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第二章
汗を掻きましょう2
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当の佐藤は、まるでそれが当然のことかのように爽やかに髪をかき上げてゆっくりとこちらを向いた。
もう女子はまるで王子様を見るかのような目で、うっとりと佐藤を見つめている。
「ここで腹黒い笑顔を見せてくれると盛り上がるのになー」
「…あのね、まどか」
褒めているのか貶しているのか、さっぱり分からないまどかに僕は苦笑いをこぼしたのだ。
佐藤はそのまま戻って来るかと思ったのだが、校舎の方に歩いて行った。
「あれー、どこ行くんだろ」
まどかの疑問に田本が返事をする。
「着替えに行ったんじゃないのか? あいつの出、あれで終わりだから」
「ああ、そっか」
又女子が色めきだった。
他の男子のパフォーマンスメンバーは既に着替えを終えている。まだ競技が残っている奴もいるのだが、まだ先だから競技の寸前にもう一度着替えるつもりなのだろう。
そうこうしている内に、一年女子がコールされた。梓や他の面々がスタートラインに立つ。
「梓―!頑張れー!」
まどかが大声で声援を送る。その声に気付いた梓が手を振った。
僕は大声を出すと地声になる恐れがあるので、手を振るだけにとどめておいた。
パーンとピストルが鳴り、一斉にスタートを切る。梓も早いが、一人飛び抜けて早い子がいる。
「頑張れ、頑張れー!」
僕はポンポンを振りながら、梓の走りに集中して自然と力が入ってしまった。だけど結局梓は最後まで前を走っていた子を追い抜くことが出来ずに二着で終わってしまった。
「あー」
残念がる声があちこちから聞こえてきた。
だけど負けず嫌いの梓が一生懸命練習しているのをみんな知っていたので、陸上部相手に頑張ったよねと、それは労いの言葉に変わって行った。
もう女子はまるで王子様を見るかのような目で、うっとりと佐藤を見つめている。
「ここで腹黒い笑顔を見せてくれると盛り上がるのになー」
「…あのね、まどか」
褒めているのか貶しているのか、さっぱり分からないまどかに僕は苦笑いをこぼしたのだ。
佐藤はそのまま戻って来るかと思ったのだが、校舎の方に歩いて行った。
「あれー、どこ行くんだろ」
まどかの疑問に田本が返事をする。
「着替えに行ったんじゃないのか? あいつの出、あれで終わりだから」
「ああ、そっか」
又女子が色めきだった。
他の男子のパフォーマンスメンバーは既に着替えを終えている。まだ競技が残っている奴もいるのだが、まだ先だから競技の寸前にもう一度着替えるつもりなのだろう。
そうこうしている内に、一年女子がコールされた。梓や他の面々がスタートラインに立つ。
「梓―!頑張れー!」
まどかが大声で声援を送る。その声に気付いた梓が手を振った。
僕は大声を出すと地声になる恐れがあるので、手を振るだけにとどめておいた。
パーンとピストルが鳴り、一斉にスタートを切る。梓も早いが、一人飛び抜けて早い子がいる。
「頑張れ、頑張れー!」
僕はポンポンを振りながら、梓の走りに集中して自然と力が入ってしまった。だけど結局梓は最後まで前を走っていた子を追い抜くことが出来ずに二着で終わってしまった。
「あー」
残念がる声があちこちから聞こえてきた。
だけど負けず嫌いの梓が一生懸命練習しているのをみんな知っていたので、陸上部相手に頑張ったよねと、それは労いの言葉に変わって行った。
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