実はこっそりあいつに溺れてますが、何か?

らいち

文字の大きさ
11 / 47
第一章

芸能界なんて興味ないよ

しおりを挟む
「ああ、美味しかった。さすが優作お兄さんよね」

 千秋はチーズケーキだけじゃなく、モンブランやティラミスまで平らげて満足気だ。おまけにお土産としてパウンドケーキまで貰っている。

「いつも悪いな、優作」
「いや、別に。女子は甘い物に弱いから」
「だからって、何でも良いわけじゃないんだからね。ここまで欲しいのは、優作お兄さんのだけよ~」
「ハハッ、ありがとう」

 嬉しそうな千秋に、兄さんも満更ではなさそうだ。

 加代子も千秋と同じようなことを言っていたな。あいつの嬉しそうな顔を思い出して、またちょっとイラッとする。

「食べる物食べて、貰う物貰ったし、そろそろ帰ろうか」
「お前はさっきからそればっかだな、千秋」
「ああ、そうそう芳樹君。お母さんにおせんべい有難うって言っておいてね」
「はい、わかりました。でも結局またお土産もらっちゃって、お礼をしに来たのか何なのか分からなくなっちゃいましたけど」
「いいのよー。優作は好きで作ってるんだから。ね?」

 母さんの問いかけに、優作兄さんは笑って頷いた。

「あっ、そうだ神。この際だから言っとかなきゃと思っていたのよ。加代子ちゃんを大切にしなさいよね。しっかり掴まえて、告白でも何でもしなさいよ!」

 母さんもここにいるっていうのに、何言ってんだこいつ。

「何言ってんだよ、馬鹿。神も俺と一緒で、もう少し遊んだ方がいいタイプなんだよ」

 さすが芳樹! いい援護射撃だ。こいつ、いつも良いこと言うんだよなあ。
 感心して頷いていると、後ろから千秋にパカンと叩かれた。

「いったいなー」
「バカなこと言っているからでしょう? じゃあね。優作兄さんご馳走様でした」
「ご馳走様。……ああ、送らなくてここでいよ。じゃあお邪魔しました」
「気をつけて、お母さんによろしく。ありがとうね」

 僕は玄関を出てせめて駐車場まで見送ろうとしたのだけど、芳樹に止められたのでやめにした。

  ……しっかり掴まえて告白しろか。でもなあ。まだまだ一人だけに絞りたくないし、拗ねてる加代子を見るのも堪らないんだよな。

  二人が出て行くのを玄関で見送った後、僕はカギを掛けてリビングに戻った。

「兄さんのスイーツは、すごい人気だね」
「そうか?」

 本当に満更でもなさそうな顔だ。昔から兄さんは、人に食べてもらって喜ばれることがたまらなく嬉しいみたいなんだよな。

「あ、神、忘れるところだったわ。あなた、芸能界に興味とかある?」
「は? なに、急に」

 母さんの突然の問いかけに、目が点になった。

「母さんの友達にね、ファッション誌の企画の仕事をしている人がいて、いいモデルが見つからなくて苦労してるんですって。三周年の記念で、今人気の桜ちゃんと共演ができるそうよ」

「いや、僕は別にモデルとか芸能界とか興味ないから」
「あら、そうなの? 女の子大好きだから、てっきり喜ぶと思ったのに」

 女の子大好きってなんだよ母さん。……否定はできないけど。

「僕は別に、不特定多数の人間に注目されたいわけじゃないよ」

 そうだよ。加代子が傍にいて、それでいて焼きもち焼いてるあいつを見ているのが一番楽しいんだ。それ以上はバランスを欠くから、絶対楽しいわけない。

「でもねえ、神の写真見せたらすごく乗り気だったから、きっと学校にでも会いに行くと思うのよ」
「えっ? 学校まで教えたのか?」
「大丈夫よ、私の友達で身元もしっかりしてるから。それで迷惑にならないように、外で待ってるって言ってたわよ」

 にこにこと話す母さんに、頭が痛くなってきた。横では優作兄さんが、気の毒そうに笑っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...