無自覚な

ネオン

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家のこと

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 降りてくと雅樹兄さんが丁度ご飯を食べ終わったところだったらしく、満足そうな顔で手を合わせてごちそうさまと言っていた。

「もう食べ終わったの?ちゃんとよく噛んで食べた?」

雅樹兄さんは流しに行き自分の使った皿をカチャカチャと音を立てて洗いながらこちらに顔を向け、もちろん1口30回は噛んだよと得意そうな表情で言ってたので吹きそうになってしまう。

「今日も美味しかったよ。梓も食べなよ、俺が作った訳じゃ無いけど。ほら、あーん」

雅樹兄さんがテーブルに用意してた僕の分のウインナーを箸で掴み、口に向けてくる。

「あぁーん。…おいひい。」

誰でも上手く作れるだろうけど、美味しく出来たと思う。むぐむぐとウインナーを咀嚼してると階段から大ちゃんが降りてくる音が聞こえた。

「やっと来たね。大ちゃん、一緒に食べよ。」

椅子に座って大ちゃんを手招きをする。大ちゃんはカバンを待った制服姿だった。そんな大ちゃんはそっぽ向いて不服そうだった。

「大ちゃん、僕と食べるの…いや?」

僕がちょっと悲しんでると、雅樹兄さんがニヤニヤしながら大ちゃんを小突き始める。

「そんなこと無いよなー 大ちゃん。 俺達が仲良くしてるのに嫉妬してたんだろ?」

「うるせぇ!な、わけないだろ。」

大ちゃんが顔を赤くして声を荒らげる。

「図星だろ?この天の邪鬼め。」

大ちゃんはちょっとうるさい雅樹兄さんを無視する事を決め込んだのか、僕の隣にどかっと乱暴に座り手を合わせてからご飯を食べ始める。僕は呆然として大ちゃんを見てたら大ちゃんは、昔のように甘えた様な拗ねた様な顔で、「食べねぇの」と聞いてくる。僕は嬉しくなって口角が上がったことがわかった。

「た、食べる。いただきます。」

自分で作ったモノを口に運ぶ。温かい食事は体の芯から温めてくれて落ち着いていく。隣に目をやると驚異のスピードで食べ物が吸い込まれていく。

「お代わりあるから、よく噛んで食べなよ。」

「あぁ」

そんな会話を大ちゃんと交わしたり、ニュースを見たりしてると、自室に荷物を取りに行っていた雅樹兄さんが戻って来て、駄々をこね始める。

「俺も梓と食べたかったなー、大悟のせいだー」

僕はもう食べ終わっていたが、大ちゃんはそんな兄さんを横目に見やり。「うざ。」とめんどくさそうにけなし、食べることに集中する。その態度に雅樹兄さんは傷付いたと大袈裟に喚く。飽きたのか

「ひど。確かに変なテンションだけどそれはないと思うよ。」

と雅樹兄さんが言い正気に戻ったとこで僕はお弁当を渡す。

「はい、雅樹兄さん。そろそろ行かないと遅れちゃうでしょ。」

「ありがとう。梓。」

背を丸め僕の頬に軽く唇を付けリップ音をさせてから離れる。僕はいつもの事なので軽く流すが、大ちゃんは大声で怒る。いつ食べ終わったんだろう?あんな量。

「なにやってんだよ、兄貴!離れろ。」

「何って、ありがとうと行って来ますのキス。」

大ちゃんは雅樹兄さんを剥がして距離を取る。僕も早く準備したいんだけどな。そもそも。

「さっき大ちゃんもキスしてきたじゃん口に。」

「はあぁ”?」

珍しく雅樹兄さんが声を荒らげる。大ちゃんは頭を抱えてた。

「どういうことだ?大悟。」

「これには訳があって。」

じりじりと雅樹兄さんは大ちゃんに近付き距離を縮める。僕は不穏な空気を感じ取るのと同時に兄さんが家を出ないといけない時刻に迫っていることに気づく。

「2人ともふざけてないで、雅樹兄さんは学校行く!大ちゃんも友達と約束してることあるんでしょ、支度しなよ。」

2人は溜め息を吐き、雅樹兄さんは玄関へ大ちゃんは洗面台のある脱衣場へとそれぞれ向かった。僕は兄さんの方に付いて行き玄関先で見送る。

「兄さん行ってらっしゃい。」

「行って来ます」

そういうと兄さんは僕の頭を撫でて学校へと向かった。すると兄さんを追いかけるように大ちゃんがやって来て外に出ようとする。

「大ちゃん、お弁当持った?」

「あぁ」

「行ってらっしゃい」

素っ気ないな。寂しい。僕がショボくれて大ちゃんの後ろ姿を眺めてると。大ちゃんが振り返り、僕の頭に手を乗せ、軽く撫でる。

「美味しかった、ごちそうさま。行って来る。」

優しい顔でそう言って出ていった。さっきまで落ち込んでいたのが嘘みたいに嬉しくなった。それに1つ疑問も湧いた。

「僕の頭ってそんなに手を乗せるのに丁度良いのかな?」

僕は頭に手をやりそんなどうでも良いことを考えながら、台所へ行き色々片付けてからエプロンを外し自室で支度をして玄関に行き外へ出る。家に鍵をかけてから2人より遅れて学校へと向かう。朝はとても清々しくて、騒がしかった。






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