魔法使いの悪友

shishamo346

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始まってもいない関係

続く関係、切れる縁

 数日後、屋敷にやってきたルキエルは、養子オクトと何やら口論となっていた。
「そういうことは、義父上に話さないほうがいい」
「あいつが先に言ったことだぞ!!」
「そうだけど、もう、終わった話だろう」
「いや、始まってもいない話だ」
「始まってないって、これから始まるというのか!?」
「始めないで終わりだ」
「意味がわからないよ!!」
 聞いている私だって、わけがわからない。ただ、ルキエルとオクト、本当に仲がいいな、なんて見ていた。時々、あの二人の仲を疑ってる。ほら、ルキエルの友達ダクトは、ルキエルのことを特別に見ている。だったら、同じく友達であるオクトも、ルキエルをそういう目で見てるんじゃないか、とばかばかしい妄想をしたものだ。頭まで、妖精を狂わせる香の毒にやられているな。
 始まった、終わった、という話題は、ただ一つだ。私の過去に、一度だけ相手をしてもらった男娼のことだろう。思い出しただけで、鳥肌がたつ。うまい下手ではない。やっぱり、男は無理なんだなー。
 同じ男だけど、ルキエルは全然平気である。むしろ、ルキエルと関係を結んでから、女全てを切り捨てた。娼館通いもぴたりも止めたのだ。そして、ルキエルを追いかけている私のことをルキエルはこれっぽっちも信じてくれない。過去がひど過ぎるからな。
 その酷い過去の延長線上に、たった一人の男娼である。しかも、男娼は口での奉仕で終了したのだ。もう、これっぽっちも私はその気にならなかった。一応、男娼を気持ちよくさせることは指だけでしたけど、それだけだ。損した気分だな。
 だけど、ルキエルを指だけで気持ちよくさせると、とても嬉しい。これが、バカになった、というやつだ。もう、私は重症だな。
 頭の中では、ルキエルとのいけないことを考えながら、今日は養子オクトがいるんだ、と言い聞かせて、談笑している二人の元に行く。
 明日は茶会本番ということで、ルキエルに手伝ってもらっていた。場所は庭でやることとなった。そこで、庭の手入れである。庭師にやらせればいいのだが、ほら、花とかは、うまく揃えられないから、ルキエルに魔法でやってもらうのだ。お陰で、随分と華やかな庭園となった。
 今は、ルキエルとオクトで一息つくように、茶と菓子を口にしている。
「ルキエル、こちらの都合ですまないな」
「これくらい、大したことないって。花が咲いてようが、俺はどうだっていいけど、貴族はそういうわけにはいかないからなー」
「貴族の詰まらない矜持だ。私もオクトも、どうだっていいんだがな」
「やっぱ、俺、貧民でいいや」
 最後、そうなるんだよな。私もオクトも、どうしても、ルキエルを貴族にしたいんだが、本人がイヤがってる。無理に貴族にしようとしたら、ルキエルは逃げるだろう。本当に、我儘で、手が負えない、女みたいな男なんだ。
 私とオクトの内心なんてルキエルは気にしない。目の前の美味しい菓子をお行儀よく食べる。
「そうそう、親父に頼んで、あんたが過去、関係持った男娼に会ったんだ」
「ルキエル、もう、それはやめろ!!」
「いいだろう。こいつが嘘ついてるかどうか、確認しただけなんだし」
 まだ繋がっている、と疑われている!! まず、繋がる以前だ。あの男が気持ちよくなっただけで、私はこれっぽっちも良くなかった。繋がりもしなかったよ!!!
 ルキエル、笑顔を消して、俺の顔色を見る。どういう反応をするかで、見極めようとしているな。
「名前も、顔も覚えていないが、どんな感じなんだ?」
 本当に覚えていないんだ。私が気持ちよくしてやったな、程度の記憶しかない。綺麗目の男娼だという話は覚えているが、それだけだ。
「あんたのこと、むちゃくちゃ上手かった、と誉めてたぞ。前戯がすごかったって」
「………」
 覚えていなくていいんだがな。たった一回、繋がってすらいないってのに、あの男娼、なんてこと言ってくれるんだ。
 ルキエル、再び、嫉妬で不機嫌な顔となる。
「覚えてるくらい、良かったんだな。本当に一回だけか?」
「一回って、まず、繋がってもいないぞ!!」
「口での奉仕はしたって言ってた!!! ほら、繋がってる!!!!」
 そういう意味で言えば、確かにそうだな、なんてアホなことが脳裏に横切った。
「そういう、生々しい話は僕のいないとこでしてよ!!」
 聞いてられないオクトは机をばんと叩いた。
 そりゃ、オクト、義父である私と友達であるルキエルがねんごろな関係なのは、養子の立場では耳にしたくないだろう。私もオクトが怒って、冷静になる。
「だったら、お前が向こうに行け」
 この場で、一番、厄介なのは、やはり、ルキエルである。オクトの苦情なんて右から左だ。それどころか、ここから排除である。
「明日は茶会本番だから、僕はここから離れられない」
「だったら、俺とこいつが離れる」
「手伝ってくれるって」
「姉貴が今日は待ってるって言ってたぞ。女は前日から、色々と大変だよな」
「迎えに行ってきます!!」
 オクト、簡単に排除された。ルキエルの姉リンネットの気が変わらない内に、とその場を離れたのだ。ついでに、近くにいた使用人たち、家臣たちもオクトについていった。総出で、リンネットを持て成す準備をするんだな。
 こうして、私は立ったまま、ルキエルは椅子に座ったままで対峙することとなった。
「ほら、座れよ」
 ルキエルは、魔法で椅子を動かした。わざわざ、机から離れた、私の隣りにぴったりと椅子を移動させる。私をルキエルの側に近づけさせないつもりだ。
「わかったわかった」
 だが、それは、私が椅子を動かせばいいだけだ。貴族は椅子を持ったりしない、というが、私はルキエルのご機嫌取りのためならば、ルキエルを片腕で抱き上げるほど、色々と捨てている。椅子だって机の側、しかも、ルキエルの隣りに移動させる。
 まさか、椅子を持って移動してくるとは、ルキエルも予想外の行動に、驚いた。
「あんた、ここでは一番偉い貴族なんだから、人にやらせろよ」
「今は、ルキエルの情夫だ」
 人目もないから、遠慮なく、私はルキエルの手に口づけする。それだけで、ルキエルは反応する。
「そんなんで誤魔化されないからな!! あんた、随分とあの男にしたんだな。今も待ってるって言ってたぞ!!!」
「勝手に、一人で盛り上がっているだけだ。私はあの男を練習台にしただけで、始まってもいない」
「あっちは始まってるみたいだったけど」
「私のただ一人はお前だけだ。ルキエルとこういう関係となってから、全て、切った。女遊びだってしていない。サツキが生きていた頃でも、私は女遊びを続けたんだ。死んだ後もだ。それも、ルキエルの情夫となってからは、全て、切り捨てた」
「女はな。だけど、男は終わってない」
「始まってないよ!!」
 あの男娼、ルキエルと、どんな話したんだ。後で、アルロに苦情を言ってやる。金での関係を簡単に漏らすな!!!
 私はルキエルの手を額にあてて、盗み見た。ルキエル、怒りがおさまらない、とばかりの顔をしている。何を聞いたのやら。
「どうすれば、信じてくれる? こういうのは、両方の話を聞いたルキエルの判断に委ねるしかないんだが」
「まず、前提が間違ってる。俺とあんたは、取引の関係だろう!!」
「それはもういいだろう!! 私はルキエルに夢中なんだ。取引なんか、もう、どうだっていいんだ。欲しいものがあれば、金で解決出来るものなら、いくらだってやろう。そうじゃないものでも、私はルキエルが望むなら、何だってしてやる」
「じゃあ、男とはきっちり、切れてこい。俺は、身代わりはまあ、いいけど、その中の一人はイヤだ」
 どうしても、過去、私がルキエルを母サツキの身代わりにしたことからは離れてくれない。もう、身代わりではないのに。
 妖精憑きだからだろう。妖精憑きは、ともかく独占欲が強く、嫉妬深い。どうしても、過ぎ去った過去が許せないのだ。
 これで、ルキエルが大人しく私に囲われてくれればいいんだが、そこも妖精憑きだから、気まぐれだ。その日はいいが、次の日には、どこかに飛んで行ってしまっている。子飼いの妖精憑きのように、力づくをルキエルにはしたくない。
 子飼いの妖精憑きには、散々なことをしていおいて、いざ、ルキエルを前にすると、そういうことをしたくなくなる。それどころか、隠したいのだ。怖がらせたくない。
 だから、私はルキエルのご機嫌とりをする。始まってもいないことだが、そこは、嘘でも頷く。
「わかった。ルキエルがそういうのなら、そうしよう」
「じゃあ、今から行こう」
「え、今から?」
「そうだ。俺の目の前で、きっちり、関係を断て」
「それ、ルキエルの前じゃなくていいことだろう!!」
「あんたがその男娼と切れたって言ったって、本当かどうか、わからないだろう!!」
 始まってもいないよ!! どんだけ嫉妬深く、疑り深いんだ!!! 面倒臭い女みたいだな!!!
