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第一章
告白をやめた理由
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僕が急いで加代子の待つ席に行くと、彼女は健太達三人に声を掛けられていた。彼らとは毎年のクリスマスパーティーで馴染みになったのだけど、あんまり反りが合う奴らじゃなかった。
「おい、加代子ちゃんに何ちょっかい出してんだよ」
「あっ、神君!」
困り顔だった加代子の顔が、僕に気が付き安堵の表情になった。そのあまりの可愛らしさに、僕の庇護欲に火が点いた。彼らを押しのけて加代子の前に立つ。
「ちょっかいって何だよ。初めて見る子だったから、友達になろうと思って声掛けただけだろ? それにお前、いつもは芳樹と一緒に奈々ちゃん達と一緒にいるじゃないか」
「そうだよ。可愛い子はみんな一人占めなんて、狡くないか?」
「あれあれ~? なに揉めてんだー?」
芳樹が突然現れて、軽い口調で話し掛けた。
「ゲッ、芳樹まで。なんだよ、お前ら」
彼らはいつも僕と一緒にいる芳樹が来たのは、どうやら僕に加勢をしに来たと考えたようだ。
「ん~? たまには大勢でゲームするのもいいかと思って、健太達を誘いに来たんだけど」
「えっ?」
面白いほどに三人の声が上ずった。
「奈々達も一緒だけど、俺と一緒じゃ嫌か?」
「まさか、まさかそんな事ないよ。なあ?」
「おっ、おうっ!」
「そうか、じゃあ行こう」
嬉々とする三人を従えて、芳樹は奈々たちの下に歩いて行った。彼女らが健太達に興味があるとも思えないのだけど、一体どうやって説得したのやら。まあでもそのお陰で、僕は加代子と二人でゆっくりすることが出来たわけなんだけどな。
それからの僕は、加代子といろんなことを話した。好きな食べ物は何か、いつもどんな事をして遊んでいるのか、どんな所に遊びに行っているのか、そして何処に住んでいるのかも。
そんないろんな事を話すことが出来たおかげで彼女と家が近い事が分かり、なんと、その時はじめて僕と加代子が同じ幼稚園に通っていることが分かったのだ。
僕はその時有頂天になっていて、パーティーが終わる頃には加代子に告白しようと思っていた。おばさんやおじさんと一緒にいる加代子を見ながら、どう伝えようかとそわそわしていたんだ。
「告白する気か?」
「えっ?」
また、突然現れた芳樹に図星を突かれて狼狽した。たかだか四つ上なだけなのに、芳樹には色々と敵わないような気分にさせられる。それは今もそうなんだ。僕が成長していないだけなのかもしれないけれど。
芳樹は当然のように、それは止めておけと僕に言った。
「えっ? 何で?」
「何でって……。お前もし両想いになって付き合うようになったら、今までみたいに可愛い子たちと遊べなくなるだろう?」
「え? そうなの?」
「当たり前だろう。それが女の子に対する礼儀ってもんだ」
「じゃあ芳樹は、好きな子ができても付き合わないわけ?」
「当然だろう? 奈々も由美もエリカもめっちゃ可愛いだろう? 三人三様にそれぞれ可愛いのに、一人に絞ること無いじゃないか」
芳樹に偉そうにそう言われた僕は、思わずなるほどと思ってしまった。加代子は確かに滅茶苦茶可愛いけど、だからと言って他の可愛い子たちと遊ぶなって言われるのは何かヤダ。
――結局その時そう思ってしまった僕は加代子に告白するのを止め、今に至っているわけだ。
「おい、加代子ちゃんに何ちょっかい出してんだよ」
「あっ、神君!」
困り顔だった加代子の顔が、僕に気が付き安堵の表情になった。そのあまりの可愛らしさに、僕の庇護欲に火が点いた。彼らを押しのけて加代子の前に立つ。
「ちょっかいって何だよ。初めて見る子だったから、友達になろうと思って声掛けただけだろ? それにお前、いつもは芳樹と一緒に奈々ちゃん達と一緒にいるじゃないか」
「そうだよ。可愛い子はみんな一人占めなんて、狡くないか?」
「あれあれ~? なに揉めてんだー?」
芳樹が突然現れて、軽い口調で話し掛けた。
「ゲッ、芳樹まで。なんだよ、お前ら」
彼らはいつも僕と一緒にいる芳樹が来たのは、どうやら僕に加勢をしに来たと考えたようだ。
「ん~? たまには大勢でゲームするのもいいかと思って、健太達を誘いに来たんだけど」
「えっ?」
面白いほどに三人の声が上ずった。
「奈々達も一緒だけど、俺と一緒じゃ嫌か?」
「まさか、まさかそんな事ないよ。なあ?」
「おっ、おうっ!」
「そうか、じゃあ行こう」
嬉々とする三人を従えて、芳樹は奈々たちの下に歩いて行った。彼女らが健太達に興味があるとも思えないのだけど、一体どうやって説得したのやら。まあでもそのお陰で、僕は加代子と二人でゆっくりすることが出来たわけなんだけどな。
それからの僕は、加代子といろんなことを話した。好きな食べ物は何か、いつもどんな事をして遊んでいるのか、どんな所に遊びに行っているのか、そして何処に住んでいるのかも。
そんないろんな事を話すことが出来たおかげで彼女と家が近い事が分かり、なんと、その時はじめて僕と加代子が同じ幼稚園に通っていることが分かったのだ。
僕はその時有頂天になっていて、パーティーが終わる頃には加代子に告白しようと思っていた。おばさんやおじさんと一緒にいる加代子を見ながら、どう伝えようかとそわそわしていたんだ。
「告白する気か?」
「えっ?」
また、突然現れた芳樹に図星を突かれて狼狽した。たかだか四つ上なだけなのに、芳樹には色々と敵わないような気分にさせられる。それは今もそうなんだ。僕が成長していないだけなのかもしれないけれど。
芳樹は当然のように、それは止めておけと僕に言った。
「えっ? 何で?」
「何でって……。お前もし両想いになって付き合うようになったら、今までみたいに可愛い子たちと遊べなくなるだろう?」
「え? そうなの?」
「当たり前だろう。それが女の子に対する礼儀ってもんだ」
「じゃあ芳樹は、好きな子ができても付き合わないわけ?」
「当然だろう? 奈々も由美もエリカもめっちゃ可愛いだろう? 三人三様にそれぞれ可愛いのに、一人に絞ること無いじゃないか」
芳樹に偉そうにそう言われた僕は、思わずなるほどと思ってしまった。加代子は確かに滅茶苦茶可愛いけど、だからと言って他の可愛い子たちと遊ぶなって言われるのは何かヤダ。
――結局その時そう思ってしまった僕は加代子に告白するのを止め、今に至っているわけだ。
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