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第一章
嫌な悪寒1
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体育の時間、僕は木陰でのんびりと過ごす。
本当は体を動かすことは嫌いじゃないので、体育の見学って本当はちょっと辛い。元気に動き回る梓を見ていると、羨ましいなあと苦笑してしまった。
ふと、廊下での梓を思い出してまた顔が熱くなる。
普通に男としてこの学校に通っていたら、あんな美味しい事は味わえなかったんだよなあと思う。もちろん、だからと言って女子としてここに通っていることに、不満が無いわけではもちろんないのだけど。
ポーンと、バレーボールがこちらに転がってきた。僕は、立ち上がってボールを手に取り、ボールが転がってきた先を見た。
佐藤が手を振りながら駆け寄ってくる。
僕は、「はい」と、佐藤にボールを渡した。
「ありがとう、沢村さん」
佐藤は、にこりと笑って立ち去ろうとしたが、思い直したように立ち止まった。
「あのさ、…沢村さんって好きな人いるの?」
「え?」
突然何を言い出すんだろうと佐藤の顔を見ると、何だか顔が赤い。
これって、もしかしなくてももしかするのか?
何だか物凄く嫌な予感に、背中から変な汗が流れだした。
何て言った方が正解なんだろう。頭の中をぐるぐるさせながら、何とか無難な答えは無いかと模索しながらとりあえず返事をしようと口を開けた。
「い…」
その時、ポーンとまた勢いよくバレーボールが転がってきた。
「ごめんーん、佐藤くーん」
声の方向に振り向くと、さっき梓を踏んづけた女子が走ってきていた。一緒に体育の授業をしているということは、どうやら隣のクラスだったらしい。
「早瀬?」
あれ? 知り合いなのか?
ああ、もしかして同中とか?
転がってきたボールを佐藤が片手でひょいと取り、早瀬に渡した。
「ありがとう」
早瀬は目いっぱい可愛く、佐藤に笑顔を振りまいた。
「ああ、いや。じゃ」
佐藤は片手を上げて、みんなの元へと走って行った。
ニコニコと笑顔で佐藤を見送っていた早瀬が、冷たい目で僕を見る。
「何しゃべってたのよ」
佐藤と接点のあるやつは誰でも気に入らないといった風情で、ちょっと引いてしまう。
「別に、ボールを取ってあげただけよ」
「…にしては、結構長い時間だったじゃない」
「あ、それはボールが当たらなかったか聞いて来たのよ。私が病弱だから気にしてくれたみたい」
「…へえ?」
胡散臭げに僕の顔をじろじろ見ていた早瀬だったが、僕がわざとキョトンとした顔を作って見せたおかげで、どうやら本当の事だと思ったらしい。
早瀬は、そのまま女子のみんなの下へと走って行った。
僕は、ハアッと大きなため息を吐く。
はっきり言ってこんなわけのわからない恋愛のゴタゴタに巻き込まれるのはごめんだ。
大体、僕はノーマルなわけで、男になんて興味はない。それは恐らく佐藤だってそうだろう。
僕が男だと分かれば興味なんてなくなるのだろうけど、正体を明かすわけにはいかないから、なるべく接点は持たないように気を付けなくては。
本当は体を動かすことは嫌いじゃないので、体育の見学って本当はちょっと辛い。元気に動き回る梓を見ていると、羨ましいなあと苦笑してしまった。
ふと、廊下での梓を思い出してまた顔が熱くなる。
普通に男としてこの学校に通っていたら、あんな美味しい事は味わえなかったんだよなあと思う。もちろん、だからと言って女子としてここに通っていることに、不満が無いわけではもちろんないのだけど。
ポーンと、バレーボールがこちらに転がってきた。僕は、立ち上がってボールを手に取り、ボールが転がってきた先を見た。
佐藤が手を振りながら駆け寄ってくる。
僕は、「はい」と、佐藤にボールを渡した。
「ありがとう、沢村さん」
佐藤は、にこりと笑って立ち去ろうとしたが、思い直したように立ち止まった。
「あのさ、…沢村さんって好きな人いるの?」
「え?」
突然何を言い出すんだろうと佐藤の顔を見ると、何だか顔が赤い。
これって、もしかしなくてももしかするのか?
何だか物凄く嫌な予感に、背中から変な汗が流れだした。
何て言った方が正解なんだろう。頭の中をぐるぐるさせながら、何とか無難な答えは無いかと模索しながらとりあえず返事をしようと口を開けた。
「い…」
その時、ポーンとまた勢いよくバレーボールが転がってきた。
「ごめんーん、佐藤くーん」
声の方向に振り向くと、さっき梓を踏んづけた女子が走ってきていた。一緒に体育の授業をしているということは、どうやら隣のクラスだったらしい。
「早瀬?」
あれ? 知り合いなのか?
ああ、もしかして同中とか?
転がってきたボールを佐藤が片手でひょいと取り、早瀬に渡した。
「ありがとう」
早瀬は目いっぱい可愛く、佐藤に笑顔を振りまいた。
「ああ、いや。じゃ」
佐藤は片手を上げて、みんなの元へと走って行った。
ニコニコと笑顔で佐藤を見送っていた早瀬が、冷たい目で僕を見る。
「何しゃべってたのよ」
佐藤と接点のあるやつは誰でも気に入らないといった風情で、ちょっと引いてしまう。
「別に、ボールを取ってあげただけよ」
「…にしては、結構長い時間だったじゃない」
「あ、それはボールが当たらなかったか聞いて来たのよ。私が病弱だから気にしてくれたみたい」
「…へえ?」
胡散臭げに僕の顔をじろじろ見ていた早瀬だったが、僕がわざとキョトンとした顔を作って見せたおかげで、どうやら本当の事だと思ったらしい。
早瀬は、そのまま女子のみんなの下へと走って行った。
僕は、ハアッと大きなため息を吐く。
はっきり言ってこんなわけのわからない恋愛のゴタゴタに巻き込まれるのはごめんだ。
大体、僕はノーマルなわけで、男になんて興味はない。それは恐らく佐藤だってそうだろう。
僕が男だと分かれば興味なんてなくなるのだろうけど、正体を明かすわけにはいかないから、なるべく接点は持たないように気を付けなくては。
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