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嫉妬と衝動
妖精憑きの移動手段
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馬車と荷馬車を準備した。準備された馬車には、それなりに順位がある。当主である私と養子オクトは、一番いい馬車に乗るのは決定である。その次にいい馬車は、招待したルキエルの兄弟姉妹たちが使うのが順当である。
「ちょっと、ルキエルがどうして、伯爵様と同じ馬車に乗るの!? そこは、姉であるアタシに譲りなさい!!!」
「リンネットは僕の馬車に乗せてあげよう。ほら、同じランクの馬車だよ」
無駄に私にすり寄ろうとするリンネットを養子オクトが引きずっていってくれた。リンネット、かなりの美人なのだが、サツキに似なかった。そこが残念である。サツキに似ていたら、間違いなく、リンネットを私は囲っていただろう。
リンネットは、サツキの義妹クラリッサに似たのだ。クラリッサは、父親方の祖母に似たという話である。リンネットを見ると、サツキと義妹クラリッサは確かに父親が同じだと思い知らされる。
ちょっと騒いだのはリンネットだけである。ルキエルの兄ライホーンと弟ロイドは素直に用意された馬車に乗ったのだ。
「お兄ちゃん、こっちで一緒に乗りましょう」
「伯爵は、人が側にいると休めない体質だから、一緒なのは良くないですよ」
「そうそう」
家臣たちが気を利かせて私の馬車にルキエルを案内したのだが、ルキエルの妹レーリエット、ルキエルが拾って育てた貧民ナナキがルキエルの手をとって引っ張っていく。
「………」
無言で迷うルキエル。私を見る目に蔑みがある。あれだ、私が妖精の万能薬を飲んだから、別の妖精憑きがいるという疑いを持っているのだ。本当に、どうすればいいんだ、私は!?
私とルキエルの仲がこじれている感じに見えたのだろう。家臣たちがルキエルの間に入った。
「馬車は三人では狭いですよ」
「心配いりません。いつも、三人でべったりですから。ねえ、お兄ちゃん」
「いつも一緒に寝てますね」
「っ!?」
家臣たち、あらぬ疑いをルキエルに向けた。ほら、私と同衾している時は、まあ、色々としているからな。
「よし、四人で一緒に乗ろう。レーリエットもお年頃なのに、ナナキと二人っきりは、やはり、体裁は良くないな」
「四人で!? 狭いですよ!!」
ルキエルの問題解決は、とんでもないな。それには家臣たちはあらぬ疑いを持っているので、止めてきた。いや、何も起こらないよ、馬車の中で。
じっと何故か家臣たちは私を見る。妙な疑いを持っているな、こいつら!!
「問題ない。レーリエットは俺の膝に座る。いつもそうだ」
「ルキエル、貴様、妹相手に、まさか」
「?」
普段のルキエルの行動で、家臣たちはあらぬ疑いを持っている。
「もう、やめないか。ルキエルは好きな馬車に乗りなさい」
ここはもう、ルキエルにまかせよう。何やったって、どうせ、ルキエルは滅茶苦茶にしてくれるんだ。ここはもう、諦めが大事だ。
ルキエルと関わってから、色々とあった。すっかり、家臣たちも色眼鏡でルキエルを見ている。
ルキエルは、私を見る時は、心底、蔑んでいる。浮気を疑われているみたいだな。もう、私はルキエル一筋だってのにな。
だから、私はただ、ルキエルの判断を待つだけだ。私はどちらになっても構わない。
「もう、面倒くさいな。俺は聖域で飛んで行く。あの保養所、海の聖域のすぐ側じゃん。それのほうが早い」
「………はぁあああああー-----!!!」
第三の選択肢を選ぶルキエルに、私は叫んで掴みかかった。
「聖域を飛ぶって、どういうことだ!?」
「どういうって、あんたんとこの妖精憑きに教えてもらったんだよ。帝国各地の聖域は繋がってるんだ。それなりの実力のある妖精憑きなら、簡単に移動に使えるんだ。もう、俺はそっちから行く」
さっさとルキエルは、私が使う馬車に乗り込んだ。
「他の奴らは、馬車でゆっくりと行け。俺は王都の聖域を使って、さっさと先に行く。ほら、走らせて」
「一人で行くな!!」
勢いに飲まれて御者が走らせようとするから、私は慌てて乗り込んだ。
「ああ!!」
「ルキエル様!!」
結果、レーリエットとナナキは置いていかれた。もう、これは仕方がない。私は全然、これっぷっちも悪くない。
私はどうにか馬車の中で倒れたりしないように踏みとどまったのだが、馬の操作を御者が失敗してくれたので、私は座っているルキエルのところに倒れることとなる。
そこは、妖精憑きだ。ルキエルは妖精を使って、私を受け止め、隣りに私を座らせた。
「あんたは馬車で行けよ。俺は一人で先に行くから」
「勝手に決めるんじゃない。だいたい、馬車での移動は一日がかりだ。その間、ルキエルは一人、どうするつもりだ。アルロから言われているだろう。一人で行動するな、と」
「俺をいつまでも子ども扱いするな。俺だって、一人で待ってられる」
「ルキエル、本当に、聖域を移動できるのか?」
「あんたがよこした妖精憑きは普通にやってたぞ。普通だろう」
そんなわけがない。聖域での移動は、かなり力のある妖精憑きでないと出来ない。
妖精憑きのことを誰もが知っているわけではない。我が家は、妖精憑きの天敵だから、色々と知っている。ルキエルがいう、聖域を使った移動は、簡単に出来る事ではないことも知っている。
あの聖域間の移動は、かなり、実力の高い妖精憑きでしか出来ないことだ。それが出来るということは、魔法使いとしても、かなり高い地位を得られる。
「私も一緒に行こう」
だから、確かめなければならない。
私がいうと、まだ、蔑むように見てくるルキエル。
「お前が可愛がってる妖精憑きにやってもらえばいいだろう。俺は一人で行く」
「そんなのはいない。私がこうやって、可愛がっている人も、妖精憑きも、ルキエルだけだ」
怒りのほうが出てきた。いつまでも、ルキエルに振り回されていて、いい加減、私も腹が立ち、ルキエルを椅子に押し倒した。
力では絶対に勝てないというのに、ルキエルは無駄に私の下で暴れる。今回は、本当に怒っているな。いつものようにはいかない。
「もう、こんなことしない!!」
「私は今後も、ルキエルとは、こういうことをする」
私は容赦なくルキエルに口づけする。舌をいれ、唾液を流し込んでやる。ルキエルの口の中は、妖精の万能薬と同じ味がする。怒っても、ルキエルは私の体を癒そうとしている。
「わ、わかったから、もう、離れろ!!」
珍しく、ルキエルは拒否してきた。私の胸を押して、顔を真っ赤にしていう。その反応に、私は情欲を覚える。
しかし、さすがに時間がない。窓から外を見てみれば、もうすぐ王都の聖域だ。その先を我慢して、私はルキエルの上から離れ、向かいの席に座った。
なのに、ルキエルは体を起こすと、私の隣りに移動してきたのだ。
「こら、離れなさい。その気になったらどうするんだ」
「我慢しろ。俺はあんたと違って、馬車には乗り馴れてないんだから、気持ち悪くなるんだ」
これまで、一度として、ルキエルが馬車酔いしたとこ、見たことはないけどな。むしろ、馬車の中で閨事までやったな。
私も、本当にどうしようもないな。ちょっと前に、ルキエルの衝動に乗せられて、とんでもないことを馬車で仕出かしたことを思い出した。その馬車に、今、乗っているわけだ。
ルキエルの魔法で、馬車は綺麗なものだ。あの時に使ったベッドも、ルキエルの魔法で綺麗になっていた。
私は、普通にルキエルの力の恩恵を受けているが、これ、本当は普通ではない。私は、妖精憑きのことをルキエルよりもよく知っているのだ。知っているからこそ、ルキエルに何かを感じることがある。
馬車が止まれば、御者が戸を開けてくれる。私が先に降りて、続いて降りてくるルキエルの手をとった。ルキエル、普通に私の手をとるよな。貧民だから、女扱いされている、なんてルキエルは知らないのだ。
「お前は馬車でそのまま、保養所に行きなさい」
「御意」
命じれば、御者は誰も乗っていない馬車を走らせて去って行った。
ルキエルは馬車を見送ると、さっさと歩き出した。私を放置だよ。
「おいおい、私を置いていくな」
「こんな人がいる所で、手をとるわけにはいかないだろう」
「場所を知ってるのか?」
「知ってる。ハガルにも、よく連れて行ってもらったから」
「名前で呼び合うくらい、仲が良いんだな」
「ただの友達だからな! あんたには紹介しないからな」
また、蔑んで見てくるルキエル。
本当に、ルキエルはとんでもないな。ハガルとは、見習い魔法使いであり、大魔法使いアラリーラの側仕えだ。その実力は大したことがない、と言われている。
魔法使いは帝国ではそれなりの地位だ。見習いといえども、そう、接することはない。しかし、ハガルは平民の家族を持っているからか、普通に外に出て、平民たちと接している、身近な魔法使いだ。そのため、王都では、ハガルのことは有名だ。実力は大したことがない、と言われているが、そんなこと、平民にとってはどうだっていい。見習いといえども魔法使いだ。身近であるゆえに、ハガルは人気が高いのだ。
そんなハガルとルキエルは友達付き合いとしているという。ハガルがそれなりの実力であれば、ルキエルが野良の妖精憑きであることには気づいているはずだ。しかし、今だにルキエルは普通にハガルと付き合っているだけで、ルキエルが帝国に捕縛されることはない。
一応、我が家からも、ルキエルの監視をつけていた。しかし、ハガルはルキエルに対して、何もしないことから、今は監視を外した。ハガルは大した妖精憑きではないだろう、と判断したのだ。
しかし、私はハガルに一度だけ近づいた。その時点で、私は死ぬかも、というほどの恐怖を抱いた。あれは、大した妖精憑きではない、という存在ではない。賢者テラスを越える、恐ろしい化け物妖精憑きだ。
それなのに、ルキエルは平然と側にいる。本当に、ルキエルって、とんでもない子だな。心配なんだが、迂闊に手を出すのは危険だ。ルキエルとハガルで、とんでもないことを起こしてくれそうな気がする。
ハガルには、ルキエルは大魔法使いの情報が欲しくて近づいたようなものだが、今は、そういうのではないだろう。表向きは、そういう理由つけでアルロから許可をとっているだけだ。アルロも、見逃してやってるんだろうな。
ルキエルの後を付いて行けば、王都の聖域にとがめられることなく侵入出来た。本来は、王都の聖域なんて、私一人でも侵入は出来ない。必ず、どこかの誰かに見とがめられるのだ。聖域の近くには神殿がある。神殿にいる神官シスターは妖精憑きである。王都の聖域に侵入者があれば、神殿の者たちが来るはずなのだ。
ところが、ルキエルと一緒だからか、普通に侵入出来てしまった。ルキエルは、その事実を普通に受け止めている。
王都の聖域に入れば、ルキエルは私の手をつかんだ。
「ほら、離れると、置いてっちゃうぞ」
ルキエルは笑顔で言ってくる。そんなルキエルに呼応するように、聖域が青白く輝きだした。その輝きの眩しさに、私は目を閉じた。そして、次に目を開いた時は、景色は一変していた。
王都の聖域は湖のような所だったというのに、それはなくなり、荒々しい岩肌の洞窟になっていた。横を見れば、水路があるのだが、そこからとても荒れている感じだ。空気も、清浄だったものから、塩の香りとなっている。
私は景色が一変したことに驚いて固まっているというのに、ルキエルはさっさと私の手を引っ張って、聖域の外に出て行った。
洞窟を出た先は、砂浜と海が広がっていた。波の音と海風が、私に現実だと教えてくれる。
「うわ、潮風って、ベタベタするな。保養所で風呂入りたい」
「あ、ああ」
無邪気に笑っていうルキエル。私と二人っきりなのが、嬉しいのだ。邪魔するものがなくなって、ルキエルはそれに安心している。
そう、まだ、子飼いの妖精憑きたちも、ここには来ていない。荷馬車に乗って、王都から移動しているのだ。到着には、一日を要するだろう。
砂浜を歩くと、ルキエルは海を嬉しそうに眺める。
「海、初めて見た」
「聖域を移動したことはあると言ってたじゃないか」
「移動しただけ。外には出てない。あんたは、海、見たことがあるんだろうな」
「まあな。私は、僻地にも、山にも仕事で行くからな。妖精憑きを相手取れるただの人は帝国中では、私だけだ」
「そうなんだ」
「普通の人は、一生、領地の外に出ることはない。貴族でも、十年に一度の舞踏会で王都に呼ばれなければ、一生、領地から出ないのが普通だ。私のほうが、珍しいんだ」
「………ありがとう」
ルキエルは消え入りそうな声でいう。本当に小さい声だ。
見てみれば、ルキエルは照れたように俯いて、笑わないように堪えていた。そんな顔もまた、私は我慢出来なくて、ルキエルの両肩をつかみ、無理矢理、口づけをした。
聖域から歩いてすぐに、皇族の保養所だ。聖域の近くに作ったのは、魔法使いを使って、聖域を移動するからだろう。そのため、保養所周辺は、立ち入り禁止区域にされて、人はいなかった。
保養所は、使用することは前もって決まっていたので、いつでも使えるように、とそれなりに準備はされていた。管理人もいたが、私が来たことで、さっさと近くにある自宅へと帰って行った。
保養所というが、ちょっとした町だな。皇族の身の回りを世話する者たちも一緒に来るので、そういう人たち向けの宿泊施設もあった。皇帝なんか来たら、使用人だけではすまない。魔法使いもそれなりに同行するだろう。場合によっては、大臣が一緒に来ることもある。そういうことも考えての保養所の作りである。
すでに、どこで宿泊して、ということは決まっていた。家臣たち、使用人たちは、ここに到着したら、各自、荷物を持って、宿泊施設に直行である。近くに街があるので、食事もそこで済ませてしまえばいい。本当に、何もかもお任せである。
私は、いつ言い出そうか悩んだ。ルキエル、当然のように、私が過ごす邸宅にやってきた。そこは、本来であれば、皇族様が使う邸宅だ。だから、私と養子マクルスがその邸宅で過ごすのだ。
しかし、ルキエルは兄弟姉妹と来ているのだから、別邸を用意しているのだ。この保養所にいる間、私とルキエルは別なんだ。
そこのところを説明するのは家臣たちの役割だ。案内して、それでお別れのはずだった。それも、ルキエルが好き勝手にするから、こうなってしまうのだ。本当に、私はどうしようもないな。
「よく考えたら、俺、風呂いらないや」
妖精憑きは強い弱い関係なく、すぐに綺麗になる。着ている服だって綺麗に出来てしまよな。本当に理不尽な生き物だ。
「私は荷物が来るまで休んでいる。ルキエルは、屋敷から出るんじゃないぞ」
「風呂は入らないのか?」
「着替えが来るのは、随分と先だ」
着の身着のままで来たんだ。風呂に入ったって、汚れた衣服は変えられない。
違う意味で疲れたので、私としては、ベッドで横になって休みたかった。
なのに、ルキエルは人目がないからと、私の正面からくっついてくる。
「ほら、これで綺麗になった」
「あのな、綺麗になっても、風呂には入りたいんだ。ここの湯は、温泉だ」
「温泉?」
温泉なんて、平民だって縁のない話である。貧民であるルキエルは、温泉なんて聞くこともない。首を傾げて、曇りのない目で見返されてしまった。
「この地面の下から吹き出る天然の湯のことだ。ただ水を沸かした湯とは違って、体にいい効能があるという。好きな者は好きなんだ」
「へえ、ただの風呂じゃないんだ。じゃあ、入ってみよう」
ルキエルは、さっさと大浴場を妖精を使って見つけて、そちらに向かっていく。
「勝手に行くんじゃない!!」
「ほら、あっちにあるって」
「こらこら!!」
ルキエル、私の腕を掴んで、大浴場のほうへと引っ張って行く。私は個室つきの浴場で一人ゆっくると湯に浸かるつもりだったのに!!!
随分とはしゃいでいるルキエルに、私は逆らえなかった。もう子どもじゃない、と何事かあると拗ねるルキエルだが、私にとっては、どこまでも子どもだ。
大浴場の脱衣所に引っ張られれば、そこでルキエルの手が離れた。ルキエルは恥じらいなんてなく、さっさと服を脱いだ。そして、私が脱がないのを不思議そうに見返した。
「はやく脱げよ。わかった、疲れたんだな。手伝ってやるよ」
「脱げるからいい」
もう、ルキエルの手を払って、さっさと脱いだ。
互いに、裸体を見るのは初めてではない。よく見ているよ。だけど、ジロジロと見るようなものではない。
だけど、こういう場に立つと、つい、ルキエルの裸体を見てしまう。
伯爵家の屋敷では、ルキエルと養子オクトはよく一緒に風呂に入っている。最初は、入り方がわからないルキエルに教えるためにオクトが付き合ったのだが、風呂があまりに広すぎて、ルキエルが敬遠するため、ずっとオクトはルキエルに付き合って、一緒に入浴していた。
ルキエルが背中を向けると、私は何かを感じる。本当に、私はダメだな。ルキエルが素肌を晒すだけで、欲情してしまう。
ルキエルはというと、まるで何も感じていない。ただ、体を洗うだけの場所としか見ているだけだ。だから、私は我慢して、いつも通りに入浴だ。
「あんたんトコと同じくらい広いな」
「使用人も使う所だからな。外にだが、露天風呂があるから、明日はそこを使ってみるといい」
私とルキエルはそのまま湯に浸かる。ほら、魔法で綺麗にされているから、洗うとか、そういうことが必要ない。
「うわ、塩の味する!!」
「海に近いと、そういうものになる。山のほうだと、ぬるぬるするぞ。僻地のほうは、妙な臭いがするな」
「詳しいな」
「皇族の友人だからな。色々と連れて行ってもらった」
皇族ルイが、帝国各地の保養所に招待してくれたので、色々と知っていた。
皇族が出ると、ルキエルは私から距離をとる。
「あんたって、本当に凄い奴なんだな。気を付けよう」
「そういうが、オクトだって、皇族の友達がいるぞ」
「そうなのか!? もう、オクトのことも、気を付けないといけないな」
「そんなこと言わないでくれ。私もオクトも、そんなふうに扱われたくない。そのままでいい」
「う、うん、わかった」
そう言ってやると、ルキエルはまた、距離感がおかしくなる。私の膝に座るのだ。
「ルキエル、これは」
「あんたと俺だけだと、いつも、こうじゃん」
私の胸を背もたれに、べったりとくっついてくるルキエル。それは、夜の営みの時だろう。
「まさか、オクトと風呂に入る時も、こうなのか?」
「こんなことするわけがないだろう!! 俺とオクトは、男同士で、こう、向かい合って、話すくらいだな。あ、お湯かけあったりもするな」
「だったら、私とは距離をとってだな」
「………」
力をこめて私にもたれかかってくるルキエル。拗ねたように頬を膨らませて黙り込んだ。そういう顔をするから、私も不埒なことをしてしまうのだ。
私はルキエルを後ろから抱きしめて、ルキエルの首筋を舐める。
「ちょ、こんなトコで、それは」
「こんなことするルキエルが悪い」
ルキエルの一物を握ってやる。私が握っただけで、ルキエルの一物は固くなった。
「やぁ、ここは、熱いぃ」
ちょっと抵抗するが、ルキエルの蕾に指を突っ込んでやれば、すぐに抵抗をやめた。
「ちょっと、ルキエルがどうして、伯爵様と同じ馬車に乗るの!? そこは、姉であるアタシに譲りなさい!!!」
「リンネットは僕の馬車に乗せてあげよう。ほら、同じランクの馬車だよ」
無駄に私にすり寄ろうとするリンネットを養子オクトが引きずっていってくれた。リンネット、かなりの美人なのだが、サツキに似なかった。そこが残念である。サツキに似ていたら、間違いなく、リンネットを私は囲っていただろう。
リンネットは、サツキの義妹クラリッサに似たのだ。クラリッサは、父親方の祖母に似たという話である。リンネットを見ると、サツキと義妹クラリッサは確かに父親が同じだと思い知らされる。
ちょっと騒いだのはリンネットだけである。ルキエルの兄ライホーンと弟ロイドは素直に用意された馬車に乗ったのだ。
「お兄ちゃん、こっちで一緒に乗りましょう」
「伯爵は、人が側にいると休めない体質だから、一緒なのは良くないですよ」
「そうそう」
家臣たちが気を利かせて私の馬車にルキエルを案内したのだが、ルキエルの妹レーリエット、ルキエルが拾って育てた貧民ナナキがルキエルの手をとって引っ張っていく。
「………」
無言で迷うルキエル。私を見る目に蔑みがある。あれだ、私が妖精の万能薬を飲んだから、別の妖精憑きがいるという疑いを持っているのだ。本当に、どうすればいいんだ、私は!?
私とルキエルの仲がこじれている感じに見えたのだろう。家臣たちがルキエルの間に入った。
「馬車は三人では狭いですよ」
「心配いりません。いつも、三人でべったりですから。ねえ、お兄ちゃん」
「いつも一緒に寝てますね」
「っ!?」
家臣たち、あらぬ疑いをルキエルに向けた。ほら、私と同衾している時は、まあ、色々としているからな。
「よし、四人で一緒に乗ろう。レーリエットもお年頃なのに、ナナキと二人っきりは、やはり、体裁は良くないな」
「四人で!? 狭いですよ!!」
ルキエルの問題解決は、とんでもないな。それには家臣たちはあらぬ疑いを持っているので、止めてきた。いや、何も起こらないよ、馬車の中で。
じっと何故か家臣たちは私を見る。妙な疑いを持っているな、こいつら!!
「問題ない。レーリエットは俺の膝に座る。いつもそうだ」
「ルキエル、貴様、妹相手に、まさか」
「?」
普段のルキエルの行動で、家臣たちはあらぬ疑いを持っている。
「もう、やめないか。ルキエルは好きな馬車に乗りなさい」
ここはもう、ルキエルにまかせよう。何やったって、どうせ、ルキエルは滅茶苦茶にしてくれるんだ。ここはもう、諦めが大事だ。
ルキエルと関わってから、色々とあった。すっかり、家臣たちも色眼鏡でルキエルを見ている。
ルキエルは、私を見る時は、心底、蔑んでいる。浮気を疑われているみたいだな。もう、私はルキエル一筋だってのにな。
だから、私はただ、ルキエルの判断を待つだけだ。私はどちらになっても構わない。
「もう、面倒くさいな。俺は聖域で飛んで行く。あの保養所、海の聖域のすぐ側じゃん。それのほうが早い」
「………はぁあああああー-----!!!」
第三の選択肢を選ぶルキエルに、私は叫んで掴みかかった。
「聖域を飛ぶって、どういうことだ!?」
「どういうって、あんたんとこの妖精憑きに教えてもらったんだよ。帝国各地の聖域は繋がってるんだ。それなりの実力のある妖精憑きなら、簡単に移動に使えるんだ。もう、俺はそっちから行く」
さっさとルキエルは、私が使う馬車に乗り込んだ。
「他の奴らは、馬車でゆっくりと行け。俺は王都の聖域を使って、さっさと先に行く。ほら、走らせて」
「一人で行くな!!」
勢いに飲まれて御者が走らせようとするから、私は慌てて乗り込んだ。
「ああ!!」
「ルキエル様!!」
結果、レーリエットとナナキは置いていかれた。もう、これは仕方がない。私は全然、これっぷっちも悪くない。
私はどうにか馬車の中で倒れたりしないように踏みとどまったのだが、馬の操作を御者が失敗してくれたので、私は座っているルキエルのところに倒れることとなる。
そこは、妖精憑きだ。ルキエルは妖精を使って、私を受け止め、隣りに私を座らせた。
「あんたは馬車で行けよ。俺は一人で先に行くから」
「勝手に決めるんじゃない。だいたい、馬車での移動は一日がかりだ。その間、ルキエルは一人、どうするつもりだ。アルロから言われているだろう。一人で行動するな、と」
「俺をいつまでも子ども扱いするな。俺だって、一人で待ってられる」
「ルキエル、本当に、聖域を移動できるのか?」
「あんたがよこした妖精憑きは普通にやってたぞ。普通だろう」
そんなわけがない。聖域での移動は、かなり力のある妖精憑きでないと出来ない。
妖精憑きのことを誰もが知っているわけではない。我が家は、妖精憑きの天敵だから、色々と知っている。ルキエルがいう、聖域を使った移動は、簡単に出来る事ではないことも知っている。
あの聖域間の移動は、かなり、実力の高い妖精憑きでしか出来ないことだ。それが出来るということは、魔法使いとしても、かなり高い地位を得られる。
「私も一緒に行こう」
だから、確かめなければならない。
私がいうと、まだ、蔑むように見てくるルキエル。
「お前が可愛がってる妖精憑きにやってもらえばいいだろう。俺は一人で行く」
「そんなのはいない。私がこうやって、可愛がっている人も、妖精憑きも、ルキエルだけだ」
怒りのほうが出てきた。いつまでも、ルキエルに振り回されていて、いい加減、私も腹が立ち、ルキエルを椅子に押し倒した。
力では絶対に勝てないというのに、ルキエルは無駄に私の下で暴れる。今回は、本当に怒っているな。いつものようにはいかない。
「もう、こんなことしない!!」
「私は今後も、ルキエルとは、こういうことをする」
私は容赦なくルキエルに口づけする。舌をいれ、唾液を流し込んでやる。ルキエルの口の中は、妖精の万能薬と同じ味がする。怒っても、ルキエルは私の体を癒そうとしている。
「わ、わかったから、もう、離れろ!!」
珍しく、ルキエルは拒否してきた。私の胸を押して、顔を真っ赤にしていう。その反応に、私は情欲を覚える。
しかし、さすがに時間がない。窓から外を見てみれば、もうすぐ王都の聖域だ。その先を我慢して、私はルキエルの上から離れ、向かいの席に座った。
なのに、ルキエルは体を起こすと、私の隣りに移動してきたのだ。
「こら、離れなさい。その気になったらどうするんだ」
「我慢しろ。俺はあんたと違って、馬車には乗り馴れてないんだから、気持ち悪くなるんだ」
これまで、一度として、ルキエルが馬車酔いしたとこ、見たことはないけどな。むしろ、馬車の中で閨事までやったな。
私も、本当にどうしようもないな。ちょっと前に、ルキエルの衝動に乗せられて、とんでもないことを馬車で仕出かしたことを思い出した。その馬車に、今、乗っているわけだ。
ルキエルの魔法で、馬車は綺麗なものだ。あの時に使ったベッドも、ルキエルの魔法で綺麗になっていた。
私は、普通にルキエルの力の恩恵を受けているが、これ、本当は普通ではない。私は、妖精憑きのことをルキエルよりもよく知っているのだ。知っているからこそ、ルキエルに何かを感じることがある。
馬車が止まれば、御者が戸を開けてくれる。私が先に降りて、続いて降りてくるルキエルの手をとった。ルキエル、普通に私の手をとるよな。貧民だから、女扱いされている、なんてルキエルは知らないのだ。
「お前は馬車でそのまま、保養所に行きなさい」
「御意」
命じれば、御者は誰も乗っていない馬車を走らせて去って行った。
ルキエルは馬車を見送ると、さっさと歩き出した。私を放置だよ。
「おいおい、私を置いていくな」
「こんな人がいる所で、手をとるわけにはいかないだろう」
「場所を知ってるのか?」
「知ってる。ハガルにも、よく連れて行ってもらったから」
「名前で呼び合うくらい、仲が良いんだな」
「ただの友達だからな! あんたには紹介しないからな」
また、蔑んで見てくるルキエル。
本当に、ルキエルはとんでもないな。ハガルとは、見習い魔法使いであり、大魔法使いアラリーラの側仕えだ。その実力は大したことがない、と言われている。
魔法使いは帝国ではそれなりの地位だ。見習いといえども、そう、接することはない。しかし、ハガルは平民の家族を持っているからか、普通に外に出て、平民たちと接している、身近な魔法使いだ。そのため、王都では、ハガルのことは有名だ。実力は大したことがない、と言われているが、そんなこと、平民にとってはどうだっていい。見習いといえども魔法使いだ。身近であるゆえに、ハガルは人気が高いのだ。
そんなハガルとルキエルは友達付き合いとしているという。ハガルがそれなりの実力であれば、ルキエルが野良の妖精憑きであることには気づいているはずだ。しかし、今だにルキエルは普通にハガルと付き合っているだけで、ルキエルが帝国に捕縛されることはない。
一応、我が家からも、ルキエルの監視をつけていた。しかし、ハガルはルキエルに対して、何もしないことから、今は監視を外した。ハガルは大した妖精憑きではないだろう、と判断したのだ。
しかし、私はハガルに一度だけ近づいた。その時点で、私は死ぬかも、というほどの恐怖を抱いた。あれは、大した妖精憑きではない、という存在ではない。賢者テラスを越える、恐ろしい化け物妖精憑きだ。
それなのに、ルキエルは平然と側にいる。本当に、ルキエルって、とんでもない子だな。心配なんだが、迂闊に手を出すのは危険だ。ルキエルとハガルで、とんでもないことを起こしてくれそうな気がする。
ハガルには、ルキエルは大魔法使いの情報が欲しくて近づいたようなものだが、今は、そういうのではないだろう。表向きは、そういう理由つけでアルロから許可をとっているだけだ。アルロも、見逃してやってるんだろうな。
ルキエルの後を付いて行けば、王都の聖域にとがめられることなく侵入出来た。本来は、王都の聖域なんて、私一人でも侵入は出来ない。必ず、どこかの誰かに見とがめられるのだ。聖域の近くには神殿がある。神殿にいる神官シスターは妖精憑きである。王都の聖域に侵入者があれば、神殿の者たちが来るはずなのだ。
ところが、ルキエルと一緒だからか、普通に侵入出来てしまった。ルキエルは、その事実を普通に受け止めている。
王都の聖域に入れば、ルキエルは私の手をつかんだ。
「ほら、離れると、置いてっちゃうぞ」
