91 / 152
破滅-三人目
男の話せない秘密
あれほど、タリムとルキエルは人前でもべったりだったというのに、タリムはルキエルを捨てて、貧民街から消えていなくなった。
そう、海の貧民街で、噂された。
本当かどうか、わからない。ルキエルは、噂が立つ少し前から、男娼の仕事を休んで、部屋に閉じこもっていた。そういう事をするのだから、タリムがいなくなったのは、本当なんだろう。
人前でも、ルキエルは、タリムとは別れたくない、とは言っていた。ただ、一緒に暮らすことについては、ルキエルは何故か躊躇っていた。
男と付き合うなんて、と俺だって最初はルキエルを蔑んで見ていた。だが、ルキエルがタリム相手に心の底からいい笑顔を向けるのを見ていると、そういう悪い感情はいつの間にか消えていた。
ルキエルのことは何も知らない。王都の貧民街では、どういう立場だったのか、軍部から情報を提供されることはない。気になって、報告ついでに、そういうことを書いたが、返事はなかった。
だから、猶更、ルキエルのことは気になった。
「ルキエルが仕事をまた始めたって」
「さすがに毎日はやめた、て言ってたぞ」
「もうそろそろ、ユーリもどうだ?」
そして、また、俺に対して、周囲は言ってくるのだ。ルキエルを買え、と。
「どうして、そんなに、俺にルキエルを買わせたいんだ!?」
心底、そこが疑問だ。
「そりゃ、なあ」
「共有したいよな、色々と」
「ユーリだけ、話せないんだよな」
「?」
何が? 本当にわけがわかない。
もう、ルキエルの隠された何かを話したくて仕方がないのだろう。だが、俺は別に、知らなくていいんだ。話すことって、ルキエル以外でいいだろう。
「おーい、ルキエル!!」
なのに、仲間がちょうど食堂にやってきたルキエルを呼び寄せた。余計なことするな!!
俺だけ不機嫌で、他は普通である。そこに、呼び寄せられたルキエルが食事を持ってやってきた。
「こっち座って」
そして、俺の隣りにルキエルを座らせる。もう、狙っているな。
「何か用?」
ルキエルは呼ばれた理由を知りたがった。
「今日は仕事するのか知りたくて」
「ユーリがさ、ルキエルを慰めたいって」
「言ってない!!」
俺は全力で否定するも、仲間が数で押してきた。本当に、こいつら、何やってくれるんだよ!?
対するルキエルは、綺麗な作法で食事をとりつつ、俺を見る。
完全に、俺の体躯を値踏みされた。そして、俺の下半身を獲物のように見下ろす。こいつ、どうやってでも、俺と閨事するつもりだ。
「俺はやりたくない」
いい機会だから、俺ははっきりと拒否してやる。そう言ってやると、周囲が、俺のことを裏切者、みたいに見てきた。どうして、そうなるんだ!?
「まあ、金払うのはユーリだから、俺からは強要出来ないけどな。ちょっと、味見はしてみたいな」
「そういうことをここで言うんじゃない!?」
「えー、いいじゃん。俺はそういうことが好きなんだし、貧民だし、かまわないと思うんだよね。けど、俺はまあまあ高いからなー」
「っ!?」
「金の使い道は、ユーリが決める事だからな。けど、もうちょっと、肩の力、抜いたほうがいいと思うよ。あんたの素振りは、ちょっと大振りすぎ」
「知った口をきくな!?」
「確かに、そうだ」
涼しい顔をして、ルキエルは誰よりもはやく食事を終わらせて、席を立った。
そして、残された俺は、全員から責めるように見られた。
「せっかく、ルキエルのほうから、買いやすいように声かけてくれたのに」
「っ!?」
ルキエルの心遣いに、俺は気づいていなかった。意固地になって、男娼を買う、という行為を拒んでいたにすぎない。
ルキエルという男娼を買う言い訳はいくらだってあった。味見だったり、興味本位だったり、潜入調査のため、とか色々だ。
俺と同じように潜入調査している奴らは皆、そうやって言い訳をして、ルキエルを買ったんだ。結果、大した情報はなかった、なんて軍部に報告したのだろう。
それが、俺には出来なかった。生真面目すぎたのだ。
その夜、結局、部屋に居られなくて、外に出て、ルキエルが男娼として立つ店の近くに行った。
貧民街にはたくさんの娼館がある。その中で、ルキエルが場所を借りている娼館は、まあまあ、いい部類だ。酷い所だと、本当に傷物にするような行為をさせられることだってある。
貧民の命は安い。こんな金額で売買されるのか、と驚くほどだ。五体満足で大人になるのだって、奇跡だという。何かしら、傷はあり、どこか欠けていたりするのだ。
ルキエルはどうなのか? ともかく、買えばわかる、と言われるだけだ。
おかしな話だ。そこら辺の娼婦については、皆、赤裸々に話してくれる。あそこの娼館のだれだれはこうだった、とか、可愛いこもいた、とか、そういうことは普通に話してくれるのだ。俺だって、普通に話す。
だけど、ルキエルのことは、皆、口を固く閉ざすのだ。経験した者同士では話すが、そうでない者には口は閉ざされる。
このままではまずい。頭の片隅ではわかっている。潜入調査で一番大事なのは、同調だ。ルキエルという男娼を面白半分に買うことは、同調となる。
こういう潜入調査をするのは、だいたい、平民出身だ。貴族出身は、たぶん、俺くらいだろう。皆、俺が貴族出身だということを忘れている感じだ。もう、潜入調査の大先輩だしな。だから、ここまで俺が拒むのが、不思議に思っているだろう。
貴族出身だから、というのは、実は言い訳でしかないのだ。現実に、軍神コクーンの元には、元は貴族だった騎士や兵士だって集まっているのだ。彼らだって、面白半分にルキエルという男娼を買った。
覚悟を決めて、俺は娼館に入った。
「あれ、ユーリ、どうした? 今日はもう終わりだけど」
「終わりって、もう!?」
お茶を一服していたルキエルが、入ってきた俺にそう言ってきた。
せっかく思い切って来たというのに、まさか、店じまいとなっているなんて、思ってもいなくて、俺は恥ずかしくなった。
俺の表情とか見て、ルキエルのほうが色々と察してくれた。俺の腕を引っ張って、椅子に座らせてくれた。
「また、誰かに言われたんだろう。もう、買ったことにして、帰っちゃえばいいって」
「ルキエルは、別の男に買われたんだろう。その事実は変わらない」
「俺の常連は、表向きでは黙ってる。あんたが買った、と言ったって、苦情なんか訴えないって」
悪戯っ子みたいに笑っていうルキエル。
わかっていた。ルキエルは、本当は、いい奴だ。貧民生まれ、貧民育ちだが、とても優しい。それなりに過ごして、見ていれば、それはわかる。
そういう、ルキエルの優しさや思いやりを受けて、俺は色々と吹っ切れた。
「いや、買おう。明日、また来る」
「出直すのか?」
「もう、店じまいだろう?」
「………たまには、二人でもいっか」
ルキエルは、下から俺に口づけしてきた。
あまりの唐突に避けることも、止めることも出来なかった。
最初は、軽くだ。それを何度もして、俺の口が緩んできた隙をついて、深く口づけしてきた。俺の口内に、ルキエルの舌が挿入される。
初めてではない。だが、驚いた。ルキエルの口づけは、女を相手にしているようだったからだ。つい、答えて、俺もルキエルに深く口づけしてしまう。
離れると、ルキエルは上気した顔を俺に向ける。
「まあまあ、経験はあるんだな。あとは、下半身はどうかな?」
「こら、こんなトコでっ」
「しっかり立ってるな。なら、俺相手でも出来るな」
まだ、金すら払っていないというのに、ルキエルは俺の下半身をつかんで、色々と確かめた。
貧民が身売りする娼館だ。店先といえども、こういうことを咎められることはない。恥ずかしいのは俺だけだ。娼婦たちは男たちに買われて部屋に入っているし、店主は気を利かせてか、いなくなっていた。
ルキエルは衝動が動いたのか、俺の膝に座り、また、口づけしてきた。体をこれでもか、と密着してくる。
「あは、もう、破裂しそうなほど、立ってるな」
嬉しそうに笑って、俺が興奮して立たせている一物をルキエルは下半身で感じていた。
「俺の中には、まだ、別の男のが入っているから、今日は、部屋代だけでいいよ」
「い、いや、しっかり払おう。払いたい」
「今の俺は、綺麗じゃない」
「黙ってろ」
妙な興奮を覚えた俺は、ルキエルを腕に抱きあげて、また、口づけする。
ルキエルも何か興奮するものがあったのだろう。俺の腕の中で、執拗に俺に口づけをもとめた。
隠れていた店主が、空き部屋のドアをわざわざ開けてくれた。俺はそこにルキエルを連れ込んだ。
俺だって綺麗ではない。本来は、身綺麗になってからするものだろう。だが、俺は興奮して、それどころではなくなっていた。ルキエルをベッドに下ろすと、圧し掛かって、執拗に口づけした。
ルキエルは、俺の口づけを受けながら、器用に服を脱いだ。ついでなのか、俺の服も緩めたりしてくれた。俺はそこまで気が回っていなかった。気づいたら、一物の圧迫感から解放されていた。
ルキエルは俺の一物をつかんで笑う。
「いいもの持っているな」
「っ!?」
俺は自らの下半身を見るついでに、ルキエルの下半身を見て、驚いた。あまりに驚いて、俺の一物は柔らかくなった。
「なっ、ユーリ、ここまできて、それはないだろう!?」
「お前のそれは、なんだ!?」
俺の一物を誉めるルキエルのは剛直だ。とんでもないのを持っているよ、こいつ!!!
これでわかった。何故、誰も彼も、ルキエルの一夜を話さないか。話せないはずだ。具合はどうだった、という話になると、続いて、ルキエルの下半身だ。誰だって気になる。
俺だって言えない。今、下で女のように喘いでいる男の下半身が、とんでもないものだなんて。こんな剛直に勝てる男を俺は知らない。
ルキエルは不機嫌になって、俺の下から抜け出した。
「俺を興味本位で買う奴らの半分は、ここで終わるんだ」
「だろうな。それを見たら、萎える」
男として負けているのだ。自信喪失する。
だけど、ルキエルは容赦がない。俺を押し倒して、上に座るのだ。
「ま、ちょっと萎えてても、入っちゃえば、すぐに回復するけどな」
「や、やめろっ」
抵抗する暇もない。ルキエルは馴れているから、俺の一物をルキエルの蕾に挿入させる。
ずぶりと入った感触に、俺の一物はすぐに気持ちよくなる。根本までルキエルの中に挿入され、そこで、ルキエルは動きを止める。恍惚に笑った。
「あ、大きくなってる。ああ」
どんどんと太く、大きくなるのを感じて、ルキエルは喜んでいた。その姿に、俺は興奮した。だが、どうすればわからない。
ルキエルは俺の両手をルキエルの腰に添えさせた。
「俺の腰、動かしてみて」
「こ、こう?」
「ああっ! そう!!」
俺が気持ち良い、というふに動かしてみれば、ルキエルも喜んだ。
ルキエルは興奮が呆気なく絶頂して、白濁を俺の腹から胸へと吐き出した。その剛直に、俺はもう、どうでもよくなった。上半身を上げ、ルキエルの腰を動かすだけでなく、俺自身の腰も動かした。
「やぁ、激しいぃ! だ、だめぇ、またぁ、きちゃうぅ」
「はは、ぐちゃぐちゃだな」
わかる。俺の前にルキエルの中に入った男の白濁で、おかしなものを俺も感じた。
ルキエルはもう、動くに動けない。ルキエルは倒れそうになるから、俺が腰をぐいっとつかんで、支えた。それで、さらに奥を突くこととなった。ルキエルの中が強く俺の一物を締めるほど震えた。
「やあああああーーーーーー!!」
とんでもない絶頂を受けて、ルキエルは悲鳴のような嬌声を上げた。全身をガクガクと痙攣させる。
「やぁ、これ、まず、いぃ」
「何が?」
俺はまだまだ、絶頂していないから、平然としていた。
ルキエルは引きつった笑みを浮かべて、全身を震わせた。どこか悪いのか、と俺は頬を撫でる。
「やぁ、今、どこも、敏感になってるからぁ」
激しく反応するルキエル。
俺はよくわからない。男相手の経験がないのだから、仕方がない。ただ、いつもと様子が違うから、心配になって、つい、抱きしめた。
「んぁあああ!!」
また、ルキエルは嬌声を上げる。ただ、抱きしめただけだというのに、その反応に、俺は妙な興奮を覚えた。
ただ、それだけで、俺はルキエルの中に白濁を放った。
「んがぁああああああああーーーーー」
男二人分の白濁だ。それを受けて、ルキエルは悲鳴のような声をあげ、倒れた。もう、俺はルキエルを支えられなかった。どうすればいいのか、わからなかったからだ。
「あ、す、すまん!!」
俺は慌ててルキエルから一物を抜いた。それだけでも、ルキエルは悶絶した。
「やぁ、もう」
甘い声を上げるルキエル。綺麗な男だ。男だとわかっていても、ルキエルには、女に対するような感情を持ってしまう。
ベッドに倒れたルキエルは呆然と座っているだけの俺の手をつかんで、子どものように笑った。
「ごめん、ちょっと休憩」
「もう、ここまででいい。休め」
「けど、ユーリ、まだ、満足してないだろう」
ルキエルは俺の一物を握った。確かに、まだ、興奮している。
驚いた。さっき、ルキエルの中に白濁を放ったというのに、俺の一物は立っている事実に、驚いてしまう。
驚いたからだろう。すぐに萎えた。
ルキエルは、俺の一物が萎えた瞬間を見て、残念そうな顔をする。
「ユーリ、無理矢理、続けても良かったのにぃ」
「ルキエルが苦しそうだったから」
「二人目だからな。俺、体力がないんだよ。けど、一方的な蹂躙は馴れてる。好きなようにしてくれても良かったんだよ」
「俺には出来ない」
俺はルキエルの頭を撫でた。まだ、何か感じるのか、ルキエルは少し声をあげる。
「俺は、詰まらない男なんだ。単調で、一つのことしか出来ない。だから、すぐに飽きられる」
過去、付き合っていた女たちがそうだった。
生真面目というが、詰まらない男なんだ。今日だって、ルキエルが導いてくれたから、どうにかルキエルを喜ばせられただけだ。実際は、女を喜ばせたことがない。一生懸命、女の上に乗って、一方的に押し付けているだけだった。
「ちょっと、経験してみたいな。その、詰まらない男の閨事を」
「もう、お互い、元気がない」
「俺は受けるだけだ。元気云々は関係ない。ユーリが元気になればいいんだよ。ほら、やろう」
期待に満ちた目で見てくるルキエル。
ルキエルは、本当に不思議な男だ。男だとわかっているが、見ていると、どうしても、惹かれてしまう。
そうやって、見上げられると、俺はつい、ルキエルに口づけして、上に圧し掛かってしまった。
「よし、これで、解禁だ!!」
「よっしゃーーーー!!!」
「もう、言いたくて仕方なかったんだ」
「遅いよ、ユーリ!!」
次の日には、俺の元に仲間たちが押し寄せてきた。
「どうだった?」
「まあ、良かったな」
「ルキエルのあれ、見たんだよな?」
「見た見た。見て、萎えた」
「お前は萎えた側か!!」
こうして、意見交換会になっていた。
もちろん、その場にはルキエルも、女たちもいない。男だけが集まって、どうだったか、なんて下世話なことを話しているのだ。
「しかし、ルキエルは、立派な男娼だな。俺が萎えても、しっかり最後まで立たせるんだからな」
「容赦ないよな、ルキエル。あんなに綺麗な顔で、体だって華奢だってのにな」
「そうだな」
男娼を汚らわしい、なんて俺は思っていた。だが、実際にルキエルを買って、考えを変えた。
ついでに、色々と吹っ切れた。
ルキエルは軍神コクーンの孫娘ヘレンに引っ張られて、訓練場にやってきた。昨日、あれだけ乱れ、俺の蹂躙を受けて、意識まで飛ばしたというのに、朝のルキエルは平然としている。
情けない顔をするルキエルに、コクーンから寄っていく。
「ルキエル、ちょっとヘレンと手合わせしてほしい」
とんでもないことをいうコクーン。どう見たって、ルキエルがヘレンに叩きのめされるだろう。言い方が間違っている。
「え、体術? 剣術?」
ルキエルが聞き返した。どっちでも、ルキエルは吹き飛ばされるな。その場の誰もが、同じことを思った。
「お祖父様、ルキエルにわたくしの相手は無理です」
ヘレンはルキエルのことを蔑むように見ていう。ヘレンは、男と付き合ったルキエルのことを毛皮らしい何かと見ていた。貧民になったとはいえ、やはり、元は貴族の子女だ。
ルキエルは困ったように笑うだけだ。
「まずは、剣術かな。ヘレンお嬢さん、ほら、木剣でやろう。真剣じゃ、怪我しちゃうから」
「本気でいきます」
ヘレンの気迫は物凄いものだ。殺気まで漲っている。対するルキエルは、木剣を両手で握って、切っ先を地面に向けて構えた。
構えだけ見ると、ルキエルは何か修練をした経験があるように見える。だが、普段の素振りからは、とても、実力があるようには見えない。
「ヘレンお嬢さんからどうぞ。俺からは動かないから」
「遠慮なくいきます!!」
軍神コクーンの孫娘だけあって、一歩が違う。幼い頃からコクーンの手ほどきを受けているのだ。技術が違う。
対するルキエルは向かってくるヘレンを無表情に見ていた。いつの間にか、木剣を持ち上げて、ヘレンがふるう木剣に当てる。
飛んだ木剣は、ヘレンのものだった。いい音をたてて木剣が手から離れるのをヘレンは驚いて
いた。そこにルキエルは容赦なく、ヘレンの足をひっかけて転ばせた。ヘレンは反射で受け身をするが、ルキエルは軽い身のこなしでヘレンの上に圧し掛かり、ヘレンの首を素手で掴んだ。
「動くな」
冷たい声でルキエルはいう。ルキエルが持つ威圧に、ヘレンは動けなくなった。
「そこまで!!」
そこに、コクーンの声が響き渡った。
すぐに、ルキエルはヘレンの上から離れた。
「ご、ごめん! コクーン爺さんが手を抜いたら、ここ追い出すって脅すから!!」
「っ!?」
ルキエル、言い方が悪い。それを聞いたヘレンは悔しくて、その場を走って逃げだした。
「ヘレンお嬢さん!!」
さらに、ルキエル、追い詰めるようにヘレンを追いかけていくのだ。
それから、いつもの通り、修練となったのだが、しばらくして戻ってきたルキエルは、左の頬を真っ赤に腫らしていた。
そう、海の貧民街で、噂された。
本当かどうか、わからない。ルキエルは、噂が立つ少し前から、男娼の仕事を休んで、部屋に閉じこもっていた。そういう事をするのだから、タリムがいなくなったのは、本当なんだろう。
人前でも、ルキエルは、タリムとは別れたくない、とは言っていた。ただ、一緒に暮らすことについては、ルキエルは何故か躊躇っていた。
男と付き合うなんて、と俺だって最初はルキエルを蔑んで見ていた。だが、ルキエルがタリム相手に心の底からいい笑顔を向けるのを見ていると、そういう悪い感情はいつの間にか消えていた。
ルキエルのことは何も知らない。王都の貧民街では、どういう立場だったのか、軍部から情報を提供されることはない。気になって、報告ついでに、そういうことを書いたが、返事はなかった。
だから、猶更、ルキエルのことは気になった。
「ルキエルが仕事をまた始めたって」
「さすがに毎日はやめた、て言ってたぞ」
「もうそろそろ、ユーリもどうだ?」
そして、また、俺に対して、周囲は言ってくるのだ。ルキエルを買え、と。
「どうして、そんなに、俺にルキエルを買わせたいんだ!?」
心底、そこが疑問だ。
「そりゃ、なあ」
「共有したいよな、色々と」
「ユーリだけ、話せないんだよな」
「?」
何が? 本当にわけがわかない。
もう、ルキエルの隠された何かを話したくて仕方がないのだろう。だが、俺は別に、知らなくていいんだ。話すことって、ルキエル以外でいいだろう。
「おーい、ルキエル!!」
なのに、仲間がちょうど食堂にやってきたルキエルを呼び寄せた。余計なことするな!!
俺だけ不機嫌で、他は普通である。そこに、呼び寄せられたルキエルが食事を持ってやってきた。
「こっち座って」
そして、俺の隣りにルキエルを座らせる。もう、狙っているな。
「何か用?」
ルキエルは呼ばれた理由を知りたがった。
「今日は仕事するのか知りたくて」
「ユーリがさ、ルキエルを慰めたいって」
「言ってない!!」
俺は全力で否定するも、仲間が数で押してきた。本当に、こいつら、何やってくれるんだよ!?
対するルキエルは、綺麗な作法で食事をとりつつ、俺を見る。
完全に、俺の体躯を値踏みされた。そして、俺の下半身を獲物のように見下ろす。こいつ、どうやってでも、俺と閨事するつもりだ。
「俺はやりたくない」
いい機会だから、俺ははっきりと拒否してやる。そう言ってやると、周囲が、俺のことを裏切者、みたいに見てきた。どうして、そうなるんだ!?
「まあ、金払うのはユーリだから、俺からは強要出来ないけどな。ちょっと、味見はしてみたいな」
「そういうことをここで言うんじゃない!?」
「えー、いいじゃん。俺はそういうことが好きなんだし、貧民だし、かまわないと思うんだよね。けど、俺はまあまあ高いからなー」
「っ!?」
「金の使い道は、ユーリが決める事だからな。けど、もうちょっと、肩の力、抜いたほうがいいと思うよ。あんたの素振りは、ちょっと大振りすぎ」
「知った口をきくな!?」
「確かに、そうだ」
涼しい顔をして、ルキエルは誰よりもはやく食事を終わらせて、席を立った。
そして、残された俺は、全員から責めるように見られた。
「せっかく、ルキエルのほうから、買いやすいように声かけてくれたのに」
「っ!?」
ルキエルの心遣いに、俺は気づいていなかった。意固地になって、男娼を買う、という行為を拒んでいたにすぎない。
ルキエルという男娼を買う言い訳はいくらだってあった。味見だったり、興味本位だったり、潜入調査のため、とか色々だ。
俺と同じように潜入調査している奴らは皆、そうやって言い訳をして、ルキエルを買ったんだ。結果、大した情報はなかった、なんて軍部に報告したのだろう。
それが、俺には出来なかった。生真面目すぎたのだ。
その夜、結局、部屋に居られなくて、外に出て、ルキエルが男娼として立つ店の近くに行った。
貧民街にはたくさんの娼館がある。その中で、ルキエルが場所を借りている娼館は、まあまあ、いい部類だ。酷い所だと、本当に傷物にするような行為をさせられることだってある。
貧民の命は安い。こんな金額で売買されるのか、と驚くほどだ。五体満足で大人になるのだって、奇跡だという。何かしら、傷はあり、どこか欠けていたりするのだ。
ルキエルはどうなのか? ともかく、買えばわかる、と言われるだけだ。
おかしな話だ。そこら辺の娼婦については、皆、赤裸々に話してくれる。あそこの娼館のだれだれはこうだった、とか、可愛いこもいた、とか、そういうことは普通に話してくれるのだ。俺だって、普通に話す。
だけど、ルキエルのことは、皆、口を固く閉ざすのだ。経験した者同士では話すが、そうでない者には口は閉ざされる。
このままではまずい。頭の片隅ではわかっている。潜入調査で一番大事なのは、同調だ。ルキエルという男娼を面白半分に買うことは、同調となる。
こういう潜入調査をするのは、だいたい、平民出身だ。貴族出身は、たぶん、俺くらいだろう。皆、俺が貴族出身だということを忘れている感じだ。もう、潜入調査の大先輩だしな。だから、ここまで俺が拒むのが、不思議に思っているだろう。
貴族出身だから、というのは、実は言い訳でしかないのだ。現実に、軍神コクーンの元には、元は貴族だった騎士や兵士だって集まっているのだ。彼らだって、面白半分にルキエルという男娼を買った。
覚悟を決めて、俺は娼館に入った。
「あれ、ユーリ、どうした? 今日はもう終わりだけど」
「終わりって、もう!?」
お茶を一服していたルキエルが、入ってきた俺にそう言ってきた。
せっかく思い切って来たというのに、まさか、店じまいとなっているなんて、思ってもいなくて、俺は恥ずかしくなった。
俺の表情とか見て、ルキエルのほうが色々と察してくれた。俺の腕を引っ張って、椅子に座らせてくれた。
「また、誰かに言われたんだろう。もう、買ったことにして、帰っちゃえばいいって」
「ルキエルは、別の男に買われたんだろう。その事実は変わらない」
「俺の常連は、表向きでは黙ってる。あんたが買った、と言ったって、苦情なんか訴えないって」
悪戯っ子みたいに笑っていうルキエル。
わかっていた。ルキエルは、本当は、いい奴だ。貧民生まれ、貧民育ちだが、とても優しい。それなりに過ごして、見ていれば、それはわかる。
そういう、ルキエルの優しさや思いやりを受けて、俺は色々と吹っ切れた。
「いや、買おう。明日、また来る」
「出直すのか?」
「もう、店じまいだろう?」
「………たまには、二人でもいっか」
ルキエルは、下から俺に口づけしてきた。
あまりの唐突に避けることも、止めることも出来なかった。
最初は、軽くだ。それを何度もして、俺の口が緩んできた隙をついて、深く口づけしてきた。俺の口内に、ルキエルの舌が挿入される。
初めてではない。だが、驚いた。ルキエルの口づけは、女を相手にしているようだったからだ。つい、答えて、俺もルキエルに深く口づけしてしまう。
離れると、ルキエルは上気した顔を俺に向ける。
「まあまあ、経験はあるんだな。あとは、下半身はどうかな?」
「こら、こんなトコでっ」
「しっかり立ってるな。なら、俺相手でも出来るな」
まだ、金すら払っていないというのに、ルキエルは俺の下半身をつかんで、色々と確かめた。
貧民が身売りする娼館だ。店先といえども、こういうことを咎められることはない。恥ずかしいのは俺だけだ。娼婦たちは男たちに買われて部屋に入っているし、店主は気を利かせてか、いなくなっていた。
ルキエルは衝動が動いたのか、俺の膝に座り、また、口づけしてきた。体をこれでもか、と密着してくる。
「あは、もう、破裂しそうなほど、立ってるな」
嬉しそうに笑って、俺が興奮して立たせている一物をルキエルは下半身で感じていた。
「俺の中には、まだ、別の男のが入っているから、今日は、部屋代だけでいいよ」
「い、いや、しっかり払おう。払いたい」
「今の俺は、綺麗じゃない」
「黙ってろ」
妙な興奮を覚えた俺は、ルキエルを腕に抱きあげて、また、口づけする。
ルキエルも何か興奮するものがあったのだろう。俺の腕の中で、執拗に俺に口づけをもとめた。
隠れていた店主が、空き部屋のドアをわざわざ開けてくれた。俺はそこにルキエルを連れ込んだ。
俺だって綺麗ではない。本来は、身綺麗になってからするものだろう。だが、俺は興奮して、それどころではなくなっていた。ルキエルをベッドに下ろすと、圧し掛かって、執拗に口づけした。
ルキエルは、俺の口づけを受けながら、器用に服を脱いだ。ついでなのか、俺の服も緩めたりしてくれた。俺はそこまで気が回っていなかった。気づいたら、一物の圧迫感から解放されていた。
ルキエルは俺の一物をつかんで笑う。
「いいもの持っているな」
「っ!?」
俺は自らの下半身を見るついでに、ルキエルの下半身を見て、驚いた。あまりに驚いて、俺の一物は柔らかくなった。
「なっ、ユーリ、ここまできて、それはないだろう!?」
「お前のそれは、なんだ!?」
俺の一物を誉めるルキエルのは剛直だ。とんでもないのを持っているよ、こいつ!!!
これでわかった。何故、誰も彼も、ルキエルの一夜を話さないか。話せないはずだ。具合はどうだった、という話になると、続いて、ルキエルの下半身だ。誰だって気になる。
俺だって言えない。今、下で女のように喘いでいる男の下半身が、とんでもないものだなんて。こんな剛直に勝てる男を俺は知らない。
ルキエルは不機嫌になって、俺の下から抜け出した。
「俺を興味本位で買う奴らの半分は、ここで終わるんだ」
「だろうな。それを見たら、萎える」
男として負けているのだ。自信喪失する。
だけど、ルキエルは容赦がない。俺を押し倒して、上に座るのだ。
「ま、ちょっと萎えてても、入っちゃえば、すぐに回復するけどな」
「や、やめろっ」
抵抗する暇もない。ルキエルは馴れているから、俺の一物をルキエルの蕾に挿入させる。
ずぶりと入った感触に、俺の一物はすぐに気持ちよくなる。根本までルキエルの中に挿入され、そこで、ルキエルは動きを止める。恍惚に笑った。
「あ、大きくなってる。ああ」
どんどんと太く、大きくなるのを感じて、ルキエルは喜んでいた。その姿に、俺は興奮した。だが、どうすればわからない。
ルキエルは俺の両手をルキエルの腰に添えさせた。
「俺の腰、動かしてみて」
「こ、こう?」
「ああっ! そう!!」
俺が気持ち良い、というふに動かしてみれば、ルキエルも喜んだ。
ルキエルは興奮が呆気なく絶頂して、白濁を俺の腹から胸へと吐き出した。その剛直に、俺はもう、どうでもよくなった。上半身を上げ、ルキエルの腰を動かすだけでなく、俺自身の腰も動かした。
「やぁ、激しいぃ! だ、だめぇ、またぁ、きちゃうぅ」
「はは、ぐちゃぐちゃだな」
わかる。俺の前にルキエルの中に入った男の白濁で、おかしなものを俺も感じた。
ルキエルはもう、動くに動けない。ルキエルは倒れそうになるから、俺が腰をぐいっとつかんで、支えた。それで、さらに奥を突くこととなった。ルキエルの中が強く俺の一物を締めるほど震えた。
「やあああああーーーーーー!!」
とんでもない絶頂を受けて、ルキエルは悲鳴のような嬌声を上げた。全身をガクガクと痙攣させる。
「やぁ、これ、まず、いぃ」
「何が?」
俺はまだまだ、絶頂していないから、平然としていた。
ルキエルは引きつった笑みを浮かべて、全身を震わせた。どこか悪いのか、と俺は頬を撫でる。
「やぁ、今、どこも、敏感になってるからぁ」
激しく反応するルキエル。
俺はよくわからない。男相手の経験がないのだから、仕方がない。ただ、いつもと様子が違うから、心配になって、つい、抱きしめた。
「んぁあああ!!」
また、ルキエルは嬌声を上げる。ただ、抱きしめただけだというのに、その反応に、俺は妙な興奮を覚えた。
ただ、それだけで、俺はルキエルの中に白濁を放った。
「んがぁああああああああーーーーー」
男二人分の白濁だ。それを受けて、ルキエルは悲鳴のような声をあげ、倒れた。もう、俺はルキエルを支えられなかった。どうすればいいのか、わからなかったからだ。
「あ、す、すまん!!」
俺は慌ててルキエルから一物を抜いた。それだけでも、ルキエルは悶絶した。
「やぁ、もう」
甘い声を上げるルキエル。綺麗な男だ。男だとわかっていても、ルキエルには、女に対するような感情を持ってしまう。
ベッドに倒れたルキエルは呆然と座っているだけの俺の手をつかんで、子どものように笑った。
「ごめん、ちょっと休憩」
「もう、ここまででいい。休め」
「けど、ユーリ、まだ、満足してないだろう」
ルキエルは俺の一物を握った。確かに、まだ、興奮している。
驚いた。さっき、ルキエルの中に白濁を放ったというのに、俺の一物は立っている事実に、驚いてしまう。
驚いたからだろう。すぐに萎えた。
ルキエルは、俺の一物が萎えた瞬間を見て、残念そうな顔をする。
「ユーリ、無理矢理、続けても良かったのにぃ」
「ルキエルが苦しそうだったから」
「二人目だからな。俺、体力がないんだよ。けど、一方的な蹂躙は馴れてる。好きなようにしてくれても良かったんだよ」
「俺には出来ない」
俺はルキエルの頭を撫でた。まだ、何か感じるのか、ルキエルは少し声をあげる。
「俺は、詰まらない男なんだ。単調で、一つのことしか出来ない。だから、すぐに飽きられる」
過去、付き合っていた女たちがそうだった。
生真面目というが、詰まらない男なんだ。今日だって、ルキエルが導いてくれたから、どうにかルキエルを喜ばせられただけだ。実際は、女を喜ばせたことがない。一生懸命、女の上に乗って、一方的に押し付けているだけだった。
「ちょっと、経験してみたいな。その、詰まらない男の閨事を」
「もう、お互い、元気がない」
「俺は受けるだけだ。元気云々は関係ない。ユーリが元気になればいいんだよ。ほら、やろう」
期待に満ちた目で見てくるルキエル。
ルキエルは、本当に不思議な男だ。男だとわかっているが、見ていると、どうしても、惹かれてしまう。
そうやって、見上げられると、俺はつい、ルキエルに口づけして、上に圧し掛かってしまった。
「よし、これで、解禁だ!!」
「よっしゃーーーー!!!」
「もう、言いたくて仕方なかったんだ」
「遅いよ、ユーリ!!」
次の日には、俺の元に仲間たちが押し寄せてきた。
「どうだった?」
「まあ、良かったな」
「ルキエルのあれ、見たんだよな?」
「見た見た。見て、萎えた」
「お前は萎えた側か!!」
こうして、意見交換会になっていた。
もちろん、その場にはルキエルも、女たちもいない。男だけが集まって、どうだったか、なんて下世話なことを話しているのだ。
「しかし、ルキエルは、立派な男娼だな。俺が萎えても、しっかり最後まで立たせるんだからな」
「容赦ないよな、ルキエル。あんなに綺麗な顔で、体だって華奢だってのにな」
「そうだな」
男娼を汚らわしい、なんて俺は思っていた。だが、実際にルキエルを買って、考えを変えた。
ついでに、色々と吹っ切れた。
ルキエルは軍神コクーンの孫娘ヘレンに引っ張られて、訓練場にやってきた。昨日、あれだけ乱れ、俺の蹂躙を受けて、意識まで飛ばしたというのに、朝のルキエルは平然としている。
情けない顔をするルキエルに、コクーンから寄っていく。
「ルキエル、ちょっとヘレンと手合わせしてほしい」
とんでもないことをいうコクーン。どう見たって、ルキエルがヘレンに叩きのめされるだろう。言い方が間違っている。
「え、体術? 剣術?」
ルキエルが聞き返した。どっちでも、ルキエルは吹き飛ばされるな。その場の誰もが、同じことを思った。
「お祖父様、ルキエルにわたくしの相手は無理です」
ヘレンはルキエルのことを蔑むように見ていう。ヘレンは、男と付き合ったルキエルのことを毛皮らしい何かと見ていた。貧民になったとはいえ、やはり、元は貴族の子女だ。
ルキエルは困ったように笑うだけだ。
「まずは、剣術かな。ヘレンお嬢さん、ほら、木剣でやろう。真剣じゃ、怪我しちゃうから」
「本気でいきます」
ヘレンの気迫は物凄いものだ。殺気まで漲っている。対するルキエルは、木剣を両手で握って、切っ先を地面に向けて構えた。
構えだけ見ると、ルキエルは何か修練をした経験があるように見える。だが、普段の素振りからは、とても、実力があるようには見えない。
「ヘレンお嬢さんからどうぞ。俺からは動かないから」
「遠慮なくいきます!!」
軍神コクーンの孫娘だけあって、一歩が違う。幼い頃からコクーンの手ほどきを受けているのだ。技術が違う。
対するルキエルは向かってくるヘレンを無表情に見ていた。いつの間にか、木剣を持ち上げて、ヘレンがふるう木剣に当てる。
飛んだ木剣は、ヘレンのものだった。いい音をたてて木剣が手から離れるのをヘレンは驚いて
いた。そこにルキエルは容赦なく、ヘレンの足をひっかけて転ばせた。ヘレンは反射で受け身をするが、ルキエルは軽い身のこなしでヘレンの上に圧し掛かり、ヘレンの首を素手で掴んだ。
「動くな」
冷たい声でルキエルはいう。ルキエルが持つ威圧に、ヘレンは動けなくなった。
「そこまで!!」
そこに、コクーンの声が響き渡った。
すぐに、ルキエルはヘレンの上から離れた。
「ご、ごめん! コクーン爺さんが手を抜いたら、ここ追い出すって脅すから!!」
「っ!?」
ルキエル、言い方が悪い。それを聞いたヘレンは悔しくて、その場を走って逃げだした。
「ヘレンお嬢さん!!」
さらに、ルキエル、追い詰めるようにヘレンを追いかけていくのだ。
それから、いつもの通り、修練となったのだが、しばらくして戻ってきたルキエルは、左の頬を真っ赤に腫らしていた。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