魔法使いの悪友

shishamo346

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賢者と悪女

もう一人の仕掛け人

 サツキは素敵な女性だ。きちんと付き合えば、その素晴らしさはわかるというものだ。それも、私がそう育てている最中で、サツキに惹かれた男がいた。
 サツキが在学中、生徒会副会長であった伯爵家次男マクルスだ。生徒会長であった皇族ルイ様とは仲良くなって、よく城で見かけた。マクルスは、あの人当たりのいい感じをしているが、妖精憑きである魔法使いは、この男のことをどうしても危険視してしまう。何かあるのだろう。
 だから、皇族ルイ様を呼び出した。
「あの男は何者だ?」
「黙秘します!!」
 少し自信が出たのだろう。私に対して強気に出るルイ様。いざとなれば、皇族の命令で私を黙らせればいいのだ。
 だが、私は何も知らずに、あんな危険人物を皇族の側に置くわけではない。私は、ルイ様の前に火のついていない香を置く。
「サツキがくれた」
 情報源はサツキだがな。サツキ、本当に恐ろしい女だ。どこまで知っているんだ?
 皇族ルイは、これだけで、伯爵家次男マクルスの正体を吐いた。綺麗に吐いた。もう、隅々まで吐き出してくれた。
 マクルスの生家は、サツキの生家と同じく、役目持ちの一族だ。サツキの生家は道具作りだ。マクルスの生家は、妖精殺しという、妖精憑きにとって対局の存在だ。妖精を狂わせる香を作り出し、それを裏で売っているのだ。この香を使って、妖精を狂わせるだけでなく、妖精憑きを洗脳することも出来るという。
 マクルスの生家の恐ろしいところは、当主は自身を妖精や妖精憑きの毒のように長い年月をかけて作り変えるのだ。そのため、妖精の魔法が当主には届かない。それを利用して、妖精憑きを殺すというのだ。
 サツキの話の中で、妖精殺しの一族は出てきたが、ここまでだとは、私も知らなかった。こういうのを知ると、大昔に焚書したという本の存在は、悔やまれるばかりだ。
「うううう、マクルス、ごめん」
「帝国の敵になるわけでもないし、やっていることは、惚れた女のための復讐とは、可愛らしいじゃないか」
「捕まえたり、しない?」
「サツキに手を出していたら、捕縛していたが、不発だったんだろう。サツキからも、その男の話は出てこなかった」
「そ、そうなんだ」
 きっと、ルイ様はマクルスのことを気の毒に、なんて思っているのだろうな。仕方がない。サツキにとっては、マクルスはその他だったんだ。
 新聞社にサツキの虐待の情報を流したのは、伯爵家次男マクルスだった。あえて、私はやらなかったことを、この男は怒りにまかせてやったのだ。しかも、それを煽ったのは皇族ルイ様だ。
 皇族ルイ様は、マクルスのために、サツキが暮らしていた屋敷を案内したという。ついでに、サツキが家でどういう扱いだったかも見せた。あの何もない部屋を見たんだろう。同じ貴族で、しかも伯爵だ。待遇の差を見て、いかにサツキが不幸か、マクルスは知ったのだろう。そして、同情と怒りで、サツキが隠していた過去を暴露したのだ。
 これによって、帝国中が、サツキの父、義母、義妹、さらに、婚約者、婚約者家族への見方を変えたのだ。
 これまで、サツキの義妹クラリッサと婚約者エクルドは愛し合っていても、正式な婚約者であるサツキが邪魔をしている、という同情的な見解をとられていたのだ。世の中、真実の愛、というのが好きなんだな。その話は、貴族間でも賑わっていた。ただ、新聞はそれを取り上げなかったので、平民間には、あまり広がらなかったのだ。
 そこに、サツキの虐待、婚約者の暴力、婚約者家族からの不当な扱いが新聞で面白おかしく書かれたのだ。情報源は使用人だけではない。サインの偽造によって、店に損害を被った者は多い。帝国は抜き打ちでの査察により、このサインの不正を取り締まったのだ。この元凶が、サツキの生家と婚約者、婚約者家族と横の繋がりで広がったのだ。完全な言いがかりだが、諸悪の根源であることは変わりない。帝国中が、サインの不正をしたのはサツキの家族、婚約者とその家族、とこの事件を表沙汰にしたのだ。
 これにより、何が起こったのか?
 サツキの父と義妹クラリッサは、色々とあったが、父の生家が力になっていた。クラリッサは、無罪のようなものだ、ということで、父の生家の跡取りと婚約を発表されていたのだ。大々的にお披露目までしたという。クラリッサの友達もいっぱい呼ばれて、参加したそうだ。何せ、父の生家は侯爵だ。クラリッサは一気に勝ち組となったのだ。そこに、サツキの虐待、サインの不正使用が表沙汰にされた。この事実を知ったサツキの父の生家は、即、クラリッサとの婚約を解消した。そして、父とクラリッサを一族からも、領地からも追放したのだ。二度と、足を踏み入れるな、と絶縁状が帝国にも受理された。こうして、サツキの父と義妹は平民となった。
 サツキの元婚約者エクルドとその家族は、エクルドを廃嫡することで、どうにかなっていた。帝国から取引を永久解除されてしまったが、エクルドの兄は信用ある人だったのだ。だから、侯爵家は少し生活を下げながらも、どうにかなっていた。それなのに、サツキに対する暴力、さらに、サツキのサインの不正使用が表沙汰にされた。エクルドの兄は決断を迫られた。だが、遅すぎたのだ。悩んでいる内に、とうとう、商売が悪くなっていった。悪評があまりにも立ち過ぎたのだ。そのため、エクルドの兄は爵位返上することとなった。栄光全てを捨てることで、エクルドと両親を切り捨てたのだ。エクルドの兄はしっかりした人だ。兄の妻の生家のために、妻とも離婚をしようとしたが、妻は生家と縁を切り、そのまま二人で平民となり、消息を知る者は貴族の中ではいなくなった。

 ここまでやらかしてくれた伯爵家次男マクルスは、まだまだ、満足していなかった。

 証言をした使用人たちをマクルスの息がかかっている所に雇用して、不当な扱いをしていたのだ。不当な契約だから、逃げられない。しかも、監視つきと徹底されていた。
 そこまできて、私はマクルスと交渉せざるをえなくなった。
 私はマクルスを皇族ルイ様を通して呼び出した。マクルスは、そうとう、勘がいいのだろう。私を随分と恐れていた。
「賢者テラス様、お呼びと聞き、参上いたしました」
「楽にしてくれ。伯爵令嬢サツキはどうしている?」
「死んだんですよね」
「わかった」
 読めないな、この男。私への恐怖が強すぎて、嘘と真実がわかりにくい。かといって、代理をたてると、私のようにマクルスの嘘を読み取れるとは思えない。
 面と向かってみればわかる。妖精殺しの一族は、存在自体が確かに毒だ。妖精は忌避し、妖精憑きは感覚を狂わされる。私ほどであれば、ちょっとほろ酔いだが、普通の妖精憑きは、この男の側にいると、運が悪いと吐くな。
 マクルスは、私とサツキの関係を知らない。皇族ルイ様は、甘い顔をして、しっかりしている。情報、隠しておかなければならないものは、友人相手でも隠しているのだ。さすが、教育された皇族だ。
「伯爵家の元使用人を秘密裡にではあるが、捕縛することになった。罪状を作ってもいいのだが、外野が煩くなるから、秘密裡だ。ルイ様から聞いている。伯爵令嬢に随分な想いを募らせていたとか」
 マクルスは賢い男だ。伯爵家の使用人を秘密裡に捕縛する理由がわからない。その必要性も感じていないのだ。だから、訝しんだ。
「どうしてですか? あんなの、捕縛するだけで、無駄な餌がかかるではないですか」
「餌もしっかりと自給自足させているそうだな。そんな無駄餌を帝国民がおさめた税でまかうのは、確かに無駄使いだ。しかし、彼らは将来、役に立つ」
「悲劇の令嬢の小説、戯曲、舞台まで作り出して、それなりに収益は得られましたか?」
「収益は全て、同じ悲劇が起こらないための監視体制を作る機関にあてられている。貴族の家族構成を統括し、同じような立場の令嬢子息には、抜き打ちの面談、身体調査まで行い、万が一の時は、保護し、虐待をした者たち、関わった関係者は刑罰を受けるところまで、一元化することが決まっている」
 横並びだったから、情報が分散することが、この問題の解決を遅らせたといっていい。それを一元化し、特化する機関とすることだ。
 ただ、これには問題がある。帝国は広すぎるのだ。機関は王都に置かれる。各地で置くほどの人員の配置はまだまだ難しいのだ。今は試験的に王都だけを厚く見て、それより外は、少しずつ広げていく形となる。
「随分と時間がかかりますね。ですが、我が家も協力を惜しみません。どうか、王都外への設置は、我が領地をお選びください」
 説明を聞いたマクルスは、協力を申し出てくれた。
「君が生きている内に出来るとは思えないが」
「後続に伝えておきます。忘れないように、お願いします」
「私も生きているとは思えない。私の後続にしっかり伝えよう」
 いい感じで話は終わるかに見えた。
「ですが、使用人の引き渡しは応じられません」
 サツキの生家の元使用人をマクルスはどうしても引き渡してくれない。
「どうしてだ?」
「ここだけの話にしてください。私の裏の仕事はルイ様から聞いているのですよね」
「ああ、聞いている」
「妖精を狂わせる香は一子相伝です。今は私しか知りません。あの使用人どもは、香の材料になります。今、その準備段階になっています」
 私の想像を斜め上にいくような話だった。まさか、あの使用人どもをそんな使い方をされるとは、思ってもいなかったのだ。
「普段は指名手配犯や、薬でいかれた人や、そういうのを材料に使っています。やむを得ない人を使うだけです。決して、善良な帝国民には手を出しません。我々は帝国の敵にはならない。ですが、あの使用人どもは随分とやり過ぎていましたので、私情ではありますが、香の材料にすることとなりました」
「彼らにも家族がいるだろう」
「あれほどの悪評がたったんですよ。家族からも、友人知人からも縁を切られました。私は、過去に伯爵家に雇われていた使用人たちも全て、孤立無援にして、集めました。もう、テラス様が探しても、あの伯爵家に関わった無事な使用人はいません」
「作り方は聞かない。その使用人どもは、最後、どうなる?」
「生きたまま、苦しんで、香の材料になります。別に、恨みがあるから、とか、そういうわけではありません。そういう作り方です」
「わかった。では、使用人どもは諦めよう」
 生きたまま苦しむのだ。サツキの望み通りとなっていると確認できたので、私はマクルスを解放した。
「あの、聞いてもいいですか?」
「答えられることであれば」
「伯爵令嬢は、確かに、死んだんですよね」
「私が証明した」
「………」
 この男がどこまで知っているのか謎だ。下手なことをして、マクルスに妙な疑惑を生まれさせてしまったな。


 このマクルスという男、とんでもないことをどんどんとしていくのだ。
 伯爵家の領地はそれはそれは恵まれていた。誰もが、当主になりたいのだ。しかし、話し合っても話し合っても、誰も下がらないのだ。
 当然だ。サツキは、血縁たち全てに手紙を送ったのだ。そこで、「あなたこそ、当主に相応しいとわたくしは思っていました」なんて綺麗な字で書かれていたら、特別だと思ってしまうだろう。生前のサツキからの手紙で、捨てた野心を拾い上げ、戦ったのだ。そして、とうとう、領地で内戦となったのである。
 内戦となった時、被害にあうのは、領地民だ。そのまま逃げればいいのだが、領地民もまた、伯爵家の財産である。領地から勝手に離れてはいけないのだ。その許可を出すのが伯爵家の当主なのだが、サツキが亡くなったことで、不在となっていた。当主を決めよう、と血縁同士で戦っているのだ。しかも、この内戦には、外野まで参加しているのだ。わけのわからない利権を得るために、他家の貴族が参加して、激化していったのだ。
 これには、さすがに気の毒になった帝国は、内戦中、税をおさめなくていい、という特例を出した。だから、領地民は得られた収穫物はそのまま持っていられたのだ。
 収穫できれば、だ。
 現実は、あまりの激戦に、実りは燃やされ、踏み荒らされ、大変なことになってしまった。
 サツキが生きていた頃、サツキ独自で、非常食の備蓄を各地で行っていた。それは、きちんと魔法で守られた倉庫だったため、戦火を逃れたのだ。その備蓄により、二年はどうにか、領地民も飢えをしのいだ。それも、三年目で終了だ。食料を得られない上、治安は最悪だ。もう、領地にしがみ付いていられないので、領地民は帝国に訴えたのだ。
 領地民の訴えは初年度からずっとあったのだ。しかし、帝国は無視した。そして、内戦が始まって三年目になって、答えを出した。

 領地民は伯爵家の財産である。財産の流出を帝国が許可することは、独裁となってしまう。よって、移動は許可しない。

 もう、領地はめちゃくちゃになっていた。領地民も随分、減ったのだ。そこに、和解案を持ってきたのは、伯爵家次男マクルスである。
「一人で統治するから、争いが起こるんだ、上手に分割すればいい。当主については、その統治が一番よく出来た者にまかせられるように、帝国に判断をしてもらうよう、私のほうから願い出よう。それが一番、公平だ」
 それに不満を訴えたのは、味方をした外野の貴族たちである。よくわからない利権を与える、とした契約書を持ってきたのだ。
「それ、帝国を通しているか? こういう未来の契約は、確実性がないことから、不正となるため、帝国は絶対に許可しない。だから、民間同士で行うだけだ。それは、絶対に守らなければならない契約ではないな」
 肝心の帝国は、この契約を不許可とした記録が残っていたのだ。この事から、外野の貴族たちは、大損害を受けることとなった。
 こうして、マクルスがどこからか持ってきた分割統治の提案書を見せて、そのまま採用されたのだ。


 分割領地の図面を見せてもらった。見事な出来に、私は感動した。
「あの伯爵家次男に、こんな才能があるとはな。ぜひ、帝国の文官に欲しかった」
「誘ったんですけど、生家の稼業を継ぐこととなっているから、と断られてしまいました」
「まあいいでしょう。ルイ様という繋がりがあります。あの毒虫は使えます」
「毒虫って」
 皇族ルイ様は、友人を虫扱いされて、不愉快そうに顔を歪める。
 サツキからの手紙は途絶えた。新聞は相変わらず、忘れた頃に出てくる。
 私は毎年、悲劇の令嬢を題材とした戯曲と舞台を公演させた。その仕事も伯爵家次男マクルスに丸投げした。伯爵家は兄が当主となっているというが、次男のほうが使えるな。よくある話だ。
 そうして、サツキの悲劇を帝国全土、忘れさせないようにして、私はサツキが来るのを待っていると、とうとう、皇帝ラインハルト様の悪い病気が出てきた。
「ハーレムを作ろう」
「もう、いい歳なんだから、やめなさい」
 この男の尻ぬぐいを私は散々やったのだ。女関係は、もう、病気でしかない。これで子どもを作れるようだったら良かったんだが、そうではないんだよな。そこだけが残念だ。
 女関係さえなければ、優秀な皇帝だ。サツキへの情熱が冷めたわけではない。気晴らしとして、皇帝の要望を叶えることにした。
 後ろ暗い女を集めるための貴族の繋がりはある。こういう時こそ、頑張ってもらった。ハーレムの場は、使用人を必要としない、魔法具である。こういう時、サツキから受けた知識が役に立った。それのお陰で、使用人を必要としないハーレムを作り出せたのだ。
 認識阻害をして、城の者にもわからないようにした。ついでに、入れる者も私と皇帝、あとは特別な許可が下りた者のみ、と制限をかけた。そうして、人を集め、妖精の契約をして、皇帝の秘密のハーレムは完成した。
 本当に女好きだ。気が向いたら、昼でも夜でも行くのだ。病気だな、病気。それなりの年齢だというのに、元気だから、呆れるしかない。
 一通りの女は集めたのだ。見た目も中身も、様々な女たちだ。ただ、訳アリだ。だいたい、貧民なんだろう。まともな平民とか貴族は、あれだ、借金のため売られた先で出たのだろう。
 そうして、ハーレムの中でも派閥が出来るのだが、それは、ハーレムの中だけである。外への連絡手段も絶たれているため、その派閥も役に立たないのだ。
 そういうのをなんとはなしに見ながら、私は惰性で世話をしていると、皇帝ラインハルト様はとんでもない要求をしてきた。
「ここにいるのは、未婚だし、子どもも産んだことがない女ばかりだ。せっかくだから、出産経験のある、出来れば、母乳が出る女を入れたい」
「変態だ」
「いいだろう!!」
「変態皇帝だ」
「そういうのも好きなんだ!!」
 この男、女の趣味は広かった。どれが一番いいですか? と聞いても、どれも気に入るのだ。
 別に、美しくなくていいのだ。
 別に、痩せてなくていいのだ。
 別に、胸が大きくなくていいのだ。
 この男は、ただ一つを探しているのだろう。それが見つからなくて、様々な女を抱いては捨てていた。
 そんないるかどうかわからないのを探させた。無理なら無理で、皇帝を説得するのは私の役目だ。くだらない。
 そういう気持ちで待っていれば、あの伯爵家の次男じゃないほう、つまりは、伯爵家当主から打診があったのだ。珍しいことがあるものだ、とそれを受け入れて、女を迎え入れてみれば、とんでもないこととなっていた。
 すっかり美しくなったサツキだった。
 経歴では、子どもは五人いるという。五人も産んでいる女はどうだろうか、なんて疑っていたが、そんなもの、どうでもよくなった。
 サツキはもう、私のことを初対面のような顔をしていた。私はいつもの口上を述べ、サツキの手をとる。
 私の記憶の中では、サツキの手も腕も傷だらけだった。少しずつ、軟膏で治していたのだ。それも、綺麗になっていた。
 契約をしなければいけない。
 万が一のために、妖精の契約をするのは絶対だ。サツキは笑顔で私を見上げていた。
 妖精の契約なんか、出来るはずがないんだ。サツキには、私の妖精がついていた。もう、サツキは妖精避けをしていなかった。

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