひどい目にあわされているのだろう。そう感じる。リンネットは、美人だというのに、性格を歪ませてしまったばかりに、損な感じになってしまっている。
その性格だって、元からではないだろう。兄弟妹は、そうではないのだ。リンネットだけが、歪んでしまっている。
「可哀想にな」
つい、俺は呟いてしまう。
驚いたように見返すルキエル。僕の呟きをルキエルだけが聞き留めた。
男相手の閨事も問題なくこなして、僕は夜、解放される。その日の夜は、王都の貧民街の支配者アルロの監視の元にさせられた。ついでに、側近セコンは、女相手の閨事をまた強要である。もう、帰られると思っていた僕は、外で散歩がてら、時間を潰していた。
アルロの自宅付近に行けば、あの貧民街らしさは消える。何故か、貧民街の支配者であるアルロは、自宅を貧民街の外に持っていた。平民地区なので、よほどのことがない限り、悪いことはされないだろうが、貧民街に近いので、狙われやすいといえば、狙われやすい。
なのに、不思議と、この家は、安全なのだ。
貧民街の支配者アルロには、謎が多い。貧民としての過去を伯爵マクルスでさえ洗いだすことが出来なかったという。元騎士だというが、その事実も、巧妙に隠されていた。アルロ自身、吹聴しなかったこともある。
一見、特に何もなさそうな家だ。その家の周りをぐるりと回っていれば、見てはいけないものを見ることとなる。
義父マクルスがアルロの息子ルキエルを壁に押し付けて、口づけしている場面だ。あー、とうとう、見てしまったよ。これまで、そういうのを見ないように、夜は部屋で大人しくしたりしていたんだよ。
マクルスだって、僕に気を使ってか、僕が家にいる時は、ルキエルに手を出していない様子だ。ルキエルのほうが色々と誘惑していたけどね。お前、僕の前で、そういうことはするなよな!!
さて、ここでは、誰がやらかしたんだろうな、なんて僕は見て見ぬふりをしたかったのだが、そういうわけにはいかなくなった。
その場面を見ているのは、僕だけではなかった。ルキエルの姉リンネットも見ているのだ。
綺麗な顔を歪ませて、憎悪をこめて、マクルスの手籠めにされているルキエルを見ていた。うーん、これは、義父から手を出したな、そうに違いない。
「やぁ、もう、やめてぇ」
「父親をオクトにとられて、随分、寂しそうな顔をしていたな。可哀想だから、私が相手をしてやってるんだ」
「頼んでない!!」
全身で抵抗するルキエル。しかし、相手は経験値が高い大人だ。ルキエル程度、簡単に壁に押し付けて、また、深く口づけし、体をまさぐっている。
そういう光景を見ていると、心底、思う。僕はルキエルだけはないな。
ルキエルによく似た妹レーリエットにすら、何も感じなかった。たぶん、ルキエルに似ているからだろう。ルキエルには、もう、色々と負けている。いくら、ルキエルが義父の娼夫だといえども、僕はこれっぽっちも感じない。
ルキエルじゃなかったら、ありだが。
アルロが進める男娼を相手にしてみれば、普通に閨事出来た。つまり、僕はルキエル相手には、それ以前の感情が動いて、衝動が起きない。むしろ、目の前にして、萎えるな。
だけど、義父マクルスはもう、ルキエル相手に燃え上がっている。嫌がるルキエルの下半身に後ろから挿入している。マクルスを見れば、もう、怖い顔で笑っている。子飼いの妖精憑きたちも、この顔を見ては、恐怖に震えあがるのだ。こういう顔、僕も出来ないといけないんだけどな。
でも、僕も子飼いの妖精憑きにとっては怖いらしい。側近セコンからは、笑顔が優しすぎ、と言われたんだけどな。
外だからか、ルキエルは声を押し殺している。片手で口を塞いで、とんでもない顔になっている。見たくなかったな。もう二度と、ルキエルに似た女には、萎えちゃうな。
僕はとんでもない形相となっているリンネットの肩を叩く。リンネットは声をあげそうになるので、僕はそれを手で塞いで止めた。
「止めないのなら、離れよう。後でバレたら、面倒臭いことになる」
悔しそうな顔をするリンネット。この場で、僕が衝動に負けて、リンネットを襲うとでも思ったのだろう。ごめん、そういう衝動はきちんと制御出来ているから、無理だ。
リンネットは僕に引かれるままに離れた。家の前に出れば、裏での出来事なんて、悪い夢みたいな感じになる。
「義父上とルキエルの閨事、とうとう見ちゃった!!」
僕は絶望する。本当に見たくなかったというのに、とうとう、見てしまったのだ。
「アンタも、ルキエルとそういうことしたいんでしょう」
「無理無理。義父上の気持ち、これっぽっちも理解出来ない。ルキエルを相手にしろ、と言われたら、義父上と戦うほうが百倍ましだ」
むしろ、今回、ルキエル相手にしろ、と言われなくて、心底、安心した。ここに連れて来られた時は、ルキエルを目の前にして、生きた心地がしなかった。出来なかったら、僕が側近セコンにしたみたいなことをセコンにされるんだろうな。絶対に出来ないけどな!!
リンネットが、おかしなものでも見るように僕を見てくる。そうか、僕の側近セコンもルキエルに一目惚れしていたから、僕もそうだろう、なんて思い込んでいたのだ。
「心配ない。ルキエルは趣味じゃない。僕は気が強い感じがいいな」
「そういう男も、みんな、ルキエルに夢中になるわ!!」
「そうなんだ。試したことはないけど、見ても、これっぽっちも衝動は起きなかったな」
リンネット、ぶしつけに僕の下半身を見る。いやいや、見たって、わからないよ、それ。
「実際に、そうなったら、アンタだって、裏切るのよ」
「裏切るって、そんな言い方されても。リンネットさん、もしかして、恋人、ルキエルにとられた?」
「そうよ!!」
「ふーん、恋人いたんだ」
恋人いた事実にびっくりだ。そりゃそうだ。ここまでの美人だ。父親は支配者だ。二心ある男だったら、リンネットの恋人になるだろう。
また、怒りやら何やらで、顔を歪ませるリンネット。それを僕は横で眺める。
「どうしてそうなったの?」
知っているけど、あえて、聞いてみた。リンネットの裏の所業を僕は義父を通して聞いていた。義父マクルスは、それで、リンネットを毛嫌いしたのだ。
「さ、最初は、アタシの代わりに、ルキエルの後始末させただけよ。あんな気持ち悪いもの、触りたくないじゃない!! なのに、男どもはどんどんと、喜んでやるようになったの。最後には、やることやった後で後始末していた」
「………」
何を考えているのやら、アルロは。義父マクルスは後始末を他人にやらせない。マクルス自身が喜んでやるのだ。
アルロという人を理解出来ない。僕だって、独占したい相手は、他人の手に委ねたりしない。それを家族にさせるのだ。正気の沙汰ではない。
悔しくて、リンネットは泣き出す。そうなると、僕は抱きしめてやるしかない。男だったら、泣いている女を慰めたり、抱きしめたりするのは、普通のことだ。
しばらく、泣くだけ泣いたリンネットは、落ち着いたようだ。泣き腫らしたが、リンネットは綺麗だ。
「男どもはわかっていないな。あなたは綺麗だというのに」
「そうよ!!」
「謙虚さは持ったほうがいい」
「どうして? 母さんは言ってたわ。自信を持て、と。その自信が強さになるって。だから、アタシは美人だ、と自信を持つようにしているの」
どういう教育方針なんだ? 元貴族令嬢サツキの子育て方針がよくわからない。
「そうだな。あなたは美人だ。自信もっていい」
「悪いけど、年下は興味がないのよ。しかも、アンタはルキエルのお友達だし」
「わかってる」
リンネットは、明らかに年上を狙っている。年下は、ルキエルがいるから、イヤなんだろう。
落ち着いたので、リンネットは家に戻っていった。
僕はリンネットを見送って、ちょっと気になった、義父マクルスとルキエルのその後を見に行く。
ルキエルはもう力つきていた。マクルスの膝の上に座らされ、下から突かれていた。服もはぎとられ、全裸を晒している。いや、見たくなかったよ!!
すでに、ルキエルの意識は飛んでいる。ただ、下から突かれ、ルキエルは甘い声を漏らしている。
僕の盗み見なんて、マクルスはとっくの昔に気づいていた。僕がリンネットを排除して戻ってくるのを待っていたのだろう。マクルスが僕がいるほうに目を向けてくる。何も言われなくても、そこに行くしかないんだよな。
僕は、仕方なく、意識のないルキエルを後ろから抱きしめているマクルスの前に正座する。
「見たくてみたわけではないです」
「何も感じないのか?」
「きちんと、やることやりましたよ!! もういいでしょう!!!」
「………」
無言で、もの言いたげに見てくるマクルス。僕はしっかり、アルロの前で男娼を抱いてきましたよ。合格点も貰いましたよ!!
マクルスまで、僕の下半身を見る。
「ルキエルのこんな姿を見て、どう感じる?」
「え、見たくなかったな、くらいです」
「抱きたい、とか、感じない?」
「なんで? 拷問でしかないでしょう。ルキエルには、これっぽっちも衝動が起こりませんよ。今回、ルキエル相手じゃなくて良かったです」
心底、そう思っている。もうこのまま、離れたいというのに、何を思ったのか、マクルスはルキエルの意識を呼び覚ます。軽く頬を叩いて、ルキエルを起こしたのだ。何やってるの!?
目を覚ましたルキエルは、最初、目の前に僕がいることに、何か夢うつつみたいな顔をしていた。それも、マクルスが下からルキエルの下半身を抉る行為に現実だと気づく。
気づけば、素っ裸で後ろからマクルスに抱きしめられ、目の前には僕がいて、という状況に、ルキエルは絶望的な顔を見せる。
「み、見るなぁ」
容赦なくマクルスはルキエルの下半身を抉る。途端、とんでもない声が出そうになるのをルキエルは指を噛んで耐える。すごいな、もう、ルキエル、男じゃないな。
「見ていろ」
ルキエルからは見るな、と言われて、義父マクルスからは見ろと命じられる。ごめん、ルキエル。マクルスは僕の中では絶対なんだよ!!
ルキエルは絶望的な顔となる。僕が見ているから、羞恥に顔を真っ赤にさせ、それでも、下からの刺激やら、首をなめられ、胸をまさぐられ、とたくさんの刺激に、それどころではない。その刺激にすっかり、女の顔になっていく。
義父マクルスが僕をもの言いたげに見ている。あれだ、ちょっとはその気になったか、確認したいんだよな。ごめん、ルキエルは本当に無理だ!!
まれにあるんだ、こういう相手って。いくらルキエルがとんでもない色香を振り撒いて、無意識とはいえ、誘うように流し目をされても、これがルキエルだ、と認識すると、僕は一瞬で冷静になってしまう。
「えっと、セコンのトコ、行っていいですか?」
「た、助けっ」
ルキエルがマクルスから助けてほしい、なんて言ってくる。お前、僕に死ねと言っているようなものだぞ!!
睨んでくる義父マクルス。養子として、この人には随分と可愛がってもらった。義父バカみたいなことも言って、教師陣や家臣、使用人たちは、和やかに笑ったな。
だけど、ルキエルを前にしたマクルスにとって、僕はルキエルの奪う何かだ。いや、いらないよ!!
僕は無言で、その場を逃げた。もう、義父上の好きにやればいいだろう!!
次の日、ルキエルは恨みをこめて僕を見てきた。僕としては、あの場にいて、義父に逆らえるわけないだろう。
「お前なんか、友達でもなんでもない」
「え、友達と思ってくれてたの!?」
そっちの事実に驚きだ。僕はルキエルのこと、友達と思ってはいた。だけど、ルキエルはそうではないだろう、と思っていた。実際、ルキエルの態度は、そういうのじゃない。僕に対して、距離をとっていた。
珍しく、ルキエルは顔を真っ赤にする。そうか、見た目だけは、距離とって、心の中では、友達と思ってくれてたんだ。
「安心しろ。僕は友達に、閨事はしない」
「うるさいっ!!」
「衝動すら起きない」
「信用出来るか!?」
怒ったルキエルは、その日、僕と話してはくれなかった。
次は男相手である。それはちょっと、と避けたいのだが、側近セコンがそうさせてくれない。
「女嫌いの僕に、女相手の閨事を強要したんですから、あなたも男相手の閨事をしてください」
とんでもない顔で言ってくる側近。お前、本当に僕のいうことをきかない側近だな。もう、こいつは側近でなくしたいよ。
セコン、僕のいう事なんかきかないけど、優秀なんだ。伯爵から見ると、僕の人徳が足りない、ということなんだろう。こんなに優しくしてあげてるというのに、何がいけないんだか。
そして、マクルスがこういう時に頼るのが、王都の貧民街の支配者アルロである。実は、アルロには会うのは、この時が初めてだった。こういう初めてはいやだなー。
僕が貧民街に来たからか、どこからか話を聞きつけてきたルキエルがやってきた。
「ここに来るのは珍しいじゃん。あの貴族の教育か?」
「そうだろうね」
男と閨事するために来た、なんて、ルキエルに向かっては言えない。
ふと、側にいるセコンを見る。そういえば、セコン、ここまで近くルキエルに接することはないな。
見てみれば、セコン、すっかりルキエルの外面に一目惚れである。呆然とルキエルに魅入っている。女嫌いの男好きだから、そうなっちゃうか。ルキエルなんて、まさしく理想の男だからな。
ルキエルは見た目は口に出すと怒るが、女寄りである。が、中身はれっきとした男だ。あの恐ろしい義父マクルスすら篭絡する何かを持っているルキエルを前にして、セコンが一目惚れするのは、仕方のない話である。
「ルキエル、その貴族は誰だ?」
ルキエルと談笑なんかしていると、貧民に声をかけられる。普通に話していると勘違いしてしまうが、ルキエル、貧民なんだよな。
「あの貴族の養子オクトだよ。こっちは、俺の兄貴ライホーン。こっちは、弟のロイドだ」
「よろしく」
支配者の息子だ。将来的には、僕も関わることになるので、しっかりと顔を覚えておこう。
そこに、これまた綺麗で可愛い女の子がルキエルに抱きついてくる。
「こら、お客さんの前だぞ」
「知らない!」
ルキエルに似た感じの子だ。妹だな、と一目でわかる。
「この子は、妹のレーリエット。俺の良心だ」
特別なんだろう。ルキエルの見る目が違う。兄弟に対しては、少し離した感じがある。それなのに、妹レーリエットには、愛情すら抱いている。
「確か、ルキエルには姉が一人いるよな」
それなりに付き合っているのだ。ルキエルの家族構成はわかる。お泊りなんかしていたのだ。自然とお互いの身の上も話すというものだ。お互い、隠していることもあるけど。さすがに、ルキエルは実の父親に娼夫扱いされているとか、義父マクルスに娼夫扱いされているとか、そういう話はしなかったな。僕もあえて、知らないふりをしたけど。
「リンネット、邪魔だ!!」
アルロが物凄く怖い声で叫んだ。そちらのほうを見てみれば、女が義父マクルスの腕にしがみついていた。が、マクルスはこれっぽっちも相手にしていない。アルロは仕方がないので、力づくで女を引きはがして、僕らがいるほうに押しやった。
「あれが、俺の姉リンネットだ」
「へえ、そうなんだ」
僕はついつい、凝視してしまった。ちょっとまだ遠いから、よく見ようとしたのだ。遠くからでも、リンネットは美人だとわかる。ただ、美人の種類がレーリエットとは違う。
レーリエットは清楚華憐な美人だ。持つ空気も可愛く感じるのだ。男は、みんな、こういう女の子に弱いんだな。
リンネットは目を見張る美人だ。気の強い、見方によっては毒々しさもある。性格が顔に出ている、とルキエルは言っていた。実際、そうなんんだろう。怒りに顔を歪ませ、兄弟妹が仲良くしているのを見て、さらに顔を歪ませている。
「美人だな」
「性格が悪いんだ」
「お前の姉だろう。そういうことは言うんじゃない」
「あ、うん、ごめん」
「悪い」
ルキエルに謝られ、僕の態度が悪いことに気づいた。
「オクトは、いい奴だな。けど、気をつけろよ。リンネットは本当に、手がつけられないから」
「どうせ、僕は圏外だ」
リンネットの目には、僕は映っていない。だいたい、僕はルキエルと仲良く話しているのだ。リンネットは、僕に何かしようなんて、これっぽっちも考えない。むしろ、僕は敵なんだろう。そういうふうに見られている。
完全に望み薄い、と一目見てわかる。それ以前に、僕はこれから男相手に閨事だ。
ふと、側近セコンを見れば、リンネットのことを蔑むように見ている。あれだ、過去、女嫌いになった元に似てるんだろうな。
僕やセコンのような過去の持ち主は、決まった感じの女にひどい目にあわされているのだろう。そう感じる。リンネットは、美人だというのに、性格を歪ませてしまったばかりに、損な感じになってしまっている。
その性格だって、元からではないだろう。兄弟妹は、そうではないのだ。リンネットだけが、歪んでしまっている。
「可哀想にな」
つい、俺は呟いてしまう。
驚いたように見返すルキエル。僕の呟きをルキエルだけが聞き留めた。
男相手の閨事も問題なくこなして、僕は夜、解放される。その日の夜は、王都の貧民街の支配者アルロの監視の元にさせられた。ついでに、側近セコンは、女相手の閨事をまた強要である。もう、帰られると思っていた僕は、外で散歩がてら、時間を潰していた。
アルロの自宅付近に行けば、あの貧民街らしさは消える。何故か、貧民街の支配者であるアルロは、自宅を貧民街の外に持っていた。平民地区なので、よほどのことがない限り、悪いことはされないだろうが、貧民街に近いので、狙われやすいといえば、狙われやすい。
なのに、不思議と、この家は、安全なのだ。
貧民街の支配者アルロには、謎が多い。貧民としての過去を伯爵マクルスでさえ洗いだすことが出来なかったという。元騎士だというが、その事実も、巧妙に隠されていた。アルロ自身、吹聴しなかったこともある。
一見、特に何もなさそうな家だ。その家の周りをぐるりと回っていれば、見てはいけないものを見ることとなる。
義父マクルスがアルロの息子ルキエルを壁に押し付けて、口づけしている場面だ。あー、とうとう、見てしまったよ。これまで、そういうのを見ないように、夜は部屋で大人しくしたりしていたんだよ。
マクルスだって、僕に気を使ってか、僕が家にいる時は、ルキエルに手を出していない様子だ。ルキエルのほうが色々と誘惑していたけどね。お前、僕の前で、そういうことはするなよな!!
さて、ここでは、誰がやらかしたんだろうな、なんて僕は見て見ぬふりをしたかったのだが、そういうわけにはいかなくなった。
その場面を見ているのは、僕だけではなかった。ルキエルの姉リンネットも見ているのだ。
綺麗な顔を歪ませて、憎悪をこめて、マクルスの手籠めにされているルキエルを見ていた。うーん、これは、義父から手を出したな、そうに違いない。
「やぁ、もう、やめてぇ」
「父親をオクトにとられて、随分、寂しそうな顔をしていたな。可哀想だから、私が相手をしてやってるんだ」
「頼んでない!!」
全身で抵抗するルキエル。しかし、相手は経験値が高い大人だ。ルキエル程度、簡単に壁に押し付けて、また、深く口づけし、体をまさぐっている。
そういう光景を見ていると、心底、思う。僕はルキエルだけはないな。
ルキエルによく似た妹レーリエットにすら、何も感じなかった。たぶん、ルキエルに似ているからだろう。ルキエルには、もう、色々と負けている。いくら、ルキエルが義父の娼夫だといえども、僕はこれっぽっちも感じない。
ルキエルじゃなかったら、ありだが。
アルロが進める男娼を相手にしてみれば、普通に閨事出来た。つまり、僕はルキエル相手には、それ以前の感情が動いて、衝動が起きない。むしろ、目の前にして、萎えるな。
だけど、義父マクルスはもう、ルキエル相手に燃え上がっている。嫌がるルキエルの下半身に後ろから挿入している。マクルスを見れば、もう、怖い顔で笑っている。子飼いの妖精憑きたちも、この顔を見ては、恐怖に震えあがるのだ。こういう顔、僕も出来ないといけないんだけどな。
でも、僕も子飼いの妖精憑きにとっては怖いらしい。側近セコンからは、笑顔が優しすぎ、と言われたんだけどな。
外だからか、ルキエルは声を押し殺している。片手で口を塞いで、とんでもない顔になっている。見たくなかったな。もう二度と、ルキエルに似た女には、萎えちゃうな。
僕はとんでもない形相となっているリンネットの肩を叩く。リンネットは声をあげそうになるので、僕はそれを手で塞いで止めた。
「止めないのなら、離れよう。後でバレたら、面倒臭いことになる」
悔しそうな顔をするリンネット。この場で、僕が衝動に負けて、リンネットを襲うとでも思ったのだろう。ごめん、そういう衝動はきちんと制御出来ているから、無理だ。
リンネットは僕に引かれるままに離れた。家の前に出れば、裏での出来事なんて、悪い夢みたいな感じになる。
「義父上とルキエルの閨事、とうとう見ちゃった!!」
僕は絶望する。本当に見たくなかったというのに、とうとう、見てしまったのだ。
「アンタも、ルキエルとそういうことしたいんでしょう」
「無理無理。義父上の気持ち、これっぽっちも理解出来ない。ルキエルを相手にしろ、と言われたら、義父上と戦うほうが百倍ましだ」
むしろ、今回、ルキエル相手にしろ、と言われなくて、心底、安心した。ここに連れて来られた時は、ルキエルを目の前にして、生きた心地がしなかった。出来なかったら、僕が側近セコンにしたみたいなことをセコンにされるんだろうな。絶対に出来ないけどな!!
リンネットが、おかしなものでも見るように僕を見てくる。そうか、僕の側近セコンもルキエルに一目惚れしていたから、僕もそうだろう、なんて思い込んでいたのだ。
「心配ない。ルキエルは趣味じゃない。僕は気が強い感じがいいな」
「そういう男も、みんな、ルキエルに夢中になるわ!!」
「そうなんだ。試したことはないけど、見ても、これっぽっちも衝動は起きなかったな」
リンネット、ぶしつけに僕の下半身を見る。いやいや、見たって、わからないよ、それ。
「実際に、そうなったら、アンタだって、裏切るのよ」
「裏切るって、そんな言い方されても。リンネットさん、もしかして、恋人、ルキエルにとられた?」
「そうよ!!」
「ふーん、恋人いたんだ」
恋人いた事実にびっくりだ。そりゃそうだ。ここまでの美人だ。父親は支配者だ。二心ある男だったら、リンネットの恋人になるだろう。
また、怒りやら何やらで、顔を歪ませるリンネット。それを僕は横で眺める。
「どうしてそうなったの?」
知っているけど、あえて、聞いてみた。リンネットの裏の所業を僕は義父を通して聞いていた。義父マクルスは、それで、リンネットを毛嫌いしたのだ。
「さ、最初は、アタシの代わりに、ルキエルの後始末させただけよ。あんな気持ち悪いもの、触りたくないじゃない!! なのに、男どもはどんどんと、喜んでやるようになったの。最後には、やることやった後で後始末していた」
「………」
何を考えているのやら、アルロは。義父マクルスは後始末を他人にやらせない。マクルス自身が喜んでやるのだ。
アルロという人を理解出来ない。僕だって、独占したい相手は、他人の手に委ねたりしない。それを家族にさせるのだ。正気の沙汰ではない。
悔しくて、リンネットは泣き出す。そうなると、僕は抱きしめてやるしかない。男だったら、泣いている女を慰めたり、抱きしめたりするのは、普通のことだ。
しばらく、泣くだけ泣いたリンネットは、落ち着いたようだ。泣き腫らしたが、リンネットは綺麗だ。
「男どもはわかっていないな。あなたは綺麗だというのに」
「そうよ!!」
「謙虚さは持ったほうがいい」
「どうして? 母さんは言ってたわ。自信を持て、と。その自信が強さになるって。だから、アタシは美人だ、と自信を持つようにしているの」
どういう教育方針なんだ? 元貴族令嬢サツキの子育て方針がよくわからない。
「そうだな。あなたは美人だ。自信もっていい」
「悪いけど、年下は興味がないのよ。しかも、アンタはルキエルのお友達だし」
「わかってる」
リンネットは、明らかに年上を狙っている。年下は、ルキエルがいるから、イヤなんだろう。
落ち着いたので、リンネットは家に戻っていった。
僕はリンネットを見送って、ちょっと気になった、義父マクルスとルキエルのその後を見に行く。
ルキエルはもう力つきていた。マクルスの膝の上に座らされ、下から突かれていた。服もはぎとられ、全裸を晒している。いや、見たくなかったよ!!
すでに、ルキエルの意識は飛んでいる。ただ、下から突かれ、ルキエルは甘い声を漏らしている。
僕の盗み見なんて、マクルスはとっくの昔に気づいていた。僕がリンネットを排除して戻ってくるのを待っていたのだろう。マクルスが僕がいるほうに目を向けてくる。何も言われなくても、そこに行くしかないんだよな。
僕は、仕方なく、意識のないルキエルを後ろから抱きしめているマクルスの前に正座する。
「見たくてみたわけではないです」
「何も感じないのか?」
「きちんと、やることやりましたよ!! もういいでしょう!!!」
「………」
無言で、もの言いたげに見てくるマクルス。僕はしっかり、アルロの前で男娼を抱いてきましたよ。合格点も貰いましたよ!!
マクルスまで、僕の下半身を見る。
「ルキエルのこんな姿を見て、どう感じる?」
「え、見たくなかったな、くらいです」
「抱きたい、とか、感じない?」
「なんで? 拷問でしかないでしょう。ルキエルには、これっぽっちも衝動が起こりませんよ。今回、ルキエル相手じゃなくて良かったです」
心底、そう思っている。もうこのまま、離れたいというのに、何を思ったのか、マクルスはルキエルの意識を呼び覚ます。軽く頬を叩いて、ルキエルを起こしたのだ。何やってるの!?
目を覚ましたルキエルは、最初、目の前に僕がいることに、何か夢うつつみたいな顔をしていた。それも、マクルスが下からルキエルの下半身を抉る行為に現実だと気づく。
気づけば、素っ裸で後ろからマクルスに抱きしめられ、目の前には僕がいて、という状況に、ルキエルは絶望的な顔を見せる。
「み、見るなぁ」
容赦なくマクルスはルキエルの下半身を抉る。途端、とんでもない声が出そうになるのをルキエルは指を噛んで耐える。すごいな、もう、ルキエル、男じゃないな。
「見ていろ」
ルキエルからは見るな、と言われて、義父マクルスからは見ろと命じられる。ごめん、ルキエル。マクルスは僕の中では絶対なんだよ!!
ルキエルは絶望的な顔となる。僕が見ているから、羞恥に顔を真っ赤にさせ、それでも、下からの刺激やら、首をなめられ、胸をまさぐられ、とたくさんの刺激に、それどころではない。その刺激にすっかり、女の顔になっていく。
義父マクルスが僕をもの言いたげに見ている。あれだ、ちょっとはその気になったか、確認したいんだよな。ごめん、ルキエルは本当に無理だ!!
まれにあるんだ、こういう相手って。いくらルキエルがとんでもない色香を振り撒いて、無意識とはいえ、誘うように流し目をされても、これがルキエルだ、と認識すると、僕は一瞬で冷静になってしまう。
「えっと、セコンのトコ、行っていいですか?」
「た、助けっ」
ルキエルがマクルスから助けてほしい、なんて言ってくる。お前、僕に死ねと言っているようなものだぞ!!
睨んでくる義父マクルス。養子として、この人には随分と可愛がってもらった。義父バカみたいなことも言って、教師陣や家臣、使用人たちは、和やかに笑ったな。
だけど、ルキエルを前にしたマクルスにとって、僕はルキエルの奪う何かだ。いや、いらないよ!!
僕は無言で、その場を逃げた。もう、義父上の好きにやればいいだろう!!
次の日、ルキエルは恨みをこめて僕を見てきた。僕としては、あの場にいて、義父に逆らえるわけないだろう。
「お前なんか、友達でもなんでもない」
「え、友達と思ってくれてたの!?」
そっちの事実に驚きだ。僕はルキエルのこと、友達と思ってはいた。だけど、ルキエルはそうではないだろう、と思っていた。実際、ルキエルの態度は、そういうのじゃない。僕に対して、距離をとっていた。
珍しく、ルキエルは顔を真っ赤にする。そうか、見た目だけは、距離とって、心の中では、友達と思ってくれてたんだ。
「安心しろ。僕は友達に、閨事はしない」
「うるさいっ!!」
「衝動すら起きない」
「信用出来るか!?」
怒ったルキエルは、その日、僕と話してはくれなかった。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。