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第二章
汗を掻きましょう1
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「100mそろそろ出番だって。梓と、佐藤もだよね」
「おう、じゃあ行ってくる」
混合リレーはまだ先なので、まどかも小田もバニーのコスプレに着替えて来ていた。
「三人とも、やっぱ可愛い~」
女子が数人群がってきた。手にはメガホン、応援用だ。
「あ、佐藤君、そろそろみたいだよ」
その声に、僕らもポンポンを持って立ち上がり、スタートラインに立つ佐藤に目を向けた。一瞬佐藤がこちらを向き、その際僕と目が合った。
僕はエールを送るつもりで、ポンポンを片手に拳を上げる。すると佐藤はそれに対する返礼だろうが、これまたとんでもなく甘い笑顔で僕にほほ笑んだのだ。
ピシッ!
僕の体は瞬時に固まった。
うっかりしてた…。距離を取らなきゃいけないのに、何やってんだ僕は…!
冷や汗を流しながら反省していると、脇から「キャーッ」と歓声が上がる。
「見た? 見た? こっちに向かって笑ってた!」
「ね、今の私に? 私に?」
「バカッ、んなわけないじゃん。だってほら…」
そう言って、女子がこっそり僕の方を振り返る。
その視線が居た堪れなくて背中に汗を掻いていると、まどかのノホホンとした声が響いてきた。
「まどかのお願い聞いてくれたんだ~、佐藤ったら天邪鬼♡」
場の空気が微妙な形で固まった。近くにいる女子がほぼ全員まどかを振りかえる。
「ん? 佐藤に頼んでたのよ。女子に甘い笑顔振りまいてって! でも、コスプレしてる時にって頼んだのになー」
そのまどかの言葉に、みんな目を丸くして驚いている。
僕は思わずため息を吐いてしまった。
「まどか…」
それは佐藤に対してあんまりじゃないのか?
「もしかしてまどかって、佐藤の事からかうのが好きなの?」
僕の素朴な疑問に今度は視線が僕に集中していた。…佐藤って本当に女子にモテるんだな…。
「へへへ。だって佐藤って格好良すぎるし。困ったり呆れたりした顔見ると楽しくなっちゃう!」
もはや女子は完璧に固まってまどかを凝視している。
「でもねー、そう言う顔してもやっぱりなんかさまになってるんだよね。何なの佐藤って」
「…」
僕も分からない。
何なんだ、このまどかの独特な感性は!
なんて、競技に関係無い事に気が行っていると、パーンとピストルの合図。
みんな我に返って、メガホンを手に「頑張れ―」と佐藤に声援を送る。僕らはポンポンを手にダンスで応援を盛り上げる。もちろん目はグラウンドにくぎ付けだ。
凄い! 凄い! 凄い!
最初は中間ほどの位置を走っていたのに、後半はぐんぐん追い上げて、一位を取ってしまった。
「なんて奴…」
思わず素で呟いてしまったが、女子の歓声が凄くて僕の声は誰にも聞かれなかった。
「おう、じゃあ行ってくる」
混合リレーはまだ先なので、まどかも小田もバニーのコスプレに着替えて来ていた。
「三人とも、やっぱ可愛い~」
女子が数人群がってきた。手にはメガホン、応援用だ。
「あ、佐藤君、そろそろみたいだよ」
その声に、僕らもポンポンを持って立ち上がり、スタートラインに立つ佐藤に目を向けた。一瞬佐藤がこちらを向き、その際僕と目が合った。
僕はエールを送るつもりで、ポンポンを片手に拳を上げる。すると佐藤はそれに対する返礼だろうが、これまたとんでもなく甘い笑顔で僕にほほ笑んだのだ。
ピシッ!
僕の体は瞬時に固まった。
うっかりしてた…。距離を取らなきゃいけないのに、何やってんだ僕は…!
冷や汗を流しながら反省していると、脇から「キャーッ」と歓声が上がる。
「見た? 見た? こっちに向かって笑ってた!」
「ね、今の私に? 私に?」
「バカッ、んなわけないじゃん。だってほら…」
そう言って、女子がこっそり僕の方を振り返る。
その視線が居た堪れなくて背中に汗を掻いていると、まどかのノホホンとした声が響いてきた。
「まどかのお願い聞いてくれたんだ~、佐藤ったら天邪鬼♡」
場の空気が微妙な形で固まった。近くにいる女子がほぼ全員まどかを振りかえる。
「ん? 佐藤に頼んでたのよ。女子に甘い笑顔振りまいてって! でも、コスプレしてる時にって頼んだのになー」
そのまどかの言葉に、みんな目を丸くして驚いている。
僕は思わずため息を吐いてしまった。
「まどか…」
それは佐藤に対してあんまりじゃないのか?
「もしかしてまどかって、佐藤の事からかうのが好きなの?」
僕の素朴な疑問に今度は視線が僕に集中していた。…佐藤って本当に女子にモテるんだな…。
「へへへ。だって佐藤って格好良すぎるし。困ったり呆れたりした顔見ると楽しくなっちゃう!」
もはや女子は完璧に固まってまどかを凝視している。
「でもねー、そう言う顔してもやっぱりなんかさまになってるんだよね。何なの佐藤って」
「…」
僕も分からない。
何なんだ、このまどかの独特な感性は!
なんて、競技に関係無い事に気が行っていると、パーンとピストルの合図。
みんな我に返って、メガホンを手に「頑張れ―」と佐藤に声援を送る。僕らはポンポンを手にダンスで応援を盛り上げる。もちろん目はグラウンドにくぎ付けだ。
凄い! 凄い! 凄い!
最初は中間ほどの位置を走っていたのに、後半はぐんぐん追い上げて、一位を取ってしまった。
「なんて奴…」
思わず素で呟いてしまったが、女子の歓声が凄くて僕の声は誰にも聞かれなかった。
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