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初めて
上書き
ルキエルが眠ってから、私はそっと離れた。ベッドの惨状を見て、私はものすごい後悔をすることとなる。
女となったルキエルが処女だとわかって、冷静さを失った。どうしても、ルキエルの初めてを奪いたかった。その行為が、まさか、ルキエルのトラウマを刺激することになるとは、思ってもいなかった。だけど、止められなかった。
泣いて、叫んで、だけど、いつもの惰性で手枷で拘束されてしまったルキエルは、逃げることも、抵抗することも出来なくて、私に一方的に蹂躙された。だけど、さすがに、ルキエルの初めてを奪うだけで、それ以上の蹂躙が出来なかった。
泣いて、叫んで、痛がって、下半身を血まみれになったルキエルを見て、さすがに私も冷静になった。
手枷で拘束されていたルキエルの両腕は、それなりに傷だらけになっていた。それも、見る見るうちに、傷が消えていく。妖精憑きは頑丈だ。ちょっとした傷なら、すぐに治ってしまう。
きっと、ルキエルの下半身の流血もすぐに治ってしまうだろう。翌日には、回復している。
眠っていても、ルキエルは涙を流していた。きっと、過去のトラウマの元となっている記憶を夢で見ているのだろう。悪いことをしてしまった。
罪悪感に苛まれているが、ずっと、そうしているわけにはいかない。屋敷が騒がしくなってきた。ルキエルの姉リンネットが戻ってきたのだろう。
私は私室を出て、使用人に、ルキエルのための食事を頼んでから、戻ってきたオクトの元に向かった。どういうわけか、リンネットが私の行き先から向かってきた。
「マクルス様、ルキエルはどこよ」
戻るなり、リンネットはルキエルを探していた。帰った、とは思わないところが、女の勘の鋭さだ。
「ルキエルは休んでいる。色々と無理をさせたからな」
「そうですか。では、ルキエルを連れて帰るわ。オクト、連れてきて」
「………」
当然のようにリンネットはオクトに命じる。オクトは笑顔のまま無言となる。オクト、誰の味方をするべきか、わかっている。いくらリンネットのお願いといえども、オクトは私に逆らうことはない。
リンネットはオクトが動かないのを見て、舌打ちして、私の横を通り抜けようとする。それを使用人とオクトが止めた。
「離して!!」
「リンネット、今日は一人で帰って。ルキエルはその、今日はお泊りだよ。もともと、そういう話だから」
「聞いてない!!」
「そりゃ、俺とルキエルの間での話だよ。お泊り会することとなってたから」
オクト、次から次へと、嘘をべらべらと並べ立てるな。俺は無表情で、オクトに感心する。私の跡継ぎとしての成長を垣間見た。
使用人にまで止められたリンネットだが、諦めない。
「アタシは聞いてない。ルキエルと話させて」
「オクト、送ってやれ」
「ちょっと、離してよ!!」
だが、ここは私の領域だ。リンネットの要求が通るわけがないのだ。私が命じれば、オクトは喜んで、暴れるリンネットを抱き上げて去っていく。リンネットは、聞くだけで育ちが悪いとわかる罵詈雑言を叫んでいるが、オクトはこれっぽっちも気にしない。笑顔で、リンネットを連れていく。
屋敷の外に出ても、リンネットは大人しくしない。叫び、抵抗して、と大変だ。そんなリンネットの相手をオクト一人が笑顔でこなしているのだ。
「本当に趣味が悪いな」
爪でひっかかかれても笑顔のオクトに、私はさすがにうすら寒いものを感じた。あれは、好みとか、そういうものだけで済ます話ではないな。
リンネットが無事、馬車で去っていくのを確認してから、私は食事を持って、私室に戻れば、ルキエルがベッドにもぐりこんで、寝たふりをしていた。そんなルキエルに、私はつい、顔を綻ばせた。
一人寝が出来ないから、とルキエルは私と同衾だ。いくら私でも、すっかり憔悴してしまっているルキエルに手を出すことはない。
普段は性悪なルキエルも、過去のトラウマを蘇る行為をされたので、大人しい。私にべったりくっついて、目を閉じて、すぐに健やかな寝息をたてた。
私は生業から、一人寝でないと眠れない。人がそばにいると、身の危険を感じて、眠れないのだ。それが、ルキエル相手でもだ。
だが、その日は、ルキエルを抱きしめて、女としての柔らかさに心地よさを感じて、うとうととしていた。本当に珍しいことだ。
つい、悪戯心で、眠っているルキエルの腰を撫でたりした。柔らかく、滑らかな肌。
「ん、あっ」
眠っているルキエルは、軽い愛撫で喘いだ。熱い息を吐き出して、体を寄せてくる。もっとしてほしいのだろう。
女の体躯を見て、だが、私は興奮することはない。視線をルキエルの顔を向けると、衝動が動いた。女になっても、ルキエルはルキエルだ。もともと、綺麗な男だ。女のように扱われているため、体躯は華奢だが、やはり、男だとわかるものがある。
少し刺激しすぎた。ルキエルはうっすらと瞼をあけた。
「ん、何?」
体が熱いことは自覚しない。ただ、何か感じているだけだ。ルキエルは、私の胸に顔を埋め、深い眠りに入ろうとした。
「あんたの胸の音、煩い」
理不尽な苦情を言いながら、ルキエルは笑った。
「ルキエルがいるんだ。眠れない」
「人が近くにいると寝られないだけだろう」
「朝まで同衾したことがあるのは、ルキエルだけだ」
「今日は寝れないよな。俺の体、まだ、女だし」
「辛くないか?」
魔法で体を変異させるのだ。ルキエル自身、何もないはずがない。
「あんたに初めて奪われたよりは、大したことないよ。まだ、中に何か入ってる感じがする」
よく聞く話だ。男でも、女でも、初体験で下半身に一物を初めて受け入れると、違和感を感じるという。普通の男では、わからない経験だ。
「明日は、帰られるか?」
だから、ルキエルのことが心配になった。私はどうしても男側だ。ルキエルの腰を撫でてやる。たったそれだけで、ルキエルは色っぽい顔となる。
「今から、あんたに抱いてもらうから、帰れないだろうな」
「こら、やめなさい」
私はこれっぽっちもその気ではないというのに、ルキエルは私の一物を刺激する。私は無心で、その刺激を受け流した。いくらルキエル相手といえども、私は耐えられる。
ルキエルの柔らかい手で刺激されて、気持ち良いのだが、どうにか、萎えさせた。それでもルキエルは諦めず、口で奉仕までしてきた。
「やめなさい」
さすがに、私はルキエルの頭をつかんで、私の一物から離す。
「寝てる俺に悪戯しておいて、それはないだろう」
「そんなつもりでやっていたわけじゃない!! ただ、ルキエルの体が心配で触っていただけだ」
本当にそうなんだ。ただ、ルキエルはどう触っても、それを快楽として受け止めてしまうので、勝手に出来上がっただけである。
ルキエルは諦めず、私の手をつかむなり、無理矢理、ルキエルの蜜口へと持っていく。濡れていた。そこに、さらに、私の指を挿入させるのだ。
「やめなさい!!」
すぐに私は手を引っ込めた。
「あんなにイヤがっていたじゃないか。泣いて、叫んで」
「きっと、馴れる。男の体でもそうなんだ」
自嘲するルキエル。否定出来なかった。男とは違って、女は、一度、男を受け入れてしまえば、だいたい、二度目以降は、上手い男相手であれば、痛いことはない。ルキエルは、男の体で、散々、悦楽を覚えさせられている。簡単に、女としての快楽を見つけ出せるだろう。
諦めず、ルキエルは私の手をつかむ。だが、同じようなことはしない。今度は、細やかなふくらみのあるルキエルの胸に私の手をあてた。
「あんたに、抱いてほしい。そうすれば、俺は、もう、親父に無理矢理された過去を克服できる」
「男と女では、根本が違う」
「塗り変えてほしい。頼む」
取引ではない。ルキエルは、ただ、過去の出来事を乗り越えたいがために、私に抱かれようとしていた。
男と女では、根本が違う。ルキエルが女として抱かれたとしたって、過去で受けた恐怖は男の身の上だ。誤魔化せるとは思えない。
「胸、大きいほうがいいんだよな。けど、そういうのは無理だから」
「その事は忘れてくれ!! 私は、ルキエルだから、いいんだ。ルキエルの初めて、全てがほしい」
胸が小さい、と言ったことを引きずられた。本当に、失言ばっかりだ。
そして、私は本音をぼろぼろと吐き出した。もう、我慢するのをやめた。
「どうか、私の名前を呼んでほしい」
「なんで?」
「呼ばれたいからだ。嬉しかった」
ルキエルは私の名前を呼ばない。許可を出しても、絶対に呼んでくれなかった。閨事で、ルキエルを蹂躙している最中、願っても、ルキエルは聞き入れなかった。
なのに、過去のトラウマを受ける瞬間、ルキエルは私の名前を呼んでくれた。恐怖からだ。それでも、名前を呼ばれた瞬間、私は嬉しかった。
ルキエルは、苦い表情で黙り込んだ。もう一押しだな。
「私の名前を呼んで、お願いしてくれ。そうしたら、私もルキエルを抱こう」
「ひ、卑怯だ」
ルキエルの耳元で囁いてやれば、ルキエルは顔を真っ赤にして悔しそうに顔を歪める。その姿が可愛らしくて、つい、我慢が出来ず、口づけしてしまう。ちょっと舌をいれてやれば、ルキエルはさらに求めようと舌を差し出してきたが、私はお預けとばかりに、離れた。
「ひ、卑怯だぞ!!」
「ほら、呼んでくれ。今更、私の名前を知らない、なんてわけがないだろう。あれだけ、私の名前を呼んでくれたんだ」
「………マクルス、どうか……きょ、協力、してほしい」
「喜んで」
ルキエルの上に圧し掛かり、私は激しく口づけする。最初は軽く、数度行い、それも、ルキエルが私の頭へと両腕を伸ばすので、深く、舌を差し込んでの口づけとなった。
口づけしつつ、私はルキエルの体をまさぐった。胸が小さい、といわれたことが気になるようで、私がルキエルの胸に手をかけると、ルキエルがそれを拒絶するように、私の手をつかんだ。だが、私が滑るようにルキエルの指先を撫でてやると、呆気なく、ルキエルの手は離れていった。
最初は愛撫から、どんどんと、下半身へと手を伸ばしていく。そこは、いつもの通りだ。ルキエルのあばらや腰を撫でてやると、ルキエルは腰を跳ねさせて、小さく声をあげる。
「ん、やぁ、もっとぉ」
「もっと、味わいたい」
執拗な口づけにルキエルは苦しがるが、私は続けた。ルキエルは一方的に蹂躙されるしかない。私が与える刺激に、ルキエルはもう、答える余裕をなくした。
そこに、さらにルキエルの蜜口に私の指を挿入してやると、ルキエルは体を強張らせた。どうしても、初めての時の痛みを思い出してしまい、体が身構えてしまうのだろう。
私はゆっくりと、まずは指一本から、慎重に、ゆっくりと挿入していく。初めての頃とは違い、もう、ルキエルの蜜口の奥は、指をずるずると飲み込んでいけるほどとなっていた。だから、あっという間に、私の指の根本まで、ルキエルの蜜口は飲み込んだ。
ルキエルが気持ち良いという場所は、もう、わかっている。散々、指で調べたのだ。そこを執拗に刺激してやれば、とうとう、ルキエルは顔を背けて、嬌声をあげた。
「ああああああーーーーーーー!!」
散々、刺激してやったのだ。欲しい所に与えられ、ルキエルは呆気なく絶頂する。ガクガクと全身を震わせて、私の指を強く締めた。
「上手にいけたな。ほら、これが、ルキエルの味だ」
私はルキエルの蜜でべったりと汚れた指をルキエルの口に突っ込んだ。ルキエルは、私の腕を掴み、私の手についたルキエルの蜜を丹念に舐めた。
「本当に、お前は、性悪だ」
「綺麗に、舐めた。ご褒美、欲しい」
もっと強い刺激が欲しいルキエルは、縋るように私を見上げた。だが、私は動かない。冷たくルキエルを見下ろす。
「おねだりする時は、どう言えばいいか、教えた」
「………マクルス、どうか、情けを」
「っ!?」
私の一物をぐっとつかむルキエル。私は衝動を抑えきれなかった。
ルキエルの腰をつかむなり、私の一物をルキエルの蜜口に挿入する。まだ、しっかりと緩めたわけではないが、濡れているお陰で、ルキエルの蜜口にずるりと私の一物は挿入された。
処女としての傷はもう、癒えているようだった。流血はない。ただ、まだ、受け入れるには、ルキエルの中は狭い感じだ。私は気持ち良いが、ルキエルはそうではないだろう。
少し、痛みで顔を顰めるルキエル。最奥に私の一物を受け入れて、初めての時のような恐怖はないようだ。しばらくして、安堵したように、私に笑いかけてた。
「マクルス、動いて」
可愛らしい声でおねだりされたから、私はその願いを叶えてやる。
角度をかえ、浅く、深く、と繰り返して、ルキエルの反応を見た。まだ、気持ち良い、というものがわからないルキエルは、痛みがないだけで、ただ、突かれるのを受け入れている、惰性みたいな顔を見せていた。
「あ、そこ」
それも、いい所をかすめたりすれば、ルキエルは声をあげた。
ルキエルが喜ぶ場所を見つけるのには、それほど時間がかからなかった。ルキエルも、すぐに気持ちよさに溺れて、腰を動かして、あえて、その場所に私の一物の先がいくように、調整した。
「やあ、そこ、いい!!」
そして、私はルキエルがわざわざ教えてくれた場所を私の一物で強く突いてやる。もう、ルキエルの導きはいらない。覚えた。
私の下で激しく乱れるルキエル。私の体に密着しようと、私の背中に両手を回して、口づけしようと、顔を寄せてくる。私はルキエルが求める口づけを与え、挿入の速度を緩めないように気を付けた。
舌を絡め、ルキエルの腰を掴み、ごつんと私の一物で、ルキエルが喜ぶ蜜口の奥を突いてやると、どんどんと中が収縮されて、私の一物を絞ってきた。
「ルキエル、もう」
「ん、きて」
私はルキエルの蜜口から最奥で、白濁を放った。その衝撃に、ルキエルはのけ反った。私の白濁は、妖精憑きにとっては、刺激が強すぎるものだ。それを女として受け入れるのだ。絶頂よりも、さらに上にものをルキエルは受けて、のけ反り、全身をガクガクと震わせ、苦しんだ。
「もう、やめよう」
「ダメだ!!」
離れようとするも、それをルキエルが拒否した。さらに、足を私の腰にからめて、深く繋がろうとする。
「もっと、あんたで塗り変えたい」
「私の体液は、妖精憑きにとっては、毒に近いものだぞ」
私では、想像も出来ないほどの苦痛を受けているルキエル。決して、気持ち良いものではないだろう。ルキエルの表情は、苦痛で歪んでいる。
「これでは、お前の父親と変わらない」
「いいんだ、これで。ここに、あんたを感じる」
ルキエルは、腹をさすって、嬉しそうに笑う。それは、妖精憑きでしかわからない感覚なんだろう。
「もう、大丈夫だ。馴れた」
ルキエルの体に、何か起きたのだろう。もう、ルキエルはいつものように、誘うように私を見上げている。そこに、苦痛はない。
「マクルス、もっと、情けがほしい」
すっかり、ルキエルは、私を衝動を動かすのが、うまくなった。
ルキエルは、落ち着いた頃に、男に戻った。私の目の前でわざわざ、男に戻ったのだが、瞬きをしている間の、一瞬のことだった。体躯も、背の高さも、全て、男のルキエルに戻った。
素っ裸のままだったから、私はつい、衝動で、ルキエルを抱きしめてしまう。
「なんだ、まだ足りないのか」
「私のルキエルが戻ってきた」
「女のほうが、お袋に近いのに」
「どうだっていい」
ルキエルは信じてくれないが、私は、言い続ける。もう、信じてもらわなくていい。それよりも、腕の中にあるルキエルの存在を確認して、安堵する。
「もう、女になるんじゃない」
「あんた、女好きじゃないか」
「………時々は、何もしない、ただ、こうやって、過ごすようにしよう」
私はルキエルを膝に乗せ、ソファに座る。
ルキエルと二人っきりになると、だいたい、閨事だ。こうやって、何もしないで、くっついている過ごし方は、数えるほどだ。養子オクトが屋敷にいる時でも、ルキエルの気分で、閨事に持ち込まれたりすることもある。
ルキエルは甘えるように私の胸にもたれかかる。
「それじゃあ、取引にならない」
「好きなだけ、道具を持っていきなさい。我が家にある道具は、全て、ルキエルのものだ」
「それは、俺とあんたが閨事しての報酬だ」
「私も、もう歳だ。私の歳で、孫持ちだっている。あの取引は、もうそろそろ、私にはきついな」
「………そうか」
嘘なんだが、ルキエルは否定してくれなかった。それは、ちょっと傷ついた。そこは、嘘でも否定してほしかったな。
私の嘘に納得したルキエルは、それ以上、強く求めなかった。大人しく、私の膝に座って、恍惚に微笑む。
「後で、子どもを作れ、なんていうなよ。もう、女にならないからな」
「なんで、そんな話になるんだ!?」
「出来るからだ」
ルキエルは自らの腹を撫でていう。女になって、何か、感じたのだろう。
「そんなこと言わない。我が家は妖精憑きの天敵だ。それなりに知識がある。過去に、そういう実験もされたが、失敗したんだ」
「どういうことだ?」
「男が女となって子を作ることは、妖精憑きといえども、理を曲げることだ。それは、妖精憑きの寿命を削ることとなって、結局は、母子ともに死ぬこととなった」
「そっか」
「そんなこと、ルキエルにさせない。もう二度と、女になるんじゃない」
理を破ることは、何か犠牲が必要なことだ。いくら、妖精憑きといえども、それを可能とする寿命を持ち合わせていなかった。
「女になるのだって、きっと、寿命を削ることだ。もう、するんじゃない」
「………わかった」
ルキエルは、暗い表情で頷いた。何か隠しているようだったが、私は聞き出さなかった。どうせ、ルキエルは話してくれない。
女となったルキエルが処女だとわかって、冷静さを失った。どうしても、ルキエルの初めてを奪いたかった。その行為が、まさか、ルキエルのトラウマを刺激することになるとは、思ってもいなかった。だけど、止められなかった。
泣いて、叫んで、だけど、いつもの惰性で手枷で拘束されてしまったルキエルは、逃げることも、抵抗することも出来なくて、私に一方的に蹂躙された。だけど、さすがに、ルキエルの初めてを奪うだけで、それ以上の蹂躙が出来なかった。
泣いて、叫んで、痛がって、下半身を血まみれになったルキエルを見て、さすがに私も冷静になった。
手枷で拘束されていたルキエルの両腕は、それなりに傷だらけになっていた。それも、見る見るうちに、傷が消えていく。妖精憑きは頑丈だ。ちょっとした傷なら、すぐに治ってしまう。
きっと、ルキエルの下半身の流血もすぐに治ってしまうだろう。翌日には、回復している。
眠っていても、ルキエルは涙を流していた。きっと、過去のトラウマの元となっている記憶を夢で見ているのだろう。悪いことをしてしまった。
罪悪感に苛まれているが、ずっと、そうしているわけにはいかない。屋敷が騒がしくなってきた。ルキエルの姉リンネットが戻ってきたのだろう。
私は私室を出て、使用人に、ルキエルのための食事を頼んでから、戻ってきたオクトの元に向かった。どういうわけか、リンネットが私の行き先から向かってきた。
「マクルス様、ルキエルはどこよ」
戻るなり、リンネットはルキエルを探していた。帰った、とは思わないところが、女の勘の鋭さだ。
「ルキエルは休んでいる。色々と無理をさせたからな」
「そうですか。では、ルキエルを連れて帰るわ。オクト、連れてきて」
「………」
当然のようにリンネットはオクトに命じる。オクトは笑顔のまま無言となる。オクト、誰の味方をするべきか、わかっている。いくらリンネットのお願いといえども、オクトは私に逆らうことはない。
リンネットはオクトが動かないのを見て、舌打ちして、私の横を通り抜けようとする。それを使用人とオクトが止めた。
「離して!!」
「リンネット、今日は一人で帰って。ルキエルはその、今日はお泊りだよ。もともと、そういう話だから」
「聞いてない!!」
「そりゃ、俺とルキエルの間での話だよ。お泊り会することとなってたから」
オクト、次から次へと、嘘をべらべらと並べ立てるな。俺は無表情で、オクトに感心する。私の跡継ぎとしての成長を垣間見た。
使用人にまで止められたリンネットだが、諦めない。
「アタシは聞いてない。ルキエルと話させて」
「オクト、送ってやれ」
「ちょっと、離してよ!!」
だが、ここは私の領域だ。リンネットの要求が通るわけがないのだ。私が命じれば、オクトは喜んで、暴れるリンネットを抱き上げて去っていく。リンネットは、聞くだけで育ちが悪いとわかる罵詈雑言を叫んでいるが、オクトはこれっぽっちも気にしない。笑顔で、リンネットを連れていく。
屋敷の外に出ても、リンネットは大人しくしない。叫び、抵抗して、と大変だ。そんなリンネットの相手をオクト一人が笑顔でこなしているのだ。
「本当に趣味が悪いな」
爪でひっかかかれても笑顔のオクトに、私はさすがにうすら寒いものを感じた。あれは、好みとか、そういうものだけで済ます話ではないな。
リンネットが無事、馬車で去っていくのを確認してから、私は食事を持って、私室に戻れば、ルキエルがベッドにもぐりこんで、寝たふりをしていた。そんなルキエルに、私はつい、顔を綻ばせた。
一人寝が出来ないから、とルキエルは私と同衾だ。いくら私でも、すっかり憔悴してしまっているルキエルに手を出すことはない。
普段は性悪なルキエルも、過去のトラウマを蘇る行為をされたので、大人しい。私にべったりくっついて、目を閉じて、すぐに健やかな寝息をたてた。
私は生業から、一人寝でないと眠れない。人がそばにいると、身の危険を感じて、眠れないのだ。それが、ルキエル相手でもだ。
だが、その日は、ルキエルを抱きしめて、女としての柔らかさに心地よさを感じて、うとうととしていた。本当に珍しいことだ。
つい、悪戯心で、眠っているルキエルの腰を撫でたりした。柔らかく、滑らかな肌。
「ん、あっ」
眠っているルキエルは、軽い愛撫で喘いだ。熱い息を吐き出して、体を寄せてくる。もっとしてほしいのだろう。
女の体躯を見て、だが、私は興奮することはない。視線をルキエルの顔を向けると、衝動が動いた。女になっても、ルキエルはルキエルだ。もともと、綺麗な男だ。女のように扱われているため、体躯は華奢だが、やはり、男だとわかるものがある。
少し刺激しすぎた。ルキエルはうっすらと瞼をあけた。
「ん、何?」
体が熱いことは自覚しない。ただ、何か感じているだけだ。ルキエルは、私の胸に顔を埋め、深い眠りに入ろうとした。
「あんたの胸の音、煩い」
理不尽な苦情を言いながら、ルキエルは笑った。
「ルキエルがいるんだ。眠れない」
「人が近くにいると寝られないだけだろう」
「朝まで同衾したことがあるのは、ルキエルだけだ」
「今日は寝れないよな。俺の体、まだ、女だし」
「辛くないか?」
魔法で体を変異させるのだ。ルキエル自身、何もないはずがない。
「あんたに初めて奪われたよりは、大したことないよ。まだ、中に何か入ってる感じがする」
よく聞く話だ。男でも、女でも、初体験で下半身に一物を初めて受け入れると、違和感を感じるという。普通の男では、わからない経験だ。
「明日は、帰られるか?」
だから、ルキエルのことが心配になった。私はどうしても男側だ。ルキエルの腰を撫でてやる。たったそれだけで、ルキエルは色っぽい顔となる。
「今から、あんたに抱いてもらうから、帰れないだろうな」
「こら、やめなさい」
私はこれっぽっちもその気ではないというのに、ルキエルは私の一物を刺激する。私は無心で、その刺激を受け流した。いくらルキエル相手といえども、私は耐えられる。
ルキエルの柔らかい手で刺激されて、気持ち良いのだが、どうにか、萎えさせた。それでもルキエルは諦めず、口で奉仕までしてきた。
「やめなさい」
さすがに、私はルキエルの頭をつかんで、私の一物から離す。
「寝てる俺に悪戯しておいて、それはないだろう」
「そんなつもりでやっていたわけじゃない!! ただ、ルキエルの体が心配で触っていただけだ」
本当にそうなんだ。ただ、ルキエルはどう触っても、それを快楽として受け止めてしまうので、勝手に出来上がっただけである。
ルキエルは諦めず、私の手をつかむなり、無理矢理、ルキエルの蜜口へと持っていく。濡れていた。そこに、さらに、私の指を挿入させるのだ。
「やめなさい!!」
すぐに私は手を引っ込めた。
「あんなにイヤがっていたじゃないか。泣いて、叫んで」
「きっと、馴れる。男の体でもそうなんだ」
自嘲するルキエル。否定出来なかった。男とは違って、女は、一度、男を受け入れてしまえば、だいたい、二度目以降は、上手い男相手であれば、痛いことはない。ルキエルは、男の体で、散々、悦楽を覚えさせられている。簡単に、女としての快楽を見つけ出せるだろう。
諦めず、ルキエルは私の手をつかむ。だが、同じようなことはしない。今度は、細やかなふくらみのあるルキエルの胸に私の手をあてた。
「あんたに、抱いてほしい。そうすれば、俺は、もう、親父に無理矢理された過去を克服できる」
「男と女では、根本が違う」
「塗り変えてほしい。頼む」
取引ではない。ルキエルは、ただ、過去の出来事を乗り越えたいがために、私に抱かれようとしていた。
男と女では、根本が違う。ルキエルが女として抱かれたとしたって、過去で受けた恐怖は男の身の上だ。誤魔化せるとは思えない。
「胸、大きいほうがいいんだよな。けど、そういうのは無理だから」
「その事は忘れてくれ!! 私は、ルキエルだから、いいんだ。ルキエルの初めて、全てがほしい」
胸が小さい、と言ったことを引きずられた。本当に、失言ばっかりだ。
そして、私は本音をぼろぼろと吐き出した。もう、我慢するのをやめた。
「どうか、私の名前を呼んでほしい」
「なんで?」
「呼ばれたいからだ。嬉しかった」
ルキエルは私の名前を呼ばない。許可を出しても、絶対に呼んでくれなかった。閨事で、ルキエルを蹂躙している最中、願っても、ルキエルは聞き入れなかった。
なのに、過去のトラウマを受ける瞬間、ルキエルは私の名前を呼んでくれた。恐怖からだ。それでも、名前を呼ばれた瞬間、私は嬉しかった。
ルキエルは、苦い表情で黙り込んだ。もう一押しだな。
「私の名前を呼んで、お願いしてくれ。そうしたら、私もルキエルを抱こう」
「ひ、卑怯だ」
