魔法使いの悪友

shishamo346

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始まってもいない関係

迂闊に言ってはいけないこと

 私は今、捨てられるかどうかの分岐点に座っている。本当の意味で、地べたに正座しているのだ。そんな私の目の前には、ベッドに座っているルキエルがいる。
 激怒しているルキエルは、綺麗な顔を無表情にして、私を冷たく見下ろしていた。
「で、いつの話だ?」
 そう言って、私の頭をルキエルの綺麗な足が踏みつける。
「ルキエルと取引関係になるよりも昔の話だ!!」
 嘘は言っていない。本当にそうなんだ。
「浮気はしていない。信じてくれ」
「お袋に片思いしていながら、女遊びしてたけどな」
「色々と事情があったんだ!! 私の女遊びは、跡継ぎ争いをしないために始めたことだ」
 本当にそうなんだ。今な亡き兄と私で、跡継ぎ争いが勃発する危険があった。
 私自身は、大人しくしているつもりだった。しかし、家臣たちが勝手に争ったのだ。だったら、跡継ぎらしくない醜聞を立てれば、と私は手っ取り早く女遊びをしたのだ。
「あんたの兄貴が死んだ後も女遊びは続いてたな」
「養子にとったオクトを跡継ぎにするためだ!! 結婚したらどうだ、と勝手に縁談が持ち上がってきたから、止められなかったんだ」
「俺とこんな関係になるまでは、女遊びをしてたってのにな。また始めればいいだろう。女好きなんだし」
「オクトはきちんと跡継ぎと認められたんだ。もう、必要ない」
「女相手だと、万が一、子ができちゃうもんな。俺なら、妊娠の心配もないから、好き放題出来るもんな!!」
 また、間違えた!! 建前を口にしたため、さらにルキエルの怒りが業火となってきた。
「ち、違う!! ルキエルとは本気で」
「お袋の身代わりだろう。嘘つくな」
「今はそうじゃない。信じてくれ」
 私はルキエルの足をつかむと、軽く口づけする。ルキエル、それだけで、表情を色っぽく歪める。
「嘘ばっかり言いやがって」
「嘘じゃない!! 道具だって、好きなだけ持っていけばいい。閨事はしたくないというのなら、しなくていいんだ。私の側に、ただ、いてくれるだけでいい」
「アホか。男で、しかも貧民の俺が、伯爵様の側にただいるだけなんて、許されるわけないだろう。って、やめろ!?」
 ルキエルの足の指先を舐めると、ルキエルが慌てて引っ込めた。
「あんたは奉仕される側だろう。こんなことするな」
「私がルキエルのご機嫌とりをしたいんだ。気持ちよくなかったか?」
「汚いだろう」
「妖精憑きは、妖精が常に綺麗に保ってくれる」
「っ!?」
 私は無理矢理、ルキエルの足をつかむと、足の指に舌を這わせた。今度は、ルキエル、抵抗しない。
 ゆっくりと足を舐め、ルキエルの前に跪き、ルキエルの手をとって、指先を撫でてやる。盗み見れば、ルキエルは少し機嫌悪そうに頬を膨らませている。もう少しで、機嫌が直るな。
 ルキエルは快楽に弱い。何せ、毎夜、実の父親の娼夫となって抱かれているのだ。長年、父親の行為を受け入れたため、ルキエルの体は、ちょっとした刺激でも、すぐに篭絡出来てしまう。
 そのまま、ルキエルに口づけしようと、顔を近づけた。
「そこまで」
 珍しく、ルキエルが片手で私の口を塞いだ。
「いつもいつも誤魔化せると思うなよ」
 ルキエルはベッドから立ち上がるなり、身なりを整える。
「もう、あんたとはこんなことしない。道具もいらない。じゃあな」
「る、ルキエル、待て!!」
「待たない!!」
 もう馴れたものだ。ルキエルは妖精を使って、ドアを開かないようにした。くそ、私自身は妖精の魔法は通じないが、家はそうではないのだ。ドアに魔法をかけられてしまえば、私でもどうしようもない。
 が、私だって、いつまでも、後手に回っていられない。力づくでドアを蹴り破った。
「なっ!?」
 走って逃げていたルキエルは、ドアが吹き飛ぶ音に驚いて、足を緩める。そこに、私は持前の脚力でルキエルに追いつき、ルキエルの腰に腕を回して抱き上げた。
「は、離せ!!」
「もう一度、話し合おう!!」
「イヤだ!!」
「だったら、離さない!!!」
 周囲に人が集まってきたが、私はなりふり構っていられない。ここで醜態を晒せば、ルキエルも私の立場を思いやって、抵抗をやめてくれるはずだ。
 私の読みはあっていた。ルキエルは抵抗をやめた。悔しそうに顔を歪めている。男なのに、力がないことに、ルキエルのバカ高い自尊心が傷ついたのだろう。
 屋敷の使用人たちは、ルキエルが大人しく私に従っている様子に、さっと見えないどこかへと消えていく。この場で起こった修羅場は、誰も見ていないことになる。そう、使用人たちは教育を受け、指示もされているのだ。
 ルキエルを下ろすも、腰に回した腕は外さない。
「ドアを壊すなんて」
 視界の端に壊れたドアを見て、ルキエルは苦笑する。
「あんなドア、いくらだって替えられる。ルキエルに捨てられなければ、安いものだ」
「ばっかだな。あのドア一つで、貧民の奴隷、何人買えると思ってんだよ」
「ルキエルは金貨百枚出しても惜しくない」
「ドア開けたままで、何するんだよ」
「恥ずかしいことなんてしない。ただ、側にいて、話すだけでいい」
「俺があんたと話すことなんて………何もない」
 暗い表情になるルキエル。
 ルキエルは父親によって、屋敷に閉じ込められている。外に出たとしても、復讐の種まきをするためだ。平民地区に行くのだって、情報収集である。ルキエル個人の楽しみはない。
 私はルキエルを抱きしめる。
「別に、話さなくていい。こうやって、側にいてくれるだけでいいんだ。そうだ、私が話そう」
「どんな話?」
「何が聞きたい?」
「あんたが話すことなら、何でも聞きたい」
 やっと機嫌がよくなったルキエルは、子どものように笑って、私に寄りかかった。
 そして、また、私は失言して、ルキエルは窓から飛び降りて逃げた。






 私は何度目かわからないが、執念深く、ルキエルが暮らす屋敷に行った。いつもは週に一回程度、城にいる友人と話すついでに、立ち寄るのだ。
 しかし、ルキエルを激怒させてしまったので、私は日参した。きっと、ルキエルは怒りなんて忘れて、いつものように出迎えてくれる、と期待したのだ。
 最初は、まあ、たまたまルキエルがいないのだろう、程度に考えていた。出迎えは、屋敷の主であるルキエルの父アルロであったり、ルキエルの兄ライホーンだったりしたのだ。だが、日参しているというのに、ルキエルは出迎えてくれない。
 完全に避けられてる!! 私は、とうとう、ルキエルの父アルロに泣きついた。
「何やったんだ、お前」
 事情は知らないが、アルロは呆れていた。どうやら、家の中も大変らしい。
「ルキエルの機嫌が悪いから、家族全員でご機嫌取りしてる」
「それでも、夜はやることやってるんだよな」
「………」
 アルロを殴りたくなった。そこはぐっと我慢した。仕方がない。アルロはもう、ルキエルから抜け出せないのだ。ルキエル自身だけでなく、ルキエルの周囲まで滅茶苦茶にしたので、アルロはルキエルの復讐に従うしかないのだ。そのために、ルキエルを亡くなった妻サツキの身代わりとして、閨事を強要しているのだ。
「怒るところも、サツキに似てる」
 どうやら、閨事の最中も、ルキエルはアルロを振り回しているようだ。一体、何をやっているのやら。
 アルロは私が持ち込んだ酒をグラスに注いで、一気に飲み込んだ。
「ルキエルに、何やったんだ? また、くだらないことじゃないだろうな」
「くだらないことって、いつも、ルキエルが勝手に怒ってるだけだろう。私は悪くない」
「どうせ、ルキエルが怒るようなことを話したんだろう。いつもそうだな」
「………」
 否定できない。私は、アルロが出してきた酒をグラスに注いで、一気に飲み干した。くそ、私が持ってきた酒よりも口当たりがいいな。
 さすが、王都の貧民街の支配者だ。そこら辺の貧民とはわけが違う。客人に出す物だって、金をかけている。
 こういう所が、伯爵令嬢サツキを惚れさせたのだろう。残念ながら、私はサツキには見向きもされなかったな。
 気遣いの出来るアルロと、奉仕されるのが当然としている私は真逆だ。アルロは伯爵令嬢サツキに尽くした。私には出来ないことだ。
 だから、ルキエルの扱いに失敗する。
 私が沈黙したから、アルロも悟った。
「で、何を話したんだ?」
「昔、お前にお願いしたことがあっただろう。男の抱き方を学びたいと」
「いい男娼を紹介してやったな。俺が教育した男だ」
「たった一度、奉仕させた話をしたんだ。ルキエルは上手に出来ている、と誉めただけだ」
「あいつは、妙な所で女だからなー。嫉妬だな」
「上手だと誉めたんだぞ!!」
「妖精憑きは、ともかく、嫉妬深いんだ。同じ男で、他にも手をつけた、と聞いて、嫉妬したんだ」
「女だっていっぱいいたぞ!!」
「性別が違うだろう。女は、仕方がないと納得してるんだ」
 やっと、ルキエルが怒った理由がわかったが、あまりにもバカバカしい事だった。そんな、ルキエルと出会う前の、しかも、前戯未満で終わった時の事だ。
 アルロが紹介した男娼は、かなり、上手だったのだが、男という時点で、私は衝動がこれっぽっちも動かなかった。結局、男娼の自尊心をへし折っただけである。
 そういう事情を知っているのは、男娼を紹介したアルロのみである。それ以外では、私は沈黙している。ルキエルとの関係が泥沼になっているから、きっと、私は男も抱ける、と皆、思い込んでいるだろう。違うんだなー。
 立場上、それが言えないので、私は黙っている。肯定も否定もしていないのだ。嘘をついてはいない。
 しかし、このまま、ルキエルの嫉妬でこじれるのは困る。
「いい加減、きっちりしとけ。いっそのこと、囲えばいいだろう」
「逃げられたら、立ち直れない」
 周囲は、囲え囲え、と言っているが、失敗したら、もう、終わりだぞ。俺とルキエルの関係は終わりだ。きっと、触れさせてもくれなくなる。
 アルロは呆れながらも、私のグラスに酒を注いで、勧めてくる。
「酔った勢いでいけ」
「酔えないんだよ!! 薬だって、一切、効かないんだからな。お前みたいに、薬で狂ってやっちゃうことが出来ないんだよ!!!」
「………」
 失言だった。アルロの古傷を抉った。だけど、アルロはそれを責めたりしない、大人なんだ。ルキエルさえ関わらなければ、アルロ、まともなんだがなー。
 解決の道が見当たらない。まず、ルキエルが私を避けてるのだ。弁解することすらさせてくれない。
「よし、ルキエルの部屋に行こう」
 相手が来るのを待っているからダメなんだ。私はルキエルの部屋に向かった。酔った勢い、と言い訳しよう。
 アルロと一緒に、私はルキエルの部屋に向かった。
「やだ、酒臭い!!」
 途中、ルキエルの姉リンネットが、父親であるアルロの横を通るなり、父親が一番傷つくことを言って去っていく。それを言われて、アルロ、むちゃくちゃ傷ついて、ちょっと歩く速度が遅くなった。娘を持つ父親って、大変だなー。
 アルロは父親として、言葉でグサグサとめった刺しされながらも、私に付き合ってくれた。
 しかし、いざ、ルキエルの部屋の前に立つと、そこからが進めない。どう言い訳すればいいのやら。いや、酒の勢いだから、言い訳なんていらない。いつもの調子で話を進めていけばいいと思う、たぶん。
 無駄に取り繕うのはやめて、ノックしようと手をあげたら、ドアが勝手に開いた。
「何か御用ですか?」
 ルキエルが拾って育てた貧民ナナキがルキエルの部屋から出てきた。これはこれで、色々とルキエルに言いたくなるな。
「ルキエルはどうした」
 硬直してる私の代わりに、アルロがルキエルを遠まわしに呼んだ。
 ナナキはわざわざ一歩下がって、部屋を見回せるようにした。
「御覧の通り、ルキエル様は外出中です」
「聞いてないぞ!!」
「平民の友達の所に行っただけですよ。報告する必要ないでしょう」
「………」
 それには、アルロは黙り込むしかない。ルキエルの平民の友達は、アルロと私も知る者である。そこは、唯一、ルキエルが自由に行き来が許されている場所だ。
 ルキエルの平民の友達ダクトは、家が商売をしている。店は王都の中心街である。ダクトはだいたい、その店にいるのだ。店主であるダクトの父は、ルキエルに恩を感じているため、ルキエルのことを何よりも優先して動く。ダクトはルキエルの兄弟姉妹と仲が良く、信頼が厚いので、家族ぐるみの付き合いとなっている。だから、ルキエルが平民の友達であるダクトの家に遊びに行くことは、許されている。
「逃げたか」
 まさか、それを利用して、ルキエルが家から逃亡するとは。
「あなたもしぶとく生きていますね」
「?」
 貧民ナナキは、意味がわからないことを私に言ってきた。
 貧民ナナキは、とても綺麗な男だ。男も女も魅了してしまうほどの美貌を持っている。ここまで綺麗だと、妖精憑きだと思われるだろう。
 貧民ナナキは、元妖精だ。妖精が生まれ持った羽根を神に捧げると、人になれるという。ナナキは、わざわざ人となって、ルキエルの側に来たのだ。その目的は、ルキエルを手に入れたいからだろう。妖精にはよくあるのだ。
 ナナキには、人では見えない何かが見えているのだろう。私を見て、嘲笑う。
「さっさと、ルキエル様と別れて、死ねばいいのに」
「どうせ、ルキエルよりも先に死ぬ身だ。待っていれば、先に死ぬ」
「………腹が立つ。こんな男がいいだなんて」
 ナナキは私を憎悪をこめて睨んで、ドアを乱暴に閉めた。






 貧民ナナキのお陰で、ルキエルをどうにか見つけ出すことが出来た。ルキエル、本当に、平民の友達ダクトの家にいたのだ。
 ダクトの家は、店と一体となっている。店の奥が、住居兼店員の休憩所となっている。そこに、ルキエルが甘い菓子を食べていたのだ。
「な、どうして!?」
「ルキエル様に用があると」
 ダクトの父は、何の疑問もなく、私をルキエルの元へ案内したのだ。ほら、私は店にとって、上客だから。ダクトの父が今、王都の中心街で店を持てるのも、私が取り立てたお陰である。
 その橋渡しをしたのが、ルキエルの亡き母サツキだ。サツキが貧民となったダクト親子を私に紹介した。その縁で、私はダクトの父を取り立てたのである。ダクト親子の貧民期間はわずか一か月と短かったが、それからずっと、ルキエルたち家族に受けた恩を忘れず、今もこうして、突然、仕事の邪魔となっても、優先して持て成すのだ。
「ここにある物を屋敷に運んでおいてくれ」
「承知いたしました」
 名目で商品を頼んで、ダクトの父を追い出した。
 こうして、私は気まずい、という顔をするルキエルと部屋で二人っきりとなった。
「ルキエル、久しぶりだな」
「………」
「これから、私も昼にするんだ。一緒に食べよう」
「………」
「ルキエル、私が悪かった」
「っ!?」
 ゆっくりと距離をつめて、手を握れば、ルキエルは無言のままだが、頬を赤く染めた。
「近くに、露店が立っている。ルキエルが好きそうなものがあるか、一緒に見に行こう」
「………けど、親父が」
「お前の父親からは許可をとってある。ほら、一緒に行こう」
「ルキエル!!」
 そこに、運悪く、何も知らないダクトが入ってきた。
 私がルキエルに迫っているのを見て、ダクトは固まる。もちろん、ルキエルは反射で私から離れた。
「どうした、ダクト」
「え、その、すぐそこで露店が出てるから、一緒に行こうかと」
「行く!!」
 同じことを私が言った時は渋ったのに、ダクトには二つ返事だよ!!
 ルキエル、ダクトの腕をつかむと、さっさと出て行った。ダクトは、顔を引きつらせながらも、私を見ないように、部屋を出ていった。
「ルキエル様、どちらに?」
「外に新しい露店が出てるっていうから、見に行ってくる!!」
「ダクト、ほら、金を持っていきなさい。それでは足りないだろう」
 遠くで、ルキエルとダクトの父が話していた。ダクトの父はルキエルのために、ダクトに臨時の小遣いまで渡した。

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