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第一章
嫌な悪寒3
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佐藤は僕を人気があまりない階段の裏手へと誘導し、「ふーっ」と息を吐き出した。
佐藤の緊張が僕の方にまで伝わってきて、やはりもう嫌な予感しかしない。
僕は腹をくくって、佐藤の言葉を待った。
「突然でびっくりするかもしれないけど…」
そう前置きを置いて、佐藤は一呼吸する。そして、決心したかのように僕に視線を向けた。
「俺、沢村さんの事が好きだ」
「…」
腹をくくっていたので、やっぱりという思いの方が強いのだけど、やはりどうしても現実逃避したいようで、さっきから僕の頭の中は、何故だか、「あ~」という言葉で埋め尽くされている。
あ~、あ~、あ~。
「…沢村さん?」
佐藤が、何も言わない僕に心配げに声をかける。
僕はハッとして、佐藤に焦点を合わせた。
現実逃避している場合じゃない。ちゃんと言わなきゃ、そして面倒臭い事から脱却するんだ。
「ごめん…佐藤君。私、好きな人がいるの」
僕の言葉に佐藤は一瞬ショックを受けたような表情になったけど、それは本当に一瞬で、その後寂しそうに笑った。
「そっか。覚悟はしてたけど、好きな人がいるんだ」
「う、うん。ごめんね…だから…」
「その人とは、付き合ってるの?」
佐藤の意外な追及に、僕はびっくりした。断りさえすれば、すぐに諦めてくれると思っていたからだ。
どう返事をしたらいいのか、僕は迷った。
付き合っていると言った方が、諦めてくれる確率は上がるに違いない。だけど、それをさらに追及されて嘘がばれてしまったら、余計に厄介な事になりかねない。
「か、片思いだから…」
しょうがないから僕は、無難と思われる返事で済ませることにした。
「付き合ってないんだ」
何だか佐藤の目に光が戻ってしまったような気がする。
何だ、これ。
思っていたのと違う方向に流れているような…。
「そうか、じゃあ俺、諦めないから」
佐藤はそう言って、自信に満ちた顔でニコリと笑った。
「覚悟してろよ」
完璧だったはずの僕の計画が、ガラガラと音を立てて崩れていく。
イケメンでモテモテの佐藤は、より取り見取り以前に自分に対して自信があるために、諦めるという選択が最初に来ることは無いのだということを、僕らはすっかり失念していたのだ。
僕の予感は、悪寒へと変わって行った。
佐藤の緊張が僕の方にまで伝わってきて、やはりもう嫌な予感しかしない。
僕は腹をくくって、佐藤の言葉を待った。
「突然でびっくりするかもしれないけど…」
そう前置きを置いて、佐藤は一呼吸する。そして、決心したかのように僕に視線を向けた。
「俺、沢村さんの事が好きだ」
「…」
腹をくくっていたので、やっぱりという思いの方が強いのだけど、やはりどうしても現実逃避したいようで、さっきから僕の頭の中は、何故だか、「あ~」という言葉で埋め尽くされている。
あ~、あ~、あ~。
「…沢村さん?」
佐藤が、何も言わない僕に心配げに声をかける。
僕はハッとして、佐藤に焦点を合わせた。
現実逃避している場合じゃない。ちゃんと言わなきゃ、そして面倒臭い事から脱却するんだ。
「ごめん…佐藤君。私、好きな人がいるの」
僕の言葉に佐藤は一瞬ショックを受けたような表情になったけど、それは本当に一瞬で、その後寂しそうに笑った。
「そっか。覚悟はしてたけど、好きな人がいるんだ」
「う、うん。ごめんね…だから…」
「その人とは、付き合ってるの?」
佐藤の意外な追及に、僕はびっくりした。断りさえすれば、すぐに諦めてくれると思っていたからだ。
どう返事をしたらいいのか、僕は迷った。
付き合っていると言った方が、諦めてくれる確率は上がるに違いない。だけど、それをさらに追及されて嘘がばれてしまったら、余計に厄介な事になりかねない。
「か、片思いだから…」
しょうがないから僕は、無難と思われる返事で済ませることにした。
「付き合ってないんだ」
何だか佐藤の目に光が戻ってしまったような気がする。
何だ、これ。
思っていたのと違う方向に流れているような…。
「そうか、じゃあ俺、諦めないから」
佐藤はそう言って、自信に満ちた顔でニコリと笑った。
「覚悟してろよ」
完璧だったはずの僕の計画が、ガラガラと音を立てて崩れていく。
イケメンでモテモテの佐藤は、より取り見取り以前に自分に対して自信があるために、諦めるという選択が最初に来ることは無いのだということを、僕らはすっかり失念していたのだ。
僕の予感は、悪寒へと変わって行った。
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