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伯爵の養子
海の貧民街
皇帝襲撃は呆気なく失敗した。そこはまあ、織り込み済みである。我が家に被害がないように、義父マクルスも証言する。僕がすることは、帝国に仇名す貴族の情報全てを帝国に提出するだけである。
不思議なことに、義父マクルスの名はあがらなかった。僕に爵位を引き継いだ後とはいえ、マクルスはそれなりに名が通っている。皇帝襲撃では捕縛されているというのに、表立って名は出されない。
僕は皇族との繋がりを使って、どうにか中に入ったのだが、とんでもないこととなった。
目の前に、化け物がいる。もう、僕は死ぬかもしれないな。心底、覚悟した。
義父マクルスは、筆頭魔法使いハガルは化け物だ、と言っていた。対して妖精憑きルキエルは、ハガルのことは大したことがない、と言っていた。
実際に目の前にして、僕はルキエルに声を大にして言いたい。この鈍感が!! こんな奴を目の前にして、生きた心地がしない。
対する筆頭魔法使いハガルは、これまた綺麗な相貌を晒して、僕にお茶なんか出してくれる。そうか、その姿が本当なんだな。巷では平凡と噂されていたが、ハガルはそれを隠していたんだ。こんな美貌では、それも仕方がない。
「普通ですね」
「いえいえ、怖いですよ」
「私のこの姿を見て、普通だといっているのですよ」
「そっちですか。僕の好みは、こう、悪女っぽいほうですから。ルキエルやあなたのような清楚華憐なのは、逆です。気持ち悪い」
「面白いですね。皇族サイですら、衝動を動かされないと聞きました」
「ルキエルに馴れてるので」
皇族サイなんて、ルキエルや、目の前にいるハガルに比べれば、可愛いね!!
僕は震える手でお茶を飲む。うまっ!! どうしよう、こんな風に僕はお茶を淹れられない。
「それで、今後、我が家はどうなるのでしょうか?」
まずは、表立っていない事から聞いてみる。この化け物の気持ち一つにかかっているのだろう。
艶やかに笑うハガル。
「心配いりませんよ。情報さえいただけば、あなたの一族だけは見逃してあげます。ですが、マクルスは処刑です」
「それでいいです」
「義父だからか、あっさりと切り捨てますね」
「気づいているでしょう。義父はそう長くありません。これから、どんどんと苦しい生が待っています」
襲撃計画が起こるより前から、義父マクルスは、酷い吐血をしていた。妖精の薬を飲まなくなってから、マクルスはどんどんと悪くなってきた。それでも、妖精を狂わせる香の摂取をやめなかった。
臓腑まで妖精を狂わせる香に犯されたマクルスの体は、毒に犯されたようなものだ。妖精を狂わせる香は、少量なら大したことがないが、毒だ。それを直接、吸引したのだ。それでも、マクルスは長生きしたほうだ。皇族ルイが定期的に妖精の薬を飲ませ、寿命を伸ばしたのだ。それも、僕という養子を手に入れてから、薬を飲まなくなった。
このまま生かしておいても、マクルスは血反吐を吐く苦しい生だ。だったら、人思いに処刑され、楽になったほうがいい。
「納得済みなのですね。マクルスからは、色々と証言をいただきました。あとは、あなたから貰った情報で、答え合わせです」
最強の妖精憑きだ。どうせ、帝国に敵対する貴族は全て把握しているだろう。こんな化け物相手に敵対しようとするとは、知らないというのは愚かだ。
確認は終わったので、僕はさっさと席を立った。
「まあまあ、確認作業をさせてください」
だけど、退室を許さないハガル。僕はどういうことかわからず、大人しく、また、座る。
ハガルは僕の手を握ったり、じっと僕の奥底を覗き見るように見てくる。何をされているのかわからないが、鳥肌が立って仕方がない。相手は化け物だ。見つめられて、生きた心地がしない。
「素晴らしいですね。妖精を狂わせる香の効果をしっかり体内にまで浸透させているというのに、毒だけ取り除かれています」
「ま、まさか」
僕はいまだに、定期的に妖精の薬を飲まされている。義父マクルスは甘いから、と拒絶していたが、僕は甘いものはまあまあ好きだから、仕方なく飲んでいたのだ。
にっこりと笑うハガル。
「妖精を狂わせる香の欠点は、あの有害な毒です。少量であれば、健康な人であれば解毒出来ます。しかし、あなたがた一族は、それを大量に取り入れ、臓腑まで香の効果を受け入れます。そうすると、どうしても、毒も受け入れることとなってしまいますので、どうしても寿命を削ることとなってしまいます。その毒の部分を妖精の薬で解毒したのです。結果、妖精を退ける健康な肉体の出来上がりです」
「………」
僕の体を使って実験を提案したのは、この目の前の化け物だ。僕が寄宿学校に通い始めた頃に、この計画が始まったのだろう。
この化け物、僕とそう年齢が変わらない。僕のほうがちょっと年上程度だ。
僕が寄宿学校で、大変だなー、なんて笑っている頃から、この化け物はとんでもない計画を進行させていたのだ。
「あなたの体、私の前では意味がありませんよ。あなたの体に勝てないのは、せいぜい、中級の魔法使いです。上級では、妖精の格が高いので、意味がありませんよ。私相手では、無意味です」
「どうして、そんなことをしたんですか」
「気になるではありませんか、どうなるのか。ただ、それだけです」
「………」
相手は化け物だ。まともな返答なんて求めてはいけない。僕は心底、そう悟った。
表向きには、帝国に仇名す貴族は全て、筆頭魔法使いハガルによって、妖精の呪いの刑で一族郎党、破滅した。あまりの刑罰に、帝国に敵対することよりも、帝国第一の筆頭魔法使いハガルに逆らうことの恐ろしさを世に知らしめることとなった。
そんな話題の影で、秘密裡に処刑されたり、釈放されたりしていた。
僕は、ルキエルはもしかしたら、我が家に来るかも、なんて思っていた。ルキエルが暮らしていた家は解体され、なくなっていた。それを見たら、ルキエルは僕の屋敷に来るだろう、なんて期待していた。
ところが、待っても待っても来ない。それどころか、海の貧民街から、とんでもない娼夫の噂が流れてきた。
これは、あれだ、まさか。半信半疑で、僕は海の貧民街に行ったんだ。
「まさか、お前が来るとは」
「義父上が知ったら、大変なことになるぞ!?」
ルキエルに手を出した男全てを亡くなった義父が殺したのだ。ルキエルだって、男に抱かれるのをあれほど嫌がっていたというのに、男娼なんてしてるなんて、どういうことだ!?
僕は仕方なく、ルキエルの一晩を買った。金だけ払って、部屋に行ったよ。
ルキエルはやる気だ。ベッドに座ってやがる。
「僕はルキエルにはこれっぽっちも衝動が起きない。やめろ」
「そうなの!? いや、試してみよう」
「やめろ」
下半身まで触ってきたよ。ぞっとした。これっぽっちも反応しないから、ルキエルは驚いていた。
「あれか、女がいいのか」
「ルキエルだけはダメだ。ちなみに、お前によく似た妹にも、これっぽっちも衝動が持てないからな」
「レーリエットに何も感じないとは、不能か!?」
「問題ない。娼婦はしっかりと抱けた」
「………」
悔しそうな顔をするルキエル。そうか、ルキエル、まだ、女と閨事してないのか。義父マクルスが持っている情報は僕にも引き継がれている。海の貧民街に来ても、まだ、女の経験をしてないんだな。
負けた、みたいな顔をするルキエル。こんなしょうもないことに勝ち負けなんてバカらしい。
「ほら、そういうのはなしでいこう。だいたい、何故、こんなことしてるんだ? 金がないなら、僕が融通しよう。義父上からも、頼まれている」
「施しはいらない。俺なりに目的があってやってるだけだ」
「どういう目的だ? 教えてくれ」
「俺の体を好き勝手した奴らを殺すためだ」
「そ、そうか」
ルキエル、本当に知らないんだな。義父マクルスが全て、殺したよ!! ルキエルは、あまり貧民街のほうは出入りしていないから、人の入れ替わりに気づかなかったのだろう。
リンネット、一度、ひどい目にあわされ、二度と、ルキエルの体の後始末を部外者にさせなかった。が、やっぱりやりたくないので、ルキエルが拾って育てた貧民ナナキにやらせたのだ。ナナキに直接、義父マクルスが聞いてみれば、不埒な行為は一切していない、と言い切られた。それは、信じるしかないし、ナナキはルキエルにとって大事な貧民であるため、マクルスも迂闊に殺せなかった。
今更ながら、言いづらい。本当のことをルキエルに言っていいものかどうか、悩んだ。
ルキエルは、母サツキに似ている、とマクルスは話していた。サツキは復讐に生きた女だ。最後まで復讐のために生き、死んだのだ。その情念を受け継いだのはルキエルだ。ルキエルもまた、復讐のために生きている。皇帝襲撃だって、復讐のためだ。
そして、今もいない復讐相手をおびき寄せるために、身売りなんてしている。
哀れみが表に出てしまったのだろう。ルキエルは苦笑する。
「俺は、結局、親父から抜け出せない。今、体目当てで男と付き合ってる。親父と同じもの持ってる男だ」
「それは、よくある話だな」
そう言うしかない。実際、よくある話だ。快楽漬けにされた奴らは、一度、抜け出しても、また、戻ってくるのだ。ルキエルが悪いわけではない。そういうものだ。
「というわけで、一回、やってみよう」
「無理だって」
ルキエルは興味津々と僕を引きずっていく。
「男相手は初めてか?」
「出来るように教育された。男は問題ない。ルキエルだけはダメだ」
「絶対に立たせてやる」
「やめろ!! わかった。代わりを呼ぼう」
「オクトとやりたい」
「そんな顔したって、無理なものは無理だ。ルキエルがいい、という奴がいる。そいつとやってくれ。きっと、大喜びだ」
もう、腕組まれるだけで鳥肌だよ。僕の肌まで見える拒絶感に、ルキエルは心配そうに見てくる。
「大丈夫か? 本当に不能じゃないよな?」
「しつこいよ!! さっさと他の男とやれ!!!」
僕はルキエルを押し剥がして、さっさと外に出た。ルキエルは仕事中なので、部屋で待機だよ。
外に出れば、護衛数名と側近セコンがいる。
「セコン、出番だ」
「何やらせる気ですか?」
「ルキエルと閨事してくれ」
「え、僕は明日、死ぬんですか!?」
ルキエルと閨事と聞いて、一瞬、笑顔になるが、すぐに真っ青になって恐怖に震える。
「心配ない。義父上はもう、この世にいない。確認した」
「しかし、万が一、実は生きていたら、僕、殺されますよ」
「噂なんだが、ルキエルと閨事すると、いい夢が見られるそうだ。きっと、いい思い出になるだろう」
「行かせていただきます!!」
僕はセコンをルキエルがいる部屋に蹴り入れた。終わるまで、戻ってくるな。
店主らしき男が、もの言いたげに僕を見ている。あれだ、女でも買ってほしいんだろうな。見れば、確かにあぶれている女が数名いる。
だけど、僕は、それほど女好きなわけではないんだよな。
僕は外に出て、護衛を中に入れる。
「外で待たせると、何かと目立つ。女と適当に過ごしてくれ」
「ですが、ご主人様を守る者がいなくなります」
「そこは問題ない。妖精だって、僕には勝てない」
それ以前に、僕には筆頭魔法使いハガルの妖精が付いている。監視兼護衛である。もう、悪い事がやり辛いな。
そうして、女も全てすっきりして、僕はルキエルの仕事が終わるのを待っていた。何もしないで待つって、物凄く間抜けである。
そうしていると、一人の男がやってきた。その男を見て、店主がちらちらと僕を見る。それだけで悟った。そうか、これがルキエルが体目当てで付き合っている、という男か。
身ぎれいな男である。体つきもまあまあだ。これが、ルキエルの父アルロの身代わりか。すごいの持ってるんだな、なんてついつい、不躾に見てしまう。
相手の男は、僕の視線に気づくも、目を合わせない。そりゃそうだ。見るからに僕は貴族だ。下手に僕の反感を買って、大変なことになりたくないだろう。
そうして、僕は身分を傘に男を観察していると、ルキエルが部屋から出てきた。ルキエル、男を見て、嬉しそうに笑う。続いて、僕がいるのに気づいて、気まずい、みたいな顔をする。気にしなくていいのに。あの顔は、義父マクルスにも見せていたな。
「もう終わったぞ。さっさとあの男を連れて帰れ」
「まだ、話したいことがあるんだ。悪いが、今日は、ルキエルの一晩に金を出したのは僕だ。遠慮してもらいたい」
「悪いが、今日は帰ってくれ」
「わかった」
ルキエルにまで言われると、男は引き下がった。店を出ていくのを見てから、僕は外に出た。
「中で話せばいいだろう」
「あの男はなんだ。どう見ても、怪しい男じゃないか」
見ただけで、何か秘密がある男だ。決して、ルキエルの側にいていい男ではない。
「仕方がない。お互い、身の上を話すような仲じゃないんだから」
「付き合ってると言ってたじゃないか」
「俺は体目当てだ。あっちはそれだけではないだろうがな。話って、それだけか?」
「どうして、わざわざ海の貧民街で身売りしているんだ? 行く所がないなら、僕のトコに来ても良かっただろう」
「あそこは、あの貴族の思い出が多すぎる」
「王都の貧民街は?」
「あそこに行くと、俺は誰かの娼夫になってしまう」
どちらも、ルキエルにとっては、行きたくない場所となっていた。
僕のトコは仕方がない。義父マクルスは、散々、ルキエルに閨事をしたのだ。その中には、妖精憑きであるための恐怖まで与えられたのだ。体に教え込むような行為に、マクルスは何を考えていたのか、僕は永遠にわからない。
王都の貧民街は、ルキエルにとっては故郷だろう。しかし、生きている内の半分以上を父親の娼夫として生きていた。海の貧民街にいても、男相手に身売りまでしているのだ。抜け出せないとわかって、せめてもの抵抗として、王都の貧民街を拒絶したのだろう。
どちらも仕方がないので、僕はこれ以上、ルキエルに勧めたりしない。
「どうして、海の貧民街を選んだんだ? 貧民街なんて、他にもあるだろう」
問題は、そこだ。よりにもよって、海の貧民街を選ぶ理由が気になった。
「そこは、たまたまだ。一度は王都の貧民街に行ったんだ。そこで、まあ、姉貴の男に絡まれて、助けてくれた人が、ここの支配者コクーン爺さんだったんだ。行く所がない、と言ったら、ここに連れて来てくれた。たまたまだ」
「リンネットに、男がいるのか」
「………まさかとは思うが、オクト、姉貴のことが好きなのか!?」
「いやいや、そういうのじゃない。ただ、気になっただけだ」
もう、誤魔化すのは、義父マクルス譲りだな。しかし、認めたくないのだ。
しかし、珍しく僕は顔に出てしまった。それを見たルキエルは、呆然となる。そして、僕の肩をがしっとつかんだ。
「目を覚ませ!! 姉貴は、あれだ、本当に最低最悪な女だぞ!!」
「お前、実の姉のことをそんなふうに言うんじゃない!?」
「ばか、身内だから言うんだ。姉貴はな、弟の俺だって利用する、とんでもない性悪だ。お前なんて、いいように使われるだけだぞ」
「そこは大丈夫だ。僕はルキエル寄りだと見られているから、完全に圏外だ」
痛い目にあわせました、なんてルキエルには口が裂けても言えない。リンネットの初めてを義父マクルスの命令に従ったまま、手ひどく奪ったのだ。会う度に、リンネットからは憎悪をこめて睨まれていたな。
表向きの事情で誤魔化して、僕はルキエルが海の貧民街にいる理由のほうに集中した。
「それで、ここに世話になっているのか。大丈夫か? そんな危ない所にいたら、巻き込まれるぞ」
「コクーン爺さんさ、人がいいから、すーぐ裏切者を懐にいれちゃうんだよな。もう、日常茶飯事だよ、それ」
「普通は、そうだよな」
そうでないこともある。今はなきルキエルの生家だ。あの家は、見た感じ無防備だ。なのに、特別な守りをされていないのに、襲撃にあったことがない。
記録を遡れば、ルキエルが生まれる前、ルキエルの父アルロがあの家を買った頃からずっと、襲撃なんて受けていない。
一見、ただの家だ。だけど、あの家には、何かあったのだろう。
ルキエルは色々と心得ている。当たり障りのない話をして、僕と別れた。
戻れば、護衛はまだ女と閨事中だ。側近セコンはというと、夢うつつな顔をしていた。
「どうだ、いい夢、見れたか?」
「今なら、殺されてもいい」
すっかり、ルキエルに魅了されたな。
ルキエルを買うのは、これだけで終わらなかった。僕は二週間に一度は、ルキエルを買い、閨事はセコンに任せて、僕は他愛無い話をするだけで、別れた。
不思議なことに、義父マクルスの名はあがらなかった。僕に爵位を引き継いだ後とはいえ、マクルスはそれなりに名が通っている。皇帝襲撃では捕縛されているというのに、表立って名は出されない。
僕は皇族との繋がりを使って、どうにか中に入ったのだが、とんでもないこととなった。
目の前に、化け物がいる。もう、僕は死ぬかもしれないな。心底、覚悟した。
義父マクルスは、筆頭魔法使いハガルは化け物だ、と言っていた。対して妖精憑きルキエルは、ハガルのことは大したことがない、と言っていた。
実際に目の前にして、僕はルキエルに声を大にして言いたい。この鈍感が!! こんな奴を目の前にして、生きた心地がしない。
対する筆頭魔法使いハガルは、これまた綺麗な相貌を晒して、僕にお茶なんか出してくれる。そうか、その姿が本当なんだな。巷では平凡と噂されていたが、ハガルはそれを隠していたんだ。こんな美貌では、それも仕方がない。
「普通ですね」
「いえいえ、怖いですよ」
「私のこの姿を見て、普通だといっているのですよ」
「そっちですか。僕の好みは、こう、悪女っぽいほうですから。ルキエルやあなたのような清楚華憐なのは、逆です。気持ち悪い」
「面白いですね。皇族サイですら、衝動を動かされないと聞きました」
「ルキエルに馴れてるので」
皇族サイなんて、ルキエルや、目の前にいるハガルに比べれば、可愛いね!!
僕は震える手でお茶を飲む。うまっ!! どうしよう、こんな風に僕はお茶を淹れられない。
「それで、今後、我が家はどうなるのでしょうか?」
まずは、表立っていない事から聞いてみる。この化け物の気持ち一つにかかっているのだろう。
艶やかに笑うハガル。
「心配いりませんよ。情報さえいただけば、あなたの一族だけは見逃してあげます。ですが、マクルスは処刑です」
「それでいいです」
「義父だからか、あっさりと切り捨てますね」
「気づいているでしょう。義父はそう長くありません。これから、どんどんと苦しい生が待っています」
襲撃計画が起こるより前から、義父マクルスは、酷い吐血をしていた。妖精の薬を飲まなくなってから、マクルスはどんどんと悪くなってきた。それでも、妖精を狂わせる香の摂取をやめなかった。
臓腑まで妖精を狂わせる香に犯されたマクルスの体は、毒に犯されたようなものだ。妖精を狂わせる香は、少量なら大したことがないが、毒だ。それを直接、吸引したのだ。それでも、マクルスは長生きしたほうだ。皇族ルイが定期的に妖精の薬を飲ませ、寿命を伸ばしたのだ。それも、僕という養子を手に入れてから、薬を飲まなくなった。
このまま生かしておいても、マクルスは血反吐を吐く苦しい生だ。だったら、人思いに処刑され、楽になったほうがいい。
「納得済みなのですね。マクルスからは、色々と証言をいただきました。あとは、あなたから貰った情報で、答え合わせです」
最強の妖精憑きだ。どうせ、帝国に敵対する貴族は全て把握しているだろう。こんな化け物相手に敵対しようとするとは、知らないというのは愚かだ。
確認は終わったので、僕はさっさと席を立った。
「まあまあ、確認作業をさせてください」
だけど、退室を許さないハガル。僕はどういうことかわからず、大人しく、また、座る。
ハガルは僕の手を握ったり、じっと僕の奥底を覗き見るように見てくる。何をされているのかわからないが、鳥肌が立って仕方がない。相手は化け物だ。見つめられて、生きた心地がしない。
「素晴らしいですね。妖精を狂わせる香の効果をしっかり体内にまで浸透させているというのに、毒だけ取り除かれています」
「ま、まさか」
僕はいまだに、定期的に妖精の薬を飲まされている。義父マクルスは甘いから、と拒絶していたが、僕は甘いものはまあまあ好きだから、仕方なく飲んでいたのだ。
にっこりと笑うハガル。
「妖精を狂わせる香の欠点は、あの有害な毒です。少量であれば、健康な人であれば解毒出来ます。しかし、あなたがた一族は、それを大量に取り入れ、臓腑まで香の効果を受け入れます。そうすると、どうしても、毒も受け入れることとなってしまいますので、どうしても寿命を削ることとなってしまいます。その毒の部分を妖精の薬で解毒したのです。結果、妖精を退ける健康な肉体の出来上がりです」
「………」
僕の体を使って実験を提案したのは、この目の前の化け物だ。僕が寄宿学校に通い始めた頃に、この計画が始まったのだろう。
この化け物、僕とそう年齢が変わらない。僕のほうがちょっと年上程度だ。
僕が寄宿学校で、大変だなー、なんて笑っている頃から、この化け物はとんでもない計画を進行させていたのだ。
「あなたの体、私の前では意味がありませんよ。あなたの体に勝てないのは、せいぜい、中級の魔法使いです。上級では、妖精の格が高いので、意味がありませんよ。私相手では、無意味です」
「どうして、そんなことをしたんですか」
「気になるではありませんか、どうなるのか。ただ、それだけです」
「………」
相手は化け物だ。まともな返答なんて求めてはいけない。僕は心底、そう悟った。
表向きには、帝国に仇名す貴族は全て、筆頭魔法使いハガルによって、妖精の呪いの刑で一族郎党、破滅した。あまりの刑罰に、帝国に敵対することよりも、帝国第一の筆頭魔法使いハガルに逆らうことの恐ろしさを世に知らしめることとなった。
そんな話題の影で、秘密裡に処刑されたり、釈放されたりしていた。
僕は、ルキエルはもしかしたら、我が家に来るかも、なんて思っていた。ルキエルが暮らしていた家は解体され、なくなっていた。それを見たら、ルキエルは僕の屋敷に来るだろう、なんて期待していた。
ところが、待っても待っても来ない。それどころか、海の貧民街から、とんでもない娼夫の噂が流れてきた。
これは、あれだ、まさか。半信半疑で、僕は海の貧民街に行ったんだ。
「まさか、お前が来るとは」
「義父上が知ったら、大変なことになるぞ!?」
ルキエルに手を出した男全てを亡くなった義父が殺したのだ。ルキエルだって、男に抱かれるのをあれほど嫌がっていたというのに、男娼なんてしてるなんて、どういうことだ!?
僕は仕方なく、ルキエルの一晩を買った。金だけ払って、部屋に行ったよ。
ルキエルはやる気だ。ベッドに座ってやがる。
「僕はルキエルにはこれっぽっちも衝動が起きない。やめろ」
「そうなの!? いや、試してみよう」
「やめろ」
下半身まで触ってきたよ。ぞっとした。これっぽっちも反応しないから、ルキエルは驚いていた。
「あれか、女がいいのか」
「ルキエルだけはダメだ。ちなみに、お前によく似た妹にも、これっぽっちも衝動が持てないからな」
「レーリエットに何も感じないとは、不能か!?」
「問題ない。娼婦はしっかりと抱けた」
「………」
悔しそうな顔をするルキエル。そうか、ルキエル、まだ、女と閨事してないのか。義父マクルスが持っている情報は僕にも引き継がれている。海の貧民街に来ても、まだ、女の経験をしてないんだな。
負けた、みたいな顔をするルキエル。こんなしょうもないことに勝ち負けなんてバカらしい。
「ほら、そういうのはなしでいこう。だいたい、何故、こんなことしてるんだ? 金がないなら、僕が融通しよう。義父上からも、頼まれている」
「施しはいらない。俺なりに目的があってやってるだけだ」
「どういう目的だ? 教えてくれ」
「俺の体を好き勝手した奴らを殺すためだ」
「そ、そうか」
ルキエル、本当に知らないんだな。義父マクルスが全て、殺したよ!! ルキエルは、あまり貧民街のほうは出入りしていないから、人の入れ替わりに気づかなかったのだろう。
リンネット、一度、ひどい目にあわされ、二度と、ルキエルの体の後始末を部外者にさせなかった。が、やっぱりやりたくないので、ルキエルが拾って育てた貧民ナナキにやらせたのだ。ナナキに直接、義父マクルスが聞いてみれば、不埒な行為は一切していない、と言い切られた。それは、信じるしかないし、ナナキはルキエルにとって大事な貧民であるため、マクルスも迂闊に殺せなかった。
今更ながら、言いづらい。本当のことをルキエルに言っていいものかどうか、悩んだ。
ルキエルは、母サツキに似ている、とマクルスは話していた。サツキは復讐に生きた女だ。最後まで復讐のために生き、死んだのだ。その情念を受け継いだのはルキエルだ。ルキエルもまた、復讐のために生きている。皇帝襲撃だって、復讐のためだ。
そして、今もいない復讐相手をおびき寄せるために、身売りなんてしている。
哀れみが表に出てしまったのだろう。ルキエルは苦笑する。
「俺は、結局、親父から抜け出せない。今、体目当てで男と付き合ってる。親父と同じもの持ってる男だ」
「それは、よくある話だな」
そう言うしかない。実際、よくある話だ。快楽漬けにされた奴らは、一度、抜け出しても、また、戻ってくるのだ。ルキエルが悪いわけではない。そういうものだ。
「というわけで、一回、やってみよう」
「無理だって」
ルキエルは興味津々と僕を引きずっていく。
「男相手は初めてか?」
「出来るように教育された。男は問題ない。ルキエルだけはダメだ」
「絶対に立たせてやる」
「やめろ!! わかった。代わりを呼ぼう」
「オクトとやりたい」
「そんな顔したって、無理なものは無理だ。ルキエルがいい、という奴がいる。そいつとやってくれ。きっと、大喜びだ」
もう、腕組まれるだけで鳥肌だよ。僕の肌まで見える拒絶感に、ルキエルは心配そうに見てくる。
「大丈夫か? 本当に不能じゃないよな?」
「しつこいよ!! さっさと他の男とやれ!!!」
僕はルキエルを押し剥がして、さっさと外に出た。ルキエルは仕事中なので、部屋で待機だよ。
外に出れば、護衛数名と側近セコンがいる。
「セコン、出番だ」
「何やらせる気ですか?」
「ルキエルと閨事してくれ」
「え、僕は明日、死ぬんですか!?」
ルキエルと閨事と聞いて、一瞬、笑顔になるが、すぐに真っ青になって恐怖に震える。
「心配ない。義父上はもう、この世にいない。確認した」
「しかし、万が一、実は生きていたら、僕、殺されますよ」
「噂なんだが、ルキエルと閨事すると、いい夢が見られるそうだ。きっと、いい思い出になるだろう」
「行かせていただきます!!」
僕はセコンをルキエルがいる部屋に蹴り入れた。終わるまで、戻ってくるな。
店主らしき男が、もの言いたげに僕を見ている。あれだ、女でも買ってほしいんだろうな。見れば、確かにあぶれている女が数名いる。
だけど、僕は、それほど女好きなわけではないんだよな。
僕は外に出て、護衛を中に入れる。
「外で待たせると、何かと目立つ。女と適当に過ごしてくれ」
「ですが、ご主人様を守る者がいなくなります」
「そこは問題ない。妖精だって、僕には勝てない」
それ以前に、僕には筆頭魔法使いハガルの妖精が付いている。監視兼護衛である。もう、悪い事がやり辛いな。
そうして、女も全てすっきりして、僕はルキエルの仕事が終わるのを待っていた。何もしないで待つって、物凄く間抜けである。
そうしていると、一人の男がやってきた。その男を見て、店主がちらちらと僕を見る。それだけで悟った。そうか、これがルキエルが体目当てで付き合っている、という男か。
身ぎれいな男である。体つきもまあまあだ。これが、ルキエルの父アルロの身代わりか。すごいの持ってるんだな、なんてついつい、不躾に見てしまう。
相手の男は、僕の視線に気づくも、目を合わせない。そりゃそうだ。見るからに僕は貴族だ。下手に僕の反感を買って、大変なことになりたくないだろう。
そうして、僕は身分を傘に男を観察していると、ルキエルが部屋から出てきた。ルキエル、男を見て、嬉しそうに笑う。続いて、僕がいるのに気づいて、気まずい、みたいな顔をする。気にしなくていいのに。あの顔は、義父マクルスにも見せていたな。
「もう終わったぞ。さっさとあの男を連れて帰れ」
「まだ、話したいことがあるんだ。悪いが、今日は、ルキエルの一晩に金を出したのは僕だ。遠慮してもらいたい」
「悪いが、今日は帰ってくれ」
「わかった」
ルキエルにまで言われると、男は引き下がった。店を出ていくのを見てから、僕は外に出た。
「中で話せばいいだろう」
「あの男はなんだ。どう見ても、怪しい男じゃないか」
見ただけで、何か秘密がある男だ。決して、ルキエルの側にいていい男ではない。
「仕方がない。お互い、身の上を話すような仲じゃないんだから」
「付き合ってると言ってたじゃないか」
「俺は体目当てだ。あっちはそれだけではないだろうがな。話って、それだけか?」
「どうして、わざわざ海の貧民街で身売りしているんだ? 行く所がないなら、僕のトコに来ても良かっただろう」
「あそこは、あの貴族の思い出が多すぎる」
「王都の貧民街は?」
「あそこに行くと、俺は誰かの娼夫になってしまう」
どちらも、ルキエルにとっては、行きたくない場所となっていた。
僕のトコは仕方がない。義父マクルスは、散々、ルキエルに閨事をしたのだ。その中には、妖精憑きであるための恐怖まで与えられたのだ。体に教え込むような行為に、マクルスは何を考えていたのか、僕は永遠にわからない。
王都の貧民街は、ルキエルにとっては故郷だろう。しかし、生きている内の半分以上を父親の娼夫として生きていた。海の貧民街にいても、男相手に身売りまでしているのだ。抜け出せないとわかって、せめてもの抵抗として、王都の貧民街を拒絶したのだろう。
どちらも仕方がないので、僕はこれ以上、ルキエルに勧めたりしない。
「どうして、海の貧民街を選んだんだ? 貧民街なんて、他にもあるだろう」
問題は、そこだ。よりにもよって、海の貧民街を選ぶ理由が気になった。
「そこは、たまたまだ。一度は王都の貧民街に行ったんだ。そこで、まあ、姉貴の男に絡まれて、助けてくれた人が、ここの支配者コクーン爺さんだったんだ。行く所がない、と言ったら、ここに連れて来てくれた。たまたまだ」
「リンネットに、男がいるのか」
「………まさかとは思うが、オクト、姉貴のことが好きなのか!?」
「いやいや、そういうのじゃない。ただ、気になっただけだ」
もう、誤魔化すのは、義父マクルス譲りだな。しかし、認めたくないのだ。
しかし、珍しく僕は顔に出てしまった。それを見たルキエルは、呆然となる。そして、僕の肩をがしっとつかんだ。
「目を覚ませ!! 姉貴は、あれだ、本当に最低最悪な女だぞ!!」
「お前、実の姉のことをそんなふうに言うんじゃない!?」
「ばか、身内だから言うんだ。姉貴はな、弟の俺だって利用する、とんでもない性悪だ。お前なんて、いいように使われるだけだぞ」
「そこは大丈夫だ。僕はルキエル寄りだと見られているから、完全に圏外だ」
痛い目にあわせました、なんてルキエルには口が裂けても言えない。リンネットの初めてを義父マクルスの命令に従ったまま、手ひどく奪ったのだ。会う度に、リンネットからは憎悪をこめて睨まれていたな。
表向きの事情で誤魔化して、僕はルキエルが海の貧民街にいる理由のほうに集中した。
「それで、ここに世話になっているのか。大丈夫か? そんな危ない所にいたら、巻き込まれるぞ」
「コクーン爺さんさ、人がいいから、すーぐ裏切者を懐にいれちゃうんだよな。もう、日常茶飯事だよ、それ」
「普通は、そうだよな」
そうでないこともある。今はなきルキエルの生家だ。あの家は、見た感じ無防備だ。なのに、特別な守りをされていないのに、襲撃にあったことがない。
記録を遡れば、ルキエルが生まれる前、ルキエルの父アルロがあの家を買った頃からずっと、襲撃なんて受けていない。
一見、ただの家だ。だけど、あの家には、何かあったのだろう。
ルキエルは色々と心得ている。当たり障りのない話をして、僕と別れた。
戻れば、護衛はまだ女と閨事中だ。側近セコンはというと、夢うつつな顔をしていた。
「どうだ、いい夢、見れたか?」
「今なら、殺されてもいい」
すっかり、ルキエルに魅了されたな。
ルキエルを買うのは、これだけで終わらなかった。僕は二週間に一度は、ルキエルを買い、閨事はセコンに任せて、僕は他愛無い話をするだけで、別れた。
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