16 / 106
第二章
少しだけ近く1
しおりを挟む
困惑げな顔で探るように見られて、僕はもう走り出して逃げたい気分だ。
だけどこのままでは、梓の信用も失って二度と友達にもなれないかもしれない。それだけは嫌だった。
もちろん本音を言えば、友達よりも彼女になって欲しいのだけど。
「聞いてくれる? 何でこんな恰好をしてるのか」
「…うん」
僕は梓にちゃんと分かってもらいたくて、家が大衆演劇を営んでいる事、そして女形の出来が悪いから修行の一環としてこの高校に女装して通うようにと親父に強制されたことなど、包み隠さずすべて話した。
話している最中、梓は目を丸くして信じられないといった表情で僕の話しを聞いていた。
だけど僕が「劇団むらさき」で雪乃丞という名前で出ていると言うと、僕の芝居を見てくれたことがあったようで僕の事を知っていた。
「嘘!ホントに雪乃丞? え? ええっ?」
そう言いながら、僕のほっぺたをぺたぺたと触ってくる。
至近距離の梓にまた顔が熱くなってきた。だけど、梓はお構いなしに僕の顔をじいっと見つめている。
「似てはいるけど、なんか違うような…」
「化粧の仕方が違うから」
「ああ、そうか…。て、自分で化粧してるのか?」
「違うよ。これは姉さんが、男とばれないようにって一生懸命研究してくれたんだ」
「へえ、良い姉さんだね」
「うん」
どうやら梓の感じから、僕の説明を納得してもらえたらしい。
「梓」
「うん?」
「悪いんだけど、まどか達にもこの事内緒にしておいてもらえる?」
「ああ…」
「佐藤には凄く悪いと思っているけど、女装してるってみんなにバレたら僕もうココには通えないし」
そう言うと梓はハッとした顔になり、唇をきゅっと結んだ。
「そうだよな、みんな口は堅いと思うけど、何かの拍子に誰かに聞かれてしまうことにもなりかねないもんな…」
梓は僕の目を真正面から見て、言葉を続けた。
「分かった。誰にも絶対言わない。由紀が生半可な理由で女装しているんじゃないって事も分かったし、あたしで良ければ協力もするよ」
「あ、ありがとう梓!」
「だけどあんまりまどかの前で可愛い真似しない方が良いぞ? 由紀に抱き付く癖がついてるみたいだし」
梓は思い出したのか、肩を揺らして笑ってる。
「可愛いって…」
そんなつもりは全然ないんだぞ?
僕は、ちょっと剥れてしまった。
梓はそんな僕の顔を見て、眉を下げ困ったような表情を作る。
「だからそれが可愛いって言ってんの!」
コツンと僕の額を小突き、けらけらと笑った。
だけどこのままでは、梓の信用も失って二度と友達にもなれないかもしれない。それだけは嫌だった。
もちろん本音を言えば、友達よりも彼女になって欲しいのだけど。
「聞いてくれる? 何でこんな恰好をしてるのか」
「…うん」
僕は梓にちゃんと分かってもらいたくて、家が大衆演劇を営んでいる事、そして女形の出来が悪いから修行の一環としてこの高校に女装して通うようにと親父に強制されたことなど、包み隠さずすべて話した。
話している最中、梓は目を丸くして信じられないといった表情で僕の話しを聞いていた。
だけど僕が「劇団むらさき」で雪乃丞という名前で出ていると言うと、僕の芝居を見てくれたことがあったようで僕の事を知っていた。
「嘘!ホントに雪乃丞? え? ええっ?」
そう言いながら、僕のほっぺたをぺたぺたと触ってくる。
至近距離の梓にまた顔が熱くなってきた。だけど、梓はお構いなしに僕の顔をじいっと見つめている。
「似てはいるけど、なんか違うような…」
「化粧の仕方が違うから」
「ああ、そうか…。て、自分で化粧してるのか?」
「違うよ。これは姉さんが、男とばれないようにって一生懸命研究してくれたんだ」
「へえ、良い姉さんだね」
「うん」
どうやら梓の感じから、僕の説明を納得してもらえたらしい。
「梓」
「うん?」
「悪いんだけど、まどか達にもこの事内緒にしておいてもらえる?」
「ああ…」
「佐藤には凄く悪いと思っているけど、女装してるってみんなにバレたら僕もうココには通えないし」
そう言うと梓はハッとした顔になり、唇をきゅっと結んだ。
「そうだよな、みんな口は堅いと思うけど、何かの拍子に誰かに聞かれてしまうことにもなりかねないもんな…」
梓は僕の目を真正面から見て、言葉を続けた。
「分かった。誰にも絶対言わない。由紀が生半可な理由で女装しているんじゃないって事も分かったし、あたしで良ければ協力もするよ」
「あ、ありがとう梓!」
「だけどあんまりまどかの前で可愛い真似しない方が良いぞ? 由紀に抱き付く癖がついてるみたいだし」
梓は思い出したのか、肩を揺らして笑ってる。
「可愛いって…」
そんなつもりは全然ないんだぞ?
僕は、ちょっと剥れてしまった。
梓はそんな僕の顔を見て、眉を下げ困ったような表情を作る。
「だからそれが可愛いって言ってんの!」
コツンと僕の額を小突き、けらけらと笑った。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる