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第五章
プライドと困惑2
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「あのさ、実は姉さんが佐藤君の事好きになっちゃっててさ」
「へえ? ああ、痴漢騒ぎの件で?」
「そう。かっこよくて頼れる佐藤君に一目ぼれしたみたい」
「ふうん」
「でさ、今回の佐藤君の訪問は、姉さんが少しでも佐藤君と近づきたいと思ってお願いしたことなんだよ」
「由紀の姉さんが佐藤に?」
「そう。僕から見てもなんとなく、脈ありなんじゃないかなーと思うんだ。…だからその、今回は…」
「…あたしは邪魔?」
梓は少し口をとがらせて不満そうだ。
…あれれ?
普段の梓なら、さっぱりと了承するかと思ったんだけど。僕の説明の何がいけないんだろう。
「いや、そう言う事じゃなくてさ…」
えーと、なんと言えばいいんだろう。
さっきのは怒ってるというよりは拗ねてる感じだよな。
「僕が心配してるのはそう言う事じゃなくて(あからさまに言うと当たってはいるけど、そんなこと言おうものなら、へそ曲げちゃうだろうし…)佐藤君と姉さんが意気投合しちゃって、僕が稽古から抜け出せなかったら、梓がつまんないんじゃないかと思ったんだよ」
「…本当に?」
「もちろんだよ」
「それだったら別に…、由紀と話せなくても稽古の見学とかは構わないかな?」
「見学…? う~ん、まだあんまり人様に見せられる状態じゃないんだよなあ…」
はっきり言って、親父にぽかすか怒られている現場はあまり人には見られたくはない。
「ダメ…か?」
ちょっぴり不安そうに拗ねた感じの梓の顔が僕の心をぐらつかせる。
梓~、男にはプライドってものがあるんだよぉ。
「…ダメな確率の方が高いけど、一応親父に聞いてみるよ」
「うん! お願い」
「あまり期待しないでな。僕ですら人様に見せられない状態だと思っているから、親父なら尚更だし」
「ダメもとでもいいよ。聞いてみてくれるんなら」
さっきと打って変わって梓は嬉しそうだ。
僕としてはなんとなく複雑な気分だ。もしいいと言われたら、あの不出来な状態で叱り飛ばされている所を梓に見られることになるし、かといってダメと言うことになれば、梓がまた不貞腐れてしまいそうだし。
何だかなあ…。
「じゃあ、あたしも部活行ってくる」
「うん、頑張れよ」
「由紀もな」
梓は手を振りながら、そのまま体育館の方へと走って行った。
僕は梓の姿が小さくなるまで見送って、こっそりため息を吐いたのだった。
「へえ? ああ、痴漢騒ぎの件で?」
「そう。かっこよくて頼れる佐藤君に一目ぼれしたみたい」
「ふうん」
「でさ、今回の佐藤君の訪問は、姉さんが少しでも佐藤君と近づきたいと思ってお願いしたことなんだよ」
「由紀の姉さんが佐藤に?」
「そう。僕から見てもなんとなく、脈ありなんじゃないかなーと思うんだ。…だからその、今回は…」
「…あたしは邪魔?」
梓は少し口をとがらせて不満そうだ。
…あれれ?
普段の梓なら、さっぱりと了承するかと思ったんだけど。僕の説明の何がいけないんだろう。
「いや、そう言う事じゃなくてさ…」
えーと、なんと言えばいいんだろう。
さっきのは怒ってるというよりは拗ねてる感じだよな。
「僕が心配してるのはそう言う事じゃなくて(あからさまに言うと当たってはいるけど、そんなこと言おうものなら、へそ曲げちゃうだろうし…)佐藤君と姉さんが意気投合しちゃって、僕が稽古から抜け出せなかったら、梓がつまんないんじゃないかと思ったんだよ」
「…本当に?」
「もちろんだよ」
「それだったら別に…、由紀と話せなくても稽古の見学とかは構わないかな?」
「見学…? う~ん、まだあんまり人様に見せられる状態じゃないんだよなあ…」
はっきり言って、親父にぽかすか怒られている現場はあまり人には見られたくはない。
「ダメ…か?」
ちょっぴり不安そうに拗ねた感じの梓の顔が僕の心をぐらつかせる。
梓~、男にはプライドってものがあるんだよぉ。
「…ダメな確率の方が高いけど、一応親父に聞いてみるよ」
「うん! お願い」
「あまり期待しないでな。僕ですら人様に見せられない状態だと思っているから、親父なら尚更だし」
「ダメもとでもいいよ。聞いてみてくれるんなら」
さっきと打って変わって梓は嬉しそうだ。
僕としてはなんとなく複雑な気分だ。もしいいと言われたら、あの不出来な状態で叱り飛ばされている所を梓に見られることになるし、かといってダメと言うことになれば、梓がまた不貞腐れてしまいそうだし。
何だかなあ…。
「じゃあ、あたしも部活行ってくる」
「うん、頑張れよ」
「由紀もな」
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僕は梓の姿が小さくなるまで見送って、こっそりため息を吐いたのだった。
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