12 / 106
第一章
困るんですけど3
しおりを挟む
「沢村さん、ちょっと」
ようやく落ち着いたとホッとしたところで、教室の入り口近くにいる西村に声をかけられた。
何だ?と思って西村を見ると、こっちこっちといった感じで手招きされた。
しょうがないので、立ち上がって西村の所に近づいて行った。
「沢村さん、まさかと思うけど佐藤と付き合ってる?」
わざわざ呼び出して何かと思えば、そんな事かよ。
「付き合ってないけど」
「そうか!良かった」
西村の顔は見る見る明るくなり、笑顔になる。
そして僕の手を取り、ぎゅっと握った。
「あ、ちょ、西村君…っ」
僕はギョッとして慌てて離そうとしたのだけど、強い力でびくともしない。
その時後ろから手が伸びて、誰かが僕の手から西村を引きはがしてくれた。
助かったと思って振り向くと、ちょっと怖い顔をした佐藤が立っていた。
「こんな所でくどいてんなよ」
「何だよ。彼氏でもないのに口出すな」
二人とも、険悪なムードで睨み合っている。
これってもしかして、僕の事を取り合っているということ?
なんだか居た堪れない微妙な雰囲気なんですけど。
「だいたい佐藤が仲良くなんかしたら、沢村さんに迷惑かけるんじゃないのか?」
佐藤はそれには答えず、片眉を上げて西村を睨んだ。
「他の女子が黙ってないだろ」
「女子が黙ってないってなんだよ?それこそ、もしそんな嫌がらせをする子がいたら、こっちから願い下げだな。隠れてコソコソするような子は俺は嫌いだ」
佐藤はまるで、こちらのやり取りに聞き耳を立てているであろう女子たちに、わざと聞こえるような大きさで喋っているようだ。
多分、暗に梓に対する女子の仕打ちを牽制する目的もあるのだろう。
下手に一件一件かばうより、この方が多分効果的だ。
佐藤に関する噂はあっという間に広がるので、梓に関する嫌がらせもきっとその内収まるに違いない。
それにしても、僕はどうしたら良いんだ?
このまま、席に帰ってもいい?ってか、帰りたいんだけど…。
「由紀、そろそろ行くよー」
背後から梓が僕をポンと叩いた。そして、佐藤の腕をポンポンと叩く。
佐藤は、振り返って梓を見て苦笑いをした。なんとなく阿吽の呼吸。
こういうところはやっぱり幼馴染なんだろうな。僕は佐藤にちょっとだけ嫉妬をしてしまう。
「行こ。由紀ちゃん」
まどかが、僕の手を引っ張ったので、僕はそのまま一緒に廊下へと出た。
「…佐藤君に悪いことしたかな」
ちょっと居た堪れない雰囲気だったけど、佐藤は僕が困っていたから助けに来てくれたわけで。
それなのにさっさと抜けてしまった自分が嫌な奴に思えてきた。
「大丈夫だよ。なんかさ、佐藤も由紀のためにって事もあったかもしれないけど…」
「そうそう。あれは自分が居ても立っても居られなくて、つい出しゃばっちゃったって感じだったもんねー」
「うん。今頃多分反省してるよ。もうちょっと、スマートに出来たはずなのに、ってさ」
「え、でも実際私、助かったよ」
「じゃあ後でありがとうって言っておいたらいいよ」
梓が優しく僕の頭を撫でた。まどかも隣でニコニコ笑っている。
「うん。分かった」
「あ」
「何?」
またハモってる。それがなんだか可愛くて、ちょっと笑ってしまった。
「で、どこ行くの?」
廊下をそのまま歩いていく二人に行先を尋ねたら、今度は二人に苦笑いをされてしまった。
「別にどこでも。単に由紀の救出だったから」
目を細めて笑う梓にきゅんとした。ホントに感激してしまって、それをごまかすためについ俯いてしまう。
「…ありがと」
恥ずかしさから絞り出すように声を出すと、ガバッとまどかが抱き着いてきた。
「由紀ちゃん可愛いー!」
「!!!」
まどかの腕の中で真っ赤になってもがいていると、梓がぺりっとまどかを剥がしてくれた。
…なんだか、恒例の行事になりつつあるんですけど…。
もーっと思ってまどかを見ると、楽しそうに笑っていた。
ようやく落ち着いたとホッとしたところで、教室の入り口近くにいる西村に声をかけられた。
何だ?と思って西村を見ると、こっちこっちといった感じで手招きされた。
しょうがないので、立ち上がって西村の所に近づいて行った。
「沢村さん、まさかと思うけど佐藤と付き合ってる?」
わざわざ呼び出して何かと思えば、そんな事かよ。
「付き合ってないけど」
「そうか!良かった」
西村の顔は見る見る明るくなり、笑顔になる。
そして僕の手を取り、ぎゅっと握った。
「あ、ちょ、西村君…っ」
僕はギョッとして慌てて離そうとしたのだけど、強い力でびくともしない。
その時後ろから手が伸びて、誰かが僕の手から西村を引きはがしてくれた。
助かったと思って振り向くと、ちょっと怖い顔をした佐藤が立っていた。
「こんな所でくどいてんなよ」
「何だよ。彼氏でもないのに口出すな」
二人とも、険悪なムードで睨み合っている。
これってもしかして、僕の事を取り合っているということ?
なんだか居た堪れない微妙な雰囲気なんですけど。
「だいたい佐藤が仲良くなんかしたら、沢村さんに迷惑かけるんじゃないのか?」
佐藤はそれには答えず、片眉を上げて西村を睨んだ。
「他の女子が黙ってないだろ」
「女子が黙ってないってなんだよ?それこそ、もしそんな嫌がらせをする子がいたら、こっちから願い下げだな。隠れてコソコソするような子は俺は嫌いだ」
佐藤はまるで、こちらのやり取りに聞き耳を立てているであろう女子たちに、わざと聞こえるような大きさで喋っているようだ。
多分、暗に梓に対する女子の仕打ちを牽制する目的もあるのだろう。
下手に一件一件かばうより、この方が多分効果的だ。
佐藤に関する噂はあっという間に広がるので、梓に関する嫌がらせもきっとその内収まるに違いない。
それにしても、僕はどうしたら良いんだ?
このまま、席に帰ってもいい?ってか、帰りたいんだけど…。
「由紀、そろそろ行くよー」
背後から梓が僕をポンと叩いた。そして、佐藤の腕をポンポンと叩く。
佐藤は、振り返って梓を見て苦笑いをした。なんとなく阿吽の呼吸。
こういうところはやっぱり幼馴染なんだろうな。僕は佐藤にちょっとだけ嫉妬をしてしまう。
「行こ。由紀ちゃん」
まどかが、僕の手を引っ張ったので、僕はそのまま一緒に廊下へと出た。
「…佐藤君に悪いことしたかな」
ちょっと居た堪れない雰囲気だったけど、佐藤は僕が困っていたから助けに来てくれたわけで。
それなのにさっさと抜けてしまった自分が嫌な奴に思えてきた。
「大丈夫だよ。なんかさ、佐藤も由紀のためにって事もあったかもしれないけど…」
「そうそう。あれは自分が居ても立っても居られなくて、つい出しゃばっちゃったって感じだったもんねー」
「うん。今頃多分反省してるよ。もうちょっと、スマートに出来たはずなのに、ってさ」
「え、でも実際私、助かったよ」
「じゃあ後でありがとうって言っておいたらいいよ」
梓が優しく僕の頭を撫でた。まどかも隣でニコニコ笑っている。
「うん。分かった」
「あ」
「何?」
またハモってる。それがなんだか可愛くて、ちょっと笑ってしまった。
「で、どこ行くの?」
廊下をそのまま歩いていく二人に行先を尋ねたら、今度は二人に苦笑いをされてしまった。
「別にどこでも。単に由紀の救出だったから」
目を細めて笑う梓にきゅんとした。ホントに感激してしまって、それをごまかすためについ俯いてしまう。
「…ありがと」
恥ずかしさから絞り出すように声を出すと、ガバッとまどかが抱き着いてきた。
「由紀ちゃん可愛いー!」
「!!!」
まどかの腕の中で真っ赤になってもがいていると、梓がぺりっとまどかを剥がしてくれた。
…なんだか、恒例の行事になりつつあるんですけど…。
もーっと思ってまどかを見ると、楽しそうに笑っていた。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる