会談道中

shishamo346

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稲荷の過去

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 昔、木野の一族は、村の中ではそれなりの有力者であった。ところが、他所の土地から稲荷神社を引き連れてやってきた有力者によって、没落させられたのだ。

 没落した木野の一族は、それまで仲良くやっていた村人たちに石を投げられて、追い出されたという。

 追い出されてしまったので、祀っていた神様は村に置いていくしかなかった。

 木野の一族がいた屋敷は荒らされ、祀っていた神様の祠も壊されたという。

 それから、村では原因不明の病気が流行るようになった。

 肌のあちこちに、わけのわからない発疹が出来た。発熱もあり、村人全て、動けなくなったという。

 稲荷神社を引き連れてやってきた有力者は、商売全て、失敗した。立派な稲荷神社はあるだけで、誰も祀ることが出来なくなった。

 そんな不幸が続いているところに、旅の修験者がやってきていう。


『とんでもない祟り神がいます。この祟り神を鎮めていた一族はどうしたのですか? 祟り神が怒って、災いを振り撒いています。このままでいくと、死人が出てきますよ』


 旅の修験者の言葉に、まだ、動ける者たちは、木野の一族を探した。

 木野の一族は隣り村で、質素に暮らしていた。石を投げた村人たちは、木野の一族に土下座をしていう。


『どうか、祟り神を鎮めてください』

『もう、こちらで暮らしています。あなたたちで祀ればいい。難しいことではない』

『そんな恐ろしいものを祀るだなんて!?』

『祀るのは、誰でもいい。あんたでも、そこのあんたでもいいんだ。ただ、祀ればいいんだ。それで、満足する』

『どうか、助けてくれ!?』

『私たちはいつもやってきたことだ。それも、もう出来なくなった。我々にも生きていくための生活がある。今更だ』


 木野の一族は断った。今更な話だったからだ。

 何故、断ったか? 祟り神だけでも持ちだしたかったのだが、それを邪魔したのは村人たちだった。着の身着のままで追い出されたのだ。

 そのことを言ってやれば、村人たちは泣くしかない。まさに、その通りなのだ。持ちだすことを許さなかった村人が悪いのだ。


『知らなかったんだ!!』


 そこに、子どもが叫んだ。


『あんたたちが、そんなすごいものを祀ってるなんて、誰も知らなかったんだ!!』


 子どもは泣いて頭を下げる。

 子どもまで出てきてしまったので、木野の一族は、村に戻るしかなかった。

 そうして、屋敷も祠も綺麗に戻して、木野の一族は、有力者ではなく、ただの村人としてひっそりと祟り神を鎮め続けたという。
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