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破滅-三人目
捨てられた技術
皇帝アイオーン様の前で、くだらない訴えをした侯爵家。何が反乱分子のいる貧民街を掃討する、だ。
失敗したくせに、侯爵は、帝国の力を使おうとした。たかが侯爵家のくだらない自尊心のために、大切な帝国の力を使わせるのを私が許すわけがない。
私はルキエルから送られてきた、侯爵家次男ミリアムの首と、帝国の所有物であるはずの魔法使いの首を侯爵に投げつけてやった。
「貴様は、帝国の所有物である魔法使いを私の許可なく内戦に使ってくれたな!!」
「か、勝手に、魔法使いがしたことで」
「使った事実は変わらないだろう!! 私は、皇帝に泥をかけるような真似をする者たちを絶対に許さない、と決めている。アイオーン様、妖精の呪いの刑の発動を許可してください」
「そ、そんなっ!?」
妖精の呪いの刑と言われて、侯爵は真っ青になった。
つい一年前、私は数百年ぶりと言われる妖精の呪いの刑を発動させた。もう、人の記憶にも残っていない刑罰だが、その凄惨さは、目に見えるものだ。
刑罰とは、本来、捕縛し、与えるものである。しかし、妖精の呪いの刑には、捕縛はない。妖精の力によって対象者に呪いをかけるのだ。どこまで逃げたって、妖精は見つけ出し、呪いをかける。捕縛なんて労力、必要ないのだ。
妖精の呪いの刑は、まず、罪状を決め、対象者に呪いをかけるのだ。無罪であれば、呪いは不発となる。しかし、有罪であれば、対象者を含む一族郎党、呪いによって滅び去ることとなる。
有罪無罪を決めるのは神だ。呪いをかけた妖精憑きでも、妖精でもない。だから、この刑、不発になることもある。
だけど、だいたい、有罪だ。罪状を公開し、読み上げ、妖精の呪いの刑を対象者にかけるのだが、証拠も何もないが、有罪となる。神の目は誤魔化せないということだ。
皇帝アイオーン様は侯爵に厳しい目を向ける。
「無罪であれば、お前は助かる。許可しよう」
「ありがとうございます」
「ひぃいいーーーーー!!!」
侯爵は一目散に、その場を逃げ出した。可哀想に、侯爵家次男ミリアムの生首は捨てられたまま、放置された。
情けない侯爵を私は笑顔で見送った。
「では、罪状は、帝国所有の魔法使いを勝手に使用した罪としましょう」
口ではどれだけ、魔法使いが勝手にやった、と訴えたって、神の目は誤魔化せないのだ。
音も何もなく、妖精の呪いの刑は発動した。側で見ているアイオーン様は、不思議そうに私を見る。
「終わった?」
「はい、終わりです」
「もっと派手かと思ってたんだけど」
「経過は派手ですよ」
始まりは地味というか、見てもわからないのだ。刑罰を与えられた侯爵だって、領地に逃げ戻って、首を傾げているだろう。身体的変化はない。
だけど、この刑罰の恐ろしいのは、生きたまま、苦しめられるのだ。
「アイオーン様、軍を動かす許可をください」
「軍を動かすって、侯爵を軍で潰すのか!? 妖精の呪いの刑を発動したんだから、そのまま放置でいいだろう」
「あの侯爵家、大昔、帝国が捨てた技術で、家臣たちに隷属化の契約を施しているんです。ああいうのは、自暴自棄になると、道連れを作ろうとします」
「大変なことじゃないか!? よし、すぐに軍を出そう。私も出る」
「いえいえ、アイオーン様はいりません」
「しかし、こういう時は、皇帝が出るものだろう」
内戦でも戦争でも、皇帝は絶対に行かないといけない。そうして、皇帝の権威を高めるのだ。
嫌々ながら皇帝となったアイオーン様だが、その心構えは立派だ。
「いえ、私が行くので、内戦にすらなりませんよ」
「………消し炭はやめてくれ」
「もっと、すごい事となります。楽しみですね」
想像するだけで、私は楽しくなる。弱者のくせに、強者ぶる侯爵家。それを踏みにじられる様を私は想像して、笑った。
帝国の軍勢を連れて侯爵家が所有する領地に行けば、すでに、臨戦態勢となっていた。帝国の旗を掲げてやってきたというのに、騎士たち、兵士たちは逃げたりしない。無表情に、武器を抜き放つ。
「侯爵、出てきなさい。筆頭魔法使いハガルが来ました」
魔法を使って、領地内に響き渡るほどの音を出して呼び掛けてやる。
私が来たということを合図にしたのだろう。騎士たち、兵士たちが私に襲い掛かってきた。帝国側の軍勢が動き出そうとするが、私は侯爵側の軍勢を魔法によって、動けなくしてしまう。
「彼らを捕縛しなさい。私は侯爵に会ってきます」
「お一人で行くのは」
「捕縛を優先してください。犠牲は最小限にしたいので」
誰か私の側につかせようとするが、私の命令に、軍部の者たちは、仕方なく、倒れて動けなくなる侯爵家側の勢力の捕縛に動いた。
一貴族が持つにしては、その勢力は多い。いくら帝国の軍勢を連れて来た、といっても、その数が違い過ぎる。私は魔法でどんどんと侯爵側の軍勢を動けなくしてくが、どんどんと出てくる。その軍勢の中には、服を着ただけの女まで混ざっていた。
見なくてもわかる。私に迫る者たち全て、侯爵家の隷属化の契約を施されている。神を介した契約であるため、抵抗が一切出来ない操り人形だ。それを私は魔法でどんどんと動けなくしていく。
帝国の軍勢が一生懸命、捕縛をしているが、まず、その道具が足りないのだ。仕方なく、近隣の侯爵家が所有する領地民たちに協力をしてもらい、その場限りの道具を入手と、大変そうだ。
貴族たち平民たちは、騎士や兵士たちを無駄飯ぐらい、みたいに見ることがある。戦争もなくなって、平和になったんだから、武力なんて無駄だ、なんていうのだ。
わかっていない。人と人との諍いは永遠になくならない。侯爵家を見てみろ。自らの欲望のために、貧民街を強襲して返り討ちとなった。その敗北に嘲笑われ、どうにか帝国の力を使おうとして、私の怒りを買ったのだ。
そして、侯爵家は奴隷化した者たちを集めて、今、帝国の敵となっている。
魔法使いを使えば、という者たちもいる。魔法使いであれば、簡単に鎮圧出来るだろう。しかし、それには犠牲が大きい。力技だから、とんでもない死傷者も出る。領地だって無事ではない。魔法によって、荒らされて、大変な損害となるだろう。領主の首はすげ替えればいいが、失った命や実りは戻ってこない。魔法使いを戦争に使うのは、実は、割が合わないのだ。
だから、私は騎士たち、兵士たちを減らさせなかった。一時期、軍事力は減らされた。貴族たちの抵抗が強く、削減せざるを得なかったのだ。だが、私が筆頭魔法使いになってしばらくして、私は口うるさい貴族どもの不祥事を表沙汰にして、一族郎党、滅ぼしてやった。
まず、私に逆らう愚かさを帝国中に知らしめてやった。
続いては、今、軍事力の重要性を表に出している。侯爵は、丁度いい人身御供だった。
侯爵が行った奴隷化の契約は、とんでもないことだった。人の心を捻じ曲げ、死さえ操る行為を見せてやった。どうせ、こんなバカなことをしている貴族は、侯爵家だけではない。帝国中、探せば、それなりにいるだろう。この後ろ暗いが、帝国が捨てた技術を使っているのは、貴族だけでなく、平民、貧民にもいるだろう。
だから、今、見せしめに、侯爵家を筆頭魔法使いと軍部が一緒になって、制圧するのだ。
次々と捕縛されていく侯爵家の軍勢。私がやっていることは地味だ。魔法で動けなくしているだけだ。それを帝国の軍勢が捕縛しているのだ。
最初は地味なことだ。騎士たち、兵士たちだって、首を傾げていただろう。だが、侯爵家の軍勢がどんどんと制圧され、その数を増やしていくと、侯爵家が所有する領地民たちの目に入る。
帝国の軍事力の恐ろしさを見ることとなるのだ。
帝国は、強者こそ正義だ。捕縛されている侯爵側の軍勢は、見るからに負けているのだから、悪だろう。
さすがの侯爵も、領地民まで奴隷化の契約を施さなかった。領地民たちは、帝国に従え、と勝手に味方していく。こうして、帝国側の軍勢は増えていき、侯爵側の軍勢はどんどんと減らされていった。
私は侯爵家が所有する城の前に立って、待っていた。しばらくして、騎士がやってきた。
「メッサ、待っていましたよ」
「待たなくていいよ!!」
悲鳴のような声をあげる騎士メッサ。一平民として初めて会った時は泣いてたというのに、今もまた、情けない顔をして、泣きそうだ。変わらないな、この男は。
「なんで俺が呼ばれるんだよ!?」
「あなたは私に恩があるでしょう。裏切りません」
「そんなぁ!!」
情けない顔をして肩を落とすメッサ。まあ、私は裏切らせませんけど。メッサは使いやすい男なので、妖精を使って、わざわざ呼び寄せてやりました。見ていて、面白いし。
「それで、俺は何すればいいんですか?」
「あなたは、騎士ユーリに世話になったそうですね」
「そうですね。ユーリのお陰で、騎士の筆記試験に合格したようなものですから」
「ユーリは、侯爵によって、奴隷化の契約を施されています。今のままでは、ユーリは侯爵の言いなりです」
「そんな!? じゃあ、侯爵を殺せば」
「そんな必要、ありませんよ。それに、殺してしまったら、おしまいでしょう。こんなに多くの者たちを奴隷にした侯爵家をただ、殺して終わりだなんて、気が晴れないでしょうね」
「だが、奴隷化の契約は解除出来ないから、こうやって、捕縛するしかないんだろう? どうせ、ハガル様は侯爵の一族を滅ぼす妖精の呪いの刑を執行したんだから、滅ぶまで、奴隷化された者たちを大人しく捕縛させておくしかない」
「わかっていませんね。どうして、帝国は、この技術を捨てたのか。それを今、侯爵を使って、帝国中に知らしめてやるのですよ。ほら、そこにいる女を連れていきなさい。女は力がないから、抵抗も弱いですよ」
「はいはい」
メッサ、すっかり私に対して、敬意とかそういうものがなくなっています。別にいいですけどね。
メッサは暴れて抵抗する拘束された女を肩に持ち上げて、私の後ろを歩く。ちょっと、そのバカ力、羨ましいな。
まだ、城の外の捕縛が終わっていないので、城の中は大変なこととなっていた。どんどんと私に向かってきますが、全て、魔法で動けなくしてやります。外が終われば、その内、帝国の軍勢が捕縛してくれるでしょう。
こうして、抵抗を減らしていき、妖精に導かれるままに、私は侯爵が一族郎党を連れて閉じこもっている広間に到達した。
数日で、すっかり様変わりした侯爵。私は、大事なことを思い出した。私は今回、たった一つの荷物を背負っていた。私は背負っていた袋から中身を出して、侯爵の足元に転がしてやる。
「婚約者を手に入れるために、貧民街に内戦を仕掛けるための軍勢まで与えた可愛い息子を忘れていますよ」
転がしたのは、侯爵家次男ミリアムの生首だ。腐敗が進んでいるが、ミリアムであった名残はある。
ミリアムの馴れの果てに、悲鳴が上がる。だが、侯爵はミリアムの生首を踏みしめた。
「勝てる武力を与えてやったというのに、惨敗したあげく、我が家を帝国の敵にしおって!!」
侯爵は死んだ息子に怒りをぶつけた。
「何を言っているのですか。この企みを考えたのは、侯爵、あなたでしょう」
「役立たずな息子が困っているから、仕方なくだ!! 全て、この息子が悪い。我々は、ただ、仕方なくだ!!!」
「それで、いつから考えていたのですか?」
「つい最近だ!! 我々は悪くない。さあ、刑罰を解除してもらおう!!!」
全てを死んだ息子のせいにする侯爵に私は笑ってしまう。
「あははは!! 何が最近だ。随分と昔から、海の貧民街に貴様の手勢を潜り込ませていたな。軍部にまで介入しておいて」
「っ!?」
言葉に詰まる侯爵。
「どちらにしても、呪いが発動したのだから、有罪だ。神は見ているのだよ」
侯爵が否定しても、神は間違えない。
一族に及ぶ刑罰だ。もう、侯爵から出た者たちだっている。侯爵は一族から、恨みの目を向けられる。
しかし、侯爵は往生際が悪い。
「ワシらが持つ奴隷は、ここにいるだけだと思うな!! 領地外にもいる。声をあげ、命令書を送れば、帝国中のあちこちで、反乱が起こるぞ!! あはははははは」
狂ったように笑う侯爵。私はそんな侯爵を冷たく見返す。
「メッサ、その女の服を脱がせてください」
「ここで!?」
「背中だけ見せるようにしてくれればいいですよ。そうそう。これが契約紋ですか」
私が女の体に力を流してやると、それに反応して、背中に施された契約紋が浮かび上がった。
儀式といったって、決まった契約紋を特殊なインクで背中に描き、魔法使いによって発動させているだけだ。このインク、契約されると、人の目に見えなくなるが、こうやって、妖精憑きが力を流してやると、一時的に見えるようになるのだ。
「解けまい。それは、筆頭魔法使いがやる契約紋と同じものだ!!」
「儀式は違いますけどね。筆頭魔法使いの契約紋は焼き鏝です。火傷ですよ」
「野蛮な方法だな!!」
「お前たちが使う技術には、決定的な欠点があったから、帝国は捨てたんです」
「負け惜しみを」
「私はね、背中の契約紋だって消すことが出来る妖精憑きですよ。こんな契約紋、簡単です」
私が女の背中を撫でてやると、それにあわせて、インクで描かれた契約紋が消えていった。そうして、背中全体を撫でてやれば、女の契約紋はなくなった。
一見、見えなくなったように見る。しかし、女はあれほど抵抗していたというのに、ぴたりと止まった。驚いたように、私とメッサを見上げた。
「メッサ、拘束を解いてあげてください」
「しかし」
「女にこれ以上、恥をかかせてはいけません。まだ、嫁入り前でしょう。あなたの背中を晒させてしまって、すみません。私もメッサも、口外はしませんよ」
「あ、ああ、あああああああああーーーーーーー!!!!」
女は私の言葉など聞いていない。蹲り、大声で泣きだした。
一体、どうなっているのかわからないメッサ。しかし、女がまた、私に襲い掛かるかもしれない、と警戒している。
私は女の服を正してやり、手をとって、立たせた。
「辛かったですね。ですが、もう、大丈夫ですよ。何かしたいことはありますか?」
「ううう、侯爵に、復讐してやりたい!! 私の体を好き勝手してぇ」
「女性にそんなことをするとは、紳士とはあるまじき行いですね。侯爵、契約を使って、女の貞操を奪ったのですか」
「うるさい!! たかが奴隷が!!!」
「女には優しくするものですよ。わかっていませんね。女は怒らせると本当に恐ろしい。だから、私は女には優しくするようにしています。だいたい、女がいなければ、お前も私も産まれることすらないのですよ。女には、感謝するものです」
「黙れ!!!」
さらに私が言い返そうとする前に、自由になった女は広間にある物をつかむなり、侯爵になげつけた。ほら、女は怒らせると恐ろしい。
「このクソジジイ!! 絶対に許さない!!! ハガル様、どうか、私の家族も自由にしてください!!!」
「いいですよ。ちょうど、魔法使いの練習台にいいでしょう」
「ハガル様がやるのでは」
不安そうに見あげてくる女。私は女を優しく抱きしめてやる。
「心配いりませんよ。それなりの妖精憑きであれば、簡単に消せてしまうから、帝国はあの技術を捨てたのですよ」
私は侯爵を嘲笑った。
「服についた汚れと同じですよ。洗えば綺麗になります。いくら、契約紋に定着を施したとしても、妖精憑きは染められた色すら取り除けるのですよ。同じです」
「そ、そんなっ」
こんな簡単な方法で、特殊なインクで施された契約紋が解除できるなど、侯爵家は誰も、思ってもいなかったのだろう。
「メッサ、すぐに伝令を。魔法使いをこちらに呼び寄せてください。魔道具の使用許可も出します。すぐです」
「わかった!!」
メッサは伝令用の魔道具を使って、帝国と連絡をとった。
その間に、私は動けなくなった侯爵側の手勢の契約をどんどんと解いていってやる。わざわざ、肌を晒す必要なんてない。女には、侯爵家を絶望に落とすために、わざと、背中を晒させたのだ。女を選んだのは、抵抗の力が弱いからにすぎない。
肌を人前で晒されたこと、女は怒ることはなかった。同じく奴隷化された者たちが解放されて、泣いて、喜んで、そして、侯爵家に物を投げて、男は自らの体を使って、復讐を始めた。
「や、やめろぉ!! 我々は貴族だぞ!!!」
「この下種が!! 俺の妻に手を出しておいて!!!」
「きゃああああ!! 何するのよ!!!!」
「侯爵の子を身ごもったと、私の妹はあんたに拷問死されたのよ。侯爵が無理矢理やったというのに、妹が悪いと!!!」
奴隷化の契約を悪用して、侯爵家は散々なことをしていた。
中には、侯爵家が手をつけた者だっている。妖精の呪いの刑によって、一族とされて、もう、死ぬしかない者は、奴隷化の契約が解けるなり、侯爵家の男を蹴った。
「お前のせいで、俺は、ずっと苦しめられた。お前は俺のことを子じゃないといった。だが、俺を育てた父親も、俺を子じゃない、と殴ってくれた。俺はあんたの子だと言ったのに、俺は奴隷化の儀式までされた。見てみろ。俺はお前たちの一族として、呪いが発動した!! もう、水すら飲めない」
「わ、悪かった。だから」
「俺はお前の子どもじゃないんだろう? そう言って、俺を奴隷化したよな!!」
「父親を殴るのか!?」
「俺の父親は、育ててくれた男だ!!!」
奴隷化の犠牲者となった男は、子どもの頃からずっと、酷い扱いだったのだろう。その恨みは深い。呪いによって死ぬしかないから、その恨みを侯爵家を殴って晴らすしかないのだ。男は泣いて、父親を殴った。
私は妖精を使って、城中にいる奴隷化の契約された者たちを解放した。私がわざわざ行く必要なんてないのだ。最初から、城からやってやればいい。
ただ、見せしめには必要なんだ。こうやって、一度、爆発させて、制圧させて、帝国の武力を見せつけるのだ。
軍部と魔法使いの共闘を見た民衆たちは、勝手に噂するだろう。帝国は人が多すぎるのだ。貴族がどんなに偉ぶったって、平民の数のほうが遥かに多いのだ。何もしなくても、平民たちが勝手に噂を流してくれる。
侯爵家は、好き勝手やり過ぎた。契約を解除された家臣たちによって、飢え死にするまで、苦痛を受け続けることとなった。
侯爵家の所業は大々的に公表された。そして、使った技術の欠点を表沙汰にしてやった。もう、帝国が捨てた技術で悪さをる者たちはいなくなっただろう。
失敗したくせに、侯爵は、帝国の力を使おうとした。たかが侯爵家のくだらない自尊心のために、大切な帝国の力を使わせるのを私が許すわけがない。
私はルキエルから送られてきた、侯爵家次男ミリアムの首と、帝国の所有物であるはずの魔法使いの首を侯爵に投げつけてやった。
「貴様は、帝国の所有物である魔法使いを私の許可なく内戦に使ってくれたな!!」
「か、勝手に、魔法使いがしたことで」
「使った事実は変わらないだろう!! 私は、皇帝に泥をかけるような真似をする者たちを絶対に許さない、と決めている。アイオーン様、妖精の呪いの刑の発動を許可してください」
「そ、そんなっ!?」
妖精の呪いの刑と言われて、侯爵は真っ青になった。
つい一年前、私は数百年ぶりと言われる妖精の呪いの刑を発動させた。もう、人の記憶にも残っていない刑罰だが、その凄惨さは、目に見えるものだ。
刑罰とは、本来、捕縛し、与えるものである。しかし、妖精の呪いの刑には、捕縛はない。妖精の力によって対象者に呪いをかけるのだ。どこまで逃げたって、妖精は見つけ出し、呪いをかける。捕縛なんて労力、必要ないのだ。
妖精の呪いの刑は、まず、罪状を決め、対象者に呪いをかけるのだ。無罪であれば、呪いは不発となる。しかし、有罪であれば、対象者を含む一族郎党、呪いによって滅び去ることとなる。
有罪無罪を決めるのは神だ。呪いをかけた妖精憑きでも、妖精でもない。だから、この刑、不発になることもある。
だけど、だいたい、有罪だ。罪状を公開し、読み上げ、妖精の呪いの刑を対象者にかけるのだが、証拠も何もないが、有罪となる。神の目は誤魔化せないということだ。
皇帝アイオーン様は侯爵に厳しい目を向ける。
「無罪であれば、お前は助かる。許可しよう」
「ありがとうございます」
「ひぃいいーーーーー!!!」
侯爵は一目散に、その場を逃げ出した。可哀想に、侯爵家次男ミリアムの生首は捨てられたまま、放置された。
情けない侯爵を私は笑顔で見送った。
「では、罪状は、帝国所有の魔法使いを勝手に使用した罪としましょう」
口ではどれだけ、魔法使いが勝手にやった、と訴えたって、神の目は誤魔化せないのだ。
音も何もなく、妖精の呪いの刑は発動した。側で見ているアイオーン様は、不思議そうに私を見る。
「終わった?」
「はい、終わりです」
「もっと派手かと思ってたんだけど」
「経過は派手ですよ」
始まりは地味というか、見てもわからないのだ。刑罰を与えられた侯爵だって、領地に逃げ戻って、首を傾げているだろう。身体的変化はない。
だけど、この刑罰の恐ろしいのは、生きたまま、苦しめられるのだ。
「アイオーン様、軍を動かす許可をください」
「軍を動かすって、侯爵を軍で潰すのか!? 妖精の呪いの刑を発動したんだから、そのまま放置でいいだろう」
「あの侯爵家、大昔、帝国が捨てた技術で、家臣たちに隷属化の契約を施しているんです。ああいうのは、自暴自棄になると、道連れを作ろうとします」
「大変なことじゃないか!? よし、すぐに軍を出そう。私も出る」
「いえいえ、アイオーン様はいりません」
「しかし、こういう時は、皇帝が出るものだろう」
内戦でも戦争でも、皇帝は絶対に行かないといけない。そうして、皇帝の権威を高めるのだ。
嫌々ながら皇帝となったアイオーン様だが、その心構えは立派だ。
「いえ、私が行くので、内戦にすらなりませんよ」
「………消し炭はやめてくれ」
「もっと、すごい事となります。楽しみですね」
想像するだけで、私は楽しくなる。弱者のくせに、強者ぶる侯爵家。それを踏みにじられる様を私は想像して、笑った。
帝国の軍勢を連れて侯爵家が所有する領地に行けば、すでに、臨戦態勢となっていた。帝国の旗を掲げてやってきたというのに、騎士たち、兵士たちは逃げたりしない。無表情に、武器を抜き放つ。
「侯爵、出てきなさい。筆頭魔法使いハガルが来ました」
魔法を使って、領地内に響き渡るほどの音を出して呼び掛けてやる。
私が来たということを合図にしたのだろう。騎士たち、兵士たちが私に襲い掛かってきた。帝国側の軍勢が動き出そうとするが、私は侯爵側の軍勢を魔法によって、動けなくしてしまう。
「彼らを捕縛しなさい。私は侯爵に会ってきます」
「お一人で行くのは」
「捕縛を優先してください。犠牲は最小限にしたいので」
誰か私の側につかせようとするが、私の命令に、軍部の者たちは、仕方なく、倒れて動けなくなる侯爵家側の勢力の捕縛に動いた。
一貴族が持つにしては、その勢力は多い。いくら帝国の軍勢を連れて来た、といっても、その数が違い過ぎる。私は魔法でどんどんと侯爵側の軍勢を動けなくしてくが、どんどんと出てくる。その軍勢の中には、服を着ただけの女まで混ざっていた。
見なくてもわかる。私に迫る者たち全て、侯爵家の隷属化の契約を施されている。神を介した契約であるため、抵抗が一切出来ない操り人形だ。それを私は魔法でどんどんと動けなくしていく。
帝国の軍勢が一生懸命、捕縛をしているが、まず、その道具が足りないのだ。仕方なく、近隣の侯爵家が所有する領地民たちに協力をしてもらい、その場限りの道具を入手と、大変そうだ。
貴族たち平民たちは、騎士や兵士たちを無駄飯ぐらい、みたいに見ることがある。戦争もなくなって、平和になったんだから、武力なんて無駄だ、なんていうのだ。
わかっていない。人と人との諍いは永遠になくならない。侯爵家を見てみろ。自らの欲望のために、貧民街を強襲して返り討ちとなった。その敗北に嘲笑われ、どうにか帝国の力を使おうとして、私の怒りを買ったのだ。
そして、侯爵家は奴隷化した者たちを集めて、今、帝国の敵となっている。
魔法使いを使えば、という者たちもいる。魔法使いであれば、簡単に鎮圧出来るだろう。しかし、それには犠牲が大きい。力技だから、とんでもない死傷者も出る。領地だって無事ではない。魔法によって、荒らされて、大変な損害となるだろう。領主の首はすげ替えればいいが、失った命や実りは戻ってこない。魔法使いを戦争に使うのは、実は、割が合わないのだ。
だから、私は騎士たち、兵士たちを減らさせなかった。一時期、軍事力は減らされた。貴族たちの抵抗が強く、削減せざるを得なかったのだ。だが、私が筆頭魔法使いになってしばらくして、私は口うるさい貴族どもの不祥事を表沙汰にして、一族郎党、滅ぼしてやった。
まず、私に逆らう愚かさを帝国中に知らしめてやった。
続いては、今、軍事力の重要性を表に出している。侯爵は、丁度いい人身御供だった。
侯爵が行った奴隷化の契約は、とんでもないことだった。人の心を捻じ曲げ、死さえ操る行為を見せてやった。どうせ、こんなバカなことをしている貴族は、侯爵家だけではない。帝国中、探せば、それなりにいるだろう。この後ろ暗いが、帝国が捨てた技術を使っているのは、貴族だけでなく、平民、貧民にもいるだろう。
だから、今、見せしめに、侯爵家を筆頭魔法使いと軍部が一緒になって、制圧するのだ。
次々と捕縛されていく侯爵家の軍勢。私がやっていることは地味だ。魔法で動けなくしているだけだ。それを帝国の軍勢が捕縛しているのだ。
最初は地味なことだ。騎士たち、兵士たちだって、首を傾げていただろう。だが、侯爵家の軍勢がどんどんと制圧され、その数を増やしていくと、侯爵家が所有する領地民たちの目に入る。
帝国の軍事力の恐ろしさを見ることとなるのだ。
帝国は、強者こそ正義だ。捕縛されている侯爵側の軍勢は、見るからに負けているのだから、悪だろう。
さすがの侯爵も、領地民まで奴隷化の契約を施さなかった。領地民たちは、帝国に従え、と勝手に味方していく。こうして、帝国側の軍勢は増えていき、侯爵側の軍勢はどんどんと減らされていった。
私は侯爵家が所有する城の前に立って、待っていた。しばらくして、騎士がやってきた。
「メッサ、待っていましたよ」
「待たなくていいよ!!」
悲鳴のような声をあげる騎士メッサ。一平民として初めて会った時は泣いてたというのに、今もまた、情けない顔をして、泣きそうだ。変わらないな、この男は。
「なんで俺が呼ばれるんだよ!?」
「あなたは私に恩があるでしょう。裏切りません」
「そんなぁ!!」
情けない顔をして肩を落とすメッサ。まあ、私は裏切らせませんけど。メッサは使いやすい男なので、妖精を使って、わざわざ呼び寄せてやりました。見ていて、面白いし。
「それで、俺は何すればいいんですか?」
「あなたは、騎士ユーリに世話になったそうですね」
「そうですね。ユーリのお陰で、騎士の筆記試験に合格したようなものですから」
「ユーリは、侯爵によって、奴隷化の契約を施されています。今のままでは、ユーリは侯爵の言いなりです」
「そんな!? じゃあ、侯爵を殺せば」
「そんな必要、ありませんよ。それに、殺してしまったら、おしまいでしょう。こんなに多くの者たちを奴隷にした侯爵家をただ、殺して終わりだなんて、気が晴れないでしょうね」
