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第四章
梓の家族2
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食事を済ませた後、僕がお土産に持ってきたフルーツゼリーが食卓に出てきた。
そして、それと同時に去年おばさんが僕の舞台を見た時に買ってくれていた、カレンダーを持ってきた。
「うわ、これ去年出したカレンダー…! 買ってくれたんですか?」
「そうよ。学生時代の友達に凄く目の保養になる子がいるからって、連れてってもらってね、そしたらもう目の保養どころかお芝居もものすごく面白くて、はまっちゃったのよ~。で、これは記念に」
「そ、そうなんですか。有難うございます」
「あの時のお母さんのはしゃぎようは凄かったよな…。まあおかげであたしも連れて行ってもらったんだけど」
「そうだったな。あの時は二人とも大はしゃぎで大変だった」
ため息交じりにお父さんが呟く。
その一言に僕は一瞬顔が熱くなったんだけど、もしかしたらお父さんには嫌われたりしてるんじゃないかと冷や汗も掻いてしまう。
「そう言えば今年はきみは出ないのかい? 今、確か隣町で公演中だろう?」
「あ、はい。座長の思うところがあるようで、僕は今回は出番なしです。でも、夏には東北の方で公演を予定していて、それには僕も出演予定ですよ」
お父さんに話していたのだが、それに瞬時に反応したのはお母さんの方だった。
「まあ!そうなの!? それなら是非行かなくちゃ! ね、梓?」
「そうだね」
梓は笑いを堪えるように返事をする。
「由紀也君、日程が決まったら報告してね!」
「はい。お知らせします」
その後いろんな話に花を咲かせた後、夕食のお礼にと、僕は軽く踊りを披露する。そんな頃には時計の針が九時を回っていて、そろそろお暇しなければと言うことになった。
「あたし、駅まで送っていくから」
玄関先で挨拶していると、梓が靴を履いている。
「え、良いよ。こんな時間だし、帰り道危ないだろ? 僕は大丈夫だから」
「何言ってんだよ。このくらいの時間なら、普通に本屋にも行くぞ?」
「いや、でも…」
確かに梓と二人っきりでいられる時間は嬉しいけど、僕としてはやっぱり梓を夜道に一人で帰すのは躊躇する。
「大丈夫よ、由紀也君。梓の言うとおり、ここら辺は明るいから危ない事は無いわ。だから送らせてやって?」
ニコニコと梓のお母さんが促すから、僕も折れることにした。
「…分かりました、すみません。じゃあ梓、携帯持っといて。帰り道何かあったら電話できるように」
「だから、何もないって」
「…」
呆れる梓に、僕はじいっと責めるように見つめる。
僕がどうあっても主張を取り下げないと分かったようで、肩眉を上げてから靴を脱いで家の中へと入って行った。それをお母さんやお兄さんが、微笑ましげに見つめている。
…もしかしたら、僕の梓への気持ちに気が付いちゃったりしているのかな…。てゆうか、男ならこのくらいの配慮は当たり前だよね?
僕は夕飯のお礼を言った後、パタパタと戻ってきた梓と一緒に玄関を後にした。
そして、それと同時に去年おばさんが僕の舞台を見た時に買ってくれていた、カレンダーを持ってきた。
「うわ、これ去年出したカレンダー…! 買ってくれたんですか?」
「そうよ。学生時代の友達に凄く目の保養になる子がいるからって、連れてってもらってね、そしたらもう目の保養どころかお芝居もものすごく面白くて、はまっちゃったのよ~。で、これは記念に」
「そ、そうなんですか。有難うございます」
「あの時のお母さんのはしゃぎようは凄かったよな…。まあおかげであたしも連れて行ってもらったんだけど」
「そうだったな。あの時は二人とも大はしゃぎで大変だった」
ため息交じりにお父さんが呟く。
その一言に僕は一瞬顔が熱くなったんだけど、もしかしたらお父さんには嫌われたりしてるんじゃないかと冷や汗も掻いてしまう。
「そう言えば今年はきみは出ないのかい? 今、確か隣町で公演中だろう?」
「あ、はい。座長の思うところがあるようで、僕は今回は出番なしです。でも、夏には東北の方で公演を予定していて、それには僕も出演予定ですよ」
お父さんに話していたのだが、それに瞬時に反応したのはお母さんの方だった。
「まあ!そうなの!? それなら是非行かなくちゃ! ね、梓?」
「そうだね」
梓は笑いを堪えるように返事をする。
「由紀也君、日程が決まったら報告してね!」
「はい。お知らせします」
その後いろんな話に花を咲かせた後、夕食のお礼にと、僕は軽く踊りを披露する。そんな頃には時計の針が九時を回っていて、そろそろお暇しなければと言うことになった。
「あたし、駅まで送っていくから」
玄関先で挨拶していると、梓が靴を履いている。
「え、良いよ。こんな時間だし、帰り道危ないだろ? 僕は大丈夫だから」
「何言ってんだよ。このくらいの時間なら、普通に本屋にも行くぞ?」
「いや、でも…」
確かに梓と二人っきりでいられる時間は嬉しいけど、僕としてはやっぱり梓を夜道に一人で帰すのは躊躇する。
「大丈夫よ、由紀也君。梓の言うとおり、ここら辺は明るいから危ない事は無いわ。だから送らせてやって?」
ニコニコと梓のお母さんが促すから、僕も折れることにした。
「…分かりました、すみません。じゃあ梓、携帯持っといて。帰り道何かあったら電話できるように」
「だから、何もないって」
「…」
呆れる梓に、僕はじいっと責めるように見つめる。
僕がどうあっても主張を取り下げないと分かったようで、肩眉を上げてから靴を脱いで家の中へと入って行った。それをお母さんやお兄さんが、微笑ましげに見つめている。
…もしかしたら、僕の梓への気持ちに気が付いちゃったりしているのかな…。てゆうか、男ならこのくらいの配慮は当たり前だよね?
僕は夕飯のお礼を言った後、パタパタと戻ってきた梓と一緒に玄関を後にした。
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