ルキエルの耳元で囁いてやれば、ルキエルは顔を真っ赤にして悔しそうに顔を歪める。その姿が可愛らしくて、つい、我慢が出来ず、口づけしてしまう。ちょっと舌をいれてやれば、ルキエルはさらに求めようと舌を差し出してきたが、私はお預けとばかりに、離れた。
「ひ、卑怯だぞ!!」
「ほら、呼んでくれ。今更、私の名前を知らない、なんてわけがないだろう。あれだけ、私の名前を呼んでくれたんだ」
「………マクルス、どうか……きょ、協力、してほしい」
「喜んで」
ルキエルの上に圧し掛かり、私は激しく口づけする。最初は軽く、数度行い、それも、ルキエルが私の頭へと両腕を伸ばすので、深く、舌を差し込んでの口づけとなった。
口づけしつつ、私はルキエルの体をまさぐった。胸が小さい、といわれたことが気になるようで、私がルキエルの胸に手をかけると、ルキエルがそれを拒絶するように、私の手をつかんだ。だが、私が滑るようにルキエルの指先を撫でてやると、呆気なく、ルキエルの手は離れていった。
最初は愛撫から、どんどんと、下半身へと手を伸ばしていく。そこは、いつもの通りだ。ルキエルのあばらや腰を撫でてやると、ルキエルは腰を跳ねさせて、小さく声をあげる。
「ん、やぁ、もっとぉ」
「もっと、味わいたい」
執拗な口づけにルキエルは苦しがるが、私は続けた。ルキエルは一方的に蹂躙されるしかない。私が与える刺激に、ルキエルはもう、答える余裕をなくした。
そこに、さらにルキエルの蜜口に私の指を挿入してやると、ルキエルは体を強張らせた。どうしても、初めての時の痛みを思い出してしまい、体が身構えてしまうのだろう。
私はゆっくりと、まずは指一本から、慎重に、ゆっくりと挿入していく。初めての頃とは違い、もう、ルキエルの蜜口の奥は、指をずるずると飲み込んでいけるほどとなっていた。だから、あっという間に、私の指の根本まで、ルキエルの蜜口は飲み込んだ。
ルキエルが気持ち良いという場所は、もう、わかっている。散々、指で調べたのだ。そこを執拗に刺激してやれば、とうとう、ルキエルは顔を背けて、嬌声をあげた。
「ああああああーーーーーーー!!」
散々、刺激してやったのだ。欲しい所に与えられ、ルキエルは呆気なく絶頂する。ガクガクと全身を震わせて、私の指を強く締めた。
「上手にいけたな。ほら、これが、ルキエルの味だ」
私はルキエルの蜜でべったりと汚れた指をルキエルの口に突っ込んだ。ルキエルは、私の腕を掴み、私の手についたルキエルの蜜を丹念に舐めた。
「本当に、お前は、性悪だ」
「綺麗に、舐めた。ご褒美、欲しい」
もっと強い刺激が欲しいルキエルは、縋るように私を見上げた。だが、私は動かない。冷たくルキエルを見下ろす。
「おねだりする時は、どう言えばいいか、教えた」
「………マクルス、どうか、情けを」
「っ!?」
私の一物をぐっとつかむルキエル。私は衝動を抑えきれなかった。
ルキエルの腰をつかむなり、私の一物をルキエルの蜜口に挿入する。まだ、しっかりと緩めたわけではないが、濡れているお陰で、ルキエルの蜜口にずるりと私の一物は挿入された。
処女としての傷はもう、癒えているようだった。流血はない。ただ、まだ、受け入れるには、ルキエルの中は狭い感じだ。私は気持ち良いが、ルキエルはそうではないだろう。
少し、痛みで顔を顰めるルキエル。最奥に私の一物を受け入れて、初めての時のような恐怖はないようだ。しばらくして、安堵したように、私に笑いかけてた。
「マクルス、動いて」
可愛らしい声でおねだりされたから、私はその願いを叶えてやる。
角度をかえ、浅く、深く、と繰り返して、ルキエルの反応を見た。まだ、気持ち良い、というものがわからないルキエルは、痛みがないだけで、ただ、突かれるのを受け入れている、惰性みたいな顔を見せていた。
「あ、そこ」
それも、いい所をかすめたりすれば、ルキエルは声をあげた。
ルキエルが喜ぶ場所を見つけるのには、それほど時間がかからなかった。ルキエルも、すぐに気持ちよさに溺れて、腰を動かして、あえて、その場所に私の一物の先がいくように、調整した。
「やあ、そこ、いい!!」
そして、私はルキエルがわざわざ教えてくれた場所を私の一物で強く突いてやる。もう、ルキエルの導きはいらない。覚えた。
私の下で激しく乱れるルキエル。私の体に密着しようと、私の背中に両手を回して、口づけしようと、顔を寄せてくる。私はルキエルが求める口づけを与え、挿入の速度を緩めないように気を付けた。
舌を絡め、ルキエルの腰を掴み、ごつんと私の一物で、ルキエルが喜ぶ蜜口の奥を突いてやると、どんどんと中が収縮されて、私の一物を絞ってきた。
「ルキエル、もう」
「ん、きて」
私はルキエルの蜜口から最奥で、白濁を放った。その衝撃に、ルキエルはのけ反った。私の白濁は、妖精憑きにとっては、刺激が強すぎるものだ。それを女として受け入れるのだ。絶頂よりも、さらに上にものをルキエルは受けて、のけ反り、全身をガクガクと震わせ、苦しんだ。
「もう、やめよう」
「ダメだ!!」
離れようとするも、それをルキエルが拒否した。さらに、足を私の腰にからめて、深く繋がろうとする。
「もっと、あんたで塗り変えたい」
「私の体液は、妖精憑きにとっては、毒に近いものだぞ」
私では、想像も出来ないほどの苦痛を受けているルキエル。決して、気持ち良いものではないだろう。ルキエルの表情は、苦痛で歪んでいる。
「これでは、お前の父親と変わらない」
「いいんだ、これで。ここに、あんたを感じる」
ルキエルは、腹をさすって、嬉しそうに笑う。それは、妖精憑きでしかわからない感覚なんだろう。
「もう、大丈夫だ。馴れた」
ルキエルの体に、何か起きたのだろう。もう、ルキエルはいつものように、誘うように私を見上げている。そこに、苦痛はない。
「マクルス、もっと、情けがほしい」
すっかり、ルキエルは、私を衝動を動かすのが、うまくなった。
ルキエルは、落ち着いた頃に、男に戻った。私の目の前でわざわざ、男に戻ったのだが、瞬きをしている間の、一瞬のことだった。体躯も、背の高さも、全て、男のルキエルに戻った。
素っ裸のままだったから、私はつい、衝動で、ルキエルを抱きしめてしまう。
「なんだ、まだ足りないのか」
「私のルキエルが戻ってきた」
「女のほうが、お袋に近いのに」
「どうだっていい」
ルキエルは信じてくれないが、私は、言い続ける。もう、信じてもらわなくていい。それよりも、腕の中にあるルキエルの存在を確認して、安堵する。
「もう、女になるんじゃない」
「あんた、女好きじゃないか」
「………時々は、何もしない、ただ、こうやって、過ごすようにしよう」
私はルキエルを膝に乗せ、ソファに座る。
ルキエルと二人っきりになると、だいたい、閨事だ。こうやって、何もしないで、くっついている過ごし方は、数えるほどだ。養子オクトが屋敷にいる時でも、ルキエルの気分で、閨事に持ち込まれたりすることもある。
ルキエルは甘えるように私の胸にもたれかかる。
「それじゃあ、取引にならない」
「好きなだけ、道具を持っていきなさい。我が家にある道具は、全て、ルキエルのものだ」
「それは、俺とあんたが閨事しての報酬だ」
「私も、もう歳だ。私の歳で、孫持ちだっている。あの取引は、もうそろそろ、私にはきついな」
「………そうか」
嘘なんだが、ルキエルは否定してくれなかった。それは、ちょっと傷ついた。そこは、嘘でも否定してほしかったな。
私の嘘に納得したルキエルは、それ以上、強く求めなかった。大人しく、私の膝に座って、恍惚に微笑む。
「後で、子どもを作れ、なんていうなよ。もう、女にならないからな」
「なんで、そんな話になるんだ!?」
「出来るからだ」
ルキエルは自らの腹を撫でていう。女になって、何か、感じたのだろう。
「そんなこと言わない。我が家は妖精憑きの天敵だ。それなりに知識がある。過去に、そういう実験もされたが、失敗したんだ」
「どういうことだ?」
「男が女となって子を作ることは、妖精憑きといえども、理を曲げることだ。それは、妖精憑きの寿命を削ることとなって、結局は、母子ともに死ぬこととなった」
「そっか」
「そんなこと、ルキエルにさせない。もう二度と、女になるんじゃない」
理を破ることは、何か犠牲が必要なことだ。いくら、妖精憑きといえども、それを可能とする寿命を持ち合わせていなかった。
「女になるのだって、きっと、寿命を削ることだ。もう、するんじゃない」
「………わかった」
ルキエルは、暗い表情で頷いた。何か隠しているようだったが、私は聞き出さなかった。どうせ、ルキエルは話してくれない。
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