「だが、奴隷化の契約は解除出来ないから、こうやって、捕縛するしかないんだろう? どうせ、ハガル様は侯爵の一族を滅ぼす妖精の呪いの刑を執行したんだから、滅ぶまで、奴隷化された者たちを大人しく捕縛させておくしかない」
「わかっていませんね。どうして、帝国は、この技術を捨てたのか。それを今、侯爵を使って、帝国中に知らしめてやるのですよ。ほら、そこにいる女を連れていきなさい。女は力がないから、抵抗も弱いですよ」
「はいはい」
メッサ、すっかり私に対して、敬意とかそういうものがなくなっています。別にいいですけどね。
メッサは暴れて抵抗する拘束された女を肩に持ち上げて、私の後ろを歩く。ちょっと、そのバカ力、羨ましいな。
まだ、城の外の捕縛が終わっていないので、城の中は大変なこととなっていた。どんどんと私に向かってきますが、全て、魔法で動けなくしてやります。外が終われば、その内、帝国の軍勢が捕縛してくれるでしょう。
こうして、抵抗を減らしていき、妖精に導かれるままに、私は侯爵が一族郎党を連れて閉じこもっている広間に到達した。
数日で、すっかり様変わりした侯爵。私は、大事なことを思い出した。私は今回、たった一つの荷物を背負っていた。私は背負っていた袋から中身を出して、侯爵の足元に転がしてやる。
「婚約者を手に入れるために、貧民街に内戦を仕掛けるための軍勢まで与えた可愛い息子を忘れていますよ」
転がしたのは、侯爵家次男ミリアムの生首だ。腐敗が進んでいるが、ミリアムであった名残はある。
ミリアムの馴れの果てに、悲鳴が上がる。だが、侯爵はミリアムの生首を踏みしめた。
「勝てる武力を与えてやったというのに、惨敗したあげく、我が家を帝国の敵にしおって!!」
侯爵は死んだ息子に怒りをぶつけた。
「何を言っているのですか。この企みを考えたのは、侯爵、あなたでしょう」
「役立たずな息子が困っているから、仕方なくだ!! 全て、この息子が悪い。我々は、ただ、仕方なくだ!!!」
「それで、いつから考えていたのですか?」
「つい最近だ!! 我々は悪くない。さあ、刑罰を解除してもらおう!!!」
全てを死んだ息子のせいにする侯爵に私は笑ってしまう。
「あははは!! 何が最近だ。随分と昔から、海の貧民街に貴様の手勢を潜り込ませていたな。軍部にまで介入しておいて」
「っ!?」
言葉に詰まる侯爵。
「どちらにしても、呪いが発動したのだから、有罪だ。神は見ているのだよ」
侯爵が否定しても、神は間違えない。
一族に及ぶ刑罰だ。もう、侯爵から出た者たちだっている。侯爵は一族から、恨みの目を向けられる。
しかし、侯爵は往生際が悪い。
「ワシらが持つ奴隷は、ここにいるだけだと思うな!! 領地外にもいる。声をあげ、命令書を送れば、帝国中のあちこちで、反乱が起こるぞ!! あはははははは」
狂ったように笑う侯爵。私はそんな侯爵を冷たく見返す。
「メッサ、その女の服を脱がせてください」
「ここで!?」
「背中だけ見せるようにしてくれればいいですよ。そうそう。これが契約紋ですか」
私が女の体に力を流してやると、それに反応して、背中に施された契約紋が浮かび上がった。
儀式といったって、決まった契約紋を特殊なインクで背中に描き、魔法使いによって発動させているだけだ。このインク、契約されると、人の目に見えなくなるが、こうやって、妖精憑きが力を流してやると、一時的に見えるようになるのだ。
「解けまい。それは、筆頭魔法使いがやる契約紋と同じものだ!!」
「儀式は違いますけどね。筆頭魔法使いの契約紋は焼き鏝です。火傷ですよ」
「野蛮な方法だな!!」
「お前たちが使う技術には、決定的な欠点があったから、帝国は捨てたんです」
「負け惜しみを」
「私はね、背中の契約紋だって消すことが出来る妖精憑きですよ。こんな契約紋、簡単です」
私が女の背中を撫でてやると、それにあわせて、インクで描かれた契約紋が消えていった。そうして、背中全体を撫でてやれば、女の契約紋はなくなった。
一見、見えなくなったように見る。しかし、女はあれほど抵抗していたというのに、ぴたりと止まった。驚いたように、私とメッサを見上げた。
「メッサ、拘束を解いてあげてください」
「しかし」
「女にこれ以上、恥をかかせてはいけません。まだ、嫁入り前でしょう。あなたの背中を晒させてしまって、すみません。私もメッサも、口外はしませんよ」
「あ、ああ、あああああああああーーーーーーー!!!!」
女は私の言葉など聞いていない。蹲り、大声で泣きだした。
一体、どうなっているのかわからないメッサ。しかし、女がまた、私に襲い掛かるかもしれない、と警戒している。
