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第四章
適任者発見
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桜とはゆっくりクラスの出し物を見て回り、お昼は模擬店のフランクフルトやたこ焼きで済ませた。その際も大勢の野次馬たちがついて回る。桜はどこでも注目の的だ。
「楽しいわね」
「そう? それは良かった」
「有難うね、神君。私こういう行事の時もお仕事で、友達との思い出もなかなか作れなかったから、すごく楽しいの」
それは今まで一緒に回っていてよく分かった。みんなに騒がれ握手攻めにあって驚く姿はあっても、でもそれ以上に桜はこの場の雰囲気を楽しんでいた。まるでこの学校の生徒で、他のクラスの出し物を楽しんでいるかのように。
だけどもうそろそろ、僕は集合しないといけない時間になっている。
「……桜ちゃん、あの」
「やっと見つけた、神!」
聞き覚えのある僕を呼ぶ声に振り向くと、芳樹と千秋が立っていた。
「芳樹、千秋も。来てくれてたんだ」
「おう、来るって言ってただろ? えっ……て、桜? えっ、なんで?」
この場にいるとはとてもじゃないけど想像できない桜を目の前にして、芳樹が珍しく動揺している。
普段芳樹がこんなふうに女の子のことで驚いてるのを見たことなかったので、僕は思わず吹き出しそうになった。それに気付いた芳樹が、僕の方をじろりと睨む。こわっ。
「ええっと、紹介するよ。こちら僕の従兄の芳樹、同じく従姉の千秋……千秋お姉さんだ」
言い直したのは、例のごとく千秋が睨んだからだ。本当にこいつは心が狭い。
「で、こちらご存じモデルの桜さん」
「よろしく、桜さん」
「よろしく」
「こちらこそ……その、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた桜が顔を上げてから、その視線は芳樹に釘付けになっていた。目はキラキラと輝いて、頬もほんのりと赤い。
……ああ、芳樹といてよく見かける光景だな。
僕より数段容姿が良くて色気もある芳樹は、一目惚れされる確率がかなり高いんだ。
あれ? でもこれ、もしかしたらいけるんじゃね?
僕よりも遥かに目立つことが好きな芳樹だ。こいつならモデルにも興味あるんじゃないのか?
「なあ芳樹、お前桜ちゃんと一緒にモデルやらないか?」
「はあ? 何急に突拍子もないこと言って」
「興味ないのか?」
「いや、そうは言わないが……」
そう言って芳樹はチラリと桜の方を見た。芳樹と目が合った桜は、パチパチと可愛らしく瞬きをする。
これはもう決まりだろう?
「芳樹は興味あるんだって。良ければ工藤さんに推薦してよ」
「えっ、あっ……でもいいんですか?」
桜はおずおずと芳樹を見上げた。その桜の様子を見て、一瞬目を見開いたあと彼は、いつものふてぶてしい……もとい、格好いい芳樹に戻っていた。
「いいよ。俺で桜ちゃんの役に立てるんだったら」
そう言って芳樹は色っぽく微笑んだ。桜の顔がますます赤くなる。それを見て、千秋が眉間に皺を寄せた。
「……大丈夫かなあ。桜ちゃん、いいのこいつで?」
「なに言ってるんだよ。俺はやる時はやる男だよ」
「……そういうとこがねえ」
「ブラコンか?」
「はあ?」
千秋がマジで忌々しそうに僕を見た。
「そうじゃなかったら茶々入れなければ? 今桜ちゃんのとこ、いい感じの男モデルを急いで探してるみたいなんだよ」
「そうなの?」
「そうなんです」
ふむ、と千秋が腕組みをした。
あっ、いけない。本気でそろそろ、体育館に向かわないといけない時刻になっている。
「もう時間?」
「うん、そろそろ」
「そっか、今日は本当に有難う。あの……工藤さんに、その……芳樹さんを紹介してもいいのかな?」
「ん? もちろんだよ。桜ちゃんが良くて、芳樹がオッケーするならね」
「俺は話聞いてみたいと思ってるよ」
芳樹のその一言で、桜の顔がぱあっと明るくなった。
「ありがとうございます、よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしく」
よし、これで僕はこの話とは無関係だな。
「じゃあ芳樹、桜ちゃんのこと頼むわ。もうそろそろ行かなきゃヤバいから」
「おう、わかった。じゃあな」
「ありがとう神君!」
可愛い笑顔で僕にお礼を言う桜に対し手を振ってこたえ、僕は体育館へとダッシュした。
「楽しいわね」
「そう? それは良かった」
「有難うね、神君。私こういう行事の時もお仕事で、友達との思い出もなかなか作れなかったから、すごく楽しいの」
それは今まで一緒に回っていてよく分かった。みんなに騒がれ握手攻めにあって驚く姿はあっても、でもそれ以上に桜はこの場の雰囲気を楽しんでいた。まるでこの学校の生徒で、他のクラスの出し物を楽しんでいるかのように。
だけどもうそろそろ、僕は集合しないといけない時間になっている。
「……桜ちゃん、あの」
「やっと見つけた、神!」
聞き覚えのある僕を呼ぶ声に振り向くと、芳樹と千秋が立っていた。
「芳樹、千秋も。来てくれてたんだ」
「おう、来るって言ってただろ? えっ……て、桜? えっ、なんで?」
この場にいるとはとてもじゃないけど想像できない桜を目の前にして、芳樹が珍しく動揺している。
普段芳樹がこんなふうに女の子のことで驚いてるのを見たことなかったので、僕は思わず吹き出しそうになった。それに気付いた芳樹が、僕の方をじろりと睨む。こわっ。
「ええっと、紹介するよ。こちら僕の従兄の芳樹、同じく従姉の千秋……千秋お姉さんだ」
言い直したのは、例のごとく千秋が睨んだからだ。本当にこいつは心が狭い。
「で、こちらご存じモデルの桜さん」
「よろしく、桜さん」
「よろしく」
「こちらこそ……その、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた桜が顔を上げてから、その視線は芳樹に釘付けになっていた。目はキラキラと輝いて、頬もほんのりと赤い。
……ああ、芳樹といてよく見かける光景だな。
僕より数段容姿が良くて色気もある芳樹は、一目惚れされる確率がかなり高いんだ。
あれ? でもこれ、もしかしたらいけるんじゃね?
僕よりも遥かに目立つことが好きな芳樹だ。こいつならモデルにも興味あるんじゃないのか?
「なあ芳樹、お前桜ちゃんと一緒にモデルやらないか?」
「はあ? 何急に突拍子もないこと言って」
「興味ないのか?」
「いや、そうは言わないが……」
そう言って芳樹はチラリと桜の方を見た。芳樹と目が合った桜は、パチパチと可愛らしく瞬きをする。
これはもう決まりだろう?
「芳樹は興味あるんだって。良ければ工藤さんに推薦してよ」
「えっ、あっ……でもいいんですか?」
桜はおずおずと芳樹を見上げた。その桜の様子を見て、一瞬目を見開いたあと彼は、いつものふてぶてしい……もとい、格好いい芳樹に戻っていた。
「いいよ。俺で桜ちゃんの役に立てるんだったら」
そう言って芳樹は色っぽく微笑んだ。桜の顔がますます赤くなる。それを見て、千秋が眉間に皺を寄せた。
「……大丈夫かなあ。桜ちゃん、いいのこいつで?」
「なに言ってるんだよ。俺はやる時はやる男だよ」
「……そういうとこがねえ」
「ブラコンか?」
「はあ?」
千秋がマジで忌々しそうに僕を見た。
「そうじゃなかったら茶々入れなければ? 今桜ちゃんのとこ、いい感じの男モデルを急いで探してるみたいなんだよ」
「そうなの?」
「そうなんです」
ふむ、と千秋が腕組みをした。
あっ、いけない。本気でそろそろ、体育館に向かわないといけない時刻になっている。
「もう時間?」
「うん、そろそろ」
「そっか、今日は本当に有難う。あの……工藤さんに、その……芳樹さんを紹介してもいいのかな?」
「ん? もちろんだよ。桜ちゃんが良くて、芳樹がオッケーするならね」
「俺は話聞いてみたいと思ってるよ」
芳樹のその一言で、桜の顔がぱあっと明るくなった。
「ありがとうございます、よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしく」
よし、これで僕はこの話とは無関係だな。
「じゃあ芳樹、桜ちゃんのこと頼むわ。もうそろそろ行かなきゃヤバいから」
「おう、わかった。じゃあな」
「ありがとう神君!」
可愛い笑顔で僕にお礼を言う桜に対し手を振ってこたえ、僕は体育館へとダッシュした。
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