ルキエルは笑顔で言ってくる。そんなルキエルに呼応するように、聖域が青白く輝きだした。その輝きの眩しさに、私は目を閉じた。そして、次に目を開いた時は、景色は一変していた。
王都の聖域は湖のような所だったというのに、それはなくなり、荒々しい岩肌の洞窟になっていた。横を見れば、水路があるのだが、そこからとても荒れている感じだ。空気も、清浄だったものから、塩の香りとなっている。
私は景色が一変したことに驚いて固まっているというのに、ルキエルはさっさと私の手を引っ張って、聖域の外に出て行った。
洞窟を出た先は、砂浜と海が広がっていた。波の音と海風が、私に現実だと教えてくれる。
「うわ、潮風って、ベタベタするな。保養所で風呂入りたい」
「あ、ああ」
無邪気に笑っていうルキエル。私と二人っきりなのが、嬉しいのだ。邪魔するものがなくなって、ルキエルはそれに安心している。
そう、まだ、子飼いの妖精憑きたちも、ここには来ていない。荷馬車に乗って、王都から移動しているのだ。到着には、一日を要するだろう。
砂浜を歩くと、ルキエルは海を嬉しそうに眺める。
「海、初めて見た」
「聖域を移動したことはあると言ってたじゃないか」
「移動しただけ。外には出てない。あんたは、海、見たことがあるんだろうな」
「まあな。私は、僻地にも、山にも仕事で行くからな。妖精憑きを相手取れるただの人は帝国中では、私だけだ」
「そうなんだ」
「普通の人は、一生、領地の外に出ることはない。貴族でも、十年に一度の舞踏会で王都に呼ばれなければ、一生、領地から出ないのが普通だ。私のほうが、珍しいんだ」
「………ありがとう」
ルキエルは消え入りそうな声でいう。本当に小さい声だ。
見てみれば、ルキエルは照れたように俯いて、笑わないように堪えていた。そんな顔もまた、私は我慢出来なくて、ルキエルの両肩をつかみ、無理矢理、口づけをした。
聖域から歩いてすぐに、皇族の保養所だ。聖域の近くに作ったのは、魔法使いを使って、聖域を移動するからだろう。そのため、保養所周辺は、立ち入り禁止区域にされて、人はいなかった。
保養所は、使用することは前もって決まっていたので、いつでも使えるように、とそれなりに準備はされていた。管理人もいたが、私が来たことで、さっさと近くにある自宅へと帰って行った。
保養所というが、ちょっとした町だな。皇族の身の回りを世話する者たちも一緒に来るので、そういう人たち向けの宿泊施設もあった。皇帝なんか来たら、使用人だけではすまない。魔法使いもそれなりに同行するだろう。場合によっては、大臣が一緒に来ることもある。そういうことも考えての保養所の作りである。
すでに、どこで宿泊して、ということは決まっていた。家臣たち、使用人たちは、ここに到着したら、各自、荷物を持って、宿泊施設に直行である。近くに街があるので、食事もそこで済ませてしまえばいい。本当に、何もかもお任せである。
私は、いつ言い出そうか悩んだ。ルキエル、当然のように、私が過ごす邸宅にやってきた。そこは、本来であれば、皇族様が使う邸宅だ。だから、私と養子マクルスがその邸宅で過ごすのだ。
しかし、ルキエルは兄弟姉妹と来ているのだから、別邸を用意しているのだ。この保養所にいる間、私とルキエルは別なんだ。
そこのところを説明するのは家臣たちの役割だ。案内して、それでお別れのはずだった。それも、ルキエルが好き勝手にするから、こうなってしまうのだ。本当に、私はどうしようもないな。
「よく考えたら、俺、風呂いらないや」
妖精憑きは強い弱い関係なく、すぐに綺麗になる。着ている服だって綺麗に出来てしまよな。本当に理不尽な生き物だ。
「私は荷物が来るまで休んでいる。ルキエルは、屋敷から出るんじゃないぞ」
「風呂は入らないのか?」
「着替えが来るのは、随分と先だ」
着の身着のままで来たんだ。風呂に入ったって、汚れた衣服は変えられない。
違う意味で疲れたので、私としては、ベッドで横になって休みたかった。
なのに、ルキエルは人目がないからと、私の正面からくっついてくる。
「ほら、これで綺麗になった」
「あのな、綺麗になっても、風呂には入りたいんだ。ここの湯は、温泉だ」
「温泉?」
温泉なんて、平民だって縁のない話である。貧民であるルキエルは、温泉なんて聞くこともない。首を傾げて、曇りのない目で見返されてしまった。
「この地面の下から吹き出る天然の湯のことだ。ただ水を沸かした湯とは違って、体にいい効能があるという。好きな者は好きなんだ」
「へえ、ただの風呂じゃないんだ。じゃあ、入ってみよう」
ルキエルは、さっさと大浴場を妖精を使って見つけて、そちらに向かっていく。
「勝手に行くんじゃない!!」
「ほら、あっちにあるって」
「こらこら!!」
ルキエル、私の腕を掴んで、大浴場のほうへと引っ張って行く。私は個室つきの浴場で一人ゆっくると湯に浸かるつもりだったのに!!!
随分とはしゃいでいるルキエルに、私は逆らえなかった。もう子どもじゃない、と何事かあると拗ねるルキエルだが、私にとっては、どこまでも子どもだ。
大浴場の脱衣所に引っ張られれば、そこでルキエルの手が離れた。ルキエルは恥じらいなんてなく、さっさと服を脱いだ。そして、私が脱がないのを不思議そうに見返した。
「はやく脱げよ。わかった、疲れたんだな。手伝ってやるよ」
「脱げるからいい」
もう、ルキエルの手を払って、さっさと脱いだ。
互いに、裸体を見るのは初めてではない。よく見ているよ。だけど、ジロジロと見るようなものではない。
だけど、こういう場に立つと、つい、ルキエルの裸体を見てしまう。
伯爵家の屋敷では、ルキエルと養子オクトはよく一緒に風呂に入っている。最初は、入り方がわからないルキエルに教えるためにオクトが付き合ったのだが、風呂があまりに広すぎて、ルキエルが敬遠するため、ずっとオクトはルキエルに付き合って、一緒に入浴していた。
ルキエルが背中を向けると、私は何かを感じる。本当に、私はダメだな。ルキエルが素肌を晒すだけで、欲情してしまう。
ルキエルはというと、まるで何も感じていない。ただ、体を洗うだけの場所としか見ているだけだ。だから、私は我慢して、いつも通りに入浴だ。
「あんたんトコと同じくらい広いな」
「使用人も使う所だからな。外にだが、露天風呂があるから、明日はそこを使ってみるといい」
私とルキエルはそのまま湯に浸かる。ほら、魔法で綺麗にされているから、洗うとか、そういうことが必要ない。
「うわ、塩の味する!!」
「海に近いと、そういうものになる。山のほうだと、ぬるぬるするぞ。僻地のほうは、妙な臭いがするな」
「詳しいな」
「皇族の友人だからな。色々と連れて行ってもらった」
皇族ルイが、帝国各地の保養所に招待してくれたので、色々と知っていた。
皇族が出ると、ルキエルは私から距離をとる。
「あんたって、本当に凄い奴なんだな。気を付けよう」
「そういうが、オクトだって、皇族の友達がいるぞ」
「そうなのか!? もう、オクトのことも、気を付けないといけないな」
「そんなこと言わないでくれ。私もオクトも、そんなふうに扱われたくない。そのままでいい」
「う、うん、わかった」
そう言ってやると、ルキエルはまた、距離感がおかしくなる。私の膝に座るのだ。
「ルキエル、これは」
「あんたと俺だけだと、いつも、こうじゃん」
私の胸を背もたれに、べったりとくっついてくるルキエル。それは、夜の営みの時だろう。
「まさか、オクトと風呂に入る時も、こうなのか?」
「こんなことするわけがないだろう!! 俺とオクトは、男同士で、こう、向かい合って、話すくらいだな。あ、お湯かけあったりもするな」
「だったら、私とは距離をとってだな」
「………」
力をこめて私にもたれかかってくるルキエル。拗ねたように頬を膨らませて黙り込んだ。そういう顔をするから、私も不埒なことをしてしまうのだ。
私はルキエルを後ろから抱きしめて、ルキエルの首筋を舐める。
「ちょ、こんなトコで、それは」
「こんなことするルキエルが悪い」
ルキエルの一物を握ってやる。私が握っただけで、ルキエルの一物は固くなった。
「やぁ、ここは、熱いぃ」
ちょっと抵抗するが、ルキエルの蕾に指を突っ込んでやれば、すぐに抵抗をやめた。
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