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第一章
嫌な悪寒2
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家に帰って稽古を終えて、部屋に戻ってため息を吐いているとノックと共に姉さんが顔を出した。
「生きてる?」
「半分死んでる」
僕がグッタリとして言うと、姉さんは心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「何かあったの?」
「…めんどい事に巻き込まれそう」
「面倒臭い事?」
「うん。なんかさー、うちのクラスにすんげーモテる奴がいるんだよ。そいつがさ、何か僕に気があるみたいなんだよな」
「…」
「何だよ、慰めてくんないの?」
「…う~ん、微妙だねえ…。何と言っていいのか…。まあ、女の子らしく見えてるって事だろうから、父さん的にはしてやったり?みたいな?」
「はあ~っ」
姉さんの一言に、僕は思いっきり脱力感を覚えた。
「親父の事なんて、関係ねーし! てか、キモいだろ!? 男に好かれてるとか思ったら…」
僕はちょっと想像してしまって、ぶるっと震えた。
「ありえねえ…」
「まあ、まあ。万が一コクられたらさ、ちゃんと断ればいいんじゃない? モテるんでしょ、その子。てことはさ、選り取り見取りなんだから、由紀也に固執する事は無いんじゃないの?」
「え、あっそっか! それもそうだよな!」
確かに佐藤は女子からの人気は断トツだから、その気にさえなれば選り取り見取りだろう。僕は今度は、安堵のために脱力した。
「ありがと、姉さん。おかげで少し気が楽になった」
「そっか、良かった。由紀也も大変だね…。話聞くくらいしか出来ないけど、なんかあったら遠慮しないで、また言ってね」
そう言って、僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
翌日、登校中に教室に向かって廊下を歩いていると、「沢村さんおはよう」と、声をかけられた。振り返ると、爽やかに笑う佐藤の姿があった。
「あ、お、おはよう」
僕は、ちょっと身構えてしまった。だけど、昨日の姉さんの言葉を思い出して、『リラックス、リラックス』と心の中で呟いた。
「ちょっと話があるんだけど、いい?」
ギクッとした。ドキッではなく、ギクッ。
嫌な予感に、冷や汗が流れる。
だけど姉さんの言うとおり、万が一の時はちゃんと断りさえすれば、それで何もかも解決するような気がするから僕はコクンと頷いた。
「生きてる?」
「半分死んでる」
僕がグッタリとして言うと、姉さんは心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「何かあったの?」
「…めんどい事に巻き込まれそう」
「面倒臭い事?」
「うん。なんかさー、うちのクラスにすんげーモテる奴がいるんだよ。そいつがさ、何か僕に気があるみたいなんだよな」
「…」
「何だよ、慰めてくんないの?」
「…う~ん、微妙だねえ…。何と言っていいのか…。まあ、女の子らしく見えてるって事だろうから、父さん的にはしてやったり?みたいな?」
「はあ~っ」
姉さんの一言に、僕は思いっきり脱力感を覚えた。
「親父の事なんて、関係ねーし! てか、キモいだろ!? 男に好かれてるとか思ったら…」
僕はちょっと想像してしまって、ぶるっと震えた。
「ありえねえ…」
「まあ、まあ。万が一コクられたらさ、ちゃんと断ればいいんじゃない? モテるんでしょ、その子。てことはさ、選り取り見取りなんだから、由紀也に固執する事は無いんじゃないの?」
「え、あっそっか! それもそうだよな!」
確かに佐藤は女子からの人気は断トツだから、その気にさえなれば選り取り見取りだろう。僕は今度は、安堵のために脱力した。
「ありがと、姉さん。おかげで少し気が楽になった」
「そっか、良かった。由紀也も大変だね…。話聞くくらいしか出来ないけど、なんかあったら遠慮しないで、また言ってね」
そう言って、僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
翌日、登校中に教室に向かって廊下を歩いていると、「沢村さんおはよう」と、声をかけられた。振り返ると、爽やかに笑う佐藤の姿があった。
「あ、お、おはよう」
僕は、ちょっと身構えてしまった。だけど、昨日の姉さんの言葉を思い出して、『リラックス、リラックス』と心の中で呟いた。
「ちょっと話があるんだけど、いい?」
ギクッとした。ドキッではなく、ギクッ。
嫌な予感に、冷や汗が流れる。
だけど姉さんの言うとおり、万が一の時はちゃんと断りさえすれば、それで何もかも解決するような気がするから僕はコクンと頷いた。
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