実はこっそりあいつに溺れてますが、何か?

らいち

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第二章

家政婦の恵美ちゃん

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「おはようございます、加代子お嬢様。起きてらっしゃいますか?」
「おはよう、恵美ちゃん。起きてるよー」

 時刻は朝の六時前。私はいつも学校に行く前に、恵美ちゃんに合気道を習っている。これは小学校の頃から続いていて、もはや二人の日課となっていた。

「失礼いたします」

 丁寧に一礼して、恵美ちゃんが入って来た。小さい頃からの付き合いなんだから、そんなに堅苦しくしなくてもいいのにと思うんだけど、恵美ちゃんは結構頑なだ。

  恵美ちゃんは私が三歳くらいの頃、お母さんが体を壊して入院した時に私の世話をする為に入って来てくれた家政婦さんだ。なのでお母さんが元気になって退院した時には、辞めてもらうつもりだったようだ。普通に一般庶民だからね。
 でも私が恵美ちゃんにすごく懐いていて離れるのを嫌がったので、少し様子を見ようという事になったのだそうだ。そうこうしている内に今度はお母さんの方に仕事の話しが舞い込んだ事で、結局今も恵美ちゃんは、私の家で家政婦を続けている。

「今日の調子はいかがですか? お疲れだったり具合いが悪いとかはないですか?」
「うん、特にないよ」
「では先に離れに行って、準備をして参ります。お嬢様は顔を洗ったら支度を整えて来て下さい」
「わかった」

 朝は意外と早く時間が進んでしまうので、のんびりしている暇は無い。私は急いで顔を洗い道着に着替え、恵美ちゃんの待つ道場代わりにしている離れへと向かった。

「お待たせ」

 私が着いた時には軽く雑巾掛けもされていて、換気のための窓も開けられていた。私ってばいつも恵美ちゃん任せだ。

「では、さっそく始めましょうか」
「はい」

 私は恵美ちゃんと向かい合って正座し、両手をついた。

「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」

 長いこと合気道を収斂していた恵美ちゃんは、六段を取っていて師範と呼べる位置にある。そのせいもあるのか、こういう礼儀的作法にも煩いんだ。
  でも恵美ちゃんが私に合気道を教える理由は段位を取らせる為では無いんだよ。私に、自分の身を守る術を身に着けさせたいからなんだって。だから教える内容も総て、実戦的な物だけだったりするんだ。

 恵美ちゃん曰く、私はめちゃくちゃ可愛いから、護身術は絶対必要なんだって。ひいき目が過ぎると思わない?

「加代子お嬢様、それではまず最初に準備運動をしますよ?」
「はあい」
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