私は女の服を正してやり、手をとって、立たせた。
「辛かったですね。ですが、もう、大丈夫ですよ。何かしたいことはありますか?」
「ううう、侯爵に、復讐してやりたい!! 私の体を好き勝手してぇ」
「女性にそんなことをするとは、紳士とはあるまじき行いですね。侯爵、契約を使って、女の貞操を奪ったのですか」
「うるさい!! たかが奴隷が!!!」
「女には優しくするものですよ。わかっていませんね。女は怒らせると本当に恐ろしい。だから、私は女には優しくするようにしています。だいたい、女がいなければ、お前も私も産まれることすらないのですよ。女には、感謝するものです」
「黙れ!!!」
さらに私が言い返そうとする前に、自由になった女は広間にある物をつかむなり、侯爵になげつけた。ほら、女は怒らせると恐ろしい。
「このクソジジイ!! 絶対に許さない!!! ハガル様、どうか、私の家族も自由にしてください!!!」
「いいですよ。ちょうど、魔法使いの練習台にいいでしょう」
「ハガル様がやるのでは」
不安そうに見あげてくる女。私は女を優しく抱きしめてやる。
「心配いりませんよ。それなりの妖精憑きであれば、簡単に消せてしまうから、帝国はあの技術を捨てたのですよ」
私は侯爵を嘲笑った。
「服についた汚れと同じですよ。洗えば綺麗になります。いくら、契約紋に定着を施したとしても、妖精憑きは染められた色すら取り除けるのですよ。同じです」
「そ、そんなっ」
こんな簡単な方法で、特殊なインクで施された契約紋が解除できるなど、侯爵家は誰も、思ってもいなかったのだろう。
「メッサ、すぐに伝令を。魔法使いをこちらに呼び寄せてください。魔道具の使用許可も出します。すぐです」
「わかった!!」
メッサは伝令用の魔道具を使って、帝国と連絡をとった。
その間に、私は動けなくなった侯爵側の手勢の契約をどんどんと解いていってやる。わざわざ、肌を晒す必要なんてない。女には、侯爵家を絶望に落とすために、わざと、背中を晒させたのだ。女を選んだのは、抵抗の力が弱いからにすぎない。
肌を人前で晒されたこと、女は怒ることはなかった。同じく奴隷化された者たちが解放されて、泣いて、喜んで、そして、侯爵家に物を投げて、男は自らの体を使って、復讐を始めた。
「や、やめろぉ!! 我々は貴族だぞ!!!」
「この下種が!! 俺の妻に手を出しておいて!!!」
「きゃああああ!! 何するのよ!!!!」
「侯爵の子を身ごもったと、私の妹はあんたに拷問死されたのよ。侯爵が無理矢理やったというのに、妹が悪いと!!!」
奴隷化の契約を悪用して、侯爵家は散々なことをしていた。
中には、侯爵家が手をつけた者だっている。妖精の呪いの刑によって、一族とされて、もう、死ぬしかない者は、奴隷化の契約が解けるなり、侯爵家の男を蹴った。
「お前のせいで、俺は、ずっと苦しめられた。お前は俺のことを子じゃないといった。だが、俺を育てた父親も、俺を子じゃない、と殴ってくれた。俺はあんたの子だと言ったのに、俺は奴隷化の儀式までされた。見てみろ。俺はお前たちの一族として、呪いが発動した!! もう、水すら飲めない」
「わ、悪かった。だから」
「俺はお前の子どもじゃないんだろう? そう言って、俺を奴隷化したよな!!」
「父親を殴るのか!?」
「俺の父親は、育ててくれた男だ!!!」
奴隷化の犠牲者となった男は、子どもの頃からずっと、酷い扱いだったのだろう。その恨みは深い。呪いによって死ぬしかないから、その恨みを侯爵家を殴って晴らすしかないのだ。男は泣いて、父親を殴った。
私は妖精を使って、城中にいる奴隷化の契約された者たちを解放した。私がわざわざ行く必要なんてないのだ。最初から、城からやってやればいい。
ただ、見せしめには必要なんだ。こうやって、一度、爆発させて、制圧させて、帝国の武力を見せつけるのだ。
軍部と魔法使いの共闘を見た民衆たちは、勝手に噂するだろう。帝国は人が多すぎるのだ。貴族がどんなに偉ぶったって、平民の数のほうが遥かに多いのだ。何もしなくても、平民たちが勝手に噂を流してくれる。
侯爵家は、好き勝手やり過ぎた。契約を解除された家臣たちによって、飢え死にするまで、苦痛を受け続けることとなった。
侯爵家の所業は大々的に公表された。そして、使った技術の欠点を表沙汰にしてやった。もう、帝国が捨てた技術で悪さをる者たちはいなくなっただろう。
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