魔法使いの悪友

shishamo346

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嘘つき

交わらない話

 翌日、恐る恐ると私は私室に入る。私室のドアを少しだけ開けておいたお陰で、部屋に充満していた香の煙は霧散していた。
「ルキエル?」
 ルキエルを呼んで、中を探す。
 ルキエルは人肌がないと眠れない、と言っていたくせに、私のベッドでぐっすりと眠っていた。なんだ、私、いらないじゃないか。
 ベッドの周辺を見回してみれば、ベッドの端に手枷が落ちていた。ルキエルが無理矢理外したから、手枷に血がこびりついていた。
 ただの人ではわからない香の影響は部屋に残っているかもしれないので、私は窓をあけて換気する。そうして、それなりに部屋の空気が清浄っぽくなった頃に、ルキエルは目を覚ました。
 私はベッドの脇に座って、ルキエルが目を覚ますのを待っていた。ルキエルは、そんな私に気づいておらず、それよりも、何か感じるのか、苦しそうだ。
「ルキエル、ほら、朝だ」
「き、気持ち悪い」
 ルキエルは口をおさえて、何かを堪えていた。その様子に、私の経験が働いた。
「ほら、吐きなさい」
 適当な器を持っていき、ルキエルを起こした。そうすると、ルキエルは堪えられるはずもなく、吐き出した。といっても、胃液しか出てこない。吐くものが胃の中に残っていないのだ。液体を苦しそうに吐き出して、ルキエルは、倒れ込んだ。
「すまない、昨夜は私がやりすぎた」
「昨日の夜、俺、何してた?」
「………覚えてないのか?」
「頭痛い。これが、二日酔いってやつか」
 ルキエルは昨夜のことを綺麗に忘れているように見えた。
 もしかしたら、これは芝居かもしれない。
 大量の香を体内に受け入れたルキエルは泣いて、本音を吐き出した。私は想像すらしていないルキエルの本音に、胸が締め付けられ、一睡も出来なかった。
 ルキエルは、昨夜のことをなかったことにしようとしているかもしれない。
 だが、苦しそうにしているルキエルの姿は、妖精憑きであれば、普通に見られる光景である。あの香は、妖精憑きにとっては、本当に恐怖なのだ。これまで受けたことがないただの人のような苦痛等を妖精憑きたちは受けるのだ。経験がないから、妖精憑きたちは、今のルキエルのように、起き上がることが出来なくなることは普通だ。
 体内に高濃度の香を受けたルキエルが、無事でないのは当然なのだ。
 だが、それを信じるには、昨夜の本音は衝撃的すぎた。信じたくても、信じられない。口では信じる、なんて言ったが、本音を聞いてしまった私は、また本音を隠しているのでは、と疑ってしまう。
「私の名を呼ぶな、といつ、私はルキエルに言ったんだ?」
「何の話だ?」
「昨夜の話だ」
「………俺、そんなこと言ったんだ」
 気まずそうにベッドに深くもぐりこむルキエル。反応が可愛いな、本当に。
 だけど、私は容赦なくルキエルの顔をさらけ出させる。
「恥ずかしいだろう!!」
「色々と言ってたぞ。私のことを嘘つきだと」
「それは、まあ、俺は貧民だから。あんたが俺の約束破るのは、仕方のない話だしな」
「どんな約束だ?」
「大したことじゃない。もう、気持ち悪いから、あっちいけよ。また吐きそうだ」
 ルキエルの顔色は蒼白を通り越して真っ白だ。確かに、体調は悪いだろう。
 もっと聞き出してやりたかったが、ルキエルの体調を整えるのが先だ。私は使用人に綺麗な水や果物を頼み、ルキエルの側にいた。
 しばらくして、使用人から話を聞いたオクトがやってきた。
 恐る恐る、とノックして入ってくるオクト。私がルキエルの側にいるのを見て、色々と覚悟した顔になっていた。
 ルキエルは私の手を握って、やっと落ち着いたのか、うつらうつらとしていた。そこに、オクトが物音をたてないように側にやってきたが、ルキエルは気づいて、上体を起こそうとする。
「寝てていいから!!」
「恥ずかしいだろう!!」
 ルキエルとしては、オクトの前ではしっかりした姿を見せたいのだ。だけど、私とオクトで、ルキエルをベッドに倒した。
「無理をするな。ルキエルみたいになった子飼いの妖精憑きをいっぱい見てる」
「お前、本当に血縁だな」
 ちょっと怯えたようにルキエルはオクトを見上げた。身の上に起きたことをオクトは子飼いの妖精憑きたちにしていることをルキエルは知ってしまう。
 オクトだって隠しておきたいことはある。それを知られたことで、オクトは黙り込む。ここに、大きな溝が出来ていた。
 すぐに、ルキエルは笑顔を見せる。
「すっかり、お前も貴族だな」
「ルキエルが望めば、貧民より上の世界に引っ張り上げてやれるよ」
「興味ない」
 ルキエルはそっぽ向いて拒絶する。
 どれほど誘惑しても、ルキエルは貧民であり続けることを望んだ。
 私もオクトも、ルキエルを側に起きたい。その手段を持っているのだ。だが、それは力づくでやっていいことではない。
 ルキエルが望んでやっと出来ることだ。
 いつだって、ルキエルを平民にも、貴族にも出来る。その準備だって出来ているのだ。ルキエル自身には、それなりの能力があるから、魔法使いにだってなれる。表舞台を堂々と歩くことは可能なのだ。
 しかし、ルキエルはこの話題になると、すぐに拒絶する。
「昨日は悪かった。もう、タバコやめろなんて言わない」
 そして、昨夜、私が激怒した原因について、ルキエルは謝る。そうして、ルキエルは話題を反らすのだ。
「心配してくれてるんだから、仕方がない。でも、僕はほら、健康だから」
 オクトはルキエルを間に、私とは反対側に座って、ルキエルの手を握る。
 ルキエルはたぶん、体のどこかを触れることで、相手の体調とかを診れるのだろう。ルキエルは体調が悪いというのに、オクトのほうに顔を向けて、集中していた。
「オクトがタバコ吸ってるなんて、知らなかったんだ。お前、これっぽっちも香の匂いさせないんだもんな」
 すぐに、ルキエルはオクトの手を離した。それにオクトは苦笑する。
「子飼いの妖精憑きにもそう言われる。だけど、僕の体は、妖精の魔法が届かない」
「あれだな、若いからだな」
 笑うルキエル。ルキエルの言葉裏を読み取るオクトは、表情を引き締める。それはつまり、私は年寄だ、と言っているようなものだ。
「ほら、オクトは跡取りの仕事に行けよ。俺は、こうやって寝てれば、明日には帰れるから」
「もっと泊まっていけがいいだろう。仮病使っちゃえよ」
「妖精憑きに仮病は無理だ。病気にならないからな。今回のは、香が原因だってわかっているから、親父も許可してくれてるだけだろう」
「あれだけのものを体内にいれたんだ。回復だって時間がかかるって」
「俺が帰りたい」
 とうとう、ルキエルは私の手まで離してきた。
 泣きたくなった。ルキエルは私を拒絶している。その理由を昨夜、私は垣間見た。
 知ってしまったことで、私とルキエルの間に、修復できない大きな溝が出来てしまっていることに、私は気づかされた。もう、私とルキエルの間は終わっている。
 気まずくて、オクトは逃げ出した。どちらにしても、その逃げる口実をあえて、ルキエルはオクトに与えたのだ。
 そうして、再び、二人っきりとなると、ルキエルは体を私のほうに向けて、手を伸ばした。
「手、握って」
「いくらでも」
 一睡も出来ていないが、それよりも、ルキエルが求めてくれることに喜び、私は手をさしだした。
 ルキエルは、随分と弱っているのだろう。まるで子どもように笑って、喜んで、私の手を握って、しばらくして、眠った。





 人が側にいると眠れない。なのに、その日は珍しく眠っていた。ルキエルのことを傷つけていた事実を自覚して、それなりに精神が疲弊していたのだろう。
 私は座ったまま眠っていた。ルキエルの手は握ったままだ。ルキエルはというと、随分と顔色がうよくなって眠っていた。やはり妖精憑きは化け物だな。
 ルキエルを起こさないように手を離して、私は棚からタバコを取り出した。部屋の窓は全て閉められ、暖炉には細やかな炎が残されていた。部屋も随分と暖かかった。養子オクトがしたのだろう。使用人や家臣がやると、絶対に私は目を覚ます。
 私はルキエルが眠るベッドから一番離れた所の窓を開けて、タバコに火をつけた。なるべく、部屋に煙がいかないように、真っ暗な外に吐き出した。
「呆れた」
 だけど、妖精憑きであるルキエルは、敏感に感じて、目を覚ましてしまった。
 私は灰皿にタバコを押し込んで火を消したが、どうしても、煙が残ってしまう。
「そんな、気にしなくていいって。もう、いつでも俺は帰れるくらいに回復してる」
「何か食べるか?」
「いらない」
 体調が悪いから、とルキエルは食べ物も飲み物も拒絶していた。なのに、体調が良くなっても、全て拒絶する。
 やはり、昨夜のことをルキエルは覚えているな。
 全てを拒絶する言葉に態度で、ルキエルが嘘をついている、と私は感じた。しかし、それを面と向かってルキエルには言えない。すでに、昨夜、失敗してしまっているのだ。
 私がベッドの脇に戻るも、ルキエルは窓の向こうを見るように顔を向けていた。ただの人には見えない何かをルキエルは見ているようだ。
「今日は、いつもよりも、色々と見えるな。変な感じだ」
「まだ、香の影響が残っているんだろう。明日も泊まっていきなさい」
「帰る」
「なら、帰られないようにしてやろうか?」
 私はルキエルを搔き抱き、無理矢理、口づけする。
 気分でないと、ルキエルだって拒否する。今日はそういう気分でないルキエルは激しく抵抗した。それでも、鍛えていないルキエルは、私には勝てない。簡単にベッドに抑え込まれ、私に圧し掛かられるのだ。
「毎日、帰ると言えないほどのことをしてやる」
「やだって」
「どうせ、帰れば、父親にこういうことされるだろう」
「っ!?」
 ルキエルに対して、私は言ってはならないことを言ってやる。こうして、ルキエルをわざと傷つけてやる。
 ルキエルは私の頬を叩いた。可愛い拳だ。それでも、痛いものは痛い。
 子飼いの妖精憑きを相手にしているような気分になる。それは表情にも出ているのだろう。ルキエルは恐怖で真っ青になる。
「ご、ごめん」
 ルキエルは悪くない。悪いのは私だ。だけど、恐怖でルキエルは謝る。
 いつもそうだ。ルキエルは根本的に悪くない。悪いのは私だというのに、ルキエルは先に謝るのだ。それはわざとだ、今、気づいた。
「謝るんじゃない」
 先にルキエルが謝ることで、ルキエルは全てを許しているのだ。ルキエルは、私のやる事全て、寛容にも、許しているのだ。
 その事に、今、気づかされた。
 私はルキエルの上から退いた。ルキエルはそれなりに覚悟をしていたようで、私が離れたことに、驚いて、上体を起こした。
「ごめん、俺、気に障ることした?」
「私がルキエルに悪い事をしたんだ。ルキエルは悪くない。明日は、送っていこう。いい馬車を用意する」
「あのなぁ、俺みたいな貧民が、いい馬車に乗って帰ったら、目立つだろう」
「お忍び用だから、そこは偽装している」
「俺がイヤなんだよ。きちんと、貧民として扱えよ」
 ルキエルに顔をこれでもかと近づけてきた。間近にあるルキエルの顔に、私は衝動を起こしそうになる。それをどうにか我慢した。
 だというのに、ルキエルは私の下半身を容赦なく刺激するのだ。
「やめなさい。そんなことしたって、無駄だ」
 だが、それなりに訓練を受けている私には効かない。私の下半身は柔らかいままだ。
 ルキエルは意地になって刺激してくる。本当に、お前は、気まぐれで、私を振り回してばかりだ。
「今日は大人しく寝ていなさい」
「俺が帰ることが出来ないようなこと、いっぱいするんだろう?」
「悪かった!! ほら、寝なさい」
 私はルキエルをベッドに押し込んだ。
 気分となっていたのだろう。ルキエルは不満そうに頬を膨らませている。本当に、反応が可愛いな!!
「人肌がないと、寝られないんだけど」
「そう言って、昨夜は寝てたじゃないか!!」
「あれは、寝てたんじゃない。倒れたんだ」
 一気に、私は罪悪感に苛まれることとなる。昨夜、倒れるほどのことをルキエルの体にしたのは私だ。
 結局、私は罪悪感と、ルキエルの誘惑に負けて、一緒にベッドに横になることとなった。そうなると、ルキエルは無邪気に笑って、私の胸に顔を埋める。
「もう、あんたの体は、香で満たされてるな。こうやってると、頭クラクラする」
「酒に酔った感じか?」
「そうかもな。俺、酒に酔わないからわかないけどな。朝は、最悪だった。あんな風になるなんて、酒なんてこれっぽっちも良くないな」
「個人差だ。私は二日酔いにはならない」
 香を体内に満たしているのだ。酒にだって酔わないけどな。私もある意味、妖精憑きに近い。
 ただ、妖精憑きとは真逆だ。私は香によって作り出した体質だ。しかも、毒という副作用によって、寿命を削られ、内臓はボロボロときている。妖精憑きは神より与えられた奇跡だ。副作用すらない。
 ルキエルから吹きかけられる息に、私はくすぐったさを感じるも耐える。ここで、私が衝動に負けたら、ルキエルは明日も我が家に泊まることとなる。
「もう、約束を破らない。どんなことをしてほしい?」
 ルキエルの中では、その話は諦めの意味で終わったのだが、私は終わっていない。だから、あえて話題に出してやると、途端、ルキエルは私に背中を向けた。
「お前とは、もう二度と、約束なんかしない」
「私のことは名指しで呼んでいい」
「あんたのことは、もう、名前で呼ばない」
「呼んでほしい」
「俺は貧民で、あんたは伯爵様だ。立場をわきまえないといけない」
「オクトは名指しなのに?」
「オクトはまだ、跡取だ。伯爵になったら、オクトは俺の飼い主だ。もう、名前で呼ばない」
「そうか」
 オクトが爵位を継ぎたがらない理由が、これでわかった。
 私が生きている内に、爵位をオクトに引き渡す話があったのだ。しかし、それをオクトは猛反対した。
 オクトは、ルキエルと友達でいたいのだ。そして、どうにか、爵位を受け継ぐ前までに、ルキエルを側に置きたい。そのために、準備もしている。
 あとは、ルキエルを説得するだけだ。この説得が困難だ。いや、不可能だ。
 ルキエルの頭の中は復讐ばかりだ。ともかく、全てを滅茶苦茶にしないと気が済まない。その復讐には、私も含まれているのだ。
 だから、私はさっさと爵位をオクトに引き渡して、家門から離れるつもりだ。こうすることで、家門にまでルキエルの復讐が及ばないようにしなければならなかった。
 私はルキエルを後ろから抱きめ、うなじに軽く口づけをする。
「ならば、私が伯爵でなくなったら、名前で呼んでくれるな」
「呼ばない。あんたは嘘つきだ」
 ルキエルの怒りは根深った。どうしても許してくれない。本当に、女みたいだな。誰よりも男であろうとしているというのに、ルキエルの性根は女みたいだ。
「義体を見つけなかったからといって、そんな怒らなくても」
「あれは、約束じゃない!! あれはお願いだ。守らなくていけない、そういう話じゃないだろう。最初から、無理だとわかっていることだ」
「私の記憶の中では、ルキエルの我儘は全て、叶えてやっているんだがな」
「………」
 黙り込むルキエル。本当に根深いな、その守れていない約束。
 ルキエルは嫌がらせなのか、私の胸に後頭部をぐりぐりと押し付ける。
「あんたはさ、気づくのが遅すぎるんだよ。どんなことだって、遅すぎたら、取り返しがつかないんだ。だから、お袋を親父に取られちゃったんだよ」
「それは、過去の話だ。今はルキエルがいる」
「身代わりだろ」
「ルキエルが一番だ」
「お袋が今、生きていたら、そうじゃない。もう、一番なんて言うな。俺は貧民だ。お袋の身代わりでいい」
「………」
 言い返せない。そうかもしれないからだ。
 ルキエルの母サツキが生きていたら、今、私の腕の中にルキエルはいないかもしれない。それ以前に、ルキエルはサツキの身代わりで女の扱いをされていなかっただろう。
 また、失敗した。私はここで、言い訳しないといけなかった。黙り込んでしまったから、ルキエルは私に背中を向けたまま、眠ってしまった。

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