66 / 106
第五章
公言できなくても彼女だから2
しおりを挟む
「由紀」
後ろから声をかけられて振り返ると、小田が立っていた。
「小田さん、おはよう。何?」
「おはよう。…あのね、この前一緒にダブルデートしてって言ったでしょ?」
「ああ、うん」
「あの時は由紀は佐藤君の事好きじゃないからって断ったけど、今は付き合ってるんだよね」
「…まあ」
小田の言いたいことが分かってしまった。
「今なら、OKしてくれるよね?」
「あー、えーと…」
チラッと梓を窺うと、案の定少し拗ねたような顔をしている。
まずいよな、やっぱ。
いくら表面には出せない関係とはいえ、彼女をほっといて別の面々でデートとか…。
僕がされてもやっぱり嫌な気分になるし。
「…佐藤君に相談してからね」
「ありがとう! お願いね!」
期待に満ちた顔で、小田が僕の手を握った。
振りほどくわけにもいかないので、僕は曖昧に乾いた笑いを溢すしかなかったのだ…。
まどかが教科書を忘れたと言って、隣のクラスに借りに行っている最中、僕と梓は先ほどの件で話をしていた。
「…行くの? さっきのアレ」
「行く気はないよ。本当のところ、あんまり遊んでる時間は取れそうにないんだよな。言ったろ? 夏の公演には出るって。その稽古に今入っていて、めちゃくちゃしんどい最中なんだよ」
「…そうなんだ」
「そ。だからもし休みが取れるんなら、そんな他人のデートじゃなくて梓とデートに行くし。な?」
僕が同意を求めると、一瞬梓の表情が止まり、はにかんだ笑顔に変わって行った。
可愛い!
あ~失敗したなあ。まどかキャラにしていれば、思いっきり梓に抱き付けたのに!
だけど、由紀キャラでも出来ることはある。
僕は何気に梓の腕にすがり、甘えたように頭を梓の方に傾けた。そして誰にも聞かれないくらいの小声で、梓に言う。
「可愛い梓。誰も居なかったら抱きしめたのに」
途端にピクンと揺れる体。見ると顔も真っ赤になっていた。
…失敗したかも…。
僕は慌てて梓を引っ張って、教室から連れ出した。
「ちょ、由紀?」
「ごめん、見せたくなかった」
「え?」
「…みんなに、梓のその可愛い顔…見せたくなかったから」
「由…紀」
「は~っ」
僕は壁にもたれて手で額を覆い、顔を上げた。
そんな僕の様子を梓がキョトンと見ている。
「知らなかった。僕って結構、独占欲が強いみたいだ」
梓は目をぱちぱちさせ、小首を傾げる。
やっぱ自覚ないか。
「大好きなんだよな、梓の事」
「…バカ」
梓は視線を下に落とす。耳まで真っ赤になっていた。
「そんなの、あたしだって一緒だ」
このままずっと梓と二人だけで一緒に居たいけど、そろそろ授業が始まる。
「そろそろ戻ろうか」
「そうだね」
僕は梓の手を引いて教室へと戻った。
女の子同士ってこういう時、便利だよなーと、梓の手をギュッと握りしめながら。
後ろから声をかけられて振り返ると、小田が立っていた。
「小田さん、おはよう。何?」
「おはよう。…あのね、この前一緒にダブルデートしてって言ったでしょ?」
「ああ、うん」
「あの時は由紀は佐藤君の事好きじゃないからって断ったけど、今は付き合ってるんだよね」
「…まあ」
小田の言いたいことが分かってしまった。
「今なら、OKしてくれるよね?」
「あー、えーと…」
チラッと梓を窺うと、案の定少し拗ねたような顔をしている。
まずいよな、やっぱ。
いくら表面には出せない関係とはいえ、彼女をほっといて別の面々でデートとか…。
僕がされてもやっぱり嫌な気分になるし。
「…佐藤君に相談してからね」
「ありがとう! お願いね!」
期待に満ちた顔で、小田が僕の手を握った。
振りほどくわけにもいかないので、僕は曖昧に乾いた笑いを溢すしかなかったのだ…。
まどかが教科書を忘れたと言って、隣のクラスに借りに行っている最中、僕と梓は先ほどの件で話をしていた。
「…行くの? さっきのアレ」
「行く気はないよ。本当のところ、あんまり遊んでる時間は取れそうにないんだよな。言ったろ? 夏の公演には出るって。その稽古に今入っていて、めちゃくちゃしんどい最中なんだよ」
「…そうなんだ」
「そ。だからもし休みが取れるんなら、そんな他人のデートじゃなくて梓とデートに行くし。な?」
僕が同意を求めると、一瞬梓の表情が止まり、はにかんだ笑顔に変わって行った。
可愛い!
あ~失敗したなあ。まどかキャラにしていれば、思いっきり梓に抱き付けたのに!
だけど、由紀キャラでも出来ることはある。
僕は何気に梓の腕にすがり、甘えたように頭を梓の方に傾けた。そして誰にも聞かれないくらいの小声で、梓に言う。
「可愛い梓。誰も居なかったら抱きしめたのに」
途端にピクンと揺れる体。見ると顔も真っ赤になっていた。
…失敗したかも…。
僕は慌てて梓を引っ張って、教室から連れ出した。
「ちょ、由紀?」
「ごめん、見せたくなかった」
「え?」
「…みんなに、梓のその可愛い顔…見せたくなかったから」
「由…紀」
「は~っ」
僕は壁にもたれて手で額を覆い、顔を上げた。
そんな僕の様子を梓がキョトンと見ている。
「知らなかった。僕って結構、独占欲が強いみたいだ」
梓は目をぱちぱちさせ、小首を傾げる。
やっぱ自覚ないか。
「大好きなんだよな、梓の事」
「…バカ」
梓は視線を下に落とす。耳まで真っ赤になっていた。
「そんなの、あたしだって一緒だ」
このままずっと梓と二人だけで一緒に居たいけど、そろそろ授業が始まる。
「そろそろ戻ろうか」
「そうだね」
僕は梓の手を引いて教室へと戻った。
女の子同士ってこういう時、便利だよなーと、梓の手をギュッと握りしめながら。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる