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第四章
言っちゃった
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「おい、なんだよお前。俺はちゃんと抽選に当たってだなー」
空気に呑まれて一瞬固まっていた目の前の上級生が、ハッと我に返り僕に文句を言った。それにまた我に返った委員長が、足早に近づいて来る。
「すみません、チェキはお触り禁止になっています。ルールは守ってもらいませんと」
「えぇー、案外煩いんだな。少しくらい良いのに」
未練たらしく少しくらいと言ったその一言で、僕の中の何かがぷつんと切れた。
ダメに決まってる! 加代子は僕だけのものだ!
「お触りは絶対禁止です! 加代子を触ってもいいのは僕だけなんですからね!」
そう言いながら、グイッと加代子を引き寄せた。その一言で、また会場内がどよめいた。
ブーイングや悲鳴なんて知るものか!
「いい加減にして!」
え?
てっきり喜んでくれると思っていた加代子が、僕の手をパシッと払い除けた。
「加代子?」
本気で驚いて加代子の顔を見ると、今にも泣きそうな顔で唇を噛んでいる。そして小さな声で呟いた。
「付き合いたいって思うほど好きでもないくせに、思わせぶりな態度だけ取って……」
加代子のその悲痛な声に、僕の胸がズキリと痛んだ。
確かにその通りだ。加代子のことは本気で好きなのに、他の女の子からもちやほやされたい。身勝手な僕のずるい本音で、今まで加代子の事を振り回してきた。だけど……。
「僕が好きで付き合いたいと思っているのは加代子だけだ。加代子を逃すぐらいなら……加代子になら縛られてもいい」
これでもかと言うくらいに真剣に、必死な思いで加代子を見つめながら訴えた。
伝わって欲しい、そうじゃなきゃ困る。
そう念じること数十秒。じっと加代子の答を祈るように待った。
「神……」
辛抱強く待てた成果だろうか? だんだん加代子の目が大きく見開かれ、ウルウルと涙が盛り上がってくる。
僕の胸の中も熱いものが溢れて来て、もう、その言葉を吐き出すことになんの躊躇も起こらなかった。
「好きだよ加代子、僕と付き合って下さい」
「神……神。はい……私も、私も大好き!」
涙をぽろぽろと零しながら、それでいてすごく可愛い笑顔で加代子が僕に飛びついてきた。僕も嬉しくて加代子を抱きしめ返す。
もしかしたら壊れるのじゃないかと思うくらい激しく鳴り響く加代子の心臓の音が、僕の体に直接伝わってきた。 こんなに愛しくて可愛い彼女を、なんで今まで僕は放置出来ていたんだろう。もうきっと、絶対何があっても離したりなんかしない。
「いいですかね、お二人さん」
間近から聞こえてきた低い委員長の声に、僕も加代子もハッと我に返った。
そうだった。今は学園祭の出し物の、コンテストの最中だった。しかもこれからチェキのサービスに入るところだ。
「……悪い、委員長。進めてくれ」
「そうだよ、もう。こういう事は場所を選んでもらわないと。せっかくの目玉なのに、場が白けちゃうじゃないか」
委員長が恨めしそうにぼそぼそと言うものだから、僕と加代子は目配せしてくすりと笑った。
確かにそうだよな、……悪かった。
でもまあ僕としては、結果としてコンテストにとっても、僕にとっても悪くなかったんじゃないかなと思っていた。
最初にアクシデントがあったおかげで、加代子と並んで写真を撮る権利を貰った後の四人は、ちゃんとマナーを守って楽しく写真に納まってくれたわけだし。僕は僕で、加代子とちゃんと向き合う切っ掛けを得られたわけだから。
もちろん僕の方も、抽選で当たった五人の女子と楽しく写真を撮り終えたぞ?
そうして、少しばかりアクシデントはあったものの、男装女装コンテストは盛況の中無事に終了したのだった。
空気に呑まれて一瞬固まっていた目の前の上級生が、ハッと我に返り僕に文句を言った。それにまた我に返った委員長が、足早に近づいて来る。
「すみません、チェキはお触り禁止になっています。ルールは守ってもらいませんと」
「えぇー、案外煩いんだな。少しくらい良いのに」
未練たらしく少しくらいと言ったその一言で、僕の中の何かがぷつんと切れた。
ダメに決まってる! 加代子は僕だけのものだ!
「お触りは絶対禁止です! 加代子を触ってもいいのは僕だけなんですからね!」
そう言いながら、グイッと加代子を引き寄せた。その一言で、また会場内がどよめいた。
ブーイングや悲鳴なんて知るものか!
「いい加減にして!」
え?
てっきり喜んでくれると思っていた加代子が、僕の手をパシッと払い除けた。
「加代子?」
本気で驚いて加代子の顔を見ると、今にも泣きそうな顔で唇を噛んでいる。そして小さな声で呟いた。
「付き合いたいって思うほど好きでもないくせに、思わせぶりな態度だけ取って……」
加代子のその悲痛な声に、僕の胸がズキリと痛んだ。
確かにその通りだ。加代子のことは本気で好きなのに、他の女の子からもちやほやされたい。身勝手な僕のずるい本音で、今まで加代子の事を振り回してきた。だけど……。
「僕が好きで付き合いたいと思っているのは加代子だけだ。加代子を逃すぐらいなら……加代子になら縛られてもいい」
これでもかと言うくらいに真剣に、必死な思いで加代子を見つめながら訴えた。
伝わって欲しい、そうじゃなきゃ困る。
そう念じること数十秒。じっと加代子の答を祈るように待った。
「神……」
辛抱強く待てた成果だろうか? だんだん加代子の目が大きく見開かれ、ウルウルと涙が盛り上がってくる。
僕の胸の中も熱いものが溢れて来て、もう、その言葉を吐き出すことになんの躊躇も起こらなかった。
「好きだよ加代子、僕と付き合って下さい」
「神……神。はい……私も、私も大好き!」
涙をぽろぽろと零しながら、それでいてすごく可愛い笑顔で加代子が僕に飛びついてきた。僕も嬉しくて加代子を抱きしめ返す。
もしかしたら壊れるのじゃないかと思うくらい激しく鳴り響く加代子の心臓の音が、僕の体に直接伝わってきた。 こんなに愛しくて可愛い彼女を、なんで今まで僕は放置出来ていたんだろう。もうきっと、絶対何があっても離したりなんかしない。
「いいですかね、お二人さん」
間近から聞こえてきた低い委員長の声に、僕も加代子もハッと我に返った。
そうだった。今は学園祭の出し物の、コンテストの最中だった。しかもこれからチェキのサービスに入るところだ。
「……悪い、委員長。進めてくれ」
「そうだよ、もう。こういう事は場所を選んでもらわないと。せっかくの目玉なのに、場が白けちゃうじゃないか」
委員長が恨めしそうにぼそぼそと言うものだから、僕と加代子は目配せしてくすりと笑った。
確かにそうだよな、……悪かった。
でもまあ僕としては、結果としてコンテストにとっても、僕にとっても悪くなかったんじゃないかなと思っていた。
最初にアクシデントがあったおかげで、加代子と並んで写真を撮る権利を貰った後の四人は、ちゃんとマナーを守って楽しく写真に納まってくれたわけだし。僕は僕で、加代子とちゃんと向き合う切っ掛けを得られたわけだから。
もちろん僕の方も、抽選で当たった五人の女子と楽しく写真を撮り終えたぞ?
そうして、少しばかりアクシデントはあったものの、男装女装コンテストは盛況の中無事に終了したのだった。
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