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第二章
ちょっぴり進展?…まだまだです2
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「練習は放課後だな。田本、お前も手伝ってくれるだろ?」
え?と、みんなが田本に視線を集中させた。もちろん小田も。
今はお昼休み。今日小田は卵焼きを作って来ていて、田本に食べてもらおうと緊張気味だ。
「まあ、いいけど」
「良かった。お前リズム感良いから、みんなに指導してもらうと助かるし」
「へえ~、田本ってそんな特技があったんだね。知らなかったよ。あ、そうだ。褒美に優奈の卵焼きを上げよう」
梓がそう言って小田の弁当を田本の前に持っていく。自然な動作に、僕はナルホドと感心した。
突然自分の目の前に、小田の弁当を突きだされてさすがの田本もびっくりしている。
「あ、良かったら食べて。指導のお礼と言うことで」
小田は赤くなりながらも田本に卵焼きを勧めた。
「小田が作ったの?」
「う、うん」
「へえ?じゃあ遠慮なく」
ひょいっと箸で一個だけつまむ。口の中でもぐもぐと咀嚼して目を見開いた。
「うっめ! 何この絶妙な甘さ! もう一つもらっても良い?」
「うん! もちろん」
小田は嬉しそうに微笑んでいる。
あー、良かった。少しは小田の役に立てたみたいだ。
僕は安堵して梓とまどかに視線を向けると、二人とも嬉しそうに小田たちを見ていた。
それからの放課後は、時間のある時に集まってダンスの練習をしたり、リレーの練習をしたりとちょっとみんな忙しそうだった。
僕はダンスの練習の無い時は、そのまま家に帰っていた。家に帰ってやらなきゃならない事もあるので、そうそう放課後に残ってばかりも居られないからだ。
と言うことで、今僕は舞踊の稽古中。親父がそれを腕を組みながらじっと見ている。
「…良くなってきているな」
珍しい…。親父に褒められたのって何年ぶりだ?
「ただ、上体を垂直にするよう心掛けろ。それとへその下あたりに力を入れろよ。基本も大事だ、忘れるな」
「…分かった」
親父に言われたことを頭に叩き込んでもう一踊りする。表現にも気を付けながら、真剣に体を動かしていたので終わったころにはぐったりだ。
「由紀也」
「ああ?何だよ」
疲れていたのでなおざりに返事をする。
「お前、好きな人でも出来たか?」
「え!?」
びっくり仰天だ。
親父の口からそんな質問が飛んでくるとは思わなかったので、僕はうろたえて視線を彷徨わせてしまった。
「なるほどな」
「な、何だよ急に!」
「表現に艶が出てきている。今までと違って奥が深いと言えばしっくりくるかな」
「…」
僕は梓の事を考えていた。男とばれてしまってから、何となく梓との距離が近くなった気がして、欲が出てきてしまっている。
そう考えて、ふと疑問に思ってしまった。もしも梓に恋したことが切っ掛けで良くなっているのなら、女装なんて本当に必要だったのか?
「…あのさ、女装って本当に必要だった?」
そう言って親父を見るとギロッと睨まれてしまった。
「当然だ! お前の動きはどう見ても男そのものだったんだぞ。今でも俺としてはまだまだだと思っている。少し良くなったからと言って油断するんじゃない!」
…僕は余計なひと言を言ってしまったようだった。
おかげで、いつもより一時間も長い稽古をさせられてしまったのだ。
え?と、みんなが田本に視線を集中させた。もちろん小田も。
今はお昼休み。今日小田は卵焼きを作って来ていて、田本に食べてもらおうと緊張気味だ。
「まあ、いいけど」
「良かった。お前リズム感良いから、みんなに指導してもらうと助かるし」
「へえ~、田本ってそんな特技があったんだね。知らなかったよ。あ、そうだ。褒美に優奈の卵焼きを上げよう」
梓がそう言って小田の弁当を田本の前に持っていく。自然な動作に、僕はナルホドと感心した。
突然自分の目の前に、小田の弁当を突きだされてさすがの田本もびっくりしている。
「あ、良かったら食べて。指導のお礼と言うことで」
小田は赤くなりながらも田本に卵焼きを勧めた。
「小田が作ったの?」
「う、うん」
「へえ?じゃあ遠慮なく」
ひょいっと箸で一個だけつまむ。口の中でもぐもぐと咀嚼して目を見開いた。
「うっめ! 何この絶妙な甘さ! もう一つもらっても良い?」
「うん! もちろん」
小田は嬉しそうに微笑んでいる。
あー、良かった。少しは小田の役に立てたみたいだ。
僕は安堵して梓とまどかに視線を向けると、二人とも嬉しそうに小田たちを見ていた。
それからの放課後は、時間のある時に集まってダンスの練習をしたり、リレーの練習をしたりとちょっとみんな忙しそうだった。
僕はダンスの練習の無い時は、そのまま家に帰っていた。家に帰ってやらなきゃならない事もあるので、そうそう放課後に残ってばかりも居られないからだ。
と言うことで、今僕は舞踊の稽古中。親父がそれを腕を組みながらじっと見ている。
「…良くなってきているな」
珍しい…。親父に褒められたのって何年ぶりだ?
「ただ、上体を垂直にするよう心掛けろ。それとへその下あたりに力を入れろよ。基本も大事だ、忘れるな」
「…分かった」
親父に言われたことを頭に叩き込んでもう一踊りする。表現にも気を付けながら、真剣に体を動かしていたので終わったころにはぐったりだ。
「由紀也」
「ああ?何だよ」
疲れていたのでなおざりに返事をする。
「お前、好きな人でも出来たか?」
「え!?」
びっくり仰天だ。
親父の口からそんな質問が飛んでくるとは思わなかったので、僕はうろたえて視線を彷徨わせてしまった。
「なるほどな」
「な、何だよ急に!」
「表現に艶が出てきている。今までと違って奥が深いと言えばしっくりくるかな」
「…」
僕は梓の事を考えていた。男とばれてしまってから、何となく梓との距離が近くなった気がして、欲が出てきてしまっている。
そう考えて、ふと疑問に思ってしまった。もしも梓に恋したことが切っ掛けで良くなっているのなら、女装なんて本当に必要だったのか?
「…あのさ、女装って本当に必要だった?」
そう言って親父を見るとギロッと睨まれてしまった。
「当然だ! お前の動きはどう見ても男そのものだったんだぞ。今でも俺としてはまだまだだと思っている。少し良くなったからと言って油断するんじゃない!」
…僕は余計なひと言を言ってしまったようだった。
おかげで、いつもより一時間も長い稽古をさせられてしまったのだ。
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