 叫びたいが、私はぐっと我慢した。ルキエルを納得させないと、同じことに繰り返しだ。ルキエルなりに、どうしても許せない部分があるのだろう。
「わかったわかった。店はどこか知らないが」
「俺が知ってる。店知らないって、あんた、わざわざ呼び寄せてやったのかよ」
「行ったよ!!」
「ふーん、そうなんだー」
 また、ルキエルの機嫌を損ねた。もう、何言っても、ルキエルの機嫌は悪いままだな。
 私は色々とあきらめて、我が家の馬車を出して、ルキエルの案内で、その男娼がいる店に行った。
「時間外だよ」
「こいつが特別に金払う。昨日の男に会わせてくれ」
「あの………へ、へい!!」
 店番が最初は横柄な態度だが、ルキエルの後ろで私が睨んでやると、飛び上がるように店の奥へと去っていく。
「あんた、顔を覚えられるくらい、通ってんだな」
「仕事柄、裏方面で顔が広いだけだ」
 私が知らなくても、相手が知っていること、あるんだ。あるあるな話だよ!!
 しばらくして、名前も顔すら覚えていない男娼が店先に引っ張られるようにしてやってきた。
「誰だよって、お前か」
 ルキエルを見て、意地悪く笑う男娼。
「お前、伯爵様にしつくこするのは止めろと言っただろう」
「その伯爵様を呼んできた」
「え? ………あ」
 私を見て、男娼、真っ青になった。こいつ、一体、ルキエルとどんな話をしたんだ。私は聞き出したいが、内容いかんによっては、面倒臭いこととなるので、我慢した。
 改めて男娼を見たが、綺麗目の、小生意気な男だ。残念ながら、私は顔、覚えていないんじゃなくて、見てなかったんだな。ほら、男相手に、これっぽっちも衝動が起きなかったのだ。顔見たら、萎えると思ったんだな。
 だが、相手の男娼は私を覚えていた。気まずい、みたいに目を反らした。
「は、伯爵様、その節は、その、あなたを満足させられず」
「私とお前は、まず、そういう関係ではないな」
「それは、伯爵様が!」
「違うな」
「………はい、俺が嘘をつきました」
 空気を読んだのだろう。男娼のほうが折れた。
「それで、お前はこいつと、どこまでやったんだ?」
 もう、それはいいだろう!! そう叫びたいが、我慢した。ともかく、ルキエルの気を済ませないといけない。
「それは、普通に、手と口で奉仕だ」
「お前もこいつの奉仕を受けたんだってな。気持ち良かったって」
「上手だったよ、すごく」
 思い出したのか、色っぽい顔をする男娼。そんなたった一回のこと、忘れろ!! しかも、私は客だぞ!!!
 そんな男娼を見て、嫉妬で顔を歪めるルキエル。気が済むまで、と言ったが、やっぱり、止めるべきだった。
「ルキエル、ほら、一度だけだ。もういいだろう」
「なんで、お前はまだ、こいつと関係があるみたいな嘘をついたんだ?」
 まだ納得がいかないルキエル。嘘だとわかったんだから、それでいいだろうに。
 男娼、私の顔色を伺う。私は何も言えない。ただ、このまま、男娼が無言を貫くことは、悪手なんだ。ルキエルは、聞き出すまで動かない。
「伯爵様に、金で頼まれた。女除けになるから、と」
「………したような、気がする」
 もう、些事なことだから、覚えていないんだな。
「こんな事やってるから、酷い事されることが多いが、伯爵様は、丁寧で優しかったから」
「そうだな」
「お前は伯爵様お気に入りの男娼かー。女遊びも全てやめたのは、お前がいるからなんだな。いいな」
「そういう事情なら、今回の嘘は仕方ない。あんたも、変な言い訳して、俺に嘘つくなよ!!」
「い、いや、嘘ついてたわけじゃないんだが」
 忘れただけだ。そう言ってしまえばいいのだが、律儀に覚えていた男娼が気の毒になったので、そこは黙っていた。ルキエルが関わると、私は優しくなってしまうな。
「今後は、私のことは口外しないように。過去に買った女たちも口止めしている」
「わかりました」
 ルキエルとは続いていくのを見て、知って、男娼は落ち込みながらも、了承した。今後、この男娼の口から、私のことが語られることはあるまい。
「これで、あんたと関係持ってるのが、俺一人だってことは、納得した。嘘じゃあなかったな」
「だから言ってるだろう!!」
「過去は何又してたんだ?」
「娼婦だから買ってただけだ!!」
「同じ女ばかりじゃないだろう」
「適当だ。店が勧める女に金を落としてただけだ。別に、どれも同じだ」
「そうだよな。あんたにとっては、お袋以外は、どれも同じだもんな。俺も、お袋の身代わりだし」
「このっ」
 一応、男娼の前だってのに、ルキエルはまた、不貞腐れた。私は腹が立ったから、人前とか構わず、ルキエルに無理矢理、口づけした。ついでに、舌も挿入して、唾液まで流し込んで、と散々なことをしてやった。
「んっ、あん」
 すぐにルキエルは出来上がった。私の腕の中でぐったりとなる。
「休んでいるところ、すまなかった。後で詫びを出す。もう、戻れ」
「は、はい」
 男娼、ルキエルが出す色香に飲まれ、顔が真っ赤だ。ルキエル、本当に誰かれ構わず、惑わすな!!
 ルキエルのご機嫌とりのため、片腕で抱き上げてやる。ルキエルは、私に全身を傾け、もっと欲しいと口づけをしてくる。
「馬車の中でやってやる。我慢しなさい」
「うん、うん、わかったぁ」
 わかってないな。馬車に乗るまで、ルキエルは私に口づけし続けた。






 あまり細かい収支を見ていなかったので、久しぶりに見直した。大まかなものは、毎回、見直してはいるんだがなー。
「ないな」
 我が家は後ろ暗いこともしているから、表に出せない金の流れもある。そちらも、一応、紙で管理しているのだ。ほら、横領されたりすると、面倒臭いから。
 私は、過去、たった一度、始まってもいないが、男娼を買ったのだ。ルキエルの父アルロの紹介である。アルロが育てた男娼だ。あの男娼には、女除けのために、関係があるようなことを匂わせるように依頼したという。確かに、依頼はしたんだ。前金として金も払った。
 しかし、随分と前の話だし、前金なので、きちんとその後も金の要求が続くはずなんだ。ところが、最近の裏帳簿を見てみると、支出にそれらしきものがない。
 後ろ暗いことをいくらだってしている。口止めはけちったりしない。まあ、身の程知らずな場合は、永遠に言葉を発せなく、また、紙にも落とせないようにしてやればいいんだがな。
 私からの依頼なんだから、あの男娼はそれなりの金を貰っているはずだ。しかし、あの娼館への支出がなかった。
「聞きたいんだが」
 私は側近に、最近の出来事を話した。私が忘れていても、側近の誰かが、あの男娼との依頼を覚えていると予想した。
「覚えています。私が担当しましたから」
「どこにも、支出に出ていないが」
「向こうから返金してきました。ただ、継続的にしてくれればいいだけの簡単な事を断るのは、金に折り合いがついていないから、と男娼に再度、依頼に行きました。ところが、男娼は、十分貰ったから、と言って、受け取りませんでした」
「………そうか」
 私はこれ以上、この事には触れないことにした。やっと、ルキエルの機嫌も直ったんだ。たかが男娼の青臭い気持ちなんて、どうだっていい。
 こうして、やっと、始まってもいない男娼との縁は切れた。

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