魔王の娘

chii

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 怒っていた……
喫茶店内の気温は 少し下がっていると思う………

「知りませんかぁ?ガルディア…」
「さぁ、大体、このヴァルで魔獣を見た事無いですから……」
「本当に?」
「魔獣が出るなんて事になってたら、もっと警戒してますよね……ここ、とても平和なんですよ。」
ニコッと笑い答えるロイ
店の中を見回し
「本当なの?」
と、聞く
「そんなもん見たことねえし、魔獣なんていたらフラフラしてられねえよ!」
「ここのお巡り、昼寝ばっかりだしね~」
「あいつ、仕事してるのか?」
はっはははは!!

どう言う事なの!

店の中、女の子が一人……あれなら嘘はつかないだろう………
女はエリルに声をかける
「ねぇ、そこのお嬢さん、本当なの?」


エリルは少し考える様な素振りを見せ立ち上がる
そして、女の方に歩いてくる……女を通り越し…男の手を取る……

息を呑む、クロルとワッサ!

エリルは男を椅子から下ろし目の前に立たせる……そして…
「お兄さんは、このヴァルの外から来たの?」
俯き話し始める
「…?あぁ」
「エリル、まだヴァルから出た事が無いの…子供だからって……」
男の喉がゴクリと鳴る

エリルは少し顔を上げ上目っかいをし、少し顔を傾げる…胸の前で手を握り合わせ…
「エリルに教えて…?大人になりたいの……!」
ニヤッとイヤらしく笑う男
「おねがい……」

落ちた!店の中の人間(女以外)皆そう思った!
「魔獣なんて探してないで、私と行こう…?」
「あぁ、そうしよう!」

「ちょっと何言ってるのよ!!」
「悪いな、欲しいのなら自分で何とかしろ!」
「何でよ、私が欲しいんでしょ!!」
「はっ、お前みたいな女、いらねえよ!手垢だらけのうす汚い女なんかな!」
「何ですって!」
「帰るなら、一人で帰ってくれ!俺は帰らない!」
「好きにしなさいよ!」

女は席を立ち、店を出る

店を出た女の前に、銀髪に紫の瞳の美しい男……ブラウム
「やあ、お嬢さん、私と少しお話ししませんか?」
と、手を出してくる
あんな男いらないわ!
「えぇ、構いませんわ…」
男の手に、手を乗せた途端、意識を無くし倒れた………


魔族は、冷徹で 残酷、コレは本当のこと
女は名前と家以外、全て忘れてしまった………
女は一人馬車に乗せられヴァル領を出た……



店の中、男はニヤつきながらエリルに手が届く事は無い……
ワッサに掴まれ、店の外に放り出される……
「痛ってぇなぁ!!何しやがる!!俺はあの子娘に用があるんだ!!!」
後ろから、不意に肩を掴まれ
「ほぅ…?私の娘に何か用かな……?」
振り返ってはいけない…そう思うのに………
振り返った先にいたのは…黒い髪に冷たい紅い目……
怖い……アレが何か分からないが…怖い……
男は、自分が何故ここにいるのか覚えていない…
ここが何処なのかも….
覚えているのは、あの女…あの女が何かを欲しいと言ったのだ!
あの女のせいで、こんなにも怖い思いをしているのだ!
そうだ、あの女のせいだ!!

男は走り出し、ヴァル領を出て行った……
あの二人がどうなったのかは………知らない……


知りたくも……無